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旅するとみぃ
37話。なんちゃって聖女アイリス
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「大丈夫ですの?」
「うん、大丈夫。ありがとう」
目の前のグレーウルフを処理して貰えたので、すぐさま立ち上がり戦闘を開始。
高濃度の光属性の魔力を纏った俺と拳は触れるだけでグレーウルフを黒いモヤへと変えていく。
「逃がしませんわ! 『ホーリーレイ』」
手当り次第に仲間を黒いモヤに変えていく俺に恐れをなしたのか、少し離れた位置に居たグレーウルフは逃走を開始。
しかしアイリスが見逃す訳もなく、アイリスから放たれた白い光線が次々と逃げるグレーウルフを貫いて黒いモヤへと変えていった。
なにそれすごい……
「あ……ありがとうございます。おかげさまで助かりました」
全てのグレーウルフを倒し終え、馬車に近付くと全身傷だらけな戦士風の男が一歩前に出てきて俺たちに向けて頭を下げた。
「酷い怪我ですわね。大丈夫ですの?」
「ええ、なんとか……」
戦士風の男は力なく笑う。
多分だけど、血を流しすぎて倦怠感が半端ないんじゃないかな?
「ポーションは持ってないんですの?」
「チームで用意していたものは使い切ってしまいまして……」
手持ちは無いのか。
「この馬車は『ボッター商会』の馬車でしょう? 積んでいませんの?」
「積んでありますが、ボッターさんが気絶しているので勝手に使う訳にもいかず……」
そりゃ勝手に使う訳にはいかないよね。
でも緊急事態っぽいし、仕方ないのでは?
「ですので余っていたらでいいのですが、売って頂けないでしょうか?」
「残念ですが……わたくしたちポーションは持っておりませんの」
「そうですか……」
戦士風の男はガックリと肩を落とした。
「ねぇアイリス」
「なんですの?」
俺は気になったので何故勝手に使ってしまわないのかをアイリスに尋ねてみた。
「簡単なお話ですわ。ポーションは割れやすいからマジックバックに入れて運ぶ事が多いのですわ。だからボッター商会の方が気絶しているから取り出せないのですわ」
「ということはマジックバックって本人以外に出し入れ出来ないの?」
「知らなかったのですか?」
そうなんだ……
聖竜さん何も言ってなかったよ……教えておいてくれよ……
「まぁそれはわかったよ。それで、ポーションていくらくらい? 効能は?」
「相場としては交易銀貨3枚くらいですわね。効能は……あの方の傷なら3本は必要ですわね」
結構な傷だけど、あれ治すのに3本も必要なのか……
「んじゃ交易銀貨3枚で回復魔法使ってあげてもいいかな?」
「隠すつもりがないのであれば良いと思いますわよ」
「隠してもどうせ何時かバレる」
そもそもアイリスが隠すつもり無いタイプでしょうに……
「それもそうですわね。それなら練習のためにわたくしがやりますわ」
「そう?」
「ええ。光属性攻撃魔法は慣れてきましたけど、回復魔法はまだ使っていませんもの」
確かにアイリスが光属性を使えるようになってから回復魔法を使う機会は無かったものね。
俺が頷くと、アイリスは男に向き直り交渉を始めた。
「ポーションはありませんが、交易銀貨3枚で怪我は治してさしあげますわ」
「怪我を……? どうやって?」
「魔法ですわ。わたくし、光属性の魔法が使えますの」
アイリスは胸を張ってドヤ顔で告げる。
ほら、隠す気皆無じゃん。
「光属性魔法……もしかして、聖女様なのですか?」
「違いますわね」
「違う? 聖女じゃないのに光属性を使える……?」
男は混乱しているようだ。
確かにアイリスはあまり聖女っぽくは無いな。
聖女なんて柄じゃない。もっとイケイケな感じ。
それこそ「聖騎士」なんてピッタリなんじゃないかと思えてくるね。
「わたくしが聖女かどうかなんてどうでもいいのですわ。それで、治しますの?」
「え……あ、はい。お願いします」
「動かないでくださいまし」
アイリスは男に向けて手をかざし、魔力を高めていく。
「『ヒール』ですわ」
アイリスがキーワードを唱えると同時、手のひらから淡い光が放たれて男を包み込む。
「おお……暖かい……」
男は気持ちがいいのか、目を閉じて安らかな表情を浮かべている。
なんだろう、なんだか知らないけどなんか腹立つな。
竜の血を原液でぶっ掛けてやろうか。
「終わりましたわ」
「ありがとうございます! あの、もしよろしければお名前を――」
「交易銀貨3枚ですわ」
男は感動のあまりお礼を言いながらアイリスの手を握ろうとするが、アイリスは冷たい声で支払いを求める。
男は一瞬固まるが、すぐに腰に着けたポーチから銀貨を取り出してアイリスへと手渡した。
良かったね。あのまま手を握ってたらパンチしてたかもしれないよ?
命拾いしたね。
「それで……」
「貴方、他に仲間は居ませんの?」
男が口を開こうとするが、それをアイリスが遮る。
なんだかちょっと嫌そうな顔をしているな、なんだかイライラが少し収まった気がする。
「仲間……居ます」
「怪我はしてませんの?」
「怪我……してます」
「一人交易銀貨4枚ですわ。どうしますの?」
「お願いします」
シレッと値上げしたな。この商売上手め。
「それで、どこに居ますの? 人数は?」
「三人です。こちらです」
男に案内されて馬車の影へと移動すると、そこには倒れた恰幅のいい若者を囲うように三人の冒険者風な男女が座り込んでいた。
倒れているのがボッター商会の人で、周りの人たちがこの戦士風な奴のお仲間さんだろう。
戦士風の男に軽装で弓を持った女性、魔法使いっぽいローブを着た男と戦士風の男よりもゴツイ鎧を身に付けた大柄な女性の四人パーティのようだ。
男女混合四人パーティか、付き合ったりしてるのかな?
付き合っている、いないは置いておいて、なんだかアイリスに男が治療されているのを見るのはなんだか嫌だ。
「アイリス、男は俺が引き受けるよ」
「別に問題ありませんが……」
「俺にも練習させてよ。あとお小遣い稼ぎ」
「はぁ……わかりましたわ」
よし、これで魔法使いっぽいのは俺が治療出来る。
イライラしなくて済むし、お小遣い稼ぎにもなるし一石二鳥だね。
……なんだか情緒不安定だな、治療している間に落ち着こう。
自分に回復魔法掛けたら落ち着くかな?
「うん、大丈夫。ありがとう」
目の前のグレーウルフを処理して貰えたので、すぐさま立ち上がり戦闘を開始。
高濃度の光属性の魔力を纏った俺と拳は触れるだけでグレーウルフを黒いモヤへと変えていく。
「逃がしませんわ! 『ホーリーレイ』」
手当り次第に仲間を黒いモヤに変えていく俺に恐れをなしたのか、少し離れた位置に居たグレーウルフは逃走を開始。
しかしアイリスが見逃す訳もなく、アイリスから放たれた白い光線が次々と逃げるグレーウルフを貫いて黒いモヤへと変えていった。
なにそれすごい……
「あ……ありがとうございます。おかげさまで助かりました」
全てのグレーウルフを倒し終え、馬車に近付くと全身傷だらけな戦士風の男が一歩前に出てきて俺たちに向けて頭を下げた。
「酷い怪我ですわね。大丈夫ですの?」
「ええ、なんとか……」
戦士風の男は力なく笑う。
多分だけど、血を流しすぎて倦怠感が半端ないんじゃないかな?
「ポーションは持ってないんですの?」
「チームで用意していたものは使い切ってしまいまして……」
手持ちは無いのか。
「この馬車は『ボッター商会』の馬車でしょう? 積んでいませんの?」
「積んでありますが、ボッターさんが気絶しているので勝手に使う訳にもいかず……」
そりゃ勝手に使う訳にはいかないよね。
でも緊急事態っぽいし、仕方ないのでは?
「ですので余っていたらでいいのですが、売って頂けないでしょうか?」
「残念ですが……わたくしたちポーションは持っておりませんの」
「そうですか……」
戦士風の男はガックリと肩を落とした。
「ねぇアイリス」
「なんですの?」
俺は気になったので何故勝手に使ってしまわないのかをアイリスに尋ねてみた。
「簡単なお話ですわ。ポーションは割れやすいからマジックバックに入れて運ぶ事が多いのですわ。だからボッター商会の方が気絶しているから取り出せないのですわ」
「ということはマジックバックって本人以外に出し入れ出来ないの?」
「知らなかったのですか?」
そうなんだ……
聖竜さん何も言ってなかったよ……教えておいてくれよ……
「まぁそれはわかったよ。それで、ポーションていくらくらい? 効能は?」
「相場としては交易銀貨3枚くらいですわね。効能は……あの方の傷なら3本は必要ですわね」
結構な傷だけど、あれ治すのに3本も必要なのか……
「んじゃ交易銀貨3枚で回復魔法使ってあげてもいいかな?」
「隠すつもりがないのであれば良いと思いますわよ」
「隠してもどうせ何時かバレる」
そもそもアイリスが隠すつもり無いタイプでしょうに……
「それもそうですわね。それなら練習のためにわたくしがやりますわ」
「そう?」
「ええ。光属性攻撃魔法は慣れてきましたけど、回復魔法はまだ使っていませんもの」
確かにアイリスが光属性を使えるようになってから回復魔法を使う機会は無かったものね。
俺が頷くと、アイリスは男に向き直り交渉を始めた。
「ポーションはありませんが、交易銀貨3枚で怪我は治してさしあげますわ」
「怪我を……? どうやって?」
「魔法ですわ。わたくし、光属性の魔法が使えますの」
アイリスは胸を張ってドヤ顔で告げる。
ほら、隠す気皆無じゃん。
「光属性魔法……もしかして、聖女様なのですか?」
「違いますわね」
「違う? 聖女じゃないのに光属性を使える……?」
男は混乱しているようだ。
確かにアイリスはあまり聖女っぽくは無いな。
聖女なんて柄じゃない。もっとイケイケな感じ。
それこそ「聖騎士」なんてピッタリなんじゃないかと思えてくるね。
「わたくしが聖女かどうかなんてどうでもいいのですわ。それで、治しますの?」
「え……あ、はい。お願いします」
「動かないでくださいまし」
アイリスは男に向けて手をかざし、魔力を高めていく。
「『ヒール』ですわ」
アイリスがキーワードを唱えると同時、手のひらから淡い光が放たれて男を包み込む。
「おお……暖かい……」
男は気持ちがいいのか、目を閉じて安らかな表情を浮かべている。
なんだろう、なんだか知らないけどなんか腹立つな。
竜の血を原液でぶっ掛けてやろうか。
「終わりましたわ」
「ありがとうございます! あの、もしよろしければお名前を――」
「交易銀貨3枚ですわ」
男は感動のあまりお礼を言いながらアイリスの手を握ろうとするが、アイリスは冷たい声で支払いを求める。
男は一瞬固まるが、すぐに腰に着けたポーチから銀貨を取り出してアイリスへと手渡した。
良かったね。あのまま手を握ってたらパンチしてたかもしれないよ?
命拾いしたね。
「それで……」
「貴方、他に仲間は居ませんの?」
男が口を開こうとするが、それをアイリスが遮る。
なんだかちょっと嫌そうな顔をしているな、なんだかイライラが少し収まった気がする。
「仲間……居ます」
「怪我はしてませんの?」
「怪我……してます」
「一人交易銀貨4枚ですわ。どうしますの?」
「お願いします」
シレッと値上げしたな。この商売上手め。
「それで、どこに居ますの? 人数は?」
「三人です。こちらです」
男に案内されて馬車の影へと移動すると、そこには倒れた恰幅のいい若者を囲うように三人の冒険者風な男女が座り込んでいた。
倒れているのがボッター商会の人で、周りの人たちがこの戦士風な奴のお仲間さんだろう。
戦士風の男に軽装で弓を持った女性、魔法使いっぽいローブを着た男と戦士風の男よりもゴツイ鎧を身に付けた大柄な女性の四人パーティのようだ。
男女混合四人パーティか、付き合ったりしてるのかな?
付き合っている、いないは置いておいて、なんだかアイリスに男が治療されているのを見るのはなんだか嫌だ。
「アイリス、男は俺が引き受けるよ」
「別に問題ありませんが……」
「俺にも練習させてよ。あとお小遣い稼ぎ」
「はぁ……わかりましたわ」
よし、これで魔法使いっぽいのは俺が治療出来る。
イライラしなくて済むし、お小遣い稼ぎにもなるし一石二鳥だね。
……なんだか情緒不安定だな、治療している間に落ち着こう。
自分に回復魔法掛けたら落ち着くかな?
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