67 / 85
戦うとみぃ
65話。男はゲスいよ
しおりを挟む
戻ってきたティファリーゼに話を聞くと、アイリスの予想通りであったようだ。
ラトイの貴族というのは選民意識が非常に高く、平民のことなんて家畜と同じレベルでしか見ていないそうだ。
家畜と同じレベルでしか見ないくせに女を差し出させるとか……この国の貴族は家畜とヤるつもりなのかしら?
ちなみに俺は無理矢理は嫌いである。
あれは創作だからいいのであって、現実となると絶対無理。
むしろ創作でも敬遠する。
「それで、どうするの?」
「一応あたしたちが戦っている間は離れているように言ったけど……この集落が住めなくなるくらいなら巻き込まれて死んでもいいって」
「マジか」
この集落がダメになってしまった場合、集落に住む人たちは行き場を無くしてしまう。
こんな森の中での生活を選ぶほどに貴族に対して絶望している住人に街に戻れとは俺には言えない。
「どうしますの?」
「どうしますって……どうしたらいいんだろう?」
この世界の常識に疎い俺にそんなことは決められない。
ついでにそんなことを思いつく頭も持っていない。
まぁ……バトル物に有るまじき選択をするなら問題無いかな?
「この前と同じ出現方法なら、ヒビが入った瞬間にアイリスが【ホーリーレイン】を使って、悪魔本体が出てきた瞬間を狙って【ホーリーブレイク】を放てば……」
「それなら周りに被害は出ませんわね」
似たような策として、出現と同時に【クリエイトトラック】をぶつける手段もあるのだが、あれは【ホーリーブレイク】に比べると周りへの被害が大きいからね。
トラックを加速させるスペースも必要になるし。
この状況なら【クリエイトトラック】より【ホーリーブレイク】の方が適切だろう。
「よし、じゃあこれでいこう」
「わかりましたわ」
「じゃあそれで伝えましょ。さっき行った時にトミーくんとアイリスちゃんのことも話しておいたから、一緒に行きましょう」
ティファリーゼの案内で集落へと向かう。
集落に到着して建物を見てみると、分かってはいたが想像以上に粗末な建物で、台風でも来れば集落ごと吹き飛んでしまいそうに思える。
こんな場所で悪魔とまともに戦えば余波だけで集落は更地になってしまうだろう。
「あの……」
集落の中心の広場、悪魔の出現地点には数人の住民がおり、代表者と思われる男が一歩前に出て俺たちに声をかけてきた。
「さっき話したあたしの仲間よ。この三人で悪魔を退治するわ」
「はぁ……」
代表の男だけでなく、ここに集まった住民の様子を伺うと、全員が朽ち果てた服を着ており、ガリガリに痩せていて顔色もよろしくない。
これなら初めて会った時のシルフィエッタの方がまだ元気そうだ。
それにこの中に若い男がほとんどいない。
老人と女性ばかりだ。
「それはわかりましたが、集落は大丈夫でしょうか?」
「大丈夫。周りの建物には被害が出ないように戦うから」
代表の男とティファリーゼが話をしているので、今のうちにアイリスに聞いてみよう。
「アイリス、なんでこんなに男女の割合が偏っているのかな?」
「狩りにでも出ているのでは?」
「騎士様、それは違います」
アイリスの予想を聞いていると、裸の赤子を抱いた女性が話に入ってきて、アイリスの予想を否定した。
裸の赤ん坊……よくよく見ると、女性の着ている服も限界で、辛うじて大事な部分を隠すだけの布と成り下がっている。
逆にエロいと思ってしまうのは俺の中身がおじさんだからだろうか……不謹慎。
しかしこんなになってまで街や近隣の村に住むのは嫌だなんて、この国どうなってるの?
「違うとはどういうことですの?」
「この集落の男の殆どは……逃げました。この子の父親もです」
女性の体はやせ細っており、顔色も悪いが目には力が残っている。
その力の源は憎悪なのかもしれないのだけど……
「と言いますと?」
「私がこの子を孕んだことが分かった途端に『セターンに行って一旗揚げる、そうなったらお前と子供を呼ぶから』と言って行ってしまいました。他の男も似たようなものです」
え、クズじゃん。
逃げた道中で魔物に食われるか野盗にでも捕まって慰みものにされた挙句無惨に殺されてしまっても同情出来ないレベルでクズじゃん。
「トミー、魔力が漏れていますわよ」
「おっといけない」
男たちのぁりのクズっぷりに憤りを感じていると、怒りに反応して魔力が少し漏れてしまっていたようだ。いけないいけない。
「トミー、いけませんわよ」
「……ダメ?」
「はい。ここの住民はラトイの民。連れて行ってしまえば問題になりますわ」
この集落の住民全員をエフリに連れ帰り、仕事を見つけて生活できるようになるまで援助しようかと考えていると、アイリスがいつものように俺の心を読んで先手を打ってきた。
「バレなきゃよくない?」
俺の知らない場所で知らない人がどうなろうと知ったことでは無いが、見て聞いて知ってしまうと……何とかしてあげたくなってしまう。
日本人の気質なのか、俺自身の性格なのかはわからないが、そんな偽善者な自分のことを俺は嫌いじゃない。
やらない善よりやる偽善。募金箱を見つけたらとりあえず入れるタイプである。
「トミーが個人的にこの集落に支援するというのなら構いませんが、連れて帰るのはいけませんわ」
「支援ならいいの?」
「ええ、それなら問題はありませんが……」
なんだか歯切れが悪いな。
けど、 支援なら大丈夫というなら支援しようではないか。
俺はカバンに入っている食料を集落の住民に配り始めた。
ラトイの貴族というのは選民意識が非常に高く、平民のことなんて家畜と同じレベルでしか見ていないそうだ。
家畜と同じレベルでしか見ないくせに女を差し出させるとか……この国の貴族は家畜とヤるつもりなのかしら?
ちなみに俺は無理矢理は嫌いである。
あれは創作だからいいのであって、現実となると絶対無理。
むしろ創作でも敬遠する。
「それで、どうするの?」
「一応あたしたちが戦っている間は離れているように言ったけど……この集落が住めなくなるくらいなら巻き込まれて死んでもいいって」
「マジか」
この集落がダメになってしまった場合、集落に住む人たちは行き場を無くしてしまう。
こんな森の中での生活を選ぶほどに貴族に対して絶望している住人に街に戻れとは俺には言えない。
「どうしますの?」
「どうしますって……どうしたらいいんだろう?」
この世界の常識に疎い俺にそんなことは決められない。
ついでにそんなことを思いつく頭も持っていない。
まぁ……バトル物に有るまじき選択をするなら問題無いかな?
「この前と同じ出現方法なら、ヒビが入った瞬間にアイリスが【ホーリーレイン】を使って、悪魔本体が出てきた瞬間を狙って【ホーリーブレイク】を放てば……」
「それなら周りに被害は出ませんわね」
似たような策として、出現と同時に【クリエイトトラック】をぶつける手段もあるのだが、あれは【ホーリーブレイク】に比べると周りへの被害が大きいからね。
トラックを加速させるスペースも必要になるし。
この状況なら【クリエイトトラック】より【ホーリーブレイク】の方が適切だろう。
「よし、じゃあこれでいこう」
「わかりましたわ」
「じゃあそれで伝えましょ。さっき行った時にトミーくんとアイリスちゃんのことも話しておいたから、一緒に行きましょう」
ティファリーゼの案内で集落へと向かう。
集落に到着して建物を見てみると、分かってはいたが想像以上に粗末な建物で、台風でも来れば集落ごと吹き飛んでしまいそうに思える。
こんな場所で悪魔とまともに戦えば余波だけで集落は更地になってしまうだろう。
「あの……」
集落の中心の広場、悪魔の出現地点には数人の住民がおり、代表者と思われる男が一歩前に出て俺たちに声をかけてきた。
「さっき話したあたしの仲間よ。この三人で悪魔を退治するわ」
「はぁ……」
代表の男だけでなく、ここに集まった住民の様子を伺うと、全員が朽ち果てた服を着ており、ガリガリに痩せていて顔色もよろしくない。
これなら初めて会った時のシルフィエッタの方がまだ元気そうだ。
それにこの中に若い男がほとんどいない。
老人と女性ばかりだ。
「それはわかりましたが、集落は大丈夫でしょうか?」
「大丈夫。周りの建物には被害が出ないように戦うから」
代表の男とティファリーゼが話をしているので、今のうちにアイリスに聞いてみよう。
「アイリス、なんでこんなに男女の割合が偏っているのかな?」
「狩りにでも出ているのでは?」
「騎士様、それは違います」
アイリスの予想を聞いていると、裸の赤子を抱いた女性が話に入ってきて、アイリスの予想を否定した。
裸の赤ん坊……よくよく見ると、女性の着ている服も限界で、辛うじて大事な部分を隠すだけの布と成り下がっている。
逆にエロいと思ってしまうのは俺の中身がおじさんだからだろうか……不謹慎。
しかしこんなになってまで街や近隣の村に住むのは嫌だなんて、この国どうなってるの?
「違うとはどういうことですの?」
「この集落の男の殆どは……逃げました。この子の父親もです」
女性の体はやせ細っており、顔色も悪いが目には力が残っている。
その力の源は憎悪なのかもしれないのだけど……
「と言いますと?」
「私がこの子を孕んだことが分かった途端に『セターンに行って一旗揚げる、そうなったらお前と子供を呼ぶから』と言って行ってしまいました。他の男も似たようなものです」
え、クズじゃん。
逃げた道中で魔物に食われるか野盗にでも捕まって慰みものにされた挙句無惨に殺されてしまっても同情出来ないレベルでクズじゃん。
「トミー、魔力が漏れていますわよ」
「おっといけない」
男たちのぁりのクズっぷりに憤りを感じていると、怒りに反応して魔力が少し漏れてしまっていたようだ。いけないいけない。
「トミー、いけませんわよ」
「……ダメ?」
「はい。ここの住民はラトイの民。連れて行ってしまえば問題になりますわ」
この集落の住民全員をエフリに連れ帰り、仕事を見つけて生活できるようになるまで援助しようかと考えていると、アイリスがいつものように俺の心を読んで先手を打ってきた。
「バレなきゃよくない?」
俺の知らない場所で知らない人がどうなろうと知ったことでは無いが、見て聞いて知ってしまうと……何とかしてあげたくなってしまう。
日本人の気質なのか、俺自身の性格なのかはわからないが、そんな偽善者な自分のことを俺は嫌いじゃない。
やらない善よりやる偽善。募金箱を見つけたらとりあえず入れるタイプである。
「トミーが個人的にこの集落に支援するというのなら構いませんが、連れて帰るのはいけませんわ」
「支援ならいいの?」
「ええ、それなら問題はありませんが……」
なんだか歯切れが悪いな。
けど、 支援なら大丈夫というなら支援しようではないか。
俺はカバンに入っている食料を集落の住民に配り始めた。
20
お気に入りに追加
370
あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

王太子に転生したけど、国王になりたくないので全力で抗ってみた
こばやん2号
ファンタジー
とある財閥の当主だった神宮寺貞光(じんぐうじさだみつ)は、急病によりこの世を去ってしまう。
気が付くと、ある国の王太子として前世の記憶を持ったまま生まれ変わってしまうのだが、前世で自由な人生に憧れを抱いていた彼は、王太子になりたくないということでいろいろと画策を開始する。
しかし、圧倒的な才能によって周囲の人からは「次期国王はこの人しかない」と思われてしまい、ますますスローライフから遠のいてしまう。
そんな彼の自由を手に入れるための戦いが今始まる……。
※この作品はアルファポリス・小説家になろう・カクヨムで同時投稿されています。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

加護とスキルでチートな異世界生活
どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!?
目を覚ますと真っ白い世界にいた!
そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する!
そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる
初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです
ノベルバ様にも公開しております。
※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません


破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。
大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。
ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。
主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。
マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。
しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。
主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。
これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる