【完結】美しい人。

❄️冬は つとめて

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有無を言わさぬ、美しい人。

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「ウイリアム様が、大好きなの!! 」

その場が、静まり返った。
美しい人もウイリアムも、驚いた顔をしてナンシーを見ていた。

ウイリアムが、一歩近づく。
「ナンシー、本当に
「本当なの!? 」
ウイリアムとナンシーを阻む様に美しい人が、間に入る。

「ナンシー、恐がらないでいいのよ。わたくしは、貴方の味方ですわ。」
美しい人は、ナンシーを抱き締める。

「伯爵家の事を思ったのね。大丈夫よ、わたくしが護ってあげるわ。」
美しい人に抱き締められて、甘い匂いがする。

「ウィル兄様が、恐いのね。解るわ、紳士ぶっているけど獣ですもの。」
「違うの私は、本当にウイリアム様が 
「駄目よ、少しでも甘い顔をすればウィル兄様が付き纏ってストーカーと成ってしまうわ。」
ナンシーの言葉を遮って、話を聞かない。美しい人は『解ってるわ。』と、頷いた。

「ナンシーは、可愛らしく優しいのね。わたくしを、信用して。お父様達を わたくし、護って見せますわ。」
覗き込む様に、美しい人はナンシーに微笑む。ナンシーは、余りの圧力に言いどもってしまう。

「カミーユ。ナンシーから、放れろ。」
「嫌ですわ。」
美しい人は、益々ナンシーを抱き締める。甘い匂いが、ナンシーを包む。

「ナンシーは、俺を好きなんだ。そうだろ、ナンシー。」
ウイリアムは、嬉しそうにナンシーに問い掛ける。

「ウイリアム様…」
ナンシーは、感極まって涙を流す。

「あら、あら、あら。ウィル兄様、おやめに成って。ナンシーは、泣くほどウィル兄様が恐いのですわ。」
美しい人は、庇うようにナンシーを抱き締めた。

「伯爵さん。ウィル兄様とナンシーの婚約解消を、進めてちょうだい。」
美しい人は、有無を言わさぬ圧力を掛ける。伯爵夫妻は、戸惑ってナンシーを見る。ナンシーは泣きながら『いや、いや』と、首を振っていた。

「勝手なことを言うな、カミーユ!! 俺とナンシーは、両思いなんだ!! 」
「違いますわ。昨日ナンシーは、泣きながら わたくしに 婚約解消をすると訴えて折りましたもの。」
きつく見詰める姿も、美しかった。

「ウィル兄様の乱暴な姿を見て、恐くなってしまったのよ。そうでしょう。」
有無を言わさぬ圧力で、ナンシーに微笑みかける。

(違う、違うの。ウイリアム様が、恐いわけじゃない。ただ、二人の愛し合う姿を見るのが嫌だっただけ。でも、)
声が出なかった。

(でも、ウイリアム様が私を好いてくれてるなら。)

「……た、助けて…、」
涙と鼻水で、顔をぐしゃぐしゃにしながらナンシーは 助けを求める様に手を出した。

「もちろん 助けて、差し上げますわ。」
無情にも、ウイリアムに向けて差し出されるはずの手を 美しい人は取った。

「お聞きになりましたでしょう、ウィル兄様。ナンシーは、わたくしに助けを求めましたの。」
美しい人は、勝ち誇ったようにウイリアムを見た。ウイリアムは、愕然と顔を青くする。

「カミーユ様、御願い致します。ナンシー様をウイリアム様に、返して差し上げて下さい。」
見かねて執事のロレンスが、声を掛けた。

「侯爵家の存亡の危機なのです。ウイリアム様は一人息子、ナンシー様と結ばれなければ もう、結婚はしないと。」
目頭を、執事は押さえる。

「ナンシー様との婚約が決まるまでは、気も漫ろで。仕事など手に着かず。甲斐性のない男には、ナンシー様が苦労すると脅し(コホン。)叱咤激励して、今にちに至るのです。」
執事の言葉に、ウイリアムは顔を赤くし。伯爵家の人々と夫妻は『それは、侯爵家の危機だ。』納得をした。

「カミーユ様。ナンシー様をウイリアム様にお返し下さい。このままでは、ウイリアム様は、腑抜けに成って侯爵家を潰してしまいます。」
涙ながらに、訴えた。

「あら、あら、聞きまして伯爵さん。腑抜けの上に、甲斐性無しですって。そんな男の処になど、可愛いナンシーをお嫁に差し上げるのは嫌でしょう。」
「えっ!? 」
美しい人は、伯爵に圧力を掛ける。伯爵は、急に振られて言いどもってしまう。

「ナンシーに生活の苦労を掛けたいの? 掛けたくは無いわよ ねっ、伯爵さん。」
「それは、もちろん。」
伯爵は、圧力に負けた。だが、美しい人が言っている事は、正論で 頷くしかなかった。益々、ウイリアムの顔が青くなる。

「ウィル兄様。此処は、男らしく スッパリとナンシーを自由にさせてあげて。ナンシーを、愛しているなら。」
美しい人は、諭すようにウイリアムに話し掛ける。ガックリと、ウイリアムは俯いた。

(ウイリアム様、好きなの。大好きなの。)

美しい人は、ナンシーに微笑んで見せる。

(声を出して、ナンシー。ウイリアム様が、私をあれ程求めてくれているの。ちゃんと自分の気持ちを伝えて。)

ナンシーは、先程自分の気持ちをウイリアムに伝えた。しかし、美しい人がその気持ちをねじ曲げた。

(駄目よ、もっと強く言わないと。美しい人は、私とウイリアム様を別れさせたがっているのよ。)

「大丈夫よ、ウィル兄様。わたくしが、慰めてあげる。」
美しい人は、ウイリアムに優しく語りかける。

(ウイリアム様に、もっと強く言わないと。大好きだって。)

「そうね、二人で旅行に行きましょう。傷心旅行に。」
美しい人は、ウイリアムに微笑みかける。

(やめて、おねがい。ウイリアム様を取らないで!! )

「わたくし、ウィル兄様がナンシーを忘れられるように 慰めてあげるわ。」
美しい人は、ナンシーに満面の笑みで微笑みかけた。

「いやーー!! ウイリアム様が、好きなの!! おねがい、ウイリアム様を返して!! 」
「ナンシー!! 」
ウイリアムはナンシーの声に驚き、カミーユから彼女を奪い取った。

二人は、抱き締め合う。
「ナンシー。」
「いや、好きなの。ウイリアム様を、取らないで。おねがい、ウイリアム様を。」
子供の様に、ナンシーは泣きじゃくった。

美しい人は、二人を見詰めた。ゆっくりと、二人に近づいていく。

「あら。それではまるで わたくしが…」
美しい人の言葉に、伯爵家の人々は ごくりと唾を飲んだ。
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