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第6章……復讐の勇者編

124話……謝罪

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「ケイトが……死んだ……!?」

 部屋に入ってすぐ、俺とリンは深く頭を下げた。

「すまない……俺たちは……俺はケイトを守れなかった……」

 勇者たちの襲撃、裏切り、聖女を攫っている事実。
 その中で戦闘が発生してケイトが殺された事実を話すと3人とも飲み込めないのか放心状態になってしまった。

「クリードさん……それは本当の話か?」
「全て事実だ、薄々勘づいているかもしれないけど俺もエルヴニエス王国に召喚された勇者の1人だ」
「マジかよ……」

 沈黙が場を支配する。

「それで……クリードさんはどうするんだ?」

 沈黙を破って声を出したのはディムだ。
 俺たちを責めるでもなく今後どうするかを聞いてくる。

「俺は……勇者を殺す。どんな理由があってこんな行動を起こしたのかは関係ない。必ず殺す。その後に魔王も俺が殺すよ」

 勇者……神器を持たないものには魔王は倒せない。
 マンモンが言っていたことだ。

 裏を返せば神器があれば魔王は殺せる、勇者を殺すんだ、その責任は俺が取ろう。

「そう……か」
「あの勇者たちが……」
「申し訳ない」

 再度頭を下げる。

「クリードさん、頭を上げてくれ」

 怒鳴りつけられたり殴られたり、受け入れる覚悟を決めていたが予想外にも優しく声を掛けられた。

「クリードさん、俺たちはあんたに感謝してるんだよ」
「感謝なんて……」

 俺はケイトを守れなかったんだぞ?

「そもそもで言えば俺たちはアンタたちが居なかったら死んでたんだ。その上俺たちやケイトの気持ちを汲んでケイトを仲間に入れてくれた……その結果ケイトが死んじまったのは悲しいけど……アイツは不幸だったと思うかい?」

 クレイの言葉に少し考える。
 ケイトは……俺たちといる時はずっと楽しそうだった。
 最後の死に顔も……

「俺が思うにケイトはクリードさんの腕の中で逝けたのなら幸せだったんじゃないかと思うぜ。ケイトの奴クリードさんと出会ってからずっとクリードさんの話しかして無かったし」

 な?  とクレイが問いかけるとディムとロディも頷いた。

「それにクリードさんもその……ケイトに惹かれてたんだろう?  ならケイトは幸せだった、俺はそう思う」
「クリードさんたちも全力を尽くしたのでしょう?  それでこの結果なら……言い方は悪いですが仕方の無いことかと……我々は冒険者、何時どこで死ぬかなんて分からないですからね」

 気付けば涙が頬を伝っていた。
 なんで……なんで怒らない?  なんで殴らない?  なんでこんな俺に優しい言葉をかける!?

「俺たちが望むのは……クリードさん、ケイトの事を忘れないでやってくれ」
「それは……忘れられるわけが無い……」
「ありがとう……俺たちに会わないようにして黙っていることも出来たのにこうやって伝えに来てくれて、俺たちの幼馴染のために泣いてくれる。俺はそれを嬉しく思う」

 ディムも泣いていた。いや、ディムだけでは無い。
 クレイやロディ、リンも静かに涙を流している。

「しかし……あの勇者まさか寝返るなんてな」
「クレイ、なにか知ってるのか?」

 涙を拭ったクレイが吐き捨てるように言う。
 この言い方はなにか関わりでもあったのだろうか?

「勇者とは面識はないんだけど、リバークで勇者と一緒に旅をしてるって御者と知り合って仲良くなったんだ。それで一緒に飲みに行った時にかなり愚痴を聞かされたんだけど……」

 御者によると魔物を発見してもこちらに襲いかかって来ない限りは無視、遅いだの飯がマズイだの文句ばかり、そのくせプライドだけは高い……

 そこいらの貴族様より貴族らしいと言っていたそうだ。

「自信だけはあったみたいで世界を救う自分たちはチヤホヤされて当然だって常々言ってたらしいぜ」
「それは……」

 一度グレートビートル討伐の為に同行した時にもそんな感じはあったな……

 でもあの時はそこまでじゃ……グレートビートル討伐に成功して増長したのか。

「だから勇者が寝返ったって話はなんとなく納得出来るんだけど……聖女様を攫ってケイトを殺した……許せないな」

 そこから話はクレイ主導で勇者の噂や王国への不満などへと移っていった。
 俺に気を使ったのかケイトには触れないように……

 こういう会話術や気の使い方はすごいと思う。俺には絶対に真似出来ない。

「さて……クリードさんたちが魔物を倒してくれたなら明日からはまた門の外で防衛戦だろうし俺たちは休もうかな」

 部屋に入って数時間、何だかんだで話し込んでしまった。

「ディムも怪我が治ったばかりだし無理はいけませんよ」
「もちろんだ。だが俺は戦うぞ」
「回復魔法で怪我は癒えても体力までは戻らないからな、無理はするなよ」
「分かっている。クリードさんたちも明日出るんだろ?  クリードさんたちこそ無理はしないでくれ」
「分かってるよ。勇者を殺すまでに倒れるわけにはいかない」

 ディムたちと別れて部屋に戻る。

「ケイトの仲間がディムたちで本当に良かったわね」
「そうだね。ぶん殴られて罵声を浴びせられることも覚悟してたんだけどな」

 むしろ望んでいたのかもしれない。
 俺がディムたちの立場ならそうしていただろうし。

「ある意味では冒険者らしい考え方よ。ロディも言っていたでしょ?」
「何時どこで死ぬかも分からない……か」

 俺とは違って冒険者として長く活動していると知り合いや仲良くなった冒険者が死ぬことは珍しいことでも無いと言っていた。
 逆に何時死んでもおかしくないのだから後悔のないように生きる、だったかな。
 冒険者の心得だって教わった。

「クリードはいくら強いとは言っても冒険者としてはまだ駆け出しみたいなものだし、そもそも住んでた世界が違うんだから理解しろとは言えないわ。けどこういう考え方もあるんだって覚えておいて」
「そうだね……割り切ることは難しいけど」
「それでいいのよ……じゃああたしたちも明日に備えて休みましょう」
「そうだね……って同室?」
「当たり前でしょ?  クリード貴方1人で寝られるの?」

 それは……

「ほら、今夜は何もしないから寝るわよ」
「あ、はい」

 その日はリンに腕枕をされて眠った。
 逆な気がしてならなかった。
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