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高校生編

転校した初日の今日は……

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 私の名前は樋口遥。普通の女子よりかなり背が高く、178cmある。地味に、というか結構コンプレックスだ。


 そんな身長?いや体格が私に災いをもたらすなんて思ってもいなかった。


 時間は遡り1ヶ月くらい前になるだろうか。私は親の転勤で学校を転校した。


 「遥~転校初日に遅刻しちゃうわよ」


 「分かってるって」


 私は初日の今日に寝坊してしまい、起きるや否や、顔を洗い、髪を束ね、焼いたトーストを咥えて靴を履いた。


 その姿をみたお母さんが、


 「なんか少女漫画みたいね、本当に角でイケメンとぶつかっちゃりとかして」


 「ふぁめてふぉふぁあさん(やめてお母さん)、ふぉんなふょうふぁん(そんな冗談)」


 すると母は呑気に、「ここで食べていけばいいのに」と言ったが、私は時間が無かったのでもう行きながら食べるという選択肢を選んだ。


 「いってらっしゃい」


 「んっんんん(行ってきます)」


 口にバンを詰め込みながら、私は玄関の外の世界へ飛び出した。


ーーーーーー


 (やばいっ、マジで遅刻する!)


 私はその長身の長い脚を生かして、一歩を大胆に、そして豪快に走っていた。


 風を切る感覚が気持ちいい。

 
 にしてもお母さんは少女漫画の見過ぎでしょ、流石にそんな偶然が起こる訳ないよね(フラグ)

 
 次の曲がり角が見えた辺りでそう思って、にやけながら全速力で曲がり角を曲がった瞬間だった。

 
 『ドンっ』


 「えっ!?」


 「きゃっ」


 そしてぶつかるや否や、私の口の中で咀嚼していたトーストが一気に喉の奥に入り、呼吸困難に陥る。


 「が,が,あががががが」

 
 「えっ!?って痛っ!」


 私の眼の前の視界が段々暗くなる。

 
 「……ですか!?」


 誰かの声が聞こえるが、私はその声の主を確かめることもなく気絶した。


 ーーーーーー

 私が次に目を覚ましたのは、病室だった。

 
 「大丈夫でしょうか?樋口さん」


 看護師に声を掛けられる、あれ?なんで私病院に居るんだっけ?


 「救急車が来た時には、もう、息をしていなかったので……良かったです」


 「は、はあ。ところで側に男の人居ませんでしたか?」


 「あっ、その男性なんですけど」


 「どうかされましたか?」


 私はまさかと思うも、訊いてみる。


 「あなたとぶつかった衝撃で腕と手首と両足首を捻挫、それと大分擦り傷ができてました」


 (ですよね~)


 そう。私はこの高身長(ガタイがいい)に昔から振り回されてきた。


 小学生の時は女の子とぶつかり、女の子を怪我させあだ名が『』に。


 中学生の時は小柄な先生とぶつかり、先生をも怪我させあだ名が「』に。


 そして高校生で……はぁ。


 「病室に案内してもらってもよろしいでしょうか?」


 「ええ、構いませんよ」


 こうして看護師さんに彼の病室まで案内してもらった。

ーーーーーー

 「失礼します」


 私はノックして彼の病室に入った、そこにいたのは窓の景色を見つめる小柄な青年。

 
 「もう大丈夫なんですか?」


 「え、ええ」


 彼は彼自身、自らが怪我しているのにも関わらず、それどころか怪我をさせた私の心配をしてくれている。


 「えっと、ほっんとうにごめんなさい!」


 私は頭を深々と下げる。


 「頭を上げてください、そんなに謝らなくていいです」

 
 「で、ですが。この体格のせいですよね……本当に申し訳ないです」


 私はこの体格……のせいでもあるが、1番は私の前方不注意によって起きた事故だったのだろう。


 「僕はあなたのその長身が羨ましいです。高校生なのに150cmしかないってやばいですよね」


 羨ましい?まあ、別に悪い気はしないけど。

 
 「そんなこと無いですよ。むしろ私はあなたのその身長が羨ましいです」


 「もしかして煽ってる?」


 すると彼は少し怒ったように頬を膨らませた。


 「い、いえ!別にそんなつもりじゃ……」

 
 「冗談ですよ、ところでどこの高校なんですか?」


 「今日転校するはずだったんですけど、西海学園の2年2組、樋口遥です」


 「西海学園!?僕もそこです。しかも同じクラス……」


 「本当ですか!?できれば色々教えてほしいです」


 「もちろん!」


 そして私はしばらく彼と話した。これまでの学校のこと、西海学園のこと、身長のコンプレックスのこと。


 「また明日も来ますね」


 「はい」


 そうして私は病室を後にした。


 彼と話したこの時間は本当に楽しかった。時刻はもう夕方、流石に家に帰るかなぁ、親にはなんて説明しよう学校にも。


 私は新しい学校生活を期待に胸を膨らませた。


 


 


 


 

 

 

 
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