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街の中のとみぃ
17話。ぼくのかんがえたさいきょうのぶつりこうげき
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「【クリエイト】」
設定したキーワードを口に出す。
本来魔法はイメージと魔力を掛け合わせて現象や物質を創造する技術であり、そこに詠唱などは必要ない。
しかし「常に全く同じ現象、物質」を明確にイメージすることは案外難しい。
それを解決するための手段のひとつとして、キーワードの設定というものがあるのだ。
キーワードを設定することによって、「明確なイメージと魔力」を掛け合わせて発動するのではなく「キーワードと魔力」で発動することが出来るようになる。
当然、メリットデメリットがあり、明確なイメージを思い浮かべる必要が無くなって発動速度が上昇するのは明らかなメリットである。
逆にデメリットとしては固定された魔法が発動してしまうので、応用力に大きく劣ることになってしまうのだ。
俺が聖拳突きを使う度に技名を叫んでいるのはこのキーワード設定をしているためである。
話が逸れたが、俺は「聖拳突き」以外にもいくつかのキーワードを設定している。
今から放つ俺の切り札にも当然のことながらキーワードが設定されており、今まさに唱えようとしているわけだ。
「【クリエイトトラック……4トン車】!!」
キーワードを叫ぶと同時、俺の体からゴッソリと大量の魔力が放たれ物質へと変換される。
俺の目の前には中型トラック……4トン車が姿を現した。
ちなみに最大積載量ギリギリまで積んでいる。荷物は鉄の塊を創造した。
だって重い方が強いんだもの。
「殴ってもダメ、刺してもダメ、おそらく斬っても効果無し。ならばクソ固くてクソ重い物質を高速でぶつけてやればいいじゃない!」
目の前の4トン車に触れて魔力とともに命令を流し込む。
本来【物質創造】で生み出したものは動かない。
そもそも物質って普通動かないもの。
しかし俺が考えに考え抜いて創り出したこのトラックは動くのだ。
なぜならトラックは動くものだから!
「目標、あの緑。時速設定最速。ゴー!」
俺から魔力と命令を受け取ったトラックは一度大きくエンジン音を唸らせ加速、伯爵級悪魔に向かって突進していく。
あっという間に加速したトラックは、俺の命令通り最速、時速160キロで悪魔と衝突し、その身を粉砕した。
悪魔の立っていた場所には、悠然と佇むトラックの姿だけが残っていた。
「完! 全! 勝! 利!」
一人拳を突き上げて勝鬨を上げる。
精兵5万人に匹敵すると言われる伯爵級の悪魔を一人で、さらに「ほぼ」無傷で討伐したのだ。誇ってもいいだろう。
当然全て回避したわけではなく、何度か被弾しているが、その都度回復魔法で治しているから無傷と言っても過言では無いだろう。
「さて、アイリスさんの方は……」
【物質創造】の制限時間が切れたことで魔力へと還って行くトラックを横目に、雑魚を受け持ってくれたアイリスさんへと視線を向ける。
俺の視線の先には、舞い踊るような軽やかなステップを踏みながらも手に持つロングソードで容赦なく魔物を斬り捨てるアイリスさんの姿があった。
「その程度の動きでわたくしをダンスに誘うなど……恥を知りなさいッ!」
華麗に、苛烈に踊り続けるアイリスさん。
その周りにはもうほとんど魔物は残っていなかった。
俺はその姿に、しばしの間見蕩れてしまった。
「他愛もない……ですわ!」
ですわ! のところでピッと剣を一振りして魔物の血肉を払い、ロングソードを鞘へと収める。
その姿は美しく気高く、まさに英雄と呼ぶに相応しい立ち姿であった。尊い。
「トミー!」
アイリスさんはすぐに俺に気付いたようで、小走りでこちらに駆け寄ってくる。
「お疲れ様でした。お水飲みます?」
「そんなことより怪我はありませんの!?」
「ありませんよ」
アイリスさんは俺の周りをグルグル周り、怪我が無いか確認してくる。
子犬のようで可愛らしい。とても癒される。
「伯爵級の悪魔を単独で討伐するなんてトミーはすごいですの!」
「お褒めに預かり光栄の極みです。アイリスさんもあんな沢山居た魔物を倒すなんてすごいですよ」
「当然ですの! それより、最後の魔法はなんなのです?」
やっぱり見てたのね。
「あれは【物質創造】ですよ」
「【物質創造】であんなものが創れますの?」
「あれは苦労しました……」
殴っても蹴っても、どんな魔法をぶつけても傷一つ付かない聖竜さんにダメージを与えるため考えに考え抜いた魔法だからね。
「どんなイメージですの?」
「前に居た世界で俺が乗っていた乗り物ですよ」
「アレ乗り物なんですの!?」
まぁこの世界でトラックとか見る機会無いだろうし、乗り物だとは分からないよね。
そもそも乗り物としてじゃなく武器として使ったところを見てたわけだし。
「アイリスさん、最強の攻撃ってなんだと思いますか?」
「最強の攻撃……抽象的ですわね……」
アイリスさんは顎に手を当て考え始めた。
どんな答えが返ってくるのか少し楽しみだ。
「魔法と剣技を合わせた魔法剣でしょうか」
「かっこいいですね。魔法剣は浪漫です」
いつかは使ってみたい。そのためには剣術覚えなくちゃ。
「トミーの答えはなんですの?」
「そうですね。あの魔法のコンセプトなんですが、質量×固さ×速度ですかね」
「それは……攻撃ですの?」
言い方が悪かったかな?
「とんでもなく固くて重いものを高速でぶつけるのが一番破壊力を出せると思います」
「なるほど、そう言われてみればそうですわね……」
開発中に色々悩んだけど、斬ったり突き刺したり燃やしたりするより結局のところ圧倒的質量で叩き潰すのが一番だよね。
ちなみに、聖竜さんにぶち当てたのは7トン車である。
本当なら大型を創ってぶち当てたかったのだが、魔力が足りなかった。
今度会う時には大型トラックをぶち当てられるよう魔力を増やしておかなければ……
設定したキーワードを口に出す。
本来魔法はイメージと魔力を掛け合わせて現象や物質を創造する技術であり、そこに詠唱などは必要ない。
しかし「常に全く同じ現象、物質」を明確にイメージすることは案外難しい。
それを解決するための手段のひとつとして、キーワードの設定というものがあるのだ。
キーワードを設定することによって、「明確なイメージと魔力」を掛け合わせて発動するのではなく「キーワードと魔力」で発動することが出来るようになる。
当然、メリットデメリットがあり、明確なイメージを思い浮かべる必要が無くなって発動速度が上昇するのは明らかなメリットである。
逆にデメリットとしては固定された魔法が発動してしまうので、応用力に大きく劣ることになってしまうのだ。
俺が聖拳突きを使う度に技名を叫んでいるのはこのキーワード設定をしているためである。
話が逸れたが、俺は「聖拳突き」以外にもいくつかのキーワードを設定している。
今から放つ俺の切り札にも当然のことながらキーワードが設定されており、今まさに唱えようとしているわけだ。
「【クリエイトトラック……4トン車】!!」
キーワードを叫ぶと同時、俺の体からゴッソリと大量の魔力が放たれ物質へと変換される。
俺の目の前には中型トラック……4トン車が姿を現した。
ちなみに最大積載量ギリギリまで積んでいる。荷物は鉄の塊を創造した。
だって重い方が強いんだもの。
「殴ってもダメ、刺してもダメ、おそらく斬っても効果無し。ならばクソ固くてクソ重い物質を高速でぶつけてやればいいじゃない!」
目の前の4トン車に触れて魔力とともに命令を流し込む。
本来【物質創造】で生み出したものは動かない。
そもそも物質って普通動かないもの。
しかし俺が考えに考え抜いて創り出したこのトラックは動くのだ。
なぜならトラックは動くものだから!
「目標、あの緑。時速設定最速。ゴー!」
俺から魔力と命令を受け取ったトラックは一度大きくエンジン音を唸らせ加速、伯爵級悪魔に向かって突進していく。
あっという間に加速したトラックは、俺の命令通り最速、時速160キロで悪魔と衝突し、その身を粉砕した。
悪魔の立っていた場所には、悠然と佇むトラックの姿だけが残っていた。
「完! 全! 勝! 利!」
一人拳を突き上げて勝鬨を上げる。
精兵5万人に匹敵すると言われる伯爵級の悪魔を一人で、さらに「ほぼ」無傷で討伐したのだ。誇ってもいいだろう。
当然全て回避したわけではなく、何度か被弾しているが、その都度回復魔法で治しているから無傷と言っても過言では無いだろう。
「さて、アイリスさんの方は……」
【物質創造】の制限時間が切れたことで魔力へと還って行くトラックを横目に、雑魚を受け持ってくれたアイリスさんへと視線を向ける。
俺の視線の先には、舞い踊るような軽やかなステップを踏みながらも手に持つロングソードで容赦なく魔物を斬り捨てるアイリスさんの姿があった。
「その程度の動きでわたくしをダンスに誘うなど……恥を知りなさいッ!」
華麗に、苛烈に踊り続けるアイリスさん。
その周りにはもうほとんど魔物は残っていなかった。
俺はその姿に、しばしの間見蕩れてしまった。
「他愛もない……ですわ!」
ですわ! のところでピッと剣を一振りして魔物の血肉を払い、ロングソードを鞘へと収める。
その姿は美しく気高く、まさに英雄と呼ぶに相応しい立ち姿であった。尊い。
「トミー!」
アイリスさんはすぐに俺に気付いたようで、小走りでこちらに駆け寄ってくる。
「お疲れ様でした。お水飲みます?」
「そんなことより怪我はありませんの!?」
「ありませんよ」
アイリスさんは俺の周りをグルグル周り、怪我が無いか確認してくる。
子犬のようで可愛らしい。とても癒される。
「伯爵級の悪魔を単独で討伐するなんてトミーはすごいですの!」
「お褒めに預かり光栄の極みです。アイリスさんもあんな沢山居た魔物を倒すなんてすごいですよ」
「当然ですの! それより、最後の魔法はなんなのです?」
やっぱり見てたのね。
「あれは【物質創造】ですよ」
「【物質創造】であんなものが創れますの?」
「あれは苦労しました……」
殴っても蹴っても、どんな魔法をぶつけても傷一つ付かない聖竜さんにダメージを与えるため考えに考え抜いた魔法だからね。
「どんなイメージですの?」
「前に居た世界で俺が乗っていた乗り物ですよ」
「アレ乗り物なんですの!?」
まぁこの世界でトラックとか見る機会無いだろうし、乗り物だとは分からないよね。
そもそも乗り物としてじゃなく武器として使ったところを見てたわけだし。
「アイリスさん、最強の攻撃ってなんだと思いますか?」
「最強の攻撃……抽象的ですわね……」
アイリスさんは顎に手を当て考え始めた。
どんな答えが返ってくるのか少し楽しみだ。
「魔法と剣技を合わせた魔法剣でしょうか」
「かっこいいですね。魔法剣は浪漫です」
いつかは使ってみたい。そのためには剣術覚えなくちゃ。
「トミーの答えはなんですの?」
「そうですね。あの魔法のコンセプトなんですが、質量×固さ×速度ですかね」
「それは……攻撃ですの?」
言い方が悪かったかな?
「とんでもなく固くて重いものを高速でぶつけるのが一番破壊力を出せると思います」
「なるほど、そう言われてみればそうですわね……」
開発中に色々悩んだけど、斬ったり突き刺したり燃やしたりするより結局のところ圧倒的質量で叩き潰すのが一番だよね。
ちなみに、聖竜さんにぶち当てたのは7トン車である。
本当なら大型を創ってぶち当てたかったのだが、魔力が足りなかった。
今度会う時には大型トラックをぶち当てられるよう魔力を増やしておかなければ……
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