17 / 85
街の中のとみぃ
17話。ぼくのかんがえたさいきょうのぶつりこうげき
しおりを挟む
「【クリエイト】」
設定したキーワードを口に出す。
本来魔法はイメージと魔力を掛け合わせて現象や物質を創造する技術であり、そこに詠唱などは必要ない。
しかし「常に全く同じ現象、物質」を明確にイメージすることは案外難しい。
それを解決するための手段のひとつとして、キーワードの設定というものがあるのだ。
キーワードを設定することによって、「明確なイメージと魔力」を掛け合わせて発動するのではなく「キーワードと魔力」で発動することが出来るようになる。
当然、メリットデメリットがあり、明確なイメージを思い浮かべる必要が無くなって発動速度が上昇するのは明らかなメリットである。
逆にデメリットとしては固定された魔法が発動してしまうので、応用力に大きく劣ることになってしまうのだ。
俺が聖拳突きを使う度に技名を叫んでいるのはこのキーワード設定をしているためである。
話が逸れたが、俺は「聖拳突き」以外にもいくつかのキーワードを設定している。
今から放つ俺の切り札にも当然のことながらキーワードが設定されており、今まさに唱えようとしているわけだ。
「【クリエイトトラック……4トン車】!!」
キーワードを叫ぶと同時、俺の体からゴッソリと大量の魔力が放たれ物質へと変換される。
俺の目の前には中型トラック……4トン車が姿を現した。
ちなみに最大積載量ギリギリまで積んでいる。荷物は鉄の塊を創造した。
だって重い方が強いんだもの。
「殴ってもダメ、刺してもダメ、おそらく斬っても効果無し。ならばクソ固くてクソ重い物質を高速でぶつけてやればいいじゃない!」
目の前の4トン車に触れて魔力とともに命令を流し込む。
本来【物質創造】で生み出したものは動かない。
そもそも物質って普通動かないもの。
しかし俺が考えに考え抜いて創り出したこのトラックは動くのだ。
なぜならトラックは動くものだから!
「目標、あの緑。時速設定最速。ゴー!」
俺から魔力と命令を受け取ったトラックは一度大きくエンジン音を唸らせ加速、伯爵級悪魔に向かって突進していく。
あっという間に加速したトラックは、俺の命令通り最速、時速160キロで悪魔と衝突し、その身を粉砕した。
悪魔の立っていた場所には、悠然と佇むトラックの姿だけが残っていた。
「完! 全! 勝! 利!」
一人拳を突き上げて勝鬨を上げる。
精兵5万人に匹敵すると言われる伯爵級の悪魔を一人で、さらに「ほぼ」無傷で討伐したのだ。誇ってもいいだろう。
当然全て回避したわけではなく、何度か被弾しているが、その都度回復魔法で治しているから無傷と言っても過言では無いだろう。
「さて、アイリスさんの方は……」
【物質創造】の制限時間が切れたことで魔力へと還って行くトラックを横目に、雑魚を受け持ってくれたアイリスさんへと視線を向ける。
俺の視線の先には、舞い踊るような軽やかなステップを踏みながらも手に持つロングソードで容赦なく魔物を斬り捨てるアイリスさんの姿があった。
「その程度の動きでわたくしをダンスに誘うなど……恥を知りなさいッ!」
華麗に、苛烈に踊り続けるアイリスさん。
その周りにはもうほとんど魔物は残っていなかった。
俺はその姿に、しばしの間見蕩れてしまった。
「他愛もない……ですわ!」
ですわ! のところでピッと剣を一振りして魔物の血肉を払い、ロングソードを鞘へと収める。
その姿は美しく気高く、まさに英雄と呼ぶに相応しい立ち姿であった。尊い。
「トミー!」
アイリスさんはすぐに俺に気付いたようで、小走りでこちらに駆け寄ってくる。
「お疲れ様でした。お水飲みます?」
「そんなことより怪我はありませんの!?」
「ありませんよ」
アイリスさんは俺の周りをグルグル周り、怪我が無いか確認してくる。
子犬のようで可愛らしい。とても癒される。
「伯爵級の悪魔を単独で討伐するなんてトミーはすごいですの!」
「お褒めに預かり光栄の極みです。アイリスさんもあんな沢山居た魔物を倒すなんてすごいですよ」
「当然ですの! それより、最後の魔法はなんなのです?」
やっぱり見てたのね。
「あれは【物質創造】ですよ」
「【物質創造】であんなものが創れますの?」
「あれは苦労しました……」
殴っても蹴っても、どんな魔法をぶつけても傷一つ付かない聖竜さんにダメージを与えるため考えに考え抜いた魔法だからね。
「どんなイメージですの?」
「前に居た世界で俺が乗っていた乗り物ですよ」
「アレ乗り物なんですの!?」
まぁこの世界でトラックとか見る機会無いだろうし、乗り物だとは分からないよね。
そもそも乗り物としてじゃなく武器として使ったところを見てたわけだし。
「アイリスさん、最強の攻撃ってなんだと思いますか?」
「最強の攻撃……抽象的ですわね……」
アイリスさんは顎に手を当て考え始めた。
どんな答えが返ってくるのか少し楽しみだ。
「魔法と剣技を合わせた魔法剣でしょうか」
「かっこいいですね。魔法剣は浪漫です」
いつかは使ってみたい。そのためには剣術覚えなくちゃ。
「トミーの答えはなんですの?」
「そうですね。あの魔法のコンセプトなんですが、質量×固さ×速度ですかね」
「それは……攻撃ですの?」
言い方が悪かったかな?
「とんでもなく固くて重いものを高速でぶつけるのが一番破壊力を出せると思います」
「なるほど、そう言われてみればそうですわね……」
開発中に色々悩んだけど、斬ったり突き刺したり燃やしたりするより結局のところ圧倒的質量で叩き潰すのが一番だよね。
ちなみに、聖竜さんにぶち当てたのは7トン車である。
本当なら大型を創ってぶち当てたかったのだが、魔力が足りなかった。
今度会う時には大型トラックをぶち当てられるよう魔力を増やしておかなければ……
設定したキーワードを口に出す。
本来魔法はイメージと魔力を掛け合わせて現象や物質を創造する技術であり、そこに詠唱などは必要ない。
しかし「常に全く同じ現象、物質」を明確にイメージすることは案外難しい。
それを解決するための手段のひとつとして、キーワードの設定というものがあるのだ。
キーワードを設定することによって、「明確なイメージと魔力」を掛け合わせて発動するのではなく「キーワードと魔力」で発動することが出来るようになる。
当然、メリットデメリットがあり、明確なイメージを思い浮かべる必要が無くなって発動速度が上昇するのは明らかなメリットである。
逆にデメリットとしては固定された魔法が発動してしまうので、応用力に大きく劣ることになってしまうのだ。
俺が聖拳突きを使う度に技名を叫んでいるのはこのキーワード設定をしているためである。
話が逸れたが、俺は「聖拳突き」以外にもいくつかのキーワードを設定している。
今から放つ俺の切り札にも当然のことながらキーワードが設定されており、今まさに唱えようとしているわけだ。
「【クリエイトトラック……4トン車】!!」
キーワードを叫ぶと同時、俺の体からゴッソリと大量の魔力が放たれ物質へと変換される。
俺の目の前には中型トラック……4トン車が姿を現した。
ちなみに最大積載量ギリギリまで積んでいる。荷物は鉄の塊を創造した。
だって重い方が強いんだもの。
「殴ってもダメ、刺してもダメ、おそらく斬っても効果無し。ならばクソ固くてクソ重い物質を高速でぶつけてやればいいじゃない!」
目の前の4トン車に触れて魔力とともに命令を流し込む。
本来【物質創造】で生み出したものは動かない。
そもそも物質って普通動かないもの。
しかし俺が考えに考え抜いて創り出したこのトラックは動くのだ。
なぜならトラックは動くものだから!
「目標、あの緑。時速設定最速。ゴー!」
俺から魔力と命令を受け取ったトラックは一度大きくエンジン音を唸らせ加速、伯爵級悪魔に向かって突進していく。
あっという間に加速したトラックは、俺の命令通り最速、時速160キロで悪魔と衝突し、その身を粉砕した。
悪魔の立っていた場所には、悠然と佇むトラックの姿だけが残っていた。
「完! 全! 勝! 利!」
一人拳を突き上げて勝鬨を上げる。
精兵5万人に匹敵すると言われる伯爵級の悪魔を一人で、さらに「ほぼ」無傷で討伐したのだ。誇ってもいいだろう。
当然全て回避したわけではなく、何度か被弾しているが、その都度回復魔法で治しているから無傷と言っても過言では無いだろう。
「さて、アイリスさんの方は……」
【物質創造】の制限時間が切れたことで魔力へと還って行くトラックを横目に、雑魚を受け持ってくれたアイリスさんへと視線を向ける。
俺の視線の先には、舞い踊るような軽やかなステップを踏みながらも手に持つロングソードで容赦なく魔物を斬り捨てるアイリスさんの姿があった。
「その程度の動きでわたくしをダンスに誘うなど……恥を知りなさいッ!」
華麗に、苛烈に踊り続けるアイリスさん。
その周りにはもうほとんど魔物は残っていなかった。
俺はその姿に、しばしの間見蕩れてしまった。
「他愛もない……ですわ!」
ですわ! のところでピッと剣を一振りして魔物の血肉を払い、ロングソードを鞘へと収める。
その姿は美しく気高く、まさに英雄と呼ぶに相応しい立ち姿であった。尊い。
「トミー!」
アイリスさんはすぐに俺に気付いたようで、小走りでこちらに駆け寄ってくる。
「お疲れ様でした。お水飲みます?」
「そんなことより怪我はありませんの!?」
「ありませんよ」
アイリスさんは俺の周りをグルグル周り、怪我が無いか確認してくる。
子犬のようで可愛らしい。とても癒される。
「伯爵級の悪魔を単独で討伐するなんてトミーはすごいですの!」
「お褒めに預かり光栄の極みです。アイリスさんもあんな沢山居た魔物を倒すなんてすごいですよ」
「当然ですの! それより、最後の魔法はなんなのです?」
やっぱり見てたのね。
「あれは【物質創造】ですよ」
「【物質創造】であんなものが創れますの?」
「あれは苦労しました……」
殴っても蹴っても、どんな魔法をぶつけても傷一つ付かない聖竜さんにダメージを与えるため考えに考え抜いた魔法だからね。
「どんなイメージですの?」
「前に居た世界で俺が乗っていた乗り物ですよ」
「アレ乗り物なんですの!?」
まぁこの世界でトラックとか見る機会無いだろうし、乗り物だとは分からないよね。
そもそも乗り物としてじゃなく武器として使ったところを見てたわけだし。
「アイリスさん、最強の攻撃ってなんだと思いますか?」
「最強の攻撃……抽象的ですわね……」
アイリスさんは顎に手を当て考え始めた。
どんな答えが返ってくるのか少し楽しみだ。
「魔法と剣技を合わせた魔法剣でしょうか」
「かっこいいですね。魔法剣は浪漫です」
いつかは使ってみたい。そのためには剣術覚えなくちゃ。
「トミーの答えはなんですの?」
「そうですね。あの魔法のコンセプトなんですが、質量×固さ×速度ですかね」
「それは……攻撃ですの?」
言い方が悪かったかな?
「とんでもなく固くて重いものを高速でぶつけるのが一番破壊力を出せると思います」
「なるほど、そう言われてみればそうですわね……」
開発中に色々悩んだけど、斬ったり突き刺したり燃やしたりするより結局のところ圧倒的質量で叩き潰すのが一番だよね。
ちなみに、聖竜さんにぶち当てたのは7トン車である。
本当なら大型を創ってぶち当てたかったのだが、魔力が足りなかった。
今度会う時には大型トラックをぶち当てられるよう魔力を増やしておかなければ……
30
お気に入りに追加
372
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。
大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。
ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。
主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。
マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。
しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。
主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。
これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
一般人に生まれ変わったはずなのに・・・!
モンド
ファンタジー
第一章「学園編」が終了し第二章「成人貴族編」に突入しました。
突然の事故で命を落とした主人公。
すると異世界の神から転生のチャンスをもらえることに。
それならばとチートな能力をもらって無双・・・いやいや程々の生活がしたいので。
「チートはいりません健康な体と少しばかりの幸運を頂きたい」と、希望し転生した。
転生して成長するほどに人と何か違うことに不信を抱くが気にすることなく異世界に馴染んでいく。
しかしちょっと不便を改善、危険は排除としているうちに何故かえらいことに。
そんな平々凡々を求める男の勘違い英雄譚。
※誤字脱字に乱丁など読みづらいと思いますが、申し訳ありませんがこう言うスタイルなので。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)
田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ?
コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。
(あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw)
台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。
読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。
(カクヨムにも投稿しております)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる