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氷の王子、クラウス。それぞれの行動。
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卒業式が近づくにつれ、アンジェリカの髪はネジに化粧は濃くなっていった。
アルベルトとメイド達は心身ともに、窶れていった。
「アンジェリカ、我が愛しい娘よ。」
「はい。お父様。」
返事をした愛娘は、厚い化粧に覆われ面影はなかった。
最初の頃は、娘の思い人とやらを刀の錆にしょうと思っていたアルベルトだが。今は、娘の暴挙を止めるためには認めるしかないかと思い始めていた。
「婚約解消をしても、いいぞ。」
アルベルトの瞳は、潤んでいた。今にも涙が溢れそうだ。
「アンジェリカの好きなようにすれば、いい。」
もう、涙を止めることが出来ず流れていた。
「俺は、アンジェリカの幸せを願っている。」
涙ながらに訴えた。
アンジェリカは首を振った。
さらさらしていた銀髪は、伸び縮みするバネではなく、ガチガチに硬いネジのようになっていた。髪飾りもかなり盛っている。
「婚約解消はしないわ。」
「アンジェリカ。」
アンジェリカは笑ったが、厚化粧のため分からなかった。
「内乱を起こすわけには、いかないわ。」
「それは俺が、なんとかする。だから、」
「政略結婚ですもの。」
アンジェリカは、扇子を握り締めた。
「大丈夫だ、向こうも婚約解消を望んでいる。」
アンジェリカは父の言葉に、涙が流れそうになった。
(クラウス様は、婚約解消を望んでいるのね。)
「だから、婚約解消をしても大丈夫だ。」
アンジェリカは静かに項垂れた。
(アフロディ様を、愛していらっしゃるのね。)
内乱が起こるかも知れない政略結婚を解消してまで、アフロディを娶ろうとするクラウスに胸を痛める。
「婚約解消はしないわ。」
「アンジェリカ。」
「行ってきます、お父様。」
アンジェリカは、静かに部屋を出て行った。
「まだ、アンジェリカの思い人は分からないのか!? 」
「まだ、何も連絡はありません。」
「くそぅ!! いったい誰なんだ、アンジェリカをあんな風にした馬鹿野郎は!! 」
アルベルトは有り余る苛立ちを、剣の稽古と言って騎士達にあたるのであった。
学園へ向かう馬車の中で、アンジェリカは呟く。
「婚約解消はしないわ。」
(忘れ去られるのはいや。)
自分自身を抱き締めた。
(クラウス様のお心に、残りたい。)
「お二人の邪魔をすれば、きっと私をお嫌いになるわ。」
アンジェリカは、顔を覆う。
(愛されないなら、いっそ嫌われたい。)
「お母様がお父様の心に、傷を残されたように。」
アンジェリカの母親は、事故で亡くなっていた。ダイアナを護れなかったその事で、アルベルトは心に傷を負っていた。
(私もクラウス様のお心に、傷を残したい。)
「そうすれば、お母様のように覚えていてもらえるかも。ずっと。」
アンジェリカは奮い立った。
「そうよ。アフロディ様を虐めれば、クラウス様はお怒りになって婚約破棄を言って下さるかも知れない。」
アンジェリカは、首を傾げた。
「でも、虐めるって。どうすれば、いいのかしら? 」
虐められた事はあっても、虐められた事はないアンジェリカであった。
「皆様は、良く私の事を田舎者と。」
アフロディは、王都育ち。
「『この、王都育ち。』と、虐めればいいのかしら? 」
首を傾げる。
「艶やかなアフロディ様。」
(私がどんなに頑張ってもクラウス様は、気づいても下されない。)
アンジェリカは首を振る。
(むしろ暫くは、挨拶さえ。合ってさえいないわ。)
「田舎者が、艶やかな格好をしても似合わないと、呆れていらっしゃるのでしょうか。」
アンジェリカは、深く深く悩んでいた。
そしてシルビアは、責められていた。学園の玄関で愛すべきピュア様を待つ、取り巻き令嬢達に。
「アンジェリカ様を、どうにかして下さいまし。」
「そうですわ。あの縦ロールだけでも、やめさして下さいませ。」
「困るのよ、シルビア。ロディ様が、縦ロールに憧れて。」
シルビアは、目を反らした。
「私だって、頑張ってるのよ。色々と。」
シルビアは、涙が出た。
「でも、聞いてくれないの。」
「それが、ピュア様の特徴なのよ シルビア。」
「思い込んだら一直線。」
「脇目を振らず突き進む。」
取り巻き令嬢達は、代わる代わる立ち回り説明をする。
「その軌道に乗る前に、違う道へと誘導する。」
「それがピュアでない者の務め。」
「私達のする事なのよ、シルビア。」
キャシィは、シルビアを指差した。シルビアは目から鱗が落ちるように、涙を流した。
「でももう、軌道に乗ってしまったわ。どうすれば。」
シルビアは、項垂れた。
「情けなくってよ、シルビア。」
キャシィは、手を取った。
「そうですわ。私達、力になりますわ。」
バーバラは、左の肩に手を置いた。
「アンジェリカ様を護る事は、ロディ様を護ること。」
アリスは右の肩に、手を置く。シルビアは、涙を拭った。
「ありがとう、みんな。」
アリスは、右腕を空へと指差した。その方向を、みんなは見た。
「私達が、ピュア様を護るのです。あの星に誓って。」
朝なので、星は出ていない。
「「「はい。」」」
シルビアと二人の令嬢は、アリスの言葉に返事を返した。
「感動です。素晴らし女の友情ですわ。」
シルフィは、祈るように姉達令嬢を尊敬の眼差しで見ていた。目元に、涙が光った。
周りの学生は、いつの間に彼女らが仲良くなったか頭を捻った。
「キャーーッ、助けて。」
二階の窓から女性が、落ちてきた。下にいたクラウス達、アルバートは受け止めた。
キャロットで、ある。
「大丈夫か? 」
「はい。恐かったです。」
キャロットは、頰を染めた。
アルバートは、女性を下ろした。キャロットは弱々しく、しだれ掛かる。
「ありがとうございます、アルバート様。」
キャロットはここ一番、可憐に微笑んだ。
「そうか、今度からは気をつけて。」
アルバートは、直ぐに手を離した。キャロットは、ふらついてクラウスに倒れかかる。クラウスは避け、キャロットはそのまま地に倒れた。
(なぜ、避けるのよ。)
「ああ、痛~い。」
甘えるような声を出す。
「大丈夫? 」
アルファはしゃがみ込んで、声を掛けた。
「ありがとうございます、アルファ様。お手を、」
キャロットは、手を差し出した。その手は何時ものように、空を切っていた。
既に、クラウス達はそこにはいなかった。
「嘘でしょう!? 二階から落ちて来たのよ。」
クラウスに近づく為に決死の思いで、飛び降りたと言うのに。
「そんな女性を置いていくの? 」
キャロットは、クラウス達には常識が通じないと思った。
常識人のジェームズは、そこにはいなかった。
クラウスは隠れていた。
学園についたアンジェリカを、影ながら追っていた。
「クラウス、いい加減にしないか。」
「黙れ、地獄の使者よ。アンジェリカに、気付かれる。」
クラウスは身を低くして、両手に持つ枝に隠れてアンジェリカを追う。アルファも、身を低くして続く。
「何時まで、やるつもりだ? 」
仕方なくアルバートも、身を低くする。ジェームズは取り巻き令嬢達に見つかるのを恐れ、ここにはいない。
「アンジェリカの思い人を、見つける迄だ。」
「見つけてどうする。」
「勿論、殺。」
クラウスは一瞬、本音を言い掛けた。
「いや、アンジェリカとの幸せを願う。」
「今『殺す。』と、言い掛けたな。」
「何を馬鹿な。私は、アンジェリカの幸せを願っている。」
クラウスは手に持っていた、両方の木の枝を握力でへし折った。
「アンジェリカの思い人に、強く強く彼女の幸せを。」
歯軋りを、する。
「その男に、強制。」
また、本音が出る。
「お願いするのだ。」
クラウスは、殺意を押さえてそう言った。
「お前が、幸せにしてやれよ。」
溜息交じりに、アルバートは言う。
「私では幸せに出来ない。」
クラウスは手持ち無沙汰で、近くにいるアルファの頭をを押さえ付けた。アルファは、顔を地に塞がれる。
「アンジェリカは、好きな人がいるのだ。私ではない。」
押さえ付けられたアルファは、息が出来ずもがいていた。そして、動かなくなる。
「アンジェリカを幸せに出来るのは、その男だけだ。」
辛そうに、クラウスは目を反らした。
「悪かった。」
アルバートは、素直に謝った。
卒業式まで、七日。
今日も今日とて、クラウスの尾行は続く。
アルベルトとメイド達は心身ともに、窶れていった。
「アンジェリカ、我が愛しい娘よ。」
「はい。お父様。」
返事をした愛娘は、厚い化粧に覆われ面影はなかった。
最初の頃は、娘の思い人とやらを刀の錆にしょうと思っていたアルベルトだが。今は、娘の暴挙を止めるためには認めるしかないかと思い始めていた。
「婚約解消をしても、いいぞ。」
アルベルトの瞳は、潤んでいた。今にも涙が溢れそうだ。
「アンジェリカの好きなようにすれば、いい。」
もう、涙を止めることが出来ず流れていた。
「俺は、アンジェリカの幸せを願っている。」
涙ながらに訴えた。
アンジェリカは首を振った。
さらさらしていた銀髪は、伸び縮みするバネではなく、ガチガチに硬いネジのようになっていた。髪飾りもかなり盛っている。
「婚約解消はしないわ。」
「アンジェリカ。」
アンジェリカは笑ったが、厚化粧のため分からなかった。
「内乱を起こすわけには、いかないわ。」
「それは俺が、なんとかする。だから、」
「政略結婚ですもの。」
アンジェリカは、扇子を握り締めた。
「大丈夫だ、向こうも婚約解消を望んでいる。」
アンジェリカは父の言葉に、涙が流れそうになった。
(クラウス様は、婚約解消を望んでいるのね。)
「だから、婚約解消をしても大丈夫だ。」
アンジェリカは静かに項垂れた。
(アフロディ様を、愛していらっしゃるのね。)
内乱が起こるかも知れない政略結婚を解消してまで、アフロディを娶ろうとするクラウスに胸を痛める。
「婚約解消はしないわ。」
「アンジェリカ。」
「行ってきます、お父様。」
アンジェリカは、静かに部屋を出て行った。
「まだ、アンジェリカの思い人は分からないのか!? 」
「まだ、何も連絡はありません。」
「くそぅ!! いったい誰なんだ、アンジェリカをあんな風にした馬鹿野郎は!! 」
アルベルトは有り余る苛立ちを、剣の稽古と言って騎士達にあたるのであった。
学園へ向かう馬車の中で、アンジェリカは呟く。
「婚約解消はしないわ。」
(忘れ去られるのはいや。)
自分自身を抱き締めた。
(クラウス様のお心に、残りたい。)
「お二人の邪魔をすれば、きっと私をお嫌いになるわ。」
アンジェリカは、顔を覆う。
(愛されないなら、いっそ嫌われたい。)
「お母様がお父様の心に、傷を残されたように。」
アンジェリカの母親は、事故で亡くなっていた。ダイアナを護れなかったその事で、アルベルトは心に傷を負っていた。
(私もクラウス様のお心に、傷を残したい。)
「そうすれば、お母様のように覚えていてもらえるかも。ずっと。」
アンジェリカは奮い立った。
「そうよ。アフロディ様を虐めれば、クラウス様はお怒りになって婚約破棄を言って下さるかも知れない。」
アンジェリカは、首を傾げた。
「でも、虐めるって。どうすれば、いいのかしら? 」
虐められた事はあっても、虐められた事はないアンジェリカであった。
「皆様は、良く私の事を田舎者と。」
アフロディは、王都育ち。
「『この、王都育ち。』と、虐めればいいのかしら? 」
首を傾げる。
「艶やかなアフロディ様。」
(私がどんなに頑張ってもクラウス様は、気づいても下されない。)
アンジェリカは首を振る。
(むしろ暫くは、挨拶さえ。合ってさえいないわ。)
「田舎者が、艶やかな格好をしても似合わないと、呆れていらっしゃるのでしょうか。」
アンジェリカは、深く深く悩んでいた。
そしてシルビアは、責められていた。学園の玄関で愛すべきピュア様を待つ、取り巻き令嬢達に。
「アンジェリカ様を、どうにかして下さいまし。」
「そうですわ。あの縦ロールだけでも、やめさして下さいませ。」
「困るのよ、シルビア。ロディ様が、縦ロールに憧れて。」
シルビアは、目を反らした。
「私だって、頑張ってるのよ。色々と。」
シルビアは、涙が出た。
「でも、聞いてくれないの。」
「それが、ピュア様の特徴なのよ シルビア。」
「思い込んだら一直線。」
「脇目を振らず突き進む。」
取り巻き令嬢達は、代わる代わる立ち回り説明をする。
「その軌道に乗る前に、違う道へと誘導する。」
「それがピュアでない者の務め。」
「私達のする事なのよ、シルビア。」
キャシィは、シルビアを指差した。シルビアは目から鱗が落ちるように、涙を流した。
「でももう、軌道に乗ってしまったわ。どうすれば。」
シルビアは、項垂れた。
「情けなくってよ、シルビア。」
キャシィは、手を取った。
「そうですわ。私達、力になりますわ。」
バーバラは、左の肩に手を置いた。
「アンジェリカ様を護る事は、ロディ様を護ること。」
アリスは右の肩に、手を置く。シルビアは、涙を拭った。
「ありがとう、みんな。」
アリスは、右腕を空へと指差した。その方向を、みんなは見た。
「私達が、ピュア様を護るのです。あの星に誓って。」
朝なので、星は出ていない。
「「「はい。」」」
シルビアと二人の令嬢は、アリスの言葉に返事を返した。
「感動です。素晴らし女の友情ですわ。」
シルフィは、祈るように姉達令嬢を尊敬の眼差しで見ていた。目元に、涙が光った。
周りの学生は、いつの間に彼女らが仲良くなったか頭を捻った。
「キャーーッ、助けて。」
二階の窓から女性が、落ちてきた。下にいたクラウス達、アルバートは受け止めた。
キャロットで、ある。
「大丈夫か? 」
「はい。恐かったです。」
キャロットは、頰を染めた。
アルバートは、女性を下ろした。キャロットは弱々しく、しだれ掛かる。
「ありがとうございます、アルバート様。」
キャロットはここ一番、可憐に微笑んだ。
「そうか、今度からは気をつけて。」
アルバートは、直ぐに手を離した。キャロットは、ふらついてクラウスに倒れかかる。クラウスは避け、キャロットはそのまま地に倒れた。
(なぜ、避けるのよ。)
「ああ、痛~い。」
甘えるような声を出す。
「大丈夫? 」
アルファはしゃがみ込んで、声を掛けた。
「ありがとうございます、アルファ様。お手を、」
キャロットは、手を差し出した。その手は何時ものように、空を切っていた。
既に、クラウス達はそこにはいなかった。
「嘘でしょう!? 二階から落ちて来たのよ。」
クラウスに近づく為に決死の思いで、飛び降りたと言うのに。
「そんな女性を置いていくの? 」
キャロットは、クラウス達には常識が通じないと思った。
常識人のジェームズは、そこにはいなかった。
クラウスは隠れていた。
学園についたアンジェリカを、影ながら追っていた。
「クラウス、いい加減にしないか。」
「黙れ、地獄の使者よ。アンジェリカに、気付かれる。」
クラウスは身を低くして、両手に持つ枝に隠れてアンジェリカを追う。アルファも、身を低くして続く。
「何時まで、やるつもりだ? 」
仕方なくアルバートも、身を低くする。ジェームズは取り巻き令嬢達に見つかるのを恐れ、ここにはいない。
「アンジェリカの思い人を、見つける迄だ。」
「見つけてどうする。」
「勿論、殺。」
クラウスは一瞬、本音を言い掛けた。
「いや、アンジェリカとの幸せを願う。」
「今『殺す。』と、言い掛けたな。」
「何を馬鹿な。私は、アンジェリカの幸せを願っている。」
クラウスは手に持っていた、両方の木の枝を握力でへし折った。
「アンジェリカの思い人に、強く強く彼女の幸せを。」
歯軋りを、する。
「その男に、強制。」
また、本音が出る。
「お願いするのだ。」
クラウスは、殺意を押さえてそう言った。
「お前が、幸せにしてやれよ。」
溜息交じりに、アルバートは言う。
「私では幸せに出来ない。」
クラウスは手持ち無沙汰で、近くにいるアルファの頭をを押さえ付けた。アルファは、顔を地に塞がれる。
「アンジェリカは、好きな人がいるのだ。私ではない。」
押さえ付けられたアルファは、息が出来ずもがいていた。そして、動かなくなる。
「アンジェリカを幸せに出来るのは、その男だけだ。」
辛そうに、クラウスは目を反らした。
「悪かった。」
アルバートは、素直に謝った。
卒業式まで、七日。
今日も今日とて、クラウスの尾行は続く。
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