36 / 85
旅するとみぃ
35話。トラック運転手ですが、ちょっとだけ真面目に考えてみました
しおりを挟む
「おはようございますわトミー! 出発の朝ですわ!」
「おはざますッ!」
翌朝、日も登り始めたのでそろそろ起きようかと布団の中でモゾモゾしていると、最近毎朝恒例のようになっているアイリスの突撃で驚いて目が覚めた。
「まだ寝てましたの? 早く朝食を食べて出発しますわよ?」
「早くない?」
まだ朝も早い。スマホを見てみると、まだ朝7時前だった。
「このままここに居ると何だか嫌な予感がビンビンですわ」
「ビンビンとか言わないの。なにそれ、予知能力にでも目覚めたの?」
ビンビンはやめて欲しい。今まさにビンビンだから。
寝起きだから仕方ないのだ。
「予知能力なんかではありませんわ。ただ、このままこの城に滞在すればトミーがあの泥棒猫に篭絡される夢を見ましたわ」
「それ予知能力じゃん」
朝から何を言っているのやら……
「予知ではありません。女の勘ですわ!」
「女の勘て……」
「トミーって女性に対する免疫が無さそうなんですもの」
「ごめんて」
それは事実でしかないので反論の余地は無い。
ただ、俺は自分がモテないおっさんだってちゃんと自覚してるから、篭絡されるなんてことはない……と……思う……よ?
「わたくしの好意には気付かない癖に……」
「なんて?」
ボソッと言うのはやめて欲しい。
完全に覚醒していればちゃんと聞き取れるのだが、寝起きは38歳相当の視力と聴力しかないのだ。
小声だとちゃんと聞き取れない。
寝起き上半身はおっさんで、下半身は若者とかバランスが悪すぎる。
女神様には是非とも調整をお願いします。
「なんでもありませんわ! それより、さっさと朝食を食べて出発しますわよ!」
「もうちょっとだけ待って……」
俺が布団から出られるようになるまでの間にアイリスは朝食の配膳をお願いしてくれたようで、立ち上がると同時に朝食が運ばれてきた。
「それで、ここの次はなんてところなの?」
ふわふわのパンをちぎり、バターを付けて頬張る。
右手に持った箸で半熟に焼かれた目玉焼きを切り分けながらアイリスに質問すると、アイリスはガン見していた目玉焼きから視線を俺の顔に戻して答えてくれる。
「次は『サドア』ですが、セドカンとサドアは徒歩でも半日の距離ですわ。ばいくで移動するのなら今日中にはエフリの南の国、『セターン』まで行けると思いますわ」
「そのセターンからエフリまでは?」
「徒歩一日半くらいですわ」
徒歩とバイクが入り交じるからイマイチ分かりづらいな。まぁ車やバイクの存在しない世界で一度乗っただけのバイクを基準には出来なくても仕方ないか。
しかし俺以前にもかなりの数の転生者が居るっぽいんだけど、車とかバイクが開発されてないのはなんだか不思議。
山田太郎氏は学生だったっぽいし、異世界転生平均年齢は俺が思っていたより若いのかもしれない。
料理に関しては、こんな食材をこんな風に……的な説明が出来ればこの世界の料理人が試行錯誤して完成させることは出来るだろう。
しかし機械は無理だろうね。
余程の知識持ちか、技術者が絶対に造るという意志を持って行動しなければ造られることは無いだろう。
例外は俺みたいに【物質創造】を使った魔力のゴリ押しだけど、これにたどり着く人もなかなか居ないと思う。
俺が思い至ったのも聖竜さんにギャフンと言わせるために考えに考え抜いた結果だし。
そもそもトラック創ってぶつけるとか非人道的すぎてドン引き案件である。
これを思いついた時の俺は追い詰められていたに違いない。
そんなことを考えていると、少し険のある声が聞こえてきた。
「どこ見てますの?」
「へ?」
当然アイリスの声だ。
声に反応してアイリスの顔を見ると、少し頬を赤く染めながら胸元を抑えて俺を睨みつけていた。
「わ……わたくしの胸をじっと見て、なにを考えていたんですの?」
しまった、そんなつもりは毛頭無かったのだが、おじさん専用マイナススキルである【無自覚型セクハラ】が発動していたようだ。
これはいかん。平謝り以外の選択肢は存在しない。
「ごめんなさい」
「わ……わたくしはファミマト王国公爵令嬢にして王太子殿下の元婚約者、殿方から魅力的な女性に見られるよう努力はしてきましたわ! なので……み、見るなとは申しませんが、せめてもう少しバレないようにと言いますか、なんと言いますか……」
おー、テンパってるテンパってる。
けどごめんね、マジでそんな気は無かったの。考え事してただけなの。
伝えてあげたいけど、今それ言っても言い訳にしかならないから言えないんだけどね。
「と、とにかく! 見たいのならバレないようこっそり見るか、せめて許可をとってくださいまし!」
「頼んだら見てもいいの?」
「……トミーなら」
今回はちゃんと聞こえた。
いいんだ……俺なら別にいいんだ……そっか……
「話は以上ですわ! わたくしは部屋におりますので、食事を終えたら呼びに来てくださいませ!」
割と衝撃的なことを聞いて、俺のおめめがバタフライをしているうちにアイリスは立ち上がり、部屋を出ていってしまった。
「あー……うん、よし、聞かなかったことにしよう!」
そう心に決めて、とりあえず朝食を終わらせるために手を動かすのだった。
「おはざますッ!」
翌朝、日も登り始めたのでそろそろ起きようかと布団の中でモゾモゾしていると、最近毎朝恒例のようになっているアイリスの突撃で驚いて目が覚めた。
「まだ寝てましたの? 早く朝食を食べて出発しますわよ?」
「早くない?」
まだ朝も早い。スマホを見てみると、まだ朝7時前だった。
「このままここに居ると何だか嫌な予感がビンビンですわ」
「ビンビンとか言わないの。なにそれ、予知能力にでも目覚めたの?」
ビンビンはやめて欲しい。今まさにビンビンだから。
寝起きだから仕方ないのだ。
「予知能力なんかではありませんわ。ただ、このままこの城に滞在すればトミーがあの泥棒猫に篭絡される夢を見ましたわ」
「それ予知能力じゃん」
朝から何を言っているのやら……
「予知ではありません。女の勘ですわ!」
「女の勘て……」
「トミーって女性に対する免疫が無さそうなんですもの」
「ごめんて」
それは事実でしかないので反論の余地は無い。
ただ、俺は自分がモテないおっさんだってちゃんと自覚してるから、篭絡されるなんてことはない……と……思う……よ?
「わたくしの好意には気付かない癖に……」
「なんて?」
ボソッと言うのはやめて欲しい。
完全に覚醒していればちゃんと聞き取れるのだが、寝起きは38歳相当の視力と聴力しかないのだ。
小声だとちゃんと聞き取れない。
寝起き上半身はおっさんで、下半身は若者とかバランスが悪すぎる。
女神様には是非とも調整をお願いします。
「なんでもありませんわ! それより、さっさと朝食を食べて出発しますわよ!」
「もうちょっとだけ待って……」
俺が布団から出られるようになるまでの間にアイリスは朝食の配膳をお願いしてくれたようで、立ち上がると同時に朝食が運ばれてきた。
「それで、ここの次はなんてところなの?」
ふわふわのパンをちぎり、バターを付けて頬張る。
右手に持った箸で半熟に焼かれた目玉焼きを切り分けながらアイリスに質問すると、アイリスはガン見していた目玉焼きから視線を俺の顔に戻して答えてくれる。
「次は『サドア』ですが、セドカンとサドアは徒歩でも半日の距離ですわ。ばいくで移動するのなら今日中にはエフリの南の国、『セターン』まで行けると思いますわ」
「そのセターンからエフリまでは?」
「徒歩一日半くらいですわ」
徒歩とバイクが入り交じるからイマイチ分かりづらいな。まぁ車やバイクの存在しない世界で一度乗っただけのバイクを基準には出来なくても仕方ないか。
しかし俺以前にもかなりの数の転生者が居るっぽいんだけど、車とかバイクが開発されてないのはなんだか不思議。
山田太郎氏は学生だったっぽいし、異世界転生平均年齢は俺が思っていたより若いのかもしれない。
料理に関しては、こんな食材をこんな風に……的な説明が出来ればこの世界の料理人が試行錯誤して完成させることは出来るだろう。
しかし機械は無理だろうね。
余程の知識持ちか、技術者が絶対に造るという意志を持って行動しなければ造られることは無いだろう。
例外は俺みたいに【物質創造】を使った魔力のゴリ押しだけど、これにたどり着く人もなかなか居ないと思う。
俺が思い至ったのも聖竜さんにギャフンと言わせるために考えに考え抜いた結果だし。
そもそもトラック創ってぶつけるとか非人道的すぎてドン引き案件である。
これを思いついた時の俺は追い詰められていたに違いない。
そんなことを考えていると、少し険のある声が聞こえてきた。
「どこ見てますの?」
「へ?」
当然アイリスの声だ。
声に反応してアイリスの顔を見ると、少し頬を赤く染めながら胸元を抑えて俺を睨みつけていた。
「わ……わたくしの胸をじっと見て、なにを考えていたんですの?」
しまった、そんなつもりは毛頭無かったのだが、おじさん専用マイナススキルである【無自覚型セクハラ】が発動していたようだ。
これはいかん。平謝り以外の選択肢は存在しない。
「ごめんなさい」
「わ……わたくしはファミマト王国公爵令嬢にして王太子殿下の元婚約者、殿方から魅力的な女性に見られるよう努力はしてきましたわ! なので……み、見るなとは申しませんが、せめてもう少しバレないようにと言いますか、なんと言いますか……」
おー、テンパってるテンパってる。
けどごめんね、マジでそんな気は無かったの。考え事してただけなの。
伝えてあげたいけど、今それ言っても言い訳にしかならないから言えないんだけどね。
「と、とにかく! 見たいのならバレないようこっそり見るか、せめて許可をとってくださいまし!」
「頼んだら見てもいいの?」
「……トミーなら」
今回はちゃんと聞こえた。
いいんだ……俺なら別にいいんだ……そっか……
「話は以上ですわ! わたくしは部屋におりますので、食事を終えたら呼びに来てくださいませ!」
割と衝撃的なことを聞いて、俺のおめめがバタフライをしているうちにアイリスは立ち上がり、部屋を出ていってしまった。
「あー……うん、よし、聞かなかったことにしよう!」
そう心に決めて、とりあえず朝食を終わらせるために手を動かすのだった。
20
お気に入りに追加
370
あなたにおすすめの小説

転生ヒロインは乙女ゲームを始めなかった。
よもぎ
ファンタジー
転生ヒロインがマトモな感性してる世界と、シナリオの強制力がある世界を混ぜたらどうなるの?という疑問への自分なりのアンサーです。転生ヒロインに近い視点でお話が進みます。激しい山場はございません。

過程をすっ飛ばすことにしました
こうやさい
ファンタジー
ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。
どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?
そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。
深く考えないでください。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

【異世界大量転生1】乙女ゲームの世界に来たようなので、MMO気分で満喫することにした
とうや
ファンタジー
異世界転生したら王子でした。
如月一眞は通り魔に襲われ、あれやこれやで異世界転生する。だが婚約者は姪っ子で、前世のネトゲ仲間の親友。しかも乙女ゲームの世界だと!?
そんなの攻略法さえ知ってりゃ問題ない!どうせならMMO気分で楽しもうか!
書いてる人間がお腐れなので微妙に臭います。
『公爵令嬢は奪われる』シリーズにリンクしていますが、読んでなくても何とかなります。
本編終了しました。

このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる