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次の獲物。

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ようやく長い夜が終わって、眩しい朝の光が舞踏会会場に注がれても彼らは王族たちは生きている。まだ、生かされている。

朝の光が、天からの迎えのようにきらきらと彼らを照らしている。その行く手を阻むように、リフターは光を背に彼らを見下ろしていた。

目は細められている、口元の口角も上がっている。微笑みをたたえている。でも、微笑んでいるのは顔だけだ、目はなんの光も映してはいなかった。

彼らは生きている、生かされている。苦しめと、もっと苦しめと。

騎士たちの下敷きになった者たち、王太子と王太子妃と王妃は潰れて死なないように助け出されていた。王と公爵は逃げ出せないように、足を潰されていた。彼らは苦しむ、自身で死ぬことも出来ずに。 

リフターが、それを許さない。

アフォガードは、何度も剣で刺される大剣は太ももに楔のように刺さっている。騎士たちの持っていた剣をリフターは火で炙り、それをアフォガードに刺している。体中を剣山のように剣が刺さっている、急所を反らしているので生きてはいる。出血死を起こさせないように、肉を焼きながら。アフォガードが痛みで感覚が麻痺をすれば離れ、アマージョの手足をゆっくりと踏み潰していく。

次々に繰り返される、残虐行為。其処はまるで、地獄であった。いや、地獄よりかはマシなのか、死ねば終わりが来るのだから。

だが、それをリフターは許さない。

リフターは残虐行為を繰り返す、痛みに慣れた者からは遠ざかり痛みを感じる者に近づいていく。淡々と意味なく繰り返している。

彼は壊れている、行き場のない虚しさと怒りを持て余している。

「リフィル、リフィル、愛しい娘よ。何処だ、何処に行った。」

リフターは一人一人に問い掛ける、娘を何処に隠したかを。亡骸さえあれば、諦めがついたかもしれない。

「なぜ、殺した。」
聞いた処でどうにもならないが、口からその言葉が漏れる。

なぜ、殺したかを。なぜ、死ななくてはならなかったかを。

「愛しい娘よ、護れなかった娘よ。」
なぜ、護れなかった。なぜ、間に合わなかった。

「成人の日に間に合えば……。」
 
断罪されたあの成人の日には、リフターは娘に会いに行く予定だった。例え嫌われていようとも、その日は無理にでも会って祝福を述べるつもりであった。共に、祝賀会に出るつもりであった。美しい、琥珀色のドレスを着たリフィルをエスコートして会場に。

「リフィル、リフィル、愛しい娘。」

リフターは気づいたように、上の方に目を向ける。

「ああ、そうだ。」
ふらりと歩き出す。アフォガードに近づいていく。再び刺されるのだと、アフォガードは恐怖する。

「そうだ。」
リフターはアフォガードに楔のように刺していた大剣を引き抜くと外に向かって歩き出した。

「帝国さえ、攻めて来なければ……。 」
呟く。

「帝国さえ攻めて来なければ、リフィルを護れたのに……。」
ズズズズズ………と、大剣を引きずりながら歩く。外に向かって。

既にリフターの意識から、床に転がるまだ息のある者が消えた。興味を失ったように、舞踏会会場を彼らを置いて外へと向かう。

まだ乾ききってない、血の床をペチャペチャ音を立てながら歩いて行く。その足音が離れて聞こえなくなった時、彼らはリフターから解放されたのを知った。恐怖からは解き放された。

後は死を待つだけ、だがそれもまだまだ時か掛かりそうであった。


リフターが城内から外に出ると、数人の辺境の者が待っていた。既に王都の住民は刈られ、彼らは頭を待っていた。殆どの者が、王都の外の野原で休息を取っている。頭のリフターの声が掛かれば、何時でも動けるように。

リフターが現れると、側近の者は水と食べ物を差し出した。リフターは歩きながら、水を飲み食べ物の肉を引きちぎり喰らう。

「帝国を潰す。」
「「「はっ。」」」
頭のリフターの言葉に恭しく頷く。

リフターは背に剣を担ぐと、用意されていた馬に飛び乗った。

馬が嘶き、リフターは進む。

次の獲物に向かって、帝国へと。







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