女鍛治師のライナ わけあり勇者様と魔女の箱庭でスローライフ

悠木真帆

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第7話 「悪役聖女の告白」

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私たちが暮らす王国には聖女様がいる。

王国民のほとんどが崇拝するパーラック聖教の絶対的権力者ーー

聖女メレティス様

地面に届きそうなほどの長い金髪、透き通るような白い肌、小柄で10歳くらいの幼女に見えるそのお姿。

ひと目見たとき誰しもが天の使いを想像する神秘的なお方。

到底、80年以上生きているとは思えない。

聖女様が教会に君臨されて以降、パーラック聖教の勢いは凄まじい。信仰は王国の外にも広まり、
信者の数は王国民の人口を越える。

その一大勢力に恐れをなした国王はパーラック聖教に頭があがらない。

だが、私たちのいるこの街は違う。

「は? お祈りで病が治る? バカバカしい。妾が処方した薬でも飲んで寝れば治るのじゃ」

と、この街の人たちはパーラック聖教を信仰しているものの聖女よりわが家の魔女に親しみを感じているのだ。

だから、パーラック聖教はこの街をおもしろく思っていない。

「メレティス? あやつは女学校時代から友達の輪を指咥えてみている辛気臭いやつじゃったからのう」

と、魔女はロッキングチェアに座ってボリボリとクッキーをつまみながらケタケタと笑う。

魔女曰く聖女様は教え子だったらしい。

そんな聖女メレティス様は勇者グレイル一行に牙を向けてきた。

「お嬢ちゃん、すまねぇ」

スキンヘッドの店主が冒険者ギルドにやってくるなり私に頭を下げた。

ワケを聞けば、パーラック聖教の妨害がはじまったとのこと。

それは昨日の出来事ーー

店主はいつものようにカウンターで商品である短剣を絹の布で拭きながら手入れしていると
金の縁取りが入った白い修道服に身を包んだ男性2人が押し入ってくる。

「な、なんなんだ⁉︎ お前たち!」

「グランツ・ファクトリーの武器を売っているってのはこの店だな」

「そうだが」

「取り締まらせてもらう」

男たちは突然、棚や商品を蹴り倒して押収をはじめる。

「あんたら何をしているんだッ!」

店主が慌てて男のひとりを後ろから羽交締めにするが、簡単に解かれてしまう。

「貴様が売っているのは魔女の魔道具だ」

「そんなものは置いてない!」

「聖女様のご命令だ。この店に営業停止を命じる」

店をめちゃくちゃにされた店主は泣き寝入りするしかなかった。

グレイルは尋ねる。

「どうして聖女様は急にこんな横暴なマネを?」

「わからん⋯⋯嬢ちゃんは心当たりあるかい?」

「母親なら聖女様の恨みをたくさん買っているけど⋯⋯」

思い返せば⋯⋯

魔女は再びロッキングチェアに座ってボリボリとクッキーをつまみながらケタケタと笑っていた。

「なーにが聖女じゃ。あんなの人のマナが可視化できるってだけのことじゃ。それ以外は普通の人間となんら変わらん。
その人がオーラのようにまとって見えるマナのゆらぎをみて、あなたは悩んでますねってテキトーな感想を述べてるだけじゃ。
悩みがない人間おるわけないことをいいことに本当、テキトーなこと抜かす。信じる人間も信じる人間じゃ。
なんじゃライナ。なんか悩みでもあるんか? このクッキーはダメじゃぞ。これは妾のクッキーじゃ、食べたきゃパピィに焼いてもらい」

母親はお父さんと結婚してから太ったらしい。

「ただ厄介なのは聖剣を使って人のマナを吸収できるってことじゃ。あやつは男の信者からマナを吸収して若造りしておる。
まったくいつまでロリッ娘の姿でいるつもりじゃ。もうばあさんじゃろが。ライナ、すまんのう。尻が椅子から抜けなくなってしまったんじゃ。
はやくパピィを呼んできてくれ。妾はおしっこに行きたくて限界じゃ。ライナ、どこへ行く。ライナ!」

言うまでもなく私はこの母親が嫌いだった。

「やっぱ皆目見当つきません⋯⋯」

頭を痛めた私はあからさまにウソをついた。

だが、魔女が長らくこの街に暮らしていたはずなのに聖女様から妨害を受けたのはこれがはじめてた。

すると、ドワーフの戦士“ゴドル” がやってくる。

「グレイルッ!」

「ゴドル、どうしたそんな恐い顔をして」

「大変申し訳ないが、俺たちはこの勇者パーティーから抜けさせてもらう。すまない」

深く頭を下げるゴドル。

勇者パーティーを組んではや1ヶ月が経過していた。

対ドラゴン戦を想定して攻撃パターンが近しい大型モンスター相手に幾度となく戦闘中の連携を磨いてきた。

ここまで血を滲む努力してきたはずなのに⋯⋯

ゴドルの姿から無念さが伝わってくる。

「聖女様か」

「さすがグレイルだ。わかっているようだな」

「詳しいことまではわからない。教えてくれるか?」

「昨晩、俺たちが寝泊まりしている宿舎にパーラック聖教の信徒たちがやってきて
勇者グレイルは魔剣使いゆえ異端である。行動をひとつにするなら異端者として捕縛すると言われたのだ。
見せしめに他のメンバーは聖女様のところへ連れて行かれた。本当にすまない」

どうして急にこんな実力行使を?

「勇者様、ライナさん、やっぱりここにいた!」

いつぞやのゴブリン討伐のときのキース君たち3人組パーティーが血相をかいて飛び込んでくる。

階級も上がってずいぶんと逞しくなっている。

「お2人ともなにをやらかしたんですか! パーラック聖教の修道士たちがお2人を糾弾するビラを配っています!見てください」

キース君がテーブルの上に置いたビラには殴り書きでこんなことが書かれている。

“ドラゴンを倒そうとしている勇者があろうことか淫らな魔女に籠絡されて禍をもたらす魔剣を使おうとしている“

淫らって⋯⋯ちょっと何これ恥ずかしいじゃない。

「あることないこと書いて街中に噂を広めるなんて許せないです。貧相で飾りっ気のないライナさんを見ればそんな女性でないことみんなわかります」

このガキ、いまココでブチ殺してやろうか。

「しかも『直訴だッ!』って叫んで領主様の屋敷を取り囲んでいるとことです」

「困ったわ⋯⋯次は領主様がここに駆け込んでくるわね」

トーレはそっちの心配⁉︎

「俺が聖女様のところに行って話をつけてくる」

「グレイル! 私も行かせて。風評被害もいいところだわ。グランツ・ファクトリーのオーナーとしてひとこと言わないと気が済まない」

「もちろんだ。ライナのつくった剣はドラゴンから世界を救う切り札って聖女様にわからせてやる」

***

私はグレイルを案内して、この街の中心部にあるパーラック聖教の教会堂へとやってきた。

入り口正面の広場には聖女メレティス様の銅像が建立されていて、行き交う人々の目を惹いている。

私たちは広場を横切り、正面入り口の大扉の前に立った。

すると大扉の方から勝手に開きはじめて、向こう側から武装した聖騎士たちを従えた聖女メレティス様が姿を現した。

まるでグレイルがここへやってくるのを待ち構えていたようだ。

「勇者グレイル様にございますね」

「その通りだ」

修道女が聖女様に歩み寄り顔を隠していた白いベールを捲る。

こんなに近くで御尊顔を拝するのは初めてだけど本当に可愛らしいお方。

「お待ちしておりました。やはり勇者となるだけあって目が覚めるようなマナの量にございますね。
1キロ先からあなた様がこの教会堂に近づいてくるのがわかりました。これだけの量、かつてお慕いしていた鍛治師を思い出します」

聖女はマナに恋するーー

「そこのあなたはお父様にそっくりですね。あの憎たらしい魔女の血を引いていなかったら可愛がってあげたのに」

さきほどまで目を閉じていた聖女様が目を見開き私を見やる。

すごい威圧。

この鋭い眼光だけでもう帰りたい。

「ここへやってきた目的はわかるだろ。グランツ・ファクトリーへの風評被害を今すぐやめること。そして俺の仲間を解放しろ」

「たやすいことにございます。勇者様がお腰にぶら下げている魔剣を捨てて、ワタクシが授ける聖剣でドラゴンを退治なさいませ。
お仲間もあのような身分卑き荒くれものではなく、我が方の聖騎士をお使いくださいませ」

「断る」

「ならば仕方ありません。アレをここに」

聖女様は背後の聖騎士に指示をする。

すると左右から磔にされた女剣士”ベリンダ“、槍使いの”ターク“、忍者の“フィル”、僧侶の”ドーク“と縄でグルグル巻きにされた魔術師エルフ”マドル“の
5人を乗せた荷車がやってくる。

しかも磔にされている4人は冒険者の命である手のひらに杭が打ち込まれた状態で。

「ヒドイ⋯⋯」

目を覆いたくなるような光景だ。

「ワタクシどもはこの者たちを異端者として処刑するだけにございますから。
まぁエルフの娘は政治問題に発展すると面倒なので鞭打ちだけでお返しいたします」

「くっ⋯⋯」
グレイルは唇を噛み締める。

「さぁ、ワタクシの聖剣をお使いくださいませ」

後方の聖騎士たちも聖女様に続けるようにして『お使いくださませ』と、復唱する。

「お使いくださいませ」

『お使いくださいませ』

「さぁ」

『さぁ』

40人近くはいるのか?こんなに大勢から一斉に言われると屈してしまいそうになる。

「この聖剣には格別なマナが込められています。この剣ならばドラゴンの首を落とすのはいとも簡単にございます。さぁ、この場でお受け取りください」

グレイルは拳を振るわせながら聖女の前に進み出る。

「ちょっとグレイル!」

グレイルは聖女様の前でひざまづく。

「さすがは勇者様。賢明な判断にございます」

聖女様はグレイルが高く掲げた手のひらの上に聖剣を置く。

グレイルは聖剣を握りしめて立ち上がる。

「魔女の娘よ。そのように恐い顔をしないでおくれ。父親と同じ過ちを冒さなかっただけまだ幸せだと思うのだ」

「それはどういう意味ですか? 父は何ひとつ間違った生き方はしていなかった。そのはずです」

「その目、あの日の父親そっくりですよ」

そう言って聖女様は3ヶ月前、父の死の間際のことを語りはじめた。

***

3ヶ月前のこと。ダッド・グランツは「メレティスはいるかッ!」と、繰り返しながら教会堂の赤絨毯の上を進む。

憤慨していた様子に聖女メレティスは袖から姿を表して祭壇の上からダッドを見下ろす。

「ワタクシならここですよ。ずいぶんと久しぶりですね」

「メレティス。貴様はどこまで堕ちれば気が済むのだ」

「なにをカリカリしているのです。あらまぁ!ずいぶんと見ないうちにあなたを包み込んでいた膨大なマナが並の人間ほどしかありません。
魔女に吸われてしまったのですね。おいたわしい。だからそのような俗物な人相に」

「俺を怒らせているのはメレティス。貴様だ! 西の隣国で起きている戦争。そこで使われている武器はこの街の鍛治師たちがつくったものだと聞いた!
俺の打った剣は人間同士が血を流し命を奪うためにあるんじゃない。獣やモンスターの命を頂き、人間が生活していくためにあるんだ」

「致し方ないのです。彼の国の民は救いを求めていました。だから立ち上がるための正義(ぶき)を与えたのです。
ですが国王もまた民を思い悩んでおられた。神は平等です。だから領主にも抗うための正義を与えました。
双方、幾らかの心付けを頂き、我が神に感謝しておられるのです。なにを怒ることがあるのです」

「大ありだ! 貴様たちパーラック聖教が“死の商人”だという噂は本当だったのだな」

「ダッド。あなたはそのような物の見方しかできないのですね。これも魔女の影響なのでしょうか」

「俺の感覚が間違っているというなら。魔女を嫁にしてつくづく正解だったと思うぜ」

「ダッド今のは聞き捨てになりませんね。私はあなたをお慕いしていたのですよ。
だから残念でなりません。20年前、あなたと添い遂げるための聖剣がほしくて、聖剣づくりを依頼しました。
まさか魔女なんかにたぶらかされて魔剣をつくるなんて夢にも思いませんでした」

「添い遂げるため?⋯⋯そのための聖剣? なんのことだ」

「話していませんでしたか。魔女は老いることを知らない化物ですが、ですが神の名代である聖女は若さも寿命もたいていの人間と同じなのですよ。
しかし、聖女がこの世を離れてしまっては、世界は混沌に満ちてしまいます」

「メレティス、お前さっきからなにを言ってるんだ⋯⋯」

「ダッド、さきほどあなたはワタクシのことを守銭奴のように罵りましたが勘違いです。
ワタクシが欲しているのはマナです。とくに肉体から魂が離れるときに放出されるマナが格別にお肌に良いのですよ」

「あきれたぜ。その姿を維持するためだけに大勢の命を奪ってきたのか。どこまで自己中心的なんだ」

「これもすべてダッドがいけないのですよ。あのときワタクシに従って素直に政権をつくっていれば。
あなたのマナを取り込んで数百年は安泰の寿命と若さを手に入れることができたのに」

「イカれていやがる。俺は人間が生きていくために奪った獣たちの命を供養するためにパトリック聖教に入信して祈りを捧げてきた。
だけど、まったくの無意味だったことがわかった!この場で棄教してやる」

ダッドは首からぶら下げていたパーラック聖教のシンボルマークをチェーンから引きちぎり、床に叩きつける。

「嘆かわしいですね」

聖女は背後に隠していた剣を取り出す。

「この剣はなまくらです。ですがあなたのマナを吸収することによって聖剣となるのです。稀なる存在であるあなたのマナを!」

「なにをーー」

聖女の右手に握られていた剣は、瞬きひとつする間にダッドの胸に突き刺さっていた。

「うッ⋯⋯」

吐血しながらもダッドは聖女を睨みつける。

『帰りが遅いと思ったらこんなところにおったかダッド』

聞き覚えのある女性の声に聖女は天井の方を見やる。

そこには箒に腰をかけて空中を漂う魔女の姿。

「先生ッ!」

「メレティス、そちはまだこんなくだらないことをしておったのだな」

魔女はゆっくりと降りてくる。

そしてダッドの胸に突き刺さった剣を引き抜いて顔も向けずにメレティスの方へ投げ飛ばす。

飛んできた剣は聖女の頬を切りつけて壁に突き刺さる。

「帰ろうか。ダッド」

魔女はダッドを抱きかかえて赤絨毯の上を歩き出す。

「おのれ魔女ッ!」

聖女は壁に刺さった剣を引き抜いて、天高く掲げる。

「マナよ!この剣に宿れ」

教会堂内にいた信徒そして広場周辺を歩いていた通行人が次々と倒れて、体内から青白い光が飛び出して聖女が掲げた剣に宿る。

「くたばれ魔女ッ!」と、聖女は魔女の背後から斬りかかる。

***

澄ました顔でこんこんと語る聖女様

「魔女を仕留めるためにマナを吸収しすぎましてね。このとき倒れた者たちは疫病で亡くなったことにさせていただきました」

なんだろう⋯⋯身体の内から込み上げてくる熱いものはーー

そうか。これが怒りなんだ。

私のマナが赤く染まっていくのがわかる。

するとグレイルが私の方に向き直して口を開く。

「聖女様、ひとつ提案がございます」
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