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旅するとみぃ
39話。クリー・ボッターと奴隷商会
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「奴隷……スか」
「はい、奴隷でございます! 装備品から食料品や日用品、宝飾品なども取り扱っておりますが、我が商会最大の目玉商品は奴隷にございます」
ニヤニヤとさらに笑みを深くして揉み手まで始めるボッター氏に正直ドン引きである。
そもそも日本人である俺に女子供を金で購入して玩具にする考えなんて持ってないのだ。
あれは創作物だからいいのであって、現実にやれと言われると無理なのだ。
というか冒険者を引き連れて国や村を回って奴隷を集めてるとか……もしかして人狩りや人攫い系の人たちなのだろうか?
だとしたらぶん殴るんだけど……
どうしたものかとアイリスに視線をやると、アイリスは少し嫌そうに眉間に皺を寄せているが、特に何かを言うことは無い。
アイリスが何も言わないってことは人狩りとか人攫いの類では無いのだろうか?
「すみませんボッター氏、俺、こういうの全然詳しくないんですけど、この人たちはどう言った経緯で奴隷になったんですか?」
「この者たちは身売りですね。一般奴隷扱いとなりますので、所有される場合は奴隷の衣食住の面倒を見る義務が生じます」
一般奴隷はってことは一般じゃない奴隷も居るってことか。
この言い方なら一般じゃない奴隷を所有しても衣食住の面倒を見る義務は生じないってことなのかな?
「アイリス、どうしよう」
「何故わたくしに聞きますの?」
困った時はアイリスに相談しようと思って聞いてみると、すごく冷めた目で逆に質問を返された。ちょっと怖い。
「アイリス、怒ってる?」
「別に怒っていませんわ。トミーが欲しいのなら貰えばいいんじゃありませんの?」
「いや、別に欲しいわけじゃ……」
「ならなんでわたくしに聞きましたの? 欲しくないのであればわたくしに聞かずに断ればいいんじゃありませんの?」
「仰る通りなのですが……」
どうしよう、アイリスが冷たい……
「トミーも男性なのですから、一応理解はしますが一度だけ……不潔ですわ」
「うぐ……」
なるほど理解した。
男が女の奴隷を購入するということはそういうことなのだろう。
そして理解するという言葉から察することが出来たのは、これは珍しい話では無いということだろう。
しかし……そうだね。娘視点で父親がそういう目的で奴隷を買おうとしているなんて不潔でしかないよね。
アイリスのジト目に耐えきれずに目を逸らした先では、エリオットたちがなんとも言えない表情を浮かべながら俺たちのやりとりを聞いているようだった。
なんだよ、言いたいことがあるのなら言いなさいよ。
「別にそんなつもりは無いんだよ?」
「ではどういうおつもりでしたの?」
「いやね? えっとね……」
「やはり……」
「違うんです! えっと……あの……そう、仲間! 仲間として迎え入れられないかなと思いまして!」
「仲間……ですの?」
これだ。これしかない。
頑張れ俺の脳みそ、普段働かないんだから今こそ働け。
いい言い訳を思いつけ。
「そう、仲間! 俺たちの目的ってアレでしょ? 二人じゃ手が回らないこともあるかもしれないし、仲間を増やして損は無いと思うのですがいかがでしょうか?」
「つまりそういった意味では無いと仰りたいのでしょうか?」
「その通りです!」
イケる。これはイケそうだ。
「ではどのような仲間が必要だと思いますの? わたくしもトミーも光、聖属性持ちで近接でも遠距離でも戦えますわ。新しい仲間にどのような役割を求めていますの?」
「それは……」
ゲームはそれなりに、あくまでそれなりにやってきた俺の考える最強のパーティ(笑)は……
物理アタッカー、魔法アタッカー、ヒーラー、タンク……
あれ? 俺とアイリスで全部賄えちゃうな……
あと足りないのは……
「斥候?」
「せっこう……なんですのそれ?」
あれ? ピンと来て無いな。
斥候ってこの世界では一般的じゃないのかな。
「えっと……索敵したり、トラップを仕掛けたり解除したりとかそんな感じ」
「シーフやローグのようなものですの?」
「そんな感じ」
ローグは知らんけど、シーフなら分かる。
まさにそんな感じの仲間が必要になると思うんだ。
「なるほど……確かにわたくしとトミーなら戦闘に関しては問題ありませんが、戦闘以外の面という意味では他に仲間が居た方が助かりますわね……」
「でしょう?」
よし、勝った! 俺の勝ちだ!
「話はわかりましたわ。ところでそれは女性である必要はありますの?」
「ありません。たまたま偶然ここに女性しか居なかっただけの話であり俺の意図するところではありません」
馬車の中に女性しか居ないのは俺のせいでは無い。
「わかりましたわ。納得しておきます」
「ありがとうございます!」
「では……」
アイリスは俺から視線を外してボッター氏へと顔を向ける。
「ボッターさん、この中に闇属性持ちはいらっしゃいますの?」
「闇属性ですか……少々お待ちください」
ボッター氏はマジックバックから資料を取り出して捲り始めた。
「一人おります。この者ですね」
ボッター氏が指し示したのは10歳を少し過ぎたくらいの小さな女の子であった。
「魔力量は大したことありませんが、火と闇の二属性ですね」
「ではその子を頂けますか?」
「かしこまりました」
ボッター氏は恭しく頭を下げてから、馬車の中から女の子を一人連れ出して来る。
「では契約を……トミー様とアイリス様、どちらが所有されますか?」
「ではわたくしが」
「かしこまりました」
蚊帳の外に置かれた俺が二人のやり取りを眺めていると、ボッター氏がまた別の用紙をマジックバックから取り出してアイリスへと手渡した。
「こちらがこの者との契約書となります。確認頂けましたら血を一滴垂らしてください」
「了解ですわ」
アイリスは契約書に目を通してからナイフを取り出して自分の指先に小さな切り傷を付け契約書に血を垂らした。
「確かに。では……」
ボッター氏はその契約書を受け取り、魔力を込める。
するとボッター氏から契約書に黒い魔力が流れ込み、そこから女の子へと黒い魔力が伸びていく。
「契約が成立致しました」
「ご苦労さまですわ」
アイリスは契約書を受け取り、女の子へと近付いて行く。
「貴女、お名前は?」
「し……シルフィエッタです……」
「シルフィエッタ、わたくしが貴女の所有者となったアイリス・フォン・イルドラースですわ」
「よろしくお願いします。ご主人様……」
オドオドしながらも女の子はアイリスと自己紹介を交わしている。
イルドラースの家名を聞いたエリオットたちは目を見開いて驚いているが、ボッター氏は表情を崩さずニコニコしたままだ。
これは気付いていたっぽいな……
アイリスも紋章を見ただけでボッター商会の馬車だと分かっていたし、もしかしたら実家にいた頃にお付き合いがあったのかもしれない。
「シル、こちらはわたくしの仲間であるトミーですわ。トミーの命令はわたくしの命令と思い従いなさい」
「かしこまりました……」
「それと、よ……夜の奉仕に関しては断って構いませんわ」
「かしこまりました!」
「頼まないよ!」
まったく、一体何を言い含めているのだろうか。
こうして言い逃れをしているうちに新しい仲間を迎え入れることになってしまった。
小さな女の子だし、この子も娘と思って接していこうと思いました。
「はい、奴隷でございます! 装備品から食料品や日用品、宝飾品なども取り扱っておりますが、我が商会最大の目玉商品は奴隷にございます」
ニヤニヤとさらに笑みを深くして揉み手まで始めるボッター氏に正直ドン引きである。
そもそも日本人である俺に女子供を金で購入して玩具にする考えなんて持ってないのだ。
あれは創作物だからいいのであって、現実にやれと言われると無理なのだ。
というか冒険者を引き連れて国や村を回って奴隷を集めてるとか……もしかして人狩りや人攫い系の人たちなのだろうか?
だとしたらぶん殴るんだけど……
どうしたものかとアイリスに視線をやると、アイリスは少し嫌そうに眉間に皺を寄せているが、特に何かを言うことは無い。
アイリスが何も言わないってことは人狩りとか人攫いの類では無いのだろうか?
「すみませんボッター氏、俺、こういうの全然詳しくないんですけど、この人たちはどう言った経緯で奴隷になったんですか?」
「この者たちは身売りですね。一般奴隷扱いとなりますので、所有される場合は奴隷の衣食住の面倒を見る義務が生じます」
一般奴隷はってことは一般じゃない奴隷も居るってことか。
この言い方なら一般じゃない奴隷を所有しても衣食住の面倒を見る義務は生じないってことなのかな?
「アイリス、どうしよう」
「何故わたくしに聞きますの?」
困った時はアイリスに相談しようと思って聞いてみると、すごく冷めた目で逆に質問を返された。ちょっと怖い。
「アイリス、怒ってる?」
「別に怒っていませんわ。トミーが欲しいのなら貰えばいいんじゃありませんの?」
「いや、別に欲しいわけじゃ……」
「ならなんでわたくしに聞きましたの? 欲しくないのであればわたくしに聞かずに断ればいいんじゃありませんの?」
「仰る通りなのですが……」
どうしよう、アイリスが冷たい……
「トミーも男性なのですから、一応理解はしますが一度だけ……不潔ですわ」
「うぐ……」
なるほど理解した。
男が女の奴隷を購入するということはそういうことなのだろう。
そして理解するという言葉から察することが出来たのは、これは珍しい話では無いということだろう。
しかし……そうだね。娘視点で父親がそういう目的で奴隷を買おうとしているなんて不潔でしかないよね。
アイリスのジト目に耐えきれずに目を逸らした先では、エリオットたちがなんとも言えない表情を浮かべながら俺たちのやりとりを聞いているようだった。
なんだよ、言いたいことがあるのなら言いなさいよ。
「別にそんなつもりは無いんだよ?」
「ではどういうおつもりでしたの?」
「いやね? えっとね……」
「やはり……」
「違うんです! えっと……あの……そう、仲間! 仲間として迎え入れられないかなと思いまして!」
「仲間……ですの?」
これだ。これしかない。
頑張れ俺の脳みそ、普段働かないんだから今こそ働け。
いい言い訳を思いつけ。
「そう、仲間! 俺たちの目的ってアレでしょ? 二人じゃ手が回らないこともあるかもしれないし、仲間を増やして損は無いと思うのですがいかがでしょうか?」
「つまりそういった意味では無いと仰りたいのでしょうか?」
「その通りです!」
イケる。これはイケそうだ。
「ではどのような仲間が必要だと思いますの? わたくしもトミーも光、聖属性持ちで近接でも遠距離でも戦えますわ。新しい仲間にどのような役割を求めていますの?」
「それは……」
ゲームはそれなりに、あくまでそれなりにやってきた俺の考える最強のパーティ(笑)は……
物理アタッカー、魔法アタッカー、ヒーラー、タンク……
あれ? 俺とアイリスで全部賄えちゃうな……
あと足りないのは……
「斥候?」
「せっこう……なんですのそれ?」
あれ? ピンと来て無いな。
斥候ってこの世界では一般的じゃないのかな。
「えっと……索敵したり、トラップを仕掛けたり解除したりとかそんな感じ」
「シーフやローグのようなものですの?」
「そんな感じ」
ローグは知らんけど、シーフなら分かる。
まさにそんな感じの仲間が必要になると思うんだ。
「なるほど……確かにわたくしとトミーなら戦闘に関しては問題ありませんが、戦闘以外の面という意味では他に仲間が居た方が助かりますわね……」
「でしょう?」
よし、勝った! 俺の勝ちだ!
「話はわかりましたわ。ところでそれは女性である必要はありますの?」
「ありません。たまたま偶然ここに女性しか居なかっただけの話であり俺の意図するところではありません」
馬車の中に女性しか居ないのは俺のせいでは無い。
「わかりましたわ。納得しておきます」
「ありがとうございます!」
「では……」
アイリスは俺から視線を外してボッター氏へと顔を向ける。
「ボッターさん、この中に闇属性持ちはいらっしゃいますの?」
「闇属性ですか……少々お待ちください」
ボッター氏はマジックバックから資料を取り出して捲り始めた。
「一人おります。この者ですね」
ボッター氏が指し示したのは10歳を少し過ぎたくらいの小さな女の子であった。
「魔力量は大したことありませんが、火と闇の二属性ですね」
「ではその子を頂けますか?」
「かしこまりました」
ボッター氏は恭しく頭を下げてから、馬車の中から女の子を一人連れ出して来る。
「では契約を……トミー様とアイリス様、どちらが所有されますか?」
「ではわたくしが」
「かしこまりました」
蚊帳の外に置かれた俺が二人のやり取りを眺めていると、ボッター氏がまた別の用紙をマジックバックから取り出してアイリスへと手渡した。
「こちらがこの者との契約書となります。確認頂けましたら血を一滴垂らしてください」
「了解ですわ」
アイリスは契約書に目を通してからナイフを取り出して自分の指先に小さな切り傷を付け契約書に血を垂らした。
「確かに。では……」
ボッター氏はその契約書を受け取り、魔力を込める。
するとボッター氏から契約書に黒い魔力が流れ込み、そこから女の子へと黒い魔力が伸びていく。
「契約が成立致しました」
「ご苦労さまですわ」
アイリスは契約書を受け取り、女の子へと近付いて行く。
「貴女、お名前は?」
「し……シルフィエッタです……」
「シルフィエッタ、わたくしが貴女の所有者となったアイリス・フォン・イルドラースですわ」
「よろしくお願いします。ご主人様……」
オドオドしながらも女の子はアイリスと自己紹介を交わしている。
イルドラースの家名を聞いたエリオットたちは目を見開いて驚いているが、ボッター氏は表情を崩さずニコニコしたままだ。
これは気付いていたっぽいな……
アイリスも紋章を見ただけでボッター商会の馬車だと分かっていたし、もしかしたら実家にいた頃にお付き合いがあったのかもしれない。
「シル、こちらはわたくしの仲間であるトミーですわ。トミーの命令はわたくしの命令と思い従いなさい」
「かしこまりました……」
「それと、よ……夜の奉仕に関しては断って構いませんわ」
「かしこまりました!」
「頼まないよ!」
まったく、一体何を言い含めているのだろうか。
こうして言い逃れをしているうちに新しい仲間を迎え入れることになってしまった。
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