転生して間もなく乙女ゲーで言うところの悪役令嬢を拾いました。不憫に思い手を差し伸べたらいつの間にか尻に敷かれていました。誰か助けて……

愛飢男

文字の大きさ
上 下
44 / 85
旅するとみぃ

43話。新しい生活

しおりを挟む


「それでは部屋割りを決めましょう」

 パンパンと手を打ち鳴らしながらアイリスが告げる。
 そうだった、今はほっこりする場面じゃなかった。

「わたくしは二階の奥の部屋がいいですわ」

 アイリスは奥の部屋か、それなら俺は適当に……

 って今思い出したけど、アイリスって高位の貴族令嬢だよね?
 今更ながらそんなアイリスと同じ屋根の下で生活するって……不味くない?

「シルフィはどの部屋がいいんですの?」
「えっと、お兄ちゃんが決めてからで……」
「トミーは最後でいいんですの」
「ええ……」

 ふむ、アイリス自身は気にしていないようだし、大丈夫なのかな?

「決められないのならわたくしが決めますわ! シルフィはわたくしの部屋の隣で決まりですの!」
「わ、わかりましたぁ」

 うん、大丈夫ということにしておこう。
 それよりシルフィエッタの部屋も決まったようだし、俺も早く決めないとな。

「それで、トミーはどこにしますの? 二階に一部屋空いていますわよ?」
「んー……そうだなぁ、俺は一階の奥にするよ」

 アイリスは気にしていないし、問題無さそうなのだが、一応抵抗としてアイリスの部屋から一番遠い部屋を選んでおく。

 日当たりはいいけど少し狭いのもポイントだ。
 両親が亡くなってから俺が住んでいたのは6帖1間の築50年ボロアパートだったからね。
 普段はトラックで寝泊まりすることも多いから狭い部屋の方が落ち着くのだ。

「わかりましたわ。それでは各々部屋の確認を終えたらリビングに集合しましょう」
「はい!」
「了解」

 アイリスとシルフィエッタはそれぞれ自分の部屋へと入っていく。
 俺もここに居ても仕方ないので、一階に降りて自分の部屋へと入り改めて中を確認する。

 部屋の中にはベッドに机、タンスが備え付けられており、特に何かを買い足さなくてもこのまま生活出来そうだ。

「トミー、何か必要なものはありますの?」

 タンスを開けてみたり、ベッドの下を覗き込んだりしていると、急に扉が開いてアイリスとシルフィエッタが部屋に入ってきた。

 毎回思うのだけど、そろそろアイリスにはノックをするという文化を教えた方がいい気がする。

「俺は特に無いかな? アイリスとシルフィエッタはなにかある?」
「わたくしたちは服を買いに行きますわ。いつまでもシルフィにこんなボロを着させておくのは嫌ですもの」

 ふむ、服か……
 そういえば俺って全くと言っていいほど服持ってないな。
 この作業服やシャツ、下着に至るまで魔力を流すだけで新品同様に戻るからといって、これから先ここで生活するならほかの服も必要となってくるだろう。

「俺も買おうかな……」
「そうですわね。トミーは毎日それですもの。他にありませんの?」
「ありませんの」

 そういうアイリスだって毎日乗馬服のような服を着ているのだから俺のことは言えないと思う。

「仕方ありませんわね。わたくしが選んであげますから一緒に行きますわよ!」
「マジで?」

 なんとなくイメージだけど、アイリスって買い物めっちゃ長そうだからご遠慮願いたいんだけど。

「その顔はなんですの? 嫌ですの?」
「別に嫌と言うわけでは……」

 どうやら顔に出てしまったらしい。
 これは参った。どうにか上手い言い訳を考えなければ……

 必死に言い訳をひねり出そうと頭を回転させていると、クイクイと服の裾を引っ張られた。
 これ、ちょっと前にもあったな。

「お兄ちゃん……行こう?」
「よし行こうか! お兄ちゃんが何でも買ってあげるからね!」

 懐には余裕があるからね! シルフィエッタに似合いそうな服は片っ端から購入するよ!

「トミー? わたくしの時とは態度が全然違うようですけれど?」
「ちょっと何言ってるか分からない」

アイリスからの口撃を回避しながら三人揃って家を出る。

時間も時間なので、ボッター商会支店に向かうまでの間に売っていた焼き鳥やなにかの肉串を適当に購入して昼食代わりに食べる。

一本銅貨5枚程度だったので、銀貨で買えるだけ買ってやった。
余ったら俺の聖竜さん印のマジックバックに入れておけば何時でも食べられるので問題ない。

「お肉……美味しい」

ハムハムと美味しそうに肉串を頬張るシルフィエッタが大変に可愛らしい。

俺たちに同行するようになってすぐに聞いたのだが、シルフィエッタの実家はとても貧しかったらしく、肉はほとんど食べられなかったそうだ。

それを聞いた俺やアイリスが率先してシルフィエッタに肉を食べさせ続けたので、最近では肉の美味しさを覚えたようだ。

「おなかいっぱいになったか? 食べられるならまだまだあるぞ」
「もうおなかいっぱいです」

シルフィエッタのおなかがいっぱいになったようなので食事を切りあげ残った肉串をマジックバックに入れておく。
小腹が空いた時にでも食べよう。

食事を終えたのでボッター商会へと歩いて移動する。
キョロキョロと街を見ながら歩く俺とシルフィエッタを見てアイリスは苦笑していた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

処理中です...