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森の中の墓石。
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キャンベル辺境伯は、リフターは娘の死を知ったのは一ヶ月も後だった。
攻め入る帝国を打ち払い王都に、リフィルに会いに来てはじめてリフターは娘の死を知ったのであった。
「リフィルが、死んだだと!! 」
「ああ御義兄様、すみません!! わたしの、わたしの、監督不行き届きですわ。」
リフィルの為の王都の屋敷で、アニタの妹はリフターの前で泣き崩れ落れた。
ここ数年影から見ることしか出来なかった愛する娘リフィルに、今日だけは嫌がられても成人の祝の言葉を送るために無理にでも会おうと思っていたのだ。帝国の所為で、祝の席(祝賀祭)は過ぎてしまっていたが。帝国を退けその足で王都に、喜び勇んで娘リフィルに会いに来たのに。
リフターは愛する娘の死を知った。
「なぜだ!! なぜ!! 」
「お従姉さまは、自分は呪われた子だと。伯母さまを殺して産まれてきた、大罪人だと嘆かれて。」
「違うと、何度も言ったのですが、リフィルは聞いてくれなかったのです。」
二人は泣きながら訴えた。
「違う!! アニタは命をかけて愛する娘を、俺に宝を残してくれたのだ!! 」
「そうですわ、お姉様はそういう方でしたわ。(本当にムカッくらい)」
「お従姉さまは、自分の中に流れる血が伯母さまを殺してしまったと嘆いて。自分は呪われた子だと、渓谷から川に……(ふふっ、嘘だけど)」
「呪われた血……俺の血が、アニタを愛する人を殺したと言うのか? 」
「リフィルはそう思っていたみたいですわ。わたしは違うと何度も教えて来たのですが。」
「お従姉さまは、自分を恐れて亡くなったのです。」
「俺の血が呪われていて……俺の血を恐れて……。だからリフィルは俺に会ってくれなかったのか……。」
茫然と立ちすくむリフター。
嘆き悲しむ二人は、上手く騙せたと俯いた下で体を震わせながら笑っていた。
「リフィルは……今何処に。」
「案内しますわ。」
屋敷の外れの森の中に、鬱蒼とした森の少し開けた所にリフィルの墓石はあった。
「お従姉さまは、誰も来ない静かな場所に埋めてと言い残して……。」
「ええ、せめて最後はあの子の言うとおりに静かな場所にと……。」
アクネラたちは、顔を覆いながら呟く。
リフターは小さな墓石の前で見下ろすように立ち竦んでいる。
「伯父さま、しっかりして!! わたしがいますわ、リフィルお従姉さまの代わりに伯父さまを大切にしますわ。」
「ええ、そうですわ。アクネラを、娘と思ってください。」
二人はリフターを慰めるように縋り付いた。
「帰れ……」
「「えっ? 」」
「一人にしてくれ……」
リフターが琥珀色の瞳を向けると、二人は震え上がった。
「ええ、そうね。」
「伯父さま……しっかりして。」
二人は心配そうな声を出しながら、そそくさとその場所を後にした。
一人きりになったリフターはその場に膝を折った。墓石の前で蹲る。
「帰ろう。」
ガリッと、素手で土を掻く。
「帰ろうリフィル。あの場所へ……」
ガリガリと、土を掘っていく。
「アニタのいる、あの場所へ。」
土が血に染まり爪が剥げてもリフターは掘るのをやめなかった。
「亡骸は、ありにも酷くて……。」
「伯父さまに見せるのは……」
一ヶ月も前だから既に腐敗しているのはリフターにも分かっている。
「だからどうした……リフィルには代わりない。」
酷くても腐敗していても、リフターは愛する娘を抱き締めたかった。そして、愛する人の傍に連れて帰りたかった。
ガリガリと、墓を暴く。
ガリガリと、掘り進める。
だがどれだけ掘り進めても、リフィルの棺は出てくることはない。リフィルは王都の外の森に捨てられたのだ罪人として。既に森に住む獣たちにばらばらにされ食べ尽くされているだろう。
此処は、この墓石は、リフターを騙すために用意し置いたただの石に過ぎない。だからどんなに掘り進めても、リフターはリフィルに会うことは出来ない。
攻め入る帝国を打ち払い王都に、リフィルに会いに来てはじめてリフターは娘の死を知ったのであった。
「リフィルが、死んだだと!! 」
「ああ御義兄様、すみません!! わたしの、わたしの、監督不行き届きですわ。」
リフィルの為の王都の屋敷で、アニタの妹はリフターの前で泣き崩れ落れた。
ここ数年影から見ることしか出来なかった愛する娘リフィルに、今日だけは嫌がられても成人の祝の言葉を送るために無理にでも会おうと思っていたのだ。帝国の所為で、祝の席(祝賀祭)は過ぎてしまっていたが。帝国を退けその足で王都に、喜び勇んで娘リフィルに会いに来たのに。
リフターは愛する娘の死を知った。
「なぜだ!! なぜ!! 」
「お従姉さまは、自分は呪われた子だと。伯母さまを殺して産まれてきた、大罪人だと嘆かれて。」
「違うと、何度も言ったのですが、リフィルは聞いてくれなかったのです。」
二人は泣きながら訴えた。
「違う!! アニタは命をかけて愛する娘を、俺に宝を残してくれたのだ!! 」
「そうですわ、お姉様はそういう方でしたわ。(本当にムカッくらい)」
「お従姉さまは、自分の中に流れる血が伯母さまを殺してしまったと嘆いて。自分は呪われた子だと、渓谷から川に……(ふふっ、嘘だけど)」
「呪われた血……俺の血が、アニタを愛する人を殺したと言うのか? 」
「リフィルはそう思っていたみたいですわ。わたしは違うと何度も教えて来たのですが。」
「お従姉さまは、自分を恐れて亡くなったのです。」
「俺の血が呪われていて……俺の血を恐れて……。だからリフィルは俺に会ってくれなかったのか……。」
茫然と立ちすくむリフター。
嘆き悲しむ二人は、上手く騙せたと俯いた下で体を震わせながら笑っていた。
「リフィルは……今何処に。」
「案内しますわ。」
屋敷の外れの森の中に、鬱蒼とした森の少し開けた所にリフィルの墓石はあった。
「お従姉さまは、誰も来ない静かな場所に埋めてと言い残して……。」
「ええ、せめて最後はあの子の言うとおりに静かな場所にと……。」
アクネラたちは、顔を覆いながら呟く。
リフターは小さな墓石の前で見下ろすように立ち竦んでいる。
「伯父さま、しっかりして!! わたしがいますわ、リフィルお従姉さまの代わりに伯父さまを大切にしますわ。」
「ええ、そうですわ。アクネラを、娘と思ってください。」
二人はリフターを慰めるように縋り付いた。
「帰れ……」
「「えっ? 」」
「一人にしてくれ……」
リフターが琥珀色の瞳を向けると、二人は震え上がった。
「ええ、そうね。」
「伯父さま……しっかりして。」
二人は心配そうな声を出しながら、そそくさとその場所を後にした。
一人きりになったリフターはその場に膝を折った。墓石の前で蹲る。
「帰ろう。」
ガリッと、素手で土を掻く。
「帰ろうリフィル。あの場所へ……」
ガリガリと、土を掘っていく。
「アニタのいる、あの場所へ。」
土が血に染まり爪が剥げてもリフターは掘るのをやめなかった。
「亡骸は、ありにも酷くて……。」
「伯父さまに見せるのは……」
一ヶ月も前だから既に腐敗しているのはリフターにも分かっている。
「だからどうした……リフィルには代わりない。」
酷くても腐敗していても、リフターは愛する娘を抱き締めたかった。そして、愛する人の傍に連れて帰りたかった。
ガリガリと、墓を暴く。
ガリガリと、掘り進める。
だがどれだけ掘り進めても、リフィルの棺は出てくることはない。リフィルは王都の外の森に捨てられたのだ罪人として。既に森に住む獣たちにばらばらにされ食べ尽くされているだろう。
此処は、この墓石は、リフターを騙すために用意し置いたただの石に過ぎない。だからどんなに掘り進めても、リフターはリフィルに会うことは出来ない。
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