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月野木天音とプリミティスプライムの伝説
第93話 「如月那由多」
しおりを挟む「ドローンから送られてくる映像を眺めながら、そなたらが同級生同士で殺し合う姿を楽しませてもらうぞ。
この玉座の上でのう」
「いい趣味をしているな。人の王よ。いや、担ぎ物だったな」
「くっ! 殺せ!紫芝さやか」
「もちろん。コレで堂々と殺せるよ。月野木天音を!」
***
どうして撃たれた⋯⋯
普段なら避けられる攻撃がまったく見えなかった。
しかもためらいながら撃った弾だ。
兵士の空気の中に僕への殺気が混じっていたから警戒はしていたけどーー
ということは女王様は僕たちを見限ったわけか。
なら、とりあえず桂と内海を殺すよ。
『如月流抜刀龍閃斬(きさらぎりゅうばっとうりゅうせんざん)』
“⁉︎”
まさか桂が僕の剣撃を避けるなんて。
「どこみてんだよ。ナユタ」
「うッ」
見えなかった⋯⋯
桂のキックはいったいどこからーー
「どうした? 驚いたような顔して」
「⁉︎」
いつのまに僕の背後に。
「呆けた顔してると!」
「うッ」
「ほら、今度は俺の拳がお前のお腹にめり込んだぜ」
なぜ⋯⋯背後にいたはずの桂のパンチがお腹に⋯⋯
「今度は俺が行くぜ」
内海!
「ぐはッ!」
「ハハハッ、今度は顔面にパンチ喰らってよろけてやんの」
「ナユタ。お前弱かったんだな。俺も内海もたいした攻撃してねぇぞ」
「お腹の撃たれたあと痛そうだよな。せっかくだから俺が生成した石埋め込んで塞いでやるよ」
「ああああ!」
「ナユタ、お前、さっきから俺たちが超高速で移動してるからビビってんだろ?
ハハハッ、そうだよな。俺たちから見たらお前の動きは動画のコマ送り再生みてぇなもんだから」
「めっちゃおもしろい動きしてるぜさっきから」
「ほらよ」
“ドサッ”
「ちょっと小突いたら地面に倒れたぜ」
「ハハハッ、腹いてぇ。だっせぇぜ」
「こうやって顔を踏んづけちまえば息もできねぇだろナユタ。さぁ、どうやって殺してほしい?」
「⋯⋯」
「そんな目をするなよ。安心しな。一瞬では殺しはしねぇよ。もがき苦しむようにじわじわ殺してやるんだから。
いっそのこと殺してくれって叫びたくなるくらいにな」
「⋯⋯」
「そうだ。俺がつくった石の下敷きにしてやるぜ。それを内海の能力でじわじわと重くしてやる。
骨が潰れるのが先か内臓が潰れるのが先か。楽しみだな」
「⋯⋯」
「如月流だかなんだか知らねぇが、俺はなぁ。右条とお前みたいなキャラがボコれねぇのが
一番むしゃくしゃするんだよ。強いから手出しできねぇと思っていい気になりやがって
俺たちはなぁ、ずっとこうしたかったんだぜ」
ーー
「ぎゃああああ!」
「桂ッ!」
「腕が俺の腕がーッ!」
「桂、僕はさっきから君をこうしたかった」
「なぜだ? 俺の能力下でどうして普通に動けるんだ? ナユタ⁉︎」
「転ばされたときに気づいた。どうやら重力を弄ったようだね。だったらいつもより早く動けばいい⋯⋯」
「俺の能力”重加速“の攻略法をもう見つけたっていうのか? ありえない。
早く動くたって、常人じゃありえない速度だ。ナユタの重力だけを通常の5倍にしたんだぞ。
俺たちから見ればお前の動きはスローモション。重加速にあって通常に動けるなんてありえない。
てめぇはジェット機並みの速度で動けるっていうのか」
「いけるよ。ほんの一瞬だけどね」
「⁉︎」
『如月流抜刀術”神速“』
「「⁉︎」」
「君たちも一瞬でバラバラだったね」
「「「「「「「⋯⋯」」」」」」」
「あとは君たちだったか」
「ひいいいい」
ーーパァンッ
***
「うっ」
「葉賀雲、忍者のクセに対したことなね。ほら、膝をついてないで立ちなよ。
私の鞭で八つ裂きにしてやるから」
「⋯⋯」
「少しは私を濡れさせてみなッ!」
「僕が盾になる。早く女王を⋯⋯」
「⁉︎」
「月野木天音が手を翳した。何をするつもりだ。いったん退がる」
ーーパァンッ
「「⁉︎」」
「紫芝が後ろに飛び退がったところにガラスを突き破ってきた弾丸が⋯⋯」
「ありえない⋯⋯そなたは何をしたツキノキアマネ」
「妾は何もしておらぬ。だがむしろこれからしようと思ってなんとなく手を翳したら
飛んできた弾に紫芝さやかの頭が吹き飛された」
「まさか⋯⋯」
「そなたも映像で見ていたではないか。臆した兵士が引き金を引いた姿を。
放った弾丸は如月那由多の身体を貫いたことで軌道が曲がってここまで飛んできた。
そして妾が何かすると思って間合いを取った紫芝さやかに被弾した」
さらばだ。如月那由多
「バカな。偶然だとでも言いたいのか⋯⋯」
「そうだ。これが妾の力”幸運“」
「なるほど⋯⋯これほどの奇跡を見せられれば認めざるおえない。
ギール。儂はこの玉座を降りる」
「女王陛下!」
「神罰があってはたまらぬからな。 そなたは残された唯一の家族じゃ。
そなたと静かに暮らそう⋯⋯」
「ニュアル⋯⋯」
「戦(いくさ)が終われば学校が再開する。
同級生たちと勉学に励むがよい。妾が失った日常をくれてやる」
「そなた、鷲御門のーー」
「さぁ、この城から去るが良い。ダグラス・オルト内務卿、連れて行くが良い」
「はッ、我が神プリティミスプライム様」
「ダグラス、そなた⋯⋯」
「人の王の玉座も悪くないな」
扉が閉まり、2人はただの人となってこの広間を去った。
さてと。神様を演じるのは大変だ。
あとは紡木さん、乾さん、私たちのメイちゃん先生を取り戻してーー
つづく
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