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旅するとみぃ

46話。魔石売却

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「それでは本日の予定なのですが……」

全員が朝食を終え、食後のお茶を飲んでいるとメアリさんが本日の予定について話し始めた。

「本日午後にボッター商会よりクリー・ボッター様がデーモンバスターズに派遣する人員を連れて訪れるとのことです」
「ボッター氏、行動早いな」

この家にしても、メアリさんにしてもそうだが、やけに動きが早い気がする。

まぁ遅いよりは全然いいんだけどね。
いざ悪魔討伐に出発! となった段階で人を紹介されても困るし。

「了解。午前中はなにかある?」
「いえ、特に何もございません」

何も無いか。それなら一度冒険者組合に行っておこうかな?
魔石とかドロップ品とかたくさんあるし、一度売却しておいた方がいいだろう。

「どこかに出掛けますの?」
「うん、一度冒険者組合に行って手持ちの魔石とドロップ品を買い取ってもらおうかと思って」

俺がそう答えると、アイリスは納得したように頷いて返してきた。

「それでしたらわたくしの持っている大森林の素材などの換金もお願いしたいですのわ
「アイリスの? 別に俺は構わないけど……一緒に来ないの?」

俺が冒険者組合に行くと言えばアイリスとシルフィエッタはついてくると思っていたのだけど……自惚れだったのかな?

「魅力的なお誘いですが……今日はシルフィの服を仕立てに行きたいんですの。午後からボッター様が来られるのであれば時間がありませんわ」
「服? 昨日買ったのじゃ足りないの?」

それに仕立てるとは?

「あれは間に合わせですわ。シルフィにはきちんとした服を着せてあげたいと思っていますのよ」
「お姉ちゃん……」

アイリスの言葉を聞いたシルフィエッタが目を輝かせてアイリスを見上げている。

ふむ、シルフィエッタにきちんとしたかわいい服を着せてやりたいというのに否は無い。
それなら別行動にしようか。

「わかった。なら午前中は別行動で」
「ええ。ではこちらをお願いしますわ」

アイリスは自分のマジックバックから草や葉っぱ、石ころの入った袋を大量に取り出してテーブルの上に並べていく。

「え、こんなに?」
「【物質創造】の練習の合間に採取していましたの」
「それは昨日聞いたけども」
「たくさん生えていましたわ」

だろうね。山ほどあるものね。

「まぁ……俺には何の草とかわかんないけど、冒険者組合の買取所に持っていけばいいんだね?」
「ええ。買取所の職員ならわかると思いますわ」

買取所の職員がわかるのならば問題は無い。
今ここでアイリスに説明されても家を出るまで覚えていられる自信もないし。

「よし、じゃあ行ってくるかな」
「シルフィ、わたくしたちも行きましょう」
「はい!」

お茶も飲み終えたので立ち上がると、アイリスたちも一緒に出るようで同時に立ち上がる。

「メアリさん、留守任せて大丈夫ですか?」
「お任せ下さい」

メアリさんに留守を任せて俺は冒険者組合へ、アイリスたちは昨日ボッター商会で聞いていたらしい仕立て屋へと向かっていった。

街を眺めながら歩くこと約15分、冒険者組合の看板が見えてきたので中へと入る。

アイリスから朝の早い時間帯は混み合っていると聞いて覚悟して来たのだが、ピークは過ぎていたらしく冒険者組合の中にはあまり混んではいなかった。

人もまばらな組合内をざっと見渡して買取カウンターを見つけたのでそちらへ足を進める。

「いらっしゃいませ。買取でしょうか?」
「はい。よろしくお願いします」
「かしこまりました。それではこちらにお出しください」

受付嬢がカウンターを指し示したので、腰からマジックバックを取り外し、蓋を開けてから逆さに向ける。
そして、中に入っている魔石だけを取り出すイメージを思い浮かべると中に入っていた魔石が大量にマジックバックから 吐き出された。

「え? え?」
「ああ、すみません」

カウンターから溢れそうになったので慌てて一時停止。
こんなに入っていたとは俺も思わなかった。

「これで……全部ですか?」

絶望したという表情を浮かべる受付嬢の質問になんと答えるか少し悩む。
これだけだと嘘をついてもいいのだけれど、別に嘘つく必要も無いよね?

受付嬢さん、これも貴女のお仕事です。頑張って!

「ええと……まだあると思いますけど……」

俺の返答を聞いた受付嬢の目が死んでしまった。
さすがにその目はちょっと申し訳なくなってしまうぞ……

「とりあえず……これだけお願いします。残りは後日また来ますんで」
「いえ……大丈夫です! 任せてください!」
「そう? ならお願いしようかな?」

死んだ魚のような目をした受付嬢は元気よく全て確認すると言い出した。

この顔はアレだ、三日程まともに寝ていないのにさらに二日間まともに寝られない仕事を押し付けられた時の後輩の顔にそっくりだ。
その顔はやめてくれ、俺の心に刺さる。

「その……一つお願いしてもよろしいでしょうか?」
「なんですか?」

数を数えるのを手伝って欲しいのならもちろん手伝うよ?

「えっと、こちらがF級、こちらがE級、そしてこちらがD級……」

受付嬢は魔石の山からそれぞれの等級の魔石を選び俺の前に並べていく。

「B級、それからこらは……A級!?」
「そのA級っていうのがAランクの魔物の魔石であるならそれはキマイラの魔石ですね」

俺が今まで戦ったAランクの魔物はキマイラだけだからね。
多分3つあるよ。

「もしかして高名な冒険者の方? 失礼ですが、お名前は?」
「トミー・センリです。Cランクです」

マジックバックに入れていた冒険者証を取り出して受付嬢に見せる。

受付嬢は提示された冒険者証と俺の顔、というより髪の色を交互に見てから納得したような表情を浮かべた。

「異世界人の方なのですね! そういえば異世界人の方はとんでもなく強かったり、不思議な力を使うと聞いたことがあります!」
「そうなんですね。俺もまぁそんな感じです」

それなら納得ですと頷いている受付嬢だったが、再び魔石の山が目に入ったのか少しゲンナリした顔に戻ってしまった。

「それでお願いとは?」
「そうでした、一度この山をトミーさんのマジックバックに戻して頂いてからこの並べた魔石を参考にして等級ごとに出していただくことって出来ますか?」
「なるほど、やってみます」

目の前に並べられている等級ごとの見本以外の魔石をマジックバックに収納。
見本の中のF級の魔石を手に取りこれと同じものだけを取り出すイメージで再びマジックバックを逆さにして振ってみる。

「わわわ! 成功です! 早速数えますので、数え終わったら次はE級の魔石をお願いします!」
「わかりました」

受付嬢が魔石を数え終えるのを待ってから今度はE級の魔石を、それを数え終えたらD級の魔石と順番に出していく。

「お……終わりました!」
「お疲れ様でした」
「ありがとうございます! それでは集計しますね!」

受付嬢は数を書いたメモを見ながら計算していく。

「出来ました! トミーさんは魔石の価格はご存知ですか?」
「いえ、知らないです」

等級ごとに仕分けたということは等級ごとに買取価格が違うのだろうとは思っていたが、価格なんて知らない。

「ではご説明致します。F級の魔石は1つ銅貨1枚です。216個ありましたので、銀貨2枚と銅板1枚と銅貨6枚です!」

受付嬢がトレーに9枚の硬貨を並べて差し出してきたのでそれを受け取る。

銅貨216枚で銀貨2枚、銅板1枚、銅貨6枚ということは銅貨10枚で銅板1枚、銅板10枚で銀貨1枚ということか。

昨日の買い物や買い食いをした感じ、大体銅貨1枚で100円前後位の価値があると感じたので、F級の魔石だけで2万円越えといった感じかな?

「続いてE級の魔石です。こちら1つ銅板1枚となります。178個ありましたので、銀板1枚、銀貨7枚、銅板8枚となります!」

ふむふむ、銀貨10枚で銀板1枚となるのか。
えっと、178にゼロ3つ付けたらいい訳だから、17万8000円?

「続きましてD級の魔石は1つ銀貨1枚です! 84個で銀板8枚、銀貨4枚です」

この感じ、等級が1つ上がるごとに価格が10倍になってる感じだね。それくらい俺でもわかる。

その予想は当たっていたようで、続くC級の魔石は61個で金貨6枚と銀板1枚。
B級が29個で金版2枚と金貨9枚。
A級が3つで金版3枚での買取となった。

合計は……たくさん!

「買取は以上でしょうか?」
「そうですね……」

チラリと冒険者組合に備え付けられている時計を見ると、既に11時半を過ぎていた。

これ以上買取をお願いすれば間違いなく昼を過ぎてしまうだろう。

「今日は以上で」
「かしこまりました。またのご利用お待ちしています」

受け取ったお金をマジックバックに放り込み、足早に家へと帰るのだった。








書いてる作者がお金の単位でバグりましたのでまとめてみました。

それに伴い以前に書いていたラビットナイフの売却価格を銀貨1枚→銀板1枚に。

エリオットたちの違約金を銀板5枚に。

トミーがボッター氏に吹っかけた護衛料を金貨10枚(トミーは金版の存在を知らないため)に変更しました。

パッパラパーな作者で申し訳ないです。
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