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街の中のとみぃ
28話。魔力適性検査
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翌朝、国王様と神官長さんに挨拶を済ませて聖堂を出ると、男性が一人と小さな女の子が一人出入口の前で誰かを待っていた。
「トミー、あの子は……」
俺が気付くと同時にアイリスも気が付いたようだ。
「床下収納に隠れていた子だね」
「そうですわね。あの時はわかりませんでしたが、あの子、なんだか薄らと光っていますわ」
「え?」
どゆこと?
「トミーも光っていますけど、あの子の方が眩しくないですわ」
「待って、俺光ってるの?」
「はい、時々」
俺とアイリスが二人に気が付いたことを察したのか、男性はその場で頭を下げ、女の子はこちらへと駆け寄って来た。
俺が光ってるかどうかの話は一旦棚上げ、後できちんと追求しよう。
「使徒様、姫騎士様、助けてくれてありがとうございました!」
「どういたしまして」
俺は膝を着いてお礼を述べている女の子と視線の高さを合わせた。
ジッと俺の顔を見てくるので、頭を撫でてやると女の子はくすぐったそうに目を細めた。可愛い。
「使徒様、姫騎士様、娘を……ティリアを助けて頂き心から感謝致します」
女の子を撫でていると、男性も近付いてきて改めてお礼を言われた。
「助けられて良かったです」
立ち上がり、お互い軽く自己紹介を交わす。
男性はカルロス・フォン・ハーンと名乗り、この国の子爵であり、騎士団の副団長を勤めているそうだ。
襲撃のあった日から今日まで最前線で兵を率いて魔物と戦い続けていたらしい。
彼の奥さん……ティリアちゃんの母親は襲撃の日に魔物に襲われ命を落としたそうだ。
「本当なら私が妻と娘を守らなければならなかったのですが……」
「それは……」
騎士団に所属しているなら有事の際には家族より国民を守ることが優先されるのだろう。
確か日本の公務員もそうだよね?
なので仕方がないと言ってしまえばそれまでなのだが、そんなことを軽々しく言っていいわけがない。
俺が言い淀んでいることを察したのか、カルロスさんは苦笑を浮かべティリアちゃんの頭に手を乗せた。
「妻の命は残念ですが……娘だけでも助かって本当に良かった。これも全て使徒様たちのおかげです」
「助けられたのは間に合ったからで……俺たちが間に合ったのはカルロスさんたちが懸命に魔物と戦ってくれていたからだと思います」
あの時、ティリアちゃんの隠れていた家の周囲には魔物がそこまで多くはなかった。
カルロスさんたちは街の西側で戦っていたそうなので、そちらに魔物が惹き付けられていたのではないかと思う。
「ところで娘さん光ってますけど、なんでですの?」
若干暗い雰囲気になりそうになったところで、アイリスが空気をぶった切ってきた。
この空気でそれは無いと思う。
「ティリアが?」
「ええ。キラキラしていてとても綺麗ですわ。カルロス様には見えませんの?」
「いえ……申し訳ありませんが全く見えません」
俺にはわからなかったが、カルロスさんにも光っては見えないらしい。
よかった、俺の目がおかしい訳ではないみたいだ。
しかしアイリスの目にはティリアちゃんが光って見える……たまに俺も光っているらしい……何故だろう?
「娘さんおいくつですの?」
「今年で10になります」
「ということは魔力の適性検査はまだですのね」
魔力の適性検査? なんぞそれ?
「ええ。来月誕生日ですのでその時に検査を受けさせようかと」
会話の流れ的に常識みたいね。
さすがに会話に割り込んで質問することは憚られるので今だけは知ってるフリで乗り切ろう。
そう思い、二人の会話を聞いていると、じゃあ今から検査しようぜという話になっていた。
どうして?
「ではわたくしが神官長様におねがいしてきますわ」
そう言ってアイリスは聖堂へと戻って行ってしまった。
「使徒様、申し訳ありません」
「いえ、こちらこそ……」
カルロスさんたちはアイリスのわがままというか、好奇心に巻き込まれただけみたいだし、謝る必要は無いよ。
しかしアイリスの自由奔放さは本当に貴族令嬢として育ってきたのか疑問に思うレベルだよね。
公爵令嬢、王太子の婚約者としての重圧が無くなったことではっちゃけてるだけな気もするけど。
それからすぐに適性検査とやらの準備が整い、ティリアちゃんの検査が始まった。
戻ってきたアイリスにこっそりと「適性検査とはなんぞや?」と聞いてみると、「どこの国でも子供が10歳になると行う検査で、魔力量や適性のある属性を調べること」だと教えて貰えた。
アイリスも10歳で適性検査を受けて火、土、風、水の四属性に適性があることがわかったらしい。
それって光と闇を除く全てだよね?
「では検査を始めますね。この水晶に手を乗せてください。熱くなったら手を離してくださいね」
「はい!」
ティリアちゃんは元気よく返事をして水晶に手を乗せた。
「アイリス、あれは?」
「魔力量の検査ですわ。あの水晶がゆっくりと魔力を吸い出しますの。長い時間触れていることが出来ればそれだけ魔力量が多いということですの」
「へぇ」
「ちなみにわたくしの時は熱くなるのに二時間かかりましたわ」
二時間触れっぱなしだったの?
「それってどのくらいすごいの?」
「ファミマトでは歴代最長だったそうですわ。他の国を含めるとわかりませんが、おそらくこの大陸屈指の魔力量保持者ですわよ?」
「おお!」
すごいでしょ? とドヤ顔をするアイリスが可愛かったので素直に驚いておく。
ちなみに、魔力量の多い天才と言われるような子供でも10分くらいらしい。アイリスの魔力量……
「あ、水晶が光始めましたわ」
会話を終わらせて水晶へと目をやると、水晶は白と青の二色に光っていた。
「あの色が属性ですの。白と青ということは、光と水ですわね」
「光と水……それって」
「ええ。聖女ですわね」
そんなサラッと言われましても……
「これでハッキリしましたわ。わたくしの目で光って見える方は光属性持ちということですわね」
「ちなみに、いつから俺のことが光って見えるようになったんですかね?」
もしかして最初から?
「トミー、あの子は……」
俺が気付くと同時にアイリスも気が付いたようだ。
「床下収納に隠れていた子だね」
「そうですわね。あの時はわかりませんでしたが、あの子、なんだか薄らと光っていますわ」
「え?」
どゆこと?
「トミーも光っていますけど、あの子の方が眩しくないですわ」
「待って、俺光ってるの?」
「はい、時々」
俺とアイリスが二人に気が付いたことを察したのか、男性はその場で頭を下げ、女の子はこちらへと駆け寄って来た。
俺が光ってるかどうかの話は一旦棚上げ、後できちんと追求しよう。
「使徒様、姫騎士様、助けてくれてありがとうございました!」
「どういたしまして」
俺は膝を着いてお礼を述べている女の子と視線の高さを合わせた。
ジッと俺の顔を見てくるので、頭を撫でてやると女の子はくすぐったそうに目を細めた。可愛い。
「使徒様、姫騎士様、娘を……ティリアを助けて頂き心から感謝致します」
女の子を撫でていると、男性も近付いてきて改めてお礼を言われた。
「助けられて良かったです」
立ち上がり、お互い軽く自己紹介を交わす。
男性はカルロス・フォン・ハーンと名乗り、この国の子爵であり、騎士団の副団長を勤めているそうだ。
襲撃のあった日から今日まで最前線で兵を率いて魔物と戦い続けていたらしい。
彼の奥さん……ティリアちゃんの母親は襲撃の日に魔物に襲われ命を落としたそうだ。
「本当なら私が妻と娘を守らなければならなかったのですが……」
「それは……」
騎士団に所属しているなら有事の際には家族より国民を守ることが優先されるのだろう。
確か日本の公務員もそうだよね?
なので仕方がないと言ってしまえばそれまでなのだが、そんなことを軽々しく言っていいわけがない。
俺が言い淀んでいることを察したのか、カルロスさんは苦笑を浮かべティリアちゃんの頭に手を乗せた。
「妻の命は残念ですが……娘だけでも助かって本当に良かった。これも全て使徒様たちのおかげです」
「助けられたのは間に合ったからで……俺たちが間に合ったのはカルロスさんたちが懸命に魔物と戦ってくれていたからだと思います」
あの時、ティリアちゃんの隠れていた家の周囲には魔物がそこまで多くはなかった。
カルロスさんたちは街の西側で戦っていたそうなので、そちらに魔物が惹き付けられていたのではないかと思う。
「ところで娘さん光ってますけど、なんでですの?」
若干暗い雰囲気になりそうになったところで、アイリスが空気をぶった切ってきた。
この空気でそれは無いと思う。
「ティリアが?」
「ええ。キラキラしていてとても綺麗ですわ。カルロス様には見えませんの?」
「いえ……申し訳ありませんが全く見えません」
俺にはわからなかったが、カルロスさんにも光っては見えないらしい。
よかった、俺の目がおかしい訳ではないみたいだ。
しかしアイリスの目にはティリアちゃんが光って見える……たまに俺も光っているらしい……何故だろう?
「娘さんおいくつですの?」
「今年で10になります」
「ということは魔力の適性検査はまだですのね」
魔力の適性検査? なんぞそれ?
「ええ。来月誕生日ですのでその時に検査を受けさせようかと」
会話の流れ的に常識みたいね。
さすがに会話に割り込んで質問することは憚られるので今だけは知ってるフリで乗り切ろう。
そう思い、二人の会話を聞いていると、じゃあ今から検査しようぜという話になっていた。
どうして?
「ではわたくしが神官長様におねがいしてきますわ」
そう言ってアイリスは聖堂へと戻って行ってしまった。
「使徒様、申し訳ありません」
「いえ、こちらこそ……」
カルロスさんたちはアイリスのわがままというか、好奇心に巻き込まれただけみたいだし、謝る必要は無いよ。
しかしアイリスの自由奔放さは本当に貴族令嬢として育ってきたのか疑問に思うレベルだよね。
公爵令嬢、王太子の婚約者としての重圧が無くなったことではっちゃけてるだけな気もするけど。
それからすぐに適性検査とやらの準備が整い、ティリアちゃんの検査が始まった。
戻ってきたアイリスにこっそりと「適性検査とはなんぞや?」と聞いてみると、「どこの国でも子供が10歳になると行う検査で、魔力量や適性のある属性を調べること」だと教えて貰えた。
アイリスも10歳で適性検査を受けて火、土、風、水の四属性に適性があることがわかったらしい。
それって光と闇を除く全てだよね?
「では検査を始めますね。この水晶に手を乗せてください。熱くなったら手を離してくださいね」
「はい!」
ティリアちゃんは元気よく返事をして水晶に手を乗せた。
「アイリス、あれは?」
「魔力量の検査ですわ。あの水晶がゆっくりと魔力を吸い出しますの。長い時間触れていることが出来ればそれだけ魔力量が多いということですの」
「へぇ」
「ちなみにわたくしの時は熱くなるのに二時間かかりましたわ」
二時間触れっぱなしだったの?
「それってどのくらいすごいの?」
「ファミマトでは歴代最長だったそうですわ。他の国を含めるとわかりませんが、おそらくこの大陸屈指の魔力量保持者ですわよ?」
「おお!」
すごいでしょ? とドヤ顔をするアイリスが可愛かったので素直に驚いておく。
ちなみに、魔力量の多い天才と言われるような子供でも10分くらいらしい。アイリスの魔力量……
「あ、水晶が光始めましたわ」
会話を終わらせて水晶へと目をやると、水晶は白と青の二色に光っていた。
「あの色が属性ですの。白と青ということは、光と水ですわね」
「光と水……それって」
「ええ。聖女ですわね」
そんなサラッと言われましても……
「これでハッキリしましたわ。わたくしの目で光って見える方は光属性持ちということですわね」
「ちなみに、いつから俺のことが光って見えるようになったんですかね?」
もしかして最初から?
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