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第2章……迷宮都市編

48話……戦いを終えて

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「おめでとうクリード、ミスリルランクなんてすごいじゃない」
「そうですよ!  さすがクリード様です!」
「ケイトもね!  それとクリードを助けてくれてありがとう」
「ありがとうございました!」
「いや……ホント僕何もしてないからね?」

 帰りの道中、俺とケイトのミスリルランク昇格の話で盛り上がっていた。
 ソフィアとアンナは会話には加わらず周囲の警戒を行っているがその表情はどこか誇らしそうだ。

 ……なんで?  パーティメンバーが昇格するから?

 しかしグレートウルフか……ウルトが居なかったらどうなってたかな?

 俺とケイトの2人でアイツとどうやって戦うか……
 少なくとも今の装備では太刀打ちできないだろう。

 全身ミスリル装備で固めれば俺ならしばらく耐えられたかな?
 ケイトもしばらくは持ちこたえられただろうし問題は倒し切る火力か……

 俺の魔法じゃまず無理、なら剣で斬れるのか?
 死体を触った感じあの毛は鉄の剣じゃ剣の方が折れそうだった。
 ならミスリルの剣なら斬れるかな?

 試してみないとわからないけど……それだけ丈夫なら防具に加工できたりしないかな?
 ちょっと明日工房で聞いてみるか……

「クリード、何辛気臭い顔してるのよ」

 考え事をしながら歩いているとリンに話しかけられた。

「なに悩んでるのよ、もしかしてミスリルランク昇格が不満なの?  オリハルコンになりたかったの?」
「違うわ!  いや、俺とケイトだけだったらグレートウルフとどう戦ってたのかなって考えてたんだよ」

 オリハルコンランクとか……無理だろ?

「グレートウルフねぇ……正直クリードとケイトの2人じゃ無理じゃないかしら?  あたしたち6人で戦えばもしかしたら……ってくらいだと思うわよ」

 6人なら……か。

「僕もそう思うよ。特に今の装備だと絶対に僕とクリードじゃ勝てないよ」
「そうね。ミスリル装備が完成していても難しいと思うわ。ケイトはミスリルの剣でグレートウルフを斬れると思う?」
「うーん……多分傷は付けられるだろうけど……」

 斬り裂くのは難しいか。

「だからグレートウルフを倒すのなら手段はあたしの魔法ね、それもかなり集中して撃たないと効かないだろうしそもそも当てられるか……あたしが集中してる間は前衛4人になんとか耐えてもらった上であたしの魔法を回避……出来る?」
「無理」

 ムリムリカタツムリですよ。

 前衛4人……俺、ソフィア、アンナ、ケイトでしばらく耐えるのは可能だと思う。
 けど注意を完全に惹き付けてリンが魔法を構築しているのに気付かせないようにしてかつ着弾直前までそれを維持。
 さらにグレートウルフが回避出来ないタイミングを見計らって離脱とか無理ゲー過ぎるわ。

 ……やっぱりレベル上げもっとしとかないとな。
 ウルトに頼るのは甘え、かっこ悪いとか言ってる場合じゃない気がしてきた。

 ウルト最大活用しつつ俺自身の戦闘技術向上、それを最も効率よく行う必要があるな。

 それからも会話を続けながら頭の中でプランを練る。

 街に到着すると俺たちがオーバーフローを鎮めたことが広がっているらしく盛大に迎え入れられ楽しい夜を過ごした。

 酒はあまり得意では無いのだが断ることも出来ず気が付けば宿のベッドで朝を迎えていた……

 頭痛い、昨日街に帰ってからの記憶あんま無い……

 今の時間は朝の9時過ぎ、とりあえず昼まで寝てようかと考えていると扉をノックする音が聞こえてきた。

「おはようございますクリード様、起きてらっしゃいますか?」

 サーシャの声だ。
 俺が起きてこないから起こしに来てくれたのだろう。

「あぁ、今起きたよ……ちょっと待ってて」

 起き上がって服装を確認、よし、ちゃんと穿いてる。

 伸びをして体を解して浄化魔法で身綺麗にしてから扉を開けた。

「おはようサーシャ、起きれなかったよ」
「おはようございます。朝食は食べられそうですか?」
「うん、食べるよ」

 体は重いし頭も痛いが許容範囲、このくらいなら問題ない。

 食堂に移動して揃って朝食を食べる。

「クリード様今日のご予定は?」
「ちょっと工房に行こうと思ってるよ。グレートウルフの素材使ってなにか面白いもの出来ないかなと思っててさ」
「なるほど、確かにグレートウルフの素材を使えば防具も強化できそうですね」
「うん、出来るようなら全員分の防具の強化お願いしようかと思ってるんだよね。あとはケイトの装備も強化してもらえるように頼もうかと」

 報酬の3割は渡すと約束してるけどグレートウルフの素材については話してなかったしな。
 ケイトも功労者なんだからそのくらいの見返りはあってもいいはずだ。

「自分の装備にも素材使っちゃっていいんスか?」
「私たちはなんの貢献もしておりません、それなのにそのような……」
「何言ってるのさ、仲間だろ」

 ソフィアとアンナは恐れ多いみたいな事を言ってるけど知らん、仲間の強化も必要なんだからね。

「これからもっと奥に潜るんだから強力な防具は必要だろ?  ミスリル装備でも十分かもしれないけどさらにグレートウルフの素材を使えば強化出来るかもしれないんだから出来ることはするべきだ」
「わかりました、クリード殿がそう仰るなら」
「ありがたく受け取らせてもらうッス!」

 どうやら納得してもらえたようで何よりだ。

「では食事も終わりましたしケイトさんにも声をかけてみましょうか」
「そうだね」

 食事中一言も話さなかったリンが気になり顔を見るとゲッソリと青い顔をしていた。

 朝に弱いとも聞いていたし昨日は俺も結構飲まされてたからリンも相当飲んだのだろう。
 これは今日は1日ベッドの上かな?

 食堂を出て階段を上がりケイトの部屋へ、相変わらず俺は階段付近で待機しているとサーシャとケイトが現れた。

「おはようケイト」
「クリードくんおはよう、装備の件なんだけど、是非お願いしたいと思ってるよ」
「そう、なら一緒に工房行く?」
「ううん、行きたいのは山々なんだけど……ちょっと立て込んでてさ……」

 ケイトも疲れた顔をしている、昨日戻ってから何かあったのだろうか?

「そっか、まぁ別に急ぎの話って訳でもないしそっちの用事が済んでからでいいよ」
「ありがとう、じゃあまたね」

 ケイトは疲れた笑顔を浮かべて部屋に戻って行った。

「仕方ないね、じゃあ俺たちだけで行こうか」
「そうですね」

 サーシャは何やら察しているような感じだけど教えてくれそうに無いな。
 あ、もしかして女の子の日?  それなら俺に教えないのは当然か。

 俺たちはリンを残して4人で工房へ。
 出る時に一応リンにも声はかけたのだが無理の一言だけ残してベッドに倒れ込んだのでアレは無理だろう。

「いらっしゃい、さすがにまだ何も出来てないぞ?」

 工房に入ると、先日も俺たちの対応をしてくれた店員が対応してくれた。

「いや、受取じゃなくて面白そうな素材手に入れたからなにかに使えないかなって思って持って来たんだ」
「面白そうな素材?  どんなだ?」
「ここじゃちょっと狭いかな?  もう少し広い場所無いかな」
「ん?  そんなにデカイのか?  広い場所となると……裏庭でいいか?」

 店員に案内され裏庭に移動、うん、ここなら問題無いな。

「これは……」

 裏庭にグレートウルフの死体を出現させる。
 ウルトに積み込んでいたのでまだ死にたてほやほや新鮮な状態だ。

「ギルドマスターが言うにはグレートウルフらしいよ?  どう?」
「どうってお前……」

 反応に困ってるな。

 いいから早く答えて欲しい。使えるのかい?  使えないのかい?  どっちなんだい!

「すまん、親方呼んでくるからちょっと待っててくれ!」

 そう言って店員は工房の中に駆け込んで行った。
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