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恐れを知らぬ帝国。
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リフターは、辺境の者たちは、ゆっくりと帝国に向かって進んでいた。堂々と街道を黒い数千の集団が帝国へと進軍していた。
街道の道すがらにある、村や町、街道を旅する者たちは不運なことに総て命を刈られていった。
街では、外壁の門を閉めたらその中にいるものは総て命を刈られている。血の海の中、辺境の者たちは何の感情もなく休憩を取る。そして、朝になれば門を開け放ち、帝国へと足を進めるのであった。
街道を突き進む黒い集団。運良く街道を外れ難を逃れた者たちは帝国へ向かう黒い死神の列を震えながら見送っていた。
「黒い数千の集団が、シュガーレ国方面から帝国へと向かっての進軍を確認しました!! 」
会議室に挨拶もそこそこに、入ってきた使者は青ざめながら要件を告げる。
「道すがらの街などを、壊滅させながら……」
自ずと声が小さく途切れる。
「馬鹿な!! なぜ、我が帝国に来るのだ!! 」
「復讐ではなかったのか!? 」
「そうだ、娘子の復讐と言っていたではないか!! 」
皇帝の後を追及て、貴族たちは先程『復讐』と報告した元帥の副官を責めた。
「娘子を処刑した両国を滅ぼして、なぜ此方に向かってくるのだ。」
元帥は頭を抱える。元帥にしては、彼らとは戦いたくはない。彼らの強さを肌身に感じているのは元帥たち軍人であった。
馬鹿な貴族や皇帝が領土拡大を目指し、元帥たちの進言に耳をかさなかった。死ぬのは、先陣に立つ軍人と金の為に志願する貧乏人だけだ。貴族の者たちは、地図上の上だけで議論を進めている。
「辺境伯の令嬢は、いつ亡くなられたのです。」
「成人の儀の三日後に、絞首刑に処せられた。」
皇太子の問に元帥は応える。
「その三日間、辺境伯は何をしていたのです。復讐をするほど、令嬢を愛していたのなら。」
皇太子の言葉に、元帥はぎゅっと目を瞑った。
「……我が帝国軍と戦っていた。」
その場にいる者総べてが、目をみはり、皇太子は目を閉じた。
「まさか、それでか? それだけで我が帝国に攻め入ろうとしているのか? 」
皇帝が呆然と呟く。
「たかが、娘一人のために……」
「そんな馬鹿な……」
「だいたい、辺境伯は娘子を疎んじていたのではないのか? 」
「ああ、そうだ。そのように報告を受けていた筈だ。」
貴族らも信じられないと、呟きあった。
「成人の日には、親が付き添い祝福を与える。両国を滅ぼすほど令嬢を愛していたのなら、必ず辺境伯は成人の儀に令嬢をエスコートしていたでしょう。」
「そうだったなら、令嬢は死ぬ事はなかったと……」
皇太子と元帥は目を合わせた。
もし辺境伯が成人の儀に出ていたら、リフィルのエスコートをして断罪される場に共にいたら。リフターは愛する娘を命を掛けて護っただろう。その場の総ての者を刈り尽くしてでも。
でも、その場にいる事は出来なかった。その時、辺境伯は攻め入る帝国と戦をしていたからである。
護れたはずの娘を護ることが出来なくしたのは、帝国である。
帝国は、恨まれて当然であった。
帝国は何度も辺境の者たちと戦った。帝国は引くことはあっても一度も負けたことはない。そして勝った事もない。それは辺境伯が、引く帝国を追うことがなかったからだ。
「もし、本気で辺境伯が帝国を潰そうと来るなら……勝てない。」
元帥は呟く。
圧倒的な数を持ってしても、今迄勝てもせずあしらわれていたのだ。
「閣下……。」
元帥閣下の呟きに副官は死を覚悟する。
「陛下。直ちに、帝都の民の避難を進言する。」
「何を言っておる!? 」
元帥の進言に皇帝は驚愕する。
「勝てませんか。」
「勝てない。」
皇太子は素直に聞いた。ただ一言元帥閣下は応える。
「父上、直ぐさま民の避難を。」
皇太子も、皇帝に進言をする。
「お待ち下さい、皇太子様。たかが数千、帝国が全力を持ってあたれば負けることなどあるわけがない。」
「元帥閣下は、今迄勝てもせず兵糧を食い潰して引くだけのていたらく。」
貴族たちは、元帥閣下のこれまでの戦の結果を笑った。
「陛下。私なら、見事に辺境伯如き討ち取って見せましょう。」
「いや、ワタシこそ。」
「陛下、わたしに全軍をお任せください。」
そして、自分なら辺境伯を打ち倒せると豪語する。彼らの恐ろしさを知らずに。
街道の道すがらにある、村や町、街道を旅する者たちは不運なことに総て命を刈られていった。
街では、外壁の門を閉めたらその中にいるものは総て命を刈られている。血の海の中、辺境の者たちは何の感情もなく休憩を取る。そして、朝になれば門を開け放ち、帝国へと足を進めるのであった。
街道を突き進む黒い集団。運良く街道を外れ難を逃れた者たちは帝国へ向かう黒い死神の列を震えながら見送っていた。
「黒い数千の集団が、シュガーレ国方面から帝国へと向かっての進軍を確認しました!! 」
会議室に挨拶もそこそこに、入ってきた使者は青ざめながら要件を告げる。
「道すがらの街などを、壊滅させながら……」
自ずと声が小さく途切れる。
「馬鹿な!! なぜ、我が帝国に来るのだ!! 」
「復讐ではなかったのか!? 」
「そうだ、娘子の復讐と言っていたではないか!! 」
皇帝の後を追及て、貴族たちは先程『復讐』と報告した元帥の副官を責めた。
「娘子を処刑した両国を滅ぼして、なぜ此方に向かってくるのだ。」
元帥は頭を抱える。元帥にしては、彼らとは戦いたくはない。彼らの強さを肌身に感じているのは元帥たち軍人であった。
馬鹿な貴族や皇帝が領土拡大を目指し、元帥たちの進言に耳をかさなかった。死ぬのは、先陣に立つ軍人と金の為に志願する貧乏人だけだ。貴族の者たちは、地図上の上だけで議論を進めている。
「辺境伯の令嬢は、いつ亡くなられたのです。」
「成人の儀の三日後に、絞首刑に処せられた。」
皇太子の問に元帥は応える。
「その三日間、辺境伯は何をしていたのです。復讐をするほど、令嬢を愛していたのなら。」
皇太子の言葉に、元帥はぎゅっと目を瞑った。
「……我が帝国軍と戦っていた。」
その場にいる者総べてが、目をみはり、皇太子は目を閉じた。
「まさか、それでか? それだけで我が帝国に攻め入ろうとしているのか? 」
皇帝が呆然と呟く。
「たかが、娘一人のために……」
「そんな馬鹿な……」
「だいたい、辺境伯は娘子を疎んじていたのではないのか? 」
「ああ、そうだ。そのように報告を受けていた筈だ。」
貴族らも信じられないと、呟きあった。
「成人の日には、親が付き添い祝福を与える。両国を滅ぼすほど令嬢を愛していたのなら、必ず辺境伯は成人の儀に令嬢をエスコートしていたでしょう。」
「そうだったなら、令嬢は死ぬ事はなかったと……」
皇太子と元帥は目を合わせた。
もし辺境伯が成人の儀に出ていたら、リフィルのエスコートをして断罪される場に共にいたら。リフターは愛する娘を命を掛けて護っただろう。その場の総ての者を刈り尽くしてでも。
でも、その場にいる事は出来なかった。その時、辺境伯は攻め入る帝国と戦をしていたからである。
護れたはずの娘を護ることが出来なくしたのは、帝国である。
帝国は、恨まれて当然であった。
帝国は何度も辺境の者たちと戦った。帝国は引くことはあっても一度も負けたことはない。そして勝った事もない。それは辺境伯が、引く帝国を追うことがなかったからだ。
「もし、本気で辺境伯が帝国を潰そうと来るなら……勝てない。」
元帥は呟く。
圧倒的な数を持ってしても、今迄勝てもせずあしらわれていたのだ。
「閣下……。」
元帥閣下の呟きに副官は死を覚悟する。
「陛下。直ちに、帝都の民の避難を進言する。」
「何を言っておる!? 」
元帥の進言に皇帝は驚愕する。
「勝てませんか。」
「勝てない。」
皇太子は素直に聞いた。ただ一言元帥閣下は応える。
「父上、直ぐさま民の避難を。」
皇太子も、皇帝に進言をする。
「お待ち下さい、皇太子様。たかが数千、帝国が全力を持ってあたれば負けることなどあるわけがない。」
「元帥閣下は、今迄勝てもせず兵糧を食い潰して引くだけのていたらく。」
貴族たちは、元帥閣下のこれまでの戦の結果を笑った。
「陛下。私なら、見事に辺境伯如き討ち取って見せましょう。」
「いや、ワタシこそ。」
「陛下、わたしに全軍をお任せください。」
そして、自分なら辺境伯を打ち倒せると豪語する。彼らの恐ろしさを知らずに。
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