異世界勇者のトラック無双。トラック運転手はトラックを得て最強へと至る(トラックが)

愛飢男

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第1章……王国編

10話……パーティ登録

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 ズンズン進んでいくリンさんに呆気に取られながらも大人しく着いて歩きいてギルドへ向かう。
 到着してからもリンさんの独壇場で、俺たちは言われるがままに返事をしたり冒険者証を提出したりサインしたりするだけで無事パーティ登録は完了した。

 リーダーとして登録したのはリンさん、どうもシルバーランクの冒険者でもあるらしく、俺たちの中で一番高ランクだったので俺としても特に文句はない。

 パーティ登録を終えるとさっさと冒険者ギルドを出て宿に戻る。
 この間会話らしい会話はほぼ無かった……

 宿に戻るといい時間だったのでそのまま夕食をたべる。
 よくある現代日本人にとってはひっどい触食事ということは無く普通に食べられた。
 少々薄味ではあったがそのくらいは許容範囲だ。

 食事も終わり今日はこれで解散かな?  と思っているとサーシャとリンさんに腕を掴まれて部屋に引っ張られてしまった。

 やめて!  夜に異性を部屋に無理やり引きずり込むなんてイケナイと思います!

「さてクリード、色々聞かせてもらうわよ!」
「そうですよ!  もっとお話聞かせてください!」

 部屋に入った途端サーシャとリンさんがめちゃくちゃグイグイ来る。

「ちょっと落ち着いて?  話すのはいいんだけど、こっちも色々教えて欲しい」

 通貨の価値とかも分からないからね?

「わかってるわよ。クリードは異世界人なんでしょ?  この世界の常識とかルールとかそういうの聞きたいんでしょ?」
「うん、そうだよ。何も分からないのは不便過ぎて困るから」
「ある程度はあとで教えてあげる。細かいことは一緒に生活しながらね。だから今は色々聞かせて欲しいの!」
「あ……はい」

 めっちゃ押して来るな……
 まぁ後からでも教えてくれるって言うなら慌てたこともないか……

「わかったよ。リンさんは何が聞きたいの?」
「呼び捨てでいいわよ。もう仲間になったんだしね。そうね……まずは勇者召喚の結果を教えて!」

 圧がすごい、少し落ち着いて欲しい。
 さっきまでの覇気のない目が嘘のように目がイキイキしている。
 やる気のない残念美人の印象だったけどこう……ギャップがヤバい。

「勇者召喚の結果?  確か……俺含めて男4人女2人の合わせて6人だったな……誰がどの職業かはわからないけど、勇者、賢者、剣聖、聖騎士、忍者だったと思う」

 あとはトラック運転手の俺ね。
 あ、隣に座ってた男が勇者だったかな?

「なるほど、それでクリードの職業がトラック運転手で聞いた事無いしステータスも高くないからって追い出された感じなのね?」
「いや言い方……間違ってはないんだけど……」

 やっぱりリンって口悪いよね?

「それで追い出されて途方に暮れてる時に――」
「私が声をかけました!」

 はーいと右手を上げながらサーシャが話に入ってきた。
 他の2人は……と見てみると、ソフィアは部屋の入口の脇に、アンナは窓の脇に立っていた。
 警備してるのかな。

「はいはい、それでサーシャちゃんたちと一緒に冒険者登録をして王都の外に出たんでしょ?  その辺り詳しく教えて?」
「えーっと……」

 思い出しながら外での出来事を話す。
 時折サーシャとソフィアが補足を入れてくれたりしながら話し切ると、リンは顔を紅潮させ興味が抑えきれないような表情をしていた。

「見たい!  とらっく見たい!」
「ちょっと落ち着けって……」

 こんなにグイグイ来られると対応に困る。
 女性慣れしていない訳でも無いけど目をキラキラさせたきれいなお姉さんにここまで来られた経験は流石に無い。

 俺はポケットからミニカーサイズのウルトを取り出しテーブルに置いた。

「はい、これがトラックだよ。名前はウルト」
「え?  とんでもなく大きいって言ってなかったかしら?」
「リンさん、ウルト様は大きさと重さを自由に変えられるんですよ!」


 聞いていた大きさと違いすぎて混乱するリンにサーシャが教えているがそれで伝わるのだろうか?

『はじめましてリン様。私は【2030年式ウルトラグレート冷凍車モデル】、個体識別名称ウルトです。マスターとお仲間の安全と快適を護ります』

 ウルトがリンに自己紹介をすると、リンは驚きのあまり固まってしまい油の切れた機械のような動きでウルトの方に顔を向けた。

「え……?  この子喋るの?」
『会話は可能です』

 驚愕に目を見開くリン、この顔今日沢山見たよ。
 ウルトの存在はやはり驚愕に値するものなのだと改めて実感した。

「えっと……ウルトだっけ?  私はリン、魔法使いよ、よろしく……ね?」
『はい。マスター共々よろしくお願い致します』
「それでウルトは何ができるの?」
『そうですね。いくつかのスキルを所持していますのでそれを使っての戦闘、サポートが可能です』

 それからウルトは自身の持つスキルをリンに開示していく。
 一緒に聞いていたがやはりウルトはぶっ飛んでいるような気がする。
 明らかにサーシャたちよりスキルも多いしね。

「すごいわね……これって勇者より強いんじゃないの?」
『勇者の力はわかりませんが、マスターを護るためなら打ち勝って見せましょう』

 いや勇者に打ち勝つって……そりゃトラック対人間ならトラックに分があるだろうけど。

「それと、ウルトがゴブリンを倒したらクリードのレベルが上がったんだって?  その辺の話をしてもいいかしら?」
「あ、それ俺も気になる」
「私もです!」

 リンが切り出したのはレベルアップの話。
 俺が倒したわけでも無いのにレベルが上がったことは気になっていた。

「パーティ組んでたら仲間が倒した魔物の経験値が分配されるとかあるの?」

 大体のゲームではこの方式が多い。この世界もそうなのだろうか?

「基本はそうね。まぁギルドでパーティを組むというよりお互いが仲間と認めあっているかどうかが大切ね。後でやるけどステータスの相互閲覧を許可し合えば経験値は分配されるわ」
「なら俺とウルトがそういう関係ってことなの?」

 仲間というより相棒ってイメージが強いけど。
   ステータスは一方的に知られてるけどね。

「あくまで人間同士ならね。ウルトにはレベルって概念はあるの?」
『おそらくありませんね。私は自身のレベルアップではなくマスターが強くなれば私も強くなるという感じです』

 俺が強くなったらウルトも強くなるってそれ追いつけないんじゃ……?

「なるほどね、やっぱりクリードとウルトの関係は召喚術士に似ているわね」
「召喚術士?」

 割と定番な職業だけどこの世界では初耳だな。

「えぇ、まずは説明だけど、勇者召喚で喚ばれる勇者たちの職業はこの世界の戦闘職の上位なの。剣聖や聖騎士なら戦士、賢者や大魔道士なら魔法使いの上位って感じね」

 それはなんとなくわかる。

「この世界の人間には基本的には就けない職業に就いてるのが勇者たちなのよ。もちろん基本的にであって絶対では無いわよ」
「もしかしてサーシャの聖女って……」
「いえ、聖女には特別な役割があるの……詳しくは説明出来ないけど、勇者召喚で聖女が喚ばれることは無いわ」

 へぇ……ならサーシャにはサーシャの役割があるのか……

「上位の職業は就職の儀でごく稀に就けるけどその可能性は限りなく低いわね。一番最近就職の儀で上位職業に就いた人は確か40年前だったかしら?」
「確かそれくらいですね。その人は確か戦士系の上位職業【竜騎士】だったはずです。まだ現役の冒険者のハズですよ」

 竜騎士か……竜に騎乗して戦うのかな?  めちゃくちゃかっこいいな……

「話が逸れたけど、多分クリードの【トラック運転手】って【召喚術士】の上位だと思うのよね。実際トラックを召喚しているし召喚した存在が倒した魔物の経験値を得ていることから間違いないとは思うんだけど」
「そうなんだ。それで召喚術士ってなにを召喚できるんだ?  俺にも召喚できるのかな?」

 召喚術士もかっこいいじゃん?  精霊召喚とかできたらテンション爆上がり間違い無しよ?

「召喚術士は元々数が少ないからあまり情報が無いのよね……あたしの知ってる限りだと魔獣を召喚使役して戦うのが一般的みたいね」
「ん?  召喚術士って珍らしいの?」
「えぇ、戦士や魔法使いはそれなりに生まれるけど召喚術士はかなり珍しいわね」

 ほぉほぉ、レア職なのか……そして俺はそのレア職の上位職業の可能性がある、と。

「クリードは【召喚術】や【使役】や【支配】のスキルはあるかしら?」
「俺が持ってるのは【トラック完全支配】だね」
「なら魔獣召喚は今は使えないと思うわよ?  それにウルトってどんな魔獣よりも強いと思うからわざわざ弱い魔獣を使役してもしょうがないんじゃない?」

 言われてみればそうだな。
 ウルトより弱い魔獣を使役するメリットって俺の自己満足以外無いもんな。

『マスターには私が居れば他の魔獣など不要です』

 ウルトも心外みたいな感じで喋ってるしこれに関しては成り行き任せでいいかな。
 召喚術は覚えられたら覚えるくらいでいいや。

「そうだね。頼りにしてるよ」
『お任せください』

 これで職業については一段落かな?
 なら戻って寝ていいかな、色々あって疲れたからもう眠いんだよね……
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