49 / 85
旅するとみぃ
48話。デーモンバスターズ新規団員
しおりを挟む
「トミー、トミーからの質問はありませんの?」
「はえ?」
気が付けばアイリスの質疑応答は終わっており、俺から何か聞くことは無いのかと尋ねられた。
ふむ……
フィルさんは経験豊富な元冒険者で、冒険者のシーフやローグとして必要な技能は満遍なく習得している。
知識も豊富で、直接的な戦闘以外での俺たちのサポートは過不足無く行ってくれるだろう。
人柄も温厚で、妻と小さなお子さんが2人いるらしい。
普段はボッター商会で市場調査などを行っているらしい。
続いてイリアさんだが、この人はシーフやローグではなくアサシンのようだ。
故に戦闘力も高く、戦闘面でのアシストという点ではフィルさんやティファリーゼさんよりも上だろう。
しかしアサシンであるが故か人付き合いはそこまで得意ではなく、情報収集は人に尋ねるのではなく聞き耳を立て、その中から取捨選択を行うタイプそうだ。
人見知りという話なので、偉い人との折衝は任せられない。
戦闘面でのサポートは特に必要としていないので、イリアさんはこの時点で不採用かな?
最後にティファリーゼさんだが、エルフであるため種族特性で非常に長寿であり、目と耳がいい。
森の民というイメージ通り方向感覚にも優れ、獣や魔物の気配にも敏感。
50年以上冒険者として活動していたために顔が広く、人とのやり取りにも長けている。
戦闘面でも魔法と弓での援護が可能であり、俺とアイリスはどちらかと言うと前衛タイプなので、相性は決して悪くない。
必要か不必要かでいえば特に必要では無いのだが、加点すべきポイントであることは間違いない。
悪魔との戦いには参戦出来ないだろうが、それ以外の魔物との戦闘では大いに助けになってくれそうだしね。
「じゃあ少しだけ……フィルさんは家庭があるとの事ですが、長期出張は大丈夫ですか?」
「それは家内の同意も得ておりますので大丈夫です。家族に会えないのは寂しいですが、頑張ります」
「そうですか、わかりました」
正直小さいお子さんのいる人はあまり連れ回したくはない。
なぜなら日本にいた頃、小さいお子さんの居る先輩が中々家に帰れず、帰る度に知らない人が来たと泣かれると愚痴を零していたからだ。
最終的には奥さんに寂しかったという理由で不倫されて悲しい結末を迎えてしまったのを見ているから、そういう家庭事情の人を長期間帰れない状況にしてしまうのはちょっと心苦しい……
その点で言えばイリアさんとティファリーゼさんは独身らしいので問題は無い。
というよりフィルさんとティファリーゼさんを比べた場合、ティファリーゼさんはフィルさんの上位互換と言えなくもない。
2人とも経験豊富な元冒険者であるが、冒険者歴は圧倒的にティファリーゼさんの方が長いし、ランクもフィルさんがCランク、ティファリーゼさんがAランクであるためティファリーゼさんの方が高い。
ファミマトやセブイレン、ロソンにも行ったことがあり、現役時代の知り合いが支部長や組合幹部になっているそうなのでお邪魔した時にはとても話を通しやすいだろう。
「ふむ……」
そう言った点からも、俺としてはティファリーゼさんを推したいところだが、アイリスはどう考えているのだろうか?
「アイリス、俺は決まったけど、アイリスはどう?」
「わたくしも決めておりますわ。トミーはティファリーゼ様でしょう?」
おっと、やはり見透かされてしまっていたようだ。
最近ではアイリスは俺の心が読めるのではないかと危惧している。
「話を聞く限りティファリーゼさんが一番いいと思うんだ」
決してエルフだからでは無い。あの耳に興味津々だからでは無いのだ。
「わたくしも同じ意見ですわ。ただ、ひとつだけ懸念がありますの」
「懸念?」
何か問題があっただろうか?
俺には分からなかったが、人の心が読めるアイリスには何か気になるところがあったのかもしれない。
「少しトミーと相談したいので、席を外しでもよろしいかしら?」
「もちろんです」
アイリスはボッター氏に離席の許可を取って立ち上がり、リビングの奥隣にある俺の部屋へと入って行った。
なんで俺の部屋なんだよ……
「ちょっと失礼します」
俺も一言断ってから席を立ち、アイリスを追いかける。
聞き耳立てられないように俺の部屋で話すのは構わないけど、せめて一言くらい欲しかった。
「それで懸念って?」
それは言っても無駄なことは分かっているのであえてスルーして話の続きを促す。
「風の結界を張りますので少々お待ちを……これでいいですわ」
扉を閉めただけでは不安が残るのか、アイリスは風魔法を起動して声が漏れないようにしてから話し始めた。
「トミー、ティファリーゼ様に惚れましたの?」
「俺が? ティファリーゼさんに? なんで?」
惚れるって恋愛的な意味でだよね?
全く1ミリたりともそんな気持ちは無いのだけど、急にどうしたのだろうか?
「えらく見惚れていましたので」
「そんな見てたかな?」
いや、見てたな。間違いなくガン見していたな。
まさかエルフを生で見られるとは思っていなかったから、間違いなく見つめ倒していたな。
「それで……どうなんですの?」
「全くもってこれっぽっちもそんなつもりは無いね」
言ってしまえば初めて見る物に興味があっただけである。
子供が初めての動物園で初めて見るゾウさんに夢中になるのと同じ感じであると言えばわかりやすいかな?
この世界に動物園はない気がするけど。
「んー……初めて見たから興味を惹かれたのは事実だけど、惚れた腫れたは一切無いよ」
「本当ですの?」
「本当ですの。俺の住んでた世界のエルフは想像上の存在だからね。そんな存在に出会ったら興味を惹かれても仕方ないと思うんだ」
ティファリーゼさんは女性だけど、ティファリーゼさんではなくて男性エルフだったとしても同じくらい見たと思うよ。
「そうですのね、分かりましたわ」
「うん。それで懸念は?」
「解決しましたわ」
え? もう? なんだったの?
もしかして……いや、流石にないよね。
アイリスは18歳、対して俺はアラフォー。ナイナイ。
多分小説とかアニメでよく見る冒険者パーティ内での恋愛は御法度とかそういうやつだろう。
うん、その方がしっくりくる。
「さぁ戻りますわよ」
「あ、ちょっと待ってよ」
アイリスはさっさと風の結界を解除してリビングへと戻ってしまった。
仕方ない、俺も早く戻ろう。
こうしてこの日、俺たちデーモンバスターズにエルフの射手、ティファリーゼさんが加入するのとになった。
「はえ?」
気が付けばアイリスの質疑応答は終わっており、俺から何か聞くことは無いのかと尋ねられた。
ふむ……
フィルさんは経験豊富な元冒険者で、冒険者のシーフやローグとして必要な技能は満遍なく習得している。
知識も豊富で、直接的な戦闘以外での俺たちのサポートは過不足無く行ってくれるだろう。
人柄も温厚で、妻と小さなお子さんが2人いるらしい。
普段はボッター商会で市場調査などを行っているらしい。
続いてイリアさんだが、この人はシーフやローグではなくアサシンのようだ。
故に戦闘力も高く、戦闘面でのアシストという点ではフィルさんやティファリーゼさんよりも上だろう。
しかしアサシンであるが故か人付き合いはそこまで得意ではなく、情報収集は人に尋ねるのではなく聞き耳を立て、その中から取捨選択を行うタイプそうだ。
人見知りという話なので、偉い人との折衝は任せられない。
戦闘面でのサポートは特に必要としていないので、イリアさんはこの時点で不採用かな?
最後にティファリーゼさんだが、エルフであるため種族特性で非常に長寿であり、目と耳がいい。
森の民というイメージ通り方向感覚にも優れ、獣や魔物の気配にも敏感。
50年以上冒険者として活動していたために顔が広く、人とのやり取りにも長けている。
戦闘面でも魔法と弓での援護が可能であり、俺とアイリスはどちらかと言うと前衛タイプなので、相性は決して悪くない。
必要か不必要かでいえば特に必要では無いのだが、加点すべきポイントであることは間違いない。
悪魔との戦いには参戦出来ないだろうが、それ以外の魔物との戦闘では大いに助けになってくれそうだしね。
「じゃあ少しだけ……フィルさんは家庭があるとの事ですが、長期出張は大丈夫ですか?」
「それは家内の同意も得ておりますので大丈夫です。家族に会えないのは寂しいですが、頑張ります」
「そうですか、わかりました」
正直小さいお子さんのいる人はあまり連れ回したくはない。
なぜなら日本にいた頃、小さいお子さんの居る先輩が中々家に帰れず、帰る度に知らない人が来たと泣かれると愚痴を零していたからだ。
最終的には奥さんに寂しかったという理由で不倫されて悲しい結末を迎えてしまったのを見ているから、そういう家庭事情の人を長期間帰れない状況にしてしまうのはちょっと心苦しい……
その点で言えばイリアさんとティファリーゼさんは独身らしいので問題は無い。
というよりフィルさんとティファリーゼさんを比べた場合、ティファリーゼさんはフィルさんの上位互換と言えなくもない。
2人とも経験豊富な元冒険者であるが、冒険者歴は圧倒的にティファリーゼさんの方が長いし、ランクもフィルさんがCランク、ティファリーゼさんがAランクであるためティファリーゼさんの方が高い。
ファミマトやセブイレン、ロソンにも行ったことがあり、現役時代の知り合いが支部長や組合幹部になっているそうなのでお邪魔した時にはとても話を通しやすいだろう。
「ふむ……」
そう言った点からも、俺としてはティファリーゼさんを推したいところだが、アイリスはどう考えているのだろうか?
「アイリス、俺は決まったけど、アイリスはどう?」
「わたくしも決めておりますわ。トミーはティファリーゼ様でしょう?」
おっと、やはり見透かされてしまっていたようだ。
最近ではアイリスは俺の心が読めるのではないかと危惧している。
「話を聞く限りティファリーゼさんが一番いいと思うんだ」
決してエルフだからでは無い。あの耳に興味津々だからでは無いのだ。
「わたくしも同じ意見ですわ。ただ、ひとつだけ懸念がありますの」
「懸念?」
何か問題があっただろうか?
俺には分からなかったが、人の心が読めるアイリスには何か気になるところがあったのかもしれない。
「少しトミーと相談したいので、席を外しでもよろしいかしら?」
「もちろんです」
アイリスはボッター氏に離席の許可を取って立ち上がり、リビングの奥隣にある俺の部屋へと入って行った。
なんで俺の部屋なんだよ……
「ちょっと失礼します」
俺も一言断ってから席を立ち、アイリスを追いかける。
聞き耳立てられないように俺の部屋で話すのは構わないけど、せめて一言くらい欲しかった。
「それで懸念って?」
それは言っても無駄なことは分かっているのであえてスルーして話の続きを促す。
「風の結界を張りますので少々お待ちを……これでいいですわ」
扉を閉めただけでは不安が残るのか、アイリスは風魔法を起動して声が漏れないようにしてから話し始めた。
「トミー、ティファリーゼ様に惚れましたの?」
「俺が? ティファリーゼさんに? なんで?」
惚れるって恋愛的な意味でだよね?
全く1ミリたりともそんな気持ちは無いのだけど、急にどうしたのだろうか?
「えらく見惚れていましたので」
「そんな見てたかな?」
いや、見てたな。間違いなくガン見していたな。
まさかエルフを生で見られるとは思っていなかったから、間違いなく見つめ倒していたな。
「それで……どうなんですの?」
「全くもってこれっぽっちもそんなつもりは無いね」
言ってしまえば初めて見る物に興味があっただけである。
子供が初めての動物園で初めて見るゾウさんに夢中になるのと同じ感じであると言えばわかりやすいかな?
この世界に動物園はない気がするけど。
「んー……初めて見たから興味を惹かれたのは事実だけど、惚れた腫れたは一切無いよ」
「本当ですの?」
「本当ですの。俺の住んでた世界のエルフは想像上の存在だからね。そんな存在に出会ったら興味を惹かれても仕方ないと思うんだ」
ティファリーゼさんは女性だけど、ティファリーゼさんではなくて男性エルフだったとしても同じくらい見たと思うよ。
「そうですのね、分かりましたわ」
「うん。それで懸念は?」
「解決しましたわ」
え? もう? なんだったの?
もしかして……いや、流石にないよね。
アイリスは18歳、対して俺はアラフォー。ナイナイ。
多分小説とかアニメでよく見る冒険者パーティ内での恋愛は御法度とかそういうやつだろう。
うん、その方がしっくりくる。
「さぁ戻りますわよ」
「あ、ちょっと待ってよ」
アイリスはさっさと風の結界を解除してリビングへと戻ってしまった。
仕方ない、俺も早く戻ろう。
こうしてこの日、俺たちデーモンバスターズにエルフの射手、ティファリーゼさんが加入するのとになった。
20
お気に入りに追加
372
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
一般人に生まれ変わったはずなのに・・・!
モンド
ファンタジー
第一章「学園編」が終了し第二章「成人貴族編」に突入しました。
突然の事故で命を落とした主人公。
すると異世界の神から転生のチャンスをもらえることに。
それならばとチートな能力をもらって無双・・・いやいや程々の生活がしたいので。
「チートはいりません健康な体と少しばかりの幸運を頂きたい」と、希望し転生した。
転生して成長するほどに人と何か違うことに不信を抱くが気にすることなく異世界に馴染んでいく。
しかしちょっと不便を改善、危険は排除としているうちに何故かえらいことに。
そんな平々凡々を求める男の勘違い英雄譚。
※誤字脱字に乱丁など読みづらいと思いますが、申し訳ありませんがこう言うスタイルなので。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。
大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。
ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。
主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。
マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。
しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。
主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。
これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる