異世界勇者のトラック無双。トラック運転手はトラックを得て最強へと至る(トラックが)

愛飢男

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第2章……迷宮都市編

43話……特訓開始

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「まずは1回振ってみて」

 言われた通りに木剣を両手で握って振り上げて振り下ろす。

「うん、ダメ。修正するからもう1回振り上げて」

 さっきと同じように振り上げてそのまま動きを止める。

「まず肘の角度、もっとこうこっちに向くように」

 俺の肘を掴んでグイッとずらされる。

「うん、これでよし」
「ちょっと窮屈だね」
「始めはそんなものだよ。慣れていけば楽になるから。さぁそのまま振り下ろしてみて」

 その姿勢から木剣を振り下ろすと、ヒュッと風を斬る音がした。

「どう?」
「なんか振りやすいって言うか……力が入りやすいと言うか……」

 上手く言葉にできないがとにかく違和感なく触れたしちょっとだけ振りが鋭くなった気がする。

「それが分かったなら上出来だよ。クリードくんってまともに剣術習ったこと無いんだよね?」
「無いよ。俺は実際に魔物と戦いながら使い方覚えた感じかな」

 ケイトはふーんと感心したような顔をする。

「基礎を習わずにあのレベルで戦えるのは大したものだと思うけど、やっぱり基礎は身に付けた方がいいよ」
「俺もそう思うよ。だからケイトに剣術を教えてくれって頼んだんだし」
「うん、いい機会だししっかり教えるよ」
「よろしく頼むよ」

 それから1時間ほど素振りを続けた。
 少しでも姿勢が崩れる度木剣でその箇所を叩かれて修正、体に正しい剣の振り方を染み込ませていく。

「辞め!  うん、かなり良くなったよ」
「クリード様お疲れ様です。どうぞ」
「ありがとう」

 サーシャからタオルを受け取り汗を拭う。
 体力的にはまだまだ余裕はあるんだけど汗は関係なく出るんだよね。
 今浄化してもすぐ汗が吹き出て意味が無いからまだ浄化は使わない。

「最後の方は修正する必要も無かったよ。たったこれだけでここまで綺麗に振れるようになるとはね」

 俺もびっくりしている。
 確かに昔からなんでも器用にこなす方ではあったけどこんなに早く身につくとは思わなかった。

「毎日最低100本、出来れば500本くらいは振るようにね、そうすれば自然とどう振ればいいのか分かってくるはずだよ」
「分かった、ちゃんとやるよ」

 これならレベルアップ以外でも強くなれそうだし、やらない手は無いな。

「体力は大丈夫?  疲れたなら終わりにするけど」
「全然余裕だよ。続けてくれ」
「すごい体力だね……わかったよ、なら打ち込みやろうか、僕は反撃しないから好きに打ち込んでいいよ」

 ケイトは数歩下がってこちらに向けて木剣を構えた。

「何時でもいいよ!」

 頷いて大きく深呼吸をする。

「行くぞ!」

 先程の素振りと一緒で今までなら何も考えずに踏み出していたが少し考える。

 歩幅と……振り下ろす際にどこに足があれば力を込めやすいのか……

 深呼吸の間に脳内でシュミレーション、よし行こう!

 シュミレーション通りにステップを踏みイメージ通りの打ち込み、これはしっかりガードされた。

 そこから素振りをしながら学んだことを活かすよう心掛けて何度も攻撃を繰り返す。

 繰り返すうちにだんだんとケイトの目の辺りに魔力が集まって行くのが視えた。
【魔力視】ってパッシブなんだな……アクティブスキルだと思ってたわ。

 それは置いといて、魔力が見え始めてから明らかにケイトの反応速度が上昇している。
 これはなんらかのスキルを使ってるのかな?

 しばらく……と言っても数分だが打ち込みを続けているとケイトの目の付近に集まっていた魔力が薄くなってきていることに気が付いた。
 スキルを使用していると予想しているので恐らく制限時間だろう。

【剛腕】なんかもそうだが強化系のスキルは制限時間が5分も無いのだ。
 時間経過で一気に解けるのでは無く少しずつ効果が薄れていくのだ。

 その経験から使用しているスキルの効果が薄れているのだろうと想像が付く。

 かなり魔力が薄くなったので一旦距離を開けて打ち込みを中止する。

「ふぅ……思ってたよりだいぶキツいや」
「なぁケイト、なにかスキル使ってた?」

 想像は付くが一応確認、ついでになんのスキルを使っていたか教えてくれたら嬉しいな。

「気付いてたの?  ホントは使うつもりはなかったんだけどね……クリードくんの攻撃が僕の想像より苛烈だったから【見切り】ってスキルを使ったんだ」

 やっぱり使ってたのか。

「どんなスキルなの?  教えられないならいいけど」
「別に教えても不都合は無いしいいよ。【見切り】は文字通り相手の攻撃を見切るスキルだよ。予備動作や視線、魔力の流れなんかから次の動作を予測することも出来るよ」

 へぇ……めちゃくちゃ便利じゃん。

「それって俺も覚えられるかな?  どうやって覚えればいいかな?」
「うーん……クリードくんも知ってると思うけど、スキルなんて手に入るかどうかは運によるところもあるからね……【見切り】なんてスキル持ってなくても出来る人は出来るし」

 うーん……分かるような分からないような……

「それよりどうして僕がスキルを使ってることに気付いたの?」
「あぁ、俺は【魔力視】ってスキル持ってるからケイトの目の辺りに魔力が集まってるのが視えたんだ。なんのスキルかまでは分からなかったけどなんらかのスキルを使ってるんだろうなとは思ってたんだ」

【見切り】のことを教えてもらったのでこちらも【魔力視】のことを開示、これで対等だろう。

「【魔力視】か、いいスキル持ってるね」
「やっぱりいいスキルなのかな?」
「うん、羨ましいくらいだよ。対魔物ならあんまり使わないかもだけど対人戦なんかだと相手の使った強化スキルなんかも見破れるし相手が魔法使いなら何の属性を使おうとしてるか視えるからかなり有用だよ」

 なるほど確かに……

「さっきも言ったけど、僕の【見切り】なんかはスキルが無くても似たようなことが出来るけど、【魔力視】みたいな特殊な効果のスキルはそのスキルが無いと真似出来ないからね」
「それもそうか、運が良かったんだな」

 実際どのタイミングで覚えたのかも分からないしな!

「よし、話はこれくらいにして……もう1回やる?」
「やろう。次は大きい隙があれば反撃してもらっていい?」
「いいけど、寸止めはしないよ?」

 大丈夫?  という目で見てくるが朝も思い切り叩いてたじゃん。

「大丈夫、その木剣がへし折れるくらいの攻撃でちょっと痛いくらいだと思うし」

 朝打たれた感覚からそれくらいだと思う。
 それにステータスって不思議だと思う、こうやって意識していれば木剣で殴られても痛くないのに意識してない時……宿でぼーっとしてドアの角に頭ぶつけた時は普通に痛かったもん。

「よし、いつでもかかって来ていいよ!」
「行くぞ!」

 それから何度も打ち掛かり何度もカウンターを貰ってしまった。

 カウンターを受ける度にどこが悪かったのか指摘を受けそれを飲みこみ同じミスをしないよう意識して訓練を続けた。

「そろそろ……終わりにしようか……」

 打ち合い始まって早1時間、どうやら俺よりケイトの方が限界を迎えてしまったらしい。

「うん、ありがとう。いい訓練になったよ」
「僕の方こそいい訓練ができたよ」

 しばらくアドバイスなどを貰い木剣を返して浄化魔法を描ける。

「ありがとう、クリードくんは光の適性もあるんだね」
「一応ね、使えるようになったのは最近も最近だけど」

 最近というか今朝だけど。

「じゃあ僕は部屋に戻るよ。明日も予定は特にないから訓練したくなったら声かけてね」
「わかった、ありがとう」

 ケイトと別れサーシャの方を見るといつの間にか帰ってきたようでソフィアとアンナもそこに居た。

「クリード様、お疲れ様でした」
「凄かったッス、自分じゃクリードさんの攻撃は捌ききれないと思うッスよ」
「そうかな?  試してみる?」

 何故か嬉しそうなアンナにそう言ってみるが首を横に振られた。

「魅力的な提案ッスけど今日は辞めとくッス。もうそろそろギルド行かないといけないんで」
「え?  もうそんな時間?」
「はいッス、だからまた時間のある時にお願いするッスよ」

 スマホを取り出して時間を確認すると既に2時半を過ぎていた。

「では私たちはギルドへ行ってきますね。クリード様はどうされますか?」
「そうだな……特にやることは無いし魔法の練習でもしてるよ」
「分かりました、では行ってきますね」
「行ってらっしゃい」

 サーシャたちとも別れ俺は一旦部屋に戻ることにした。
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