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第6章……復讐の勇者編

139話……決戦

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「待って!  いや、待ってください!!」

 剣を勇者に向けると勇者は慌てて剣の柄から手を離して両手を向けてくる。

「違うんです!  俺は、俺たちはこいつに脅されて……!」
「だから?」

 必死に弁解してくるが聞く価値はあるのだろうか?
 俺の返しを聞いて言葉に詰まる勇者、それで許されるとでも思ったのだろうか?

「で、でも……」
「しかしもかかしもねぇよ。結果が全てだ」

 なにを甘えたことを……
 勇者はなんとか言い繕おうと必死な様子だが、視界の端で賢者がなにやら変な動きをしているのが目に入った。

 勇者が慌てているのは演技で隙をつこうとしてるのか?  いや、これは本気で慌ててるな……

 なら作戦ではなく勇者の狼狽を利用して……いや違う!

 俺の中で【直感強化(特)】が警鐘を鳴らしている。
 大急ぎで【気配察知(極)】を起動……後ろか。

 背後から突き出されるクナイを回避しながら強欲の剣を振るう。

「あ……」

 クナイを持つ腕を斬り飛ばすつもりで剣を振ったのだが目測を誤り胴を両断してしまった……

 《【暗器召喚】を獲得、【投擲】を獲得、【五感強化】を獲得、【忍術】を獲得》

 《【隠密】を獲得、統合進化【隠密(上)】を獲得》
 《【弱点看破】を獲得、統合進化【弱点看破(極)】を獲得》
 《【知覚強化】を獲得、統合進化【知覚強化(特)】を獲得》
 《【見切り】を獲得、統合進化【見切り(極)】を獲得》
 《【魔力感知】を獲得、統合進化【魔力感知(上)】を獲得》
 《【アイテムボックス】を獲得、容量を拡大しました》
 《【疾風迅雷】を獲得、統合進化【ヘルメス】を獲得》

 《職業【忍者】を獲得。副業に設定します》

「な!?」
「香織!?」

 聖騎士と賢者の叫びが聞こえる。勇者の声は聞こえない……
 声も出せないほどに驚いているのか?  それなら拍子抜けもいい所なんだが……

 しかし惜しいことをした、忍者はサーシャ誘拐の実行犯、こんな簡単に殺すつもりは無かったんだけどな……

「お、おまぇぇぇぇえええええ!!」

 賢者は激怒した。

 狂ったように各属性の大魔法を連発してくる。
 剣で弾ける魔法は弾いて相殺、弾けそうに無い魔法は転移を使って回避する。

 俺と賢者の根比べ。しかし俺には【魔力吸収(極)】と【魔力常時回復】がある。

 転移で強襲しようにも賢者の背後で聖騎士が警戒しているので迂闊には飛び込めない。
 四天将を名乗ったからといって転移を使って屠ったのは勇み足だったかもしれないな……

「よくも!  よくもぉぉぉおおおお!!」

 聖騎士は警戒、賢者は相変わらずの発狂ぶり、勇者は……

「うわ……いくらなんでもそれは無いだろ……」

 思わず呟いてしまった。
 勇者は忍者の死を目の当たりにして腰を抜かしている。
 足の間には小さな水溜まり……失禁してやがる……

 勇者は震えながら俺の事を見ているが目に力は無い。
 ならまずは勇者を狙うか?  そうすればフレンドリーファイアもあるかもしれないし……

 そうと決まれば牽制に雷魔法を賢者に向けて放つ。
 そこまで魔力も練り上げていない見掛け倒しの魔法だ。

【魔力視】や【魔力感知】をしっかり使えばあまり魔力が込められていないことが分かるような魔法だが、賢者は目の前に土壁を形成して電撃を防いだ。

 悪手過ぎるだろ……視界遮ってどうするよ?

 まぁ今は賢者より勇者だ。
 賢者は魔力さえ尽きてしまえばなんの脅威にもならないし勇者に魔法をぶつけたりしたら精神的にさらに不安定になってくれるだろう。

 賢者と聖騎士からも俺が見えてないことを利用して勇者に接近。
 手を後ろに付いて後退りしているがそんな事で俺が逃がすわけが無いだろう。

「さて……覚悟は?」
「ひっ……ゆ、ゆる……許して……」

 涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしている勇者は見るに堪えない。

「へぇ?  許されるとでも思ってるの?」
「同じ!!  同じ日本人じゃないですかぁぁ……」

 一歩近付くごとに声が弱々しくなっていく。

「英雄!!」

 剣を振り上げてその右腕をたたき斬ろうとしたその刹那、聖騎士が勇者の名前を呼びながら飛び込んできた。

 盾を突き出して俺を吹き飛ばそうと動いているがそんなものとうに【気配察知(極)】で察知済み、軽く一歩下がることで聖騎士のシールドバッシュを回避、そのまま足を引っ掛けて転ばせる。

 そのまま聖騎士のアキレス腱目掛けて剣を振る。

「あがっ……」
「おお、叫ばないなんて大したもん……だ!」
「ぎゃああああああああああ!!」

 反対の足の膝裏に剣を突き立てて皮1枚で繋がっているような状態にする。
 流石にこれは叫ばずにはいられないようだ。

「と……もやぁ……」

 友人のこんな姿を見ても勇者は立ち上がらないか……面白くないな。

「この!  知也くんにまで!」

 賢者からの魔法攻撃がさらに苛烈なものになるが転移で退避。
 そんな闇雲に撃った魔法が当たるわけないだろ。

「ぎゃああ!  熱い!  冷たい!」

 いや、勇者に掠ったみたいだね……
 ちょっと魔法が掠っただけでこんな悲鳴あげるなんてどんだけヤワな鍛え方をしてきたんだ?

 ゴロゴロと転げ回る勇者を放置して聖騎士に近付き足を押えてメソメソ泣いている聖騎士の首を刎ねる。

 《【聖盾召喚】を獲得、【盾術(特)】を獲得、【闘気盾】を獲得、【不動】を獲得》

 《【衝撃緩和】を獲得、統合進化【衝撃緩和(上)】を獲得》
 《【挑発】を獲得、統合進化【挑発(上)】を獲得》
 《【攻撃反射】を獲得、統合進化【攻撃反射(上)】を獲得》
 《【要塞】を獲得、統合進化【アイギス】を獲得》

 《職業【聖騎士】を獲得、副業に設定します》

 聖騎士は誘拐作戦には参加してなかったからな、これで許してやろう。

「ひっ……」

 未だ攻撃魔法を連発しているが威力も規模も小さくなってきている賢者に向かって聖騎士の首を蹴り転がす。

 運悪く目が合ってしまったのか魔法の行使を止めその場にへたりこんだ。

「もう終わりか?」

 賢者に問いかけるが震えたまま聖騎士の首を見つめて動かない。
 これはもう戦意喪失かな?

「ほら、立てよ。立たないと……」

 2人の顔を見るが俯いて視線も合わせて来ない。

 仕方ない、警告もしたしあとは絶望と苦痛の中で殺して終わりにしようか……
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