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旅するとみぃ
40話。スポンサード
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今回助けた報酬としてシルフィエッタを譲り受け、自己紹介などを済ませたタイミングでボッター氏が再び口を開く。
「ところでトミー様方はどちらに向かっておられるのですか?」
「とりあえずエフリッスね」
こやつのせいでアイリスから冷たい視線を受け、肝を冷やしたので多少口調が崩れてしまうのも仕方ない。
ボッター氏はそんな俺の口調を気にもとめず、笑みをさらに深くする。
「それは好都合、よろしければエフリまでの間護衛として雇われませんか? 報酬は望む額をお支払いします」
「望む額って……金貨10枚とか言っちゃいますよ?」
「構いませんよ。では報酬は交易金貨10枚という事で」
少し困らせてやろうかという気持ちを込めた冗談だったのだが、受け入れられてしまった。
これでは冗談ですとは家なくなってしまう。
「え、ちょ、マジですか?」
「ええ。前払いの方がよろしいですか?」
「ちょ! ちょっと待って!」
嬉しそうな笑顔を浮かべマジックバックから金貨の入っているであろう袋を取り出すボッター氏をなんとか制止してアイリスに助けてと視線を飛ばす。
「諦めなさいな。ボッター様から依頼をしたいと言われ、トミーは報酬を提示しましたわ。それをボッター様が受け入れたのです。契約は成立していますわ」
「それはそうかもだけど……」
口約束だって立派な約束だものね。
「何かしらの裏があることは間違いないでしょうが、受けてしまったものは仕方ありませんわ」
「ごめんなさい」
「リーダー判断です。構いませんわ。ただし、今後はもう少し気をつけて欲しいものですわね」
「はい……以後気をつけます……」
「まぁボッター商会はファミマトやセブイレンにも支店を持つ大商会、そこまで変なことは言われないとは思いますが、覚悟はしておいた方がいいですわね」
「はい……」
自然と肩が落ちる。
軽い冗談のつもりで発した言葉がおおごとになってしまうということは肝に銘じておこう。
「まぁその辺のお話も移動しながらしますので。では出発しましょうか」
エリオットたちが馬車の故障が無いかの確認を終えたらしく、ボッター氏が出発を宣言する。
最終目的地はエフリだが、今日はセターン国の領土に入ってすぐの村で宿泊予定とのこと。
あまり時間を浪費していると日が落ちるまでにたどり着けなくなる可能性が出てくるので、早速出発することにした。
「それで、言い値で護衛を依頼するなんて、何か裏があるんですか?」
「それ、直接聞きます?」
考えても分からないし、分からないままいるのもモヤモヤするのでド直球にボッター氏に質問してみると、彼は苦笑を浮かべていた。
「答えられないことでもありませんし、お答えしましょうか」
「お願いします」
どうやら答えてくれるらしい。
アイリスはシルフィエッタと手を繋いで何やら話している。
話しながらも一応こちらの会話にも注意を払っているようだ。
「トミー様とアイリス様……『デーモンバスターズ』のお話は伺っております」
「お……おおぅ」
名乗らなかったのに、やはり知っていたようだ。
他人から面と向かってデーモンバスターズと言われると背中がゾワゾワする。
「ファトスでのお話も聞いております。なんでもこれから現れる悪魔の討伐を行われるのだとか?」
「ええ、そうですね」
ボッター氏は確認するように問うてくるので、首肯する。
しかしやけに詳しいな……
「トミー様が伯爵級の悪魔を討伐したことは聞き及んでおります。ですので、我々はデーモンバスターズのスポンサーになりたいのですよ」
「スポンサー?」
スポンサーってお金出してくれる人?
それよりもこのボッター氏、よく知っておられる。
「ええ、スポンサーです。デーモンバスターズは我々ボッター商会のバックアップを受けられる。我々ボッター商会は名前が売れてさらに儲かる。いい事づくめでしょう?」
「それは……まぁ、確かに」
「いかがでしょうか?」
「えっと……具体的に俺たちは何をすればいいんですか?」
「難しいことは何もありません。我々の用意する装備やアイテムを使って悪魔を討伐してください」
「それだけ?」
「あとはもし装備やアイテムをどこで手に入れたのかを聞かれた時にボッター商会から提供されたと答えて頂きたいです」
答えるだけでいいの? もっと大々的に宣伝してくれって話だと思っていたんだけど。
「それと最後に……」
あ、まだあるんだ。
「なんですか?」
「人材をご用意しましょう。先程の会話から優秀なシーフをお求めのご様子、それならばボッター商会から優秀なシーフを派遣しましょう」
「でもシルフィエッタが……」
「彼女は確かに闇属性を持っていますが、シーフやローグとして使いものになるには時間がかかると思われますが?」
「それはそうだけど……」
「マトモな訓練も積んでいないシルフィエッタを連れて行きますか? 私にはトミー様はそれを望んでいないように見えますが」
それはそうだ。
適当な言い訳をしていたらこうなってしまっただけの話なのだ。
子供が戦場に立つ必要なんて無い。
「あの娘は使用人として育てれば良いかと」
「そう……ですね。ちょっとアイリスと相談してみます」
これ以上話していると簡単にスポンサーの話を受けてしまいそうだと思ったので、一旦退散することにした。
アイリスに相談しなくては……
報連相は大切だ。
「ところでトミー様方はどちらに向かっておられるのですか?」
「とりあえずエフリッスね」
こやつのせいでアイリスから冷たい視線を受け、肝を冷やしたので多少口調が崩れてしまうのも仕方ない。
ボッター氏はそんな俺の口調を気にもとめず、笑みをさらに深くする。
「それは好都合、よろしければエフリまでの間護衛として雇われませんか? 報酬は望む額をお支払いします」
「望む額って……金貨10枚とか言っちゃいますよ?」
「構いませんよ。では報酬は交易金貨10枚という事で」
少し困らせてやろうかという気持ちを込めた冗談だったのだが、受け入れられてしまった。
これでは冗談ですとは家なくなってしまう。
「え、ちょ、マジですか?」
「ええ。前払いの方がよろしいですか?」
「ちょ! ちょっと待って!」
嬉しそうな笑顔を浮かべマジックバックから金貨の入っているであろう袋を取り出すボッター氏をなんとか制止してアイリスに助けてと視線を飛ばす。
「諦めなさいな。ボッター様から依頼をしたいと言われ、トミーは報酬を提示しましたわ。それをボッター様が受け入れたのです。契約は成立していますわ」
「それはそうかもだけど……」
口約束だって立派な約束だものね。
「何かしらの裏があることは間違いないでしょうが、受けてしまったものは仕方ありませんわ」
「ごめんなさい」
「リーダー判断です。構いませんわ。ただし、今後はもう少し気をつけて欲しいものですわね」
「はい……以後気をつけます……」
「まぁボッター商会はファミマトやセブイレンにも支店を持つ大商会、そこまで変なことは言われないとは思いますが、覚悟はしておいた方がいいですわね」
「はい……」
自然と肩が落ちる。
軽い冗談のつもりで発した言葉がおおごとになってしまうということは肝に銘じておこう。
「まぁその辺のお話も移動しながらしますので。では出発しましょうか」
エリオットたちが馬車の故障が無いかの確認を終えたらしく、ボッター氏が出発を宣言する。
最終目的地はエフリだが、今日はセターン国の領土に入ってすぐの村で宿泊予定とのこと。
あまり時間を浪費していると日が落ちるまでにたどり着けなくなる可能性が出てくるので、早速出発することにした。
「それで、言い値で護衛を依頼するなんて、何か裏があるんですか?」
「それ、直接聞きます?」
考えても分からないし、分からないままいるのもモヤモヤするのでド直球にボッター氏に質問してみると、彼は苦笑を浮かべていた。
「答えられないことでもありませんし、お答えしましょうか」
「お願いします」
どうやら答えてくれるらしい。
アイリスはシルフィエッタと手を繋いで何やら話している。
話しながらも一応こちらの会話にも注意を払っているようだ。
「トミー様とアイリス様……『デーモンバスターズ』のお話は伺っております」
「お……おおぅ」
名乗らなかったのに、やはり知っていたようだ。
他人から面と向かってデーモンバスターズと言われると背中がゾワゾワする。
「ファトスでのお話も聞いております。なんでもこれから現れる悪魔の討伐を行われるのだとか?」
「ええ、そうですね」
ボッター氏は確認するように問うてくるので、首肯する。
しかしやけに詳しいな……
「トミー様が伯爵級の悪魔を討伐したことは聞き及んでおります。ですので、我々はデーモンバスターズのスポンサーになりたいのですよ」
「スポンサー?」
スポンサーってお金出してくれる人?
それよりもこのボッター氏、よく知っておられる。
「ええ、スポンサーです。デーモンバスターズは我々ボッター商会のバックアップを受けられる。我々ボッター商会は名前が売れてさらに儲かる。いい事づくめでしょう?」
「それは……まぁ、確かに」
「いかがでしょうか?」
「えっと……具体的に俺たちは何をすればいいんですか?」
「難しいことは何もありません。我々の用意する装備やアイテムを使って悪魔を討伐してください」
「それだけ?」
「あとはもし装備やアイテムをどこで手に入れたのかを聞かれた時にボッター商会から提供されたと答えて頂きたいです」
答えるだけでいいの? もっと大々的に宣伝してくれって話だと思っていたんだけど。
「それと最後に……」
あ、まだあるんだ。
「なんですか?」
「人材をご用意しましょう。先程の会話から優秀なシーフをお求めのご様子、それならばボッター商会から優秀なシーフを派遣しましょう」
「でもシルフィエッタが……」
「彼女は確かに闇属性を持っていますが、シーフやローグとして使いものになるには時間がかかると思われますが?」
「それはそうだけど……」
「マトモな訓練も積んでいないシルフィエッタを連れて行きますか? 私にはトミー様はそれを望んでいないように見えますが」
それはそうだ。
適当な言い訳をしていたらこうなってしまっただけの話なのだ。
子供が戦場に立つ必要なんて無い。
「あの娘は使用人として育てれば良いかと」
「そう……ですね。ちょっとアイリスと相談してみます」
これ以上話していると簡単にスポンサーの話を受けてしまいそうだと思ったので、一旦退散することにした。
アイリスに相談しなくては……
報連相は大切だ。
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