転生して間もなく乙女ゲーで言うところの悪役令嬢を拾いました。不憫に思い手を差し伸べたらいつの間にか尻に敷かれていました。誰か助けて……

愛飢男

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戦うとみぃ

65話。男はゲスいよ

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 戻ってきたティファリーゼに話を聞くと、アイリスの予想通りであったようだ。

 ラトイの貴族というのは選民意識が非常に高く、平民のことなんて家畜と同じレベルでしか見ていないそうだ。

 家畜と同じレベルでしか見ないくせに女を差し出させるとか……この国の貴族は家畜とヤるつもりなのかしら?

 ちなみに俺は無理矢理は嫌いである。
 あれは創作だからいいのであって、現実となると絶対無理。
 むしろ創作でも敬遠する。

「それで、どうするの?」
「一応あたしたちが戦っている間は離れているように言ったけど……この集落が住めなくなるくらいなら巻き込まれて死んでもいいって」
「マジか」

 この集落がダメになってしまった場合、集落に住む人たちは行き場を無くしてしまう。

 こんな森の中での生活を選ぶほどに貴族に対して絶望している住人に街に戻れとは俺には言えない。

「どうしますの?」
「どうしますって……どうしたらいいんだろう?」

 この世界の常識に疎い俺にそんなことは決められない。
 ついでにそんなことを思いつく頭も持っていない。

 まぁ……バトル物に有るまじき選択をするなら問題無いかな?

「この前と同じ出現方法なら、ヒビが入った瞬間にアイリスが【ホーリーレイン】を使って、悪魔本体が出てきた瞬間を狙って【ホーリーブレイク】を放てば……」
「それなら周りに被害は出ませんわね」

 似たような策として、出現と同時に【クリエイトトラック】をぶつける手段もあるのだが、あれは【ホーリーブレイク】に比べると周りへの被害が大きいからね。
 トラックを加速させるスペースも必要になるし。

 この状況なら【クリエイトトラック】より【ホーリーブレイク】の方が適切だろう。

「よし、じゃあこれでいこう」
「わかりましたわ」
「じゃあそれで伝えましょ。さっき行った時にトミーくんとアイリスちゃんのことも話しておいたから、一緒に行きましょう」

 ティファリーゼの案内で集落へと向かう。

 集落に到着して建物を見てみると、分かってはいたが想像以上に粗末な建物で、台風でも来れば集落ごと吹き飛んでしまいそうに思える。
 こんな場所で悪魔とまともに戦えば余波だけで集落は更地になってしまうだろう。

「あの……」

 集落の中心の広場、悪魔の出現地点には数人の住民がおり、代表者と思われる男が一歩前に出て俺たちに声をかけてきた。

「さっき話したあたしの仲間よ。この三人で悪魔を退治するわ」
「はぁ……」

 代表の男だけでなく、ここに集まった住民の様子を伺うと、全員が朽ち果てた服を着ており、ガリガリに痩せていて顔色もよろしくない。
 これなら初めて会った時のシルフィエッタの方がまだ元気そうだ。

 それにこの中に若い男がほとんどいない。
 老人と女性ばかりだ。

「それはわかりましたが、集落は大丈夫でしょうか?」
「大丈夫。周りの建物には被害が出ないように戦うから」

 代表の男とティファリーゼが話をしているので、今のうちにアイリスに聞いてみよう。

「アイリス、なんでこんなに男女の割合が偏っているのかな?」
「狩りにでも出ているのでは?」
「騎士様、それは違います」

 アイリスの予想を聞いていると、裸の赤子を抱いた女性が話に入ってきて、アイリスの予想を否定した。

 裸の赤ん坊……よくよく見ると、女性の着ている服も限界で、辛うじて大事な部分を隠すだけの布と成り下がっている。
 逆にエロいと思ってしまうのは俺の中身がおじさんだからだろうか……不謹慎。

 しかしこんなになってまで街や近隣の村に住むのは嫌だなんて、この国どうなってるの?

「違うとはどういうことですの?」
「この集落の男の殆どは……逃げました。この子の父親もです」

 女性の体はやせ細っており、顔色も悪いが目には力が残っている。
 その力の源は憎悪なのかもしれないのだけど……

「と言いますと?」
「私がこの子を孕んだことが分かった途端に『セターンに行って一旗揚げる、そうなったらお前と子供を呼ぶから』と言って行ってしまいました。他の男も似たようなものです」

 え、クズじゃん。

 逃げた道中で魔物に食われるか野盗にでも捕まって慰みものにされた挙句無惨に殺されてしまっても同情出来ないレベルでクズじゃん。

「トミー、魔力が漏れていますわよ」
「おっといけない」

 男たちのぁりのクズっぷりに憤りを感じていると、怒りに反応して魔力が少し漏れてしまっていたようだ。いけないいけない。

「トミー、いけませんわよ」
「……ダメ?」
「はい。ここの住民はラトイの民。連れて行ってしまえば問題になりますわ」

 この集落の住民全員をエフリに連れ帰り、仕事を見つけて生活できるようになるまで援助しようかと考えていると、アイリスがいつものように俺の心を読んで先手を打ってきた。

「バレなきゃよくない?」

 俺の知らない場所で知らない人がどうなろうと知ったことでは無いが、見て聞いて知ってしまうと……何とかしてあげたくなってしまう。

 日本人の気質なのか、俺自身の性格なのかはわからないが、そんな偽善者な自分のことを俺は嫌いじゃない。

 やらない善よりやる偽善。募金箱を見つけたらとりあえず入れるタイプである。

「トミーが個人的にこの集落に支援するというのなら構いませんが、連れて帰るのはいけませんわ」
「支援ならいいの?」
「ええ、それなら問題はありませんが……」

 なんだか歯切れが悪いな。
 けど、 支援なら大丈夫というなら支援しようではないか。

 俺はカバンに入っている食料を集落の住民に配り始めた。
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