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旅するとみぃ

48話。デーモンバスターズ新規団員

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「トミー、トミーからの質問はありませんの?」
「はえ?」

 気が付けばアイリスの質疑応答は終わっており、俺から何か聞くことは無いのかと尋ねられた。

 ふむ……

 フィルさんは経験豊富な元冒険者で、冒険者のシーフやローグとして必要な技能は満遍なく習得している。
 知識も豊富で、直接的な戦闘以外での俺たちのサポートは過不足無く行ってくれるだろう。
 人柄も温厚で、妻と小さなお子さんが2人いるらしい。
 普段はボッター商会で市場調査などを行っているらしい。

 続いてイリアさんだが、この人はシーフやローグではなくアサシンのようだ。
 故に戦闘力も高く、戦闘面でのアシストという点ではフィルさんやティファリーゼさんよりも上だろう。
 しかしアサシンであるが故か人付き合いはそこまで得意ではなく、情報収集は人に尋ねるのではなく聞き耳を立て、その中から取捨選択を行うタイプそうだ。
 人見知りという話なので、偉い人との折衝は任せられない。
 戦闘面でのサポートは特に必要としていないので、イリアさんはこの時点で不採用かな?

 最後にティファリーゼさんだが、エルフであるため種族特性で非常に長寿であり、目と耳がいい。
 森の民というイメージ通り方向感覚にも優れ、獣や魔物の気配にも敏感。
 50年以上冒険者として活動していたために顔が広く、人とのやり取りにも長けている。
 戦闘面でも魔法と弓での援護が可能であり、俺とアイリスはどちらかと言うと前衛タイプなので、相性は決して悪くない。
 必要か不必要かでいえば特に必要では無いのだが、加点すべきポイントであることは間違いない。
 悪魔との戦いには参戦出来ないだろうが、それ以外の魔物との戦闘では大いに助けになってくれそうだしね。

「じゃあ少しだけ……フィルさんは家庭があるとの事ですが、長期出張は大丈夫ですか?」
「それは家内の同意も得ておりますので大丈夫です。家族に会えないのは寂しいですが、頑張ります」
「そうですか、わかりました」

 正直小さいお子さんのいる人はあまり連れ回したくはない。
 なぜなら日本にいた頃、小さいお子さんの居る先輩が中々家に帰れず、帰る度に知らない人が来たと泣かれると愚痴を零していたからだ。

 最終的には奥さんに寂しかったという理由で不倫されて悲しい結末を迎えてしまったのを見ているから、そういう家庭事情の人を長期間帰れない状況にしてしまうのはちょっと心苦しい……

 その点で言えばイリアさんとティファリーゼさんは独身らしいので問題は無い。

 というよりフィルさんとティファリーゼさんを比べた場合、ティファリーゼさんはフィルさんの上位互換と言えなくもない。

 2人とも経験豊富な元冒険者であるが、冒険者歴は圧倒的にティファリーゼさんの方が長いし、ランクもフィルさんがCランク、ティファリーゼさんがAランクであるためティファリーゼさんの方が高い。

 ファミマトやセブイレン、ロソンにも行ったことがあり、現役時代の知り合いが支部長や組合幹部になっているそうなのでお邪魔した時にはとても話を通しやすいだろう。

「ふむ……」

 そう言った点からも、俺としてはティファリーゼさんを推したいところだが、アイリスはどう考えているのだろうか?

「アイリス、俺は決まったけど、アイリスはどう?」
「わたくしも決めておりますわ。トミーはティファリーゼ様でしょう?」

 おっと、やはり見透かされてしまっていたようだ。
 最近ではアイリスは俺の心が読めるのではないかと危惧している。

「話を聞く限りティファリーゼさんが一番いいと思うんだ」

 決してエルフだからでは無い。あの耳に興味津々だからでは無いのだ。

「わたくしも同じ意見ですわ。ただ、ひとつだけ懸念がありますの」
「懸念?」

 何か問題があっただろうか?
 俺には分からなかったが、人の心が読めるアイリスには何か気になるところがあったのかもしれない。

「少しトミーと相談したいので、席を外しでもよろしいかしら?」
「もちろんです」

 アイリスはボッター氏に離席の許可を取って立ち上がり、リビングの奥隣にある俺の部屋へと入って行った。

 なんで俺の部屋なんだよ……

「ちょっと失礼します」

 俺も一言断ってから席を立ち、アイリスを追いかける。
 聞き耳立てられないように俺の部屋で話すのは構わないけど、せめて一言くらい欲しかった。

「それで懸念って?」

 それは言っても無駄なことは分かっているのであえてスルーして話の続きを促す。

「風の結界を張りますので少々お待ちを……これでいいですわ」

 扉を閉めただけでは不安が残るのか、アイリスは風魔法を起動して声が漏れないようにしてから話し始めた。

「トミー、ティファリーゼ様に惚れましたの?」
「俺が? ティファリーゼさんに? なんで?」

 惚れるって恋愛的な意味でだよね?
 全く1ミリたりともそんな気持ちは無いのだけど、急にどうしたのだろうか?

「えらく見惚れていましたので」
「そんな見てたかな?」

 いや、見てたな。間違いなくガン見していたな。

 まさかエルフを生で見られるとは思っていなかったから、間違いなく見つめ倒していたな。

「それで……どうなんですの?」
「全くもってこれっぽっちもそんなつもりは無いね」

 言ってしまえば初めて見る物に興味があっただけである。
 子供が初めての動物園で初めて見るゾウさんに夢中になるのと同じ感じであると言えばわかりやすいかな?
 この世界に動物園はない気がするけど。

「んー……初めて見たから興味を惹かれたのは事実だけど、惚れた腫れたは一切無いよ」
「本当ですの?」
「本当ですの。俺の住んでた世界のエルフは想像上の存在だからね。そんな存在に出会ったら興味を惹かれても仕方ないと思うんだ」

 ティファリーゼさんは女性だけど、ティファリーゼさんではなくて男性エルフだったとしても同じくらい見たと思うよ。

「そうですのね、分かりましたわ」
「うん。それで懸念は?」
「解決しましたわ」

 え? もう? なんだったの?

 もしかして……いや、流石にないよね。
 アイリスは18歳、対して俺はアラフォー。ナイナイ。

 多分小説とかアニメでよく見る冒険者パーティ内での恋愛は御法度とかそういうやつだろう。
 うん、その方がしっくりくる。

「さぁ戻りますわよ」
「あ、ちょっと待ってよ」

 アイリスはさっさと風の結界を解除してリビングへと戻ってしまった。
 仕方ない、俺も早く戻ろう。

 こうしてこの日、俺たちデーモンバスターズにエルフの射手、ティファリーゼさんが加入するのとになった。
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