転生して間もなく乙女ゲーで言うところの悪役令嬢を拾いました。不憫に思い手を差し伸べたらいつの間にか尻に敷かれていました。誰か助けて……

愛飢男

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戦うとみぃ

50話。出陣準備

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 それからまた1週間ほどの間、ほぼ毎日依頼を受けて戦ったり、依頼が無くても戦ったりしながら日々を過ごした。

 ティファリーゼに関してはほぼ毎日うちに来て飯を食い、酒を飲み、ぐでんぐでんに酔っ払って下着姿てその辺に転がっている。
 毎日この様なので、流石に慣れた。

 下着ってさ、普段決して見えないからこそ見えた時に嬉しいものであって、普段から見せつけられているとなんとも思わなくなるもんなんだね。

 いつの間にやら俺の認識が「見えた! ラッキー!」ではなく「また脱いでる、早く服着なさいよ、風邪ひくよ?」になっている自分に驚いた。
 俺の中でのティファリーゼの下着姿はとっくに需要が無いようだ。

 そんな日々を過ごしていたある日、俺が朝起きると同時にスマホから通知音が鳴った。
 寝ぼけ眼でなんだろうとスマホを手に取り、通知内容を確認した瞬間に目が覚めた。

【速報、小国家郡レトフにて1週間後に悪魔出現の兆しあり。騎士級】

 来た。ついに来てしまった。
 俺のスマホにインストールされている神託アプリがついに悪魔の出現を予告した。

 この️2週間、悪魔出現に対応するため改めて地理を学び直した。

 小国家郡に関しても学んだので、レトフの場所はわかる。
 エフリからほぼ真南にあるセターン、そこから少し西に行ったところにある小国だ。

 ここからなら徒歩でも5日あれば十分に到着出来る。
【クリエイトオフロード車】の出番は無さそうだ。

「まずはアイリスたちに伝えないと……」

 そうと決まれば即行動。
 寝間着から作業着へと素早く着替えて洗面所へと向かう。

「おはようございますトミー様」
「おはようございますお兄ちゃん!」
「二人ともおはよう」

 着替え終わったので顔を洗うため洗面所へと移動しようとリビングに繋がる扉を開けると、メアリさんとシルフィエッタが二人で朝食の支度をしている所だった。

 リビングの隅では酔いつぶれて寝ているティファリーゼの姿も確認できる。

 今日は服を着ているので、メアリさんかシルフィエッタが寝ているティファリーゼに着せたのだろう。
 ウチのパーティメンバーがご迷惑をおかけしてすみません……

 洗顔をでしょうか?済ませ、リビングに戻るとアイリスも降りてきていた。
 朝食の準備も出来たようで、視界の隅でシルフィエッタがティファリーゼを起こそうと奮闘している姿も見える。
 お手伝いちゃんと出来て偉い。

「トミー、おはようですわ」
「おはようアイリス。今日はちょっと話さないといけないことがあるんだけど……」

 未だティファリーゼは起きる気配を見せない。
 家を出たらシャキッとするのだが、家の中に居るティファリーゼはいつもあんな感じだ。使い物にならない。

「ゔー……飲みすぎた、頭痛い……」
「もう! 飲み過ぎには気を付けてって言ったでしょ! はい、お水飲んでしっかりして!」
「ありがとうシルフィちゃん。もうちょい声小さくしてくれたらお姉さん嬉しいな……」

 そうこうしているうちに、ようやくティファリーゼが起動したようだ。
 飲み過ぎたと言っているが、コップ2杯しか飲んでないじゃん。
 弱すぎるだろう……

「おはよう……トミーくん、アイリスちゃん」
「おはようですわ。トミーから話があるようですので、シャキッとして下さいまし」
「ゔー……わかった。それで話って何? ついに我慢の限界を迎えた感じ?」

 この野郎、髪の毛引っ掴んで前後左右に振り回すぞ?

「はいはい余裕余裕。それで話なんだけど」

 適当にあしらって話を続けると、真面目な話だと理解したのかティファリーゼも静かに話を聞く姿勢になった。

「神託が来た。1週間後にレトフに騎士級の悪魔が現れる」
「ついに……ですのね」
「騎士級かー……騎士級ならあたしでもなんとか戦えるかな?」

 アイリスもティファリーゼも、真剣な顔になりやる気を漲らせているのが伝わってくる。

「そういうわけだから、早速出発しようと思うんだけど」
「そうね。足はボッター商会から馬車を借りればいいし……レトフの冒険者組合の組合長は知り合いだからその辺も任せておいて」
「それは助かる」

 レトフ国国王宛にファトス王やセドカン王からの紹介状も持ってはいるが、冒険者組合からも要請してもらった方が話はスムーズだろう。

 一箇所からより多方面からアクセスがあった方が動きがスムーズになるのは道理だろうし。

「アイリスもそれでいい?」
「構いませんわ。ティファ、これからボッター商会へ行くのであればわたくしも同行しますわ」

 そういえばアイリス用のミスリル製の鎧が近々届くと言っていたな。
 それが届いているかの確認と、届いていた場合に受け取るためだろう。

「鎧ね。でも届いていたとしても調整に少し時間がかかるんじゃない?」
「問題ありませんわ。わたくしもトミーも【錬金魔法】を使えますもの。作成までは無理だとしても、サイズ調整くらいならおそらく自分で出来ますわ」

 この世界にもミスリルやオリハルコンという金属は存在しているが、鉱山などから発掘されるものでは無い。
 一部の魔物がレアドロップとして落とすそうだ。

 ミスリルは聖銀とも呼ばれていて、武器に加工すれば魔力の乗りやすい武器となり、防具に加工すれば魔力、特に闇属性に対して高い防御力を誇る防具となるらしい。

 オリハルコンは神鉄とも呼ばれているが、硬いだけで特に魔法的な力は備わっていないそうだ。
 しかしその硬度で右に出る金属は存在せず、魔法を扱えるほどの魔力を持たない戦士職からすればオリハルコン製の武具というのは、夢に見るほど憧れるものなのだそうだ。

 どちらの金属も、通常の製法では加工不可能であり、熟練の【錬金魔法】の使い手でないと加工出来ない不思議金属であると教えてもらっている。

 そんな伝説級の金属であるミスリルで造られた鎧を手に入れられるなんて、ボッター商会は大したツテをお持ちのようだ。

 ちなみに俺の作業着だが、オリハルコン製の鎧並みの物理防御力にミスリル製の鎧並みの魔法防御力がある不思議作業着である。
 女神エルリア様がその魔力で創ったものらしいので、大変な性能をしているようだ。

 カッコイイ鎧を着てみたい気持ちはあるのだが、これは言っても仕方ないだろう。

「了解。じゃあとりあえず……朝ごはん食べてから行動しようか」
「賛成ですわ」
「りょーかい、お腹減っちゃった」

 こうして俺たちは各々出発の準備を整え始めた。

 よくよく考えると、俺は特に準備する物も無かったのでとりあえずアイリスとティファリーゼについてボッター商会へと行くことにした。
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