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氷の王子、クラウス。妄想と真相。

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「ジェームズ、衝立を。」

シルビアは、指示を出す。ジェームズは指示された通りに、クラウス達とエリー達との間に衝立を立てた。

「「いやぁ!! 」」
エリーとマリーは、クラウス達を隠され、悲鳴を上げた。
「続きを観たければ、首謀者を言いなさい。」
「「ひ、酷いです!! 女王様!! 」」
二人は、格子を握りつつ崩れ落ちる。
「「私たちは、同志を裏切りません。」」
俯き震えながら、二人は応えた。
「そう。」
シルビアは衝立の横に立ち、クラウス側を観る。

「あら、アルバート。匂いで、立つちゃった? 」
シルビアの言葉に、二人は顔を上げた。
「立って、何。」
「匂いて、クラウス様の匂い? 」
二人は、顔を見合わせた。
「「クラウス様の匂いで、アルバート様が お立ちになったの? 」」
見えない衝立の向こう側を思い、二人は妄想する。

「いいのよ、食べちゃっても。」
シルビアは、アルバートに、微笑んだ。
「食べるて、何。」
「アルバート様が、クラウス様を食べちゃうの? 」
二人は手を、取り合った。

「貴方が、何時も もの欲しそうにクラウス様を視ていたのは知っていたわ。」
シルビアの言葉に、二人は歓喜する。
「「アルバート様が、クラウス様を もの欲しそうに観ていたの? 」」

「食べちゃっても、いいのよ。此所には、貴方を制する人はいないのだから。」
シルビアは、エリーとマリーを見る。
「「も、勿論です。食べちゃって、下さい。(クラウス様を。)」」
歓喜の声を、二人は上げた。

「クラウス様も、いいでしょう。」
「ああ、」
声なき悲鳴を、二人は上げた。
「「クラウス様が、アルバート様に 食べられちゃっても いいって!! 」」
二人は、抱き合った。

「クラウス、本当にいいのか? 俺が、食べても。」
戸惑う、アルバートの声に
「「食べちゃって、下さい!! 」」
二人は、歓喜の声で応援をする。そして、
((見たい!! ))
二人は衝立の向こう側を、心の底から欲した。

「まあ、大胆。そのままで、行くの。」
シルビアが、口元を抑えて衝立の向こう側を見る。
二人は、格子に縋り付いた。
((見たい!! ))

「甘い、そして滑らかだ。」
アルバートは、陶酔しながら声を発した。
「「クラウス様の肌は、甘くて滑らかなのね。」」
二人は、アルバートがクラウスの肌を舐めている処を想像する。

「アルバート、そんなに乱暴にしたら壊れてしまうわ。クラウス様の事も、考えて。」
シルビアの言葉に、
「「壊れるほど、乱暴に? 」」
「「優しくしてあげて。クラウス様が、可哀想。」」
と、言いつつ頰を抑える二人の顔は ニヤけていた。
((見たい!! ))
((あの衝立さえ、なければ。))


「アルバート様、無理です。そんなに大きな物は、クラウス様の口には入りません。」
ジェームズの声に、二人は鼻血を垂らした。
「「何がそんなに、大きいの!? 何って、何ですの? 」」
「「お口に、クラウス様のお口に!! 」」

「大丈夫だ、これ位。口を開けろ、クラウス。」
「無理やり押し付けるのは、止めて下さい。クラウス様の口が、汚れてしまいます。」
二人の会話に、エリーとマリーは格子から両手を延ばす。
「「汚れますの!? クラウス様のお口が!! 」」
「「衝立を、衝立を、退けて下さい!! 女王様!! 」」

「なら、首謀者を言いなさい。」
「「そ、其れは・・・」」
二人は、口籠もった。

「クラウス様。私のを、どうぞ。」
「お前も、押し付けてるじゃないか!! 」
「アルバート様程、大きくありませんから。」
二人は、血の涙を流した。
「「ジェームズ様が、ジェームズ様が、御自分のモノをクラウス様のお口に!! 」」
「「お二人で、クラウス様を愛されるのですか? 」」
((見たい、見たい!! ))
「「見たい!! 」」
エリーとマリーは、声を合わせて叫んだ。

「わあっ。兄上、おいしそう。僕も、食べてもいいですか? 」
「アルファ様、勿論です。」
「くっ、ライバルが増えた。此は 俺のだ、やらんぞ。」
「大人気ない事を、言わないで下さい。アルバート様。皆で、頂きましょう。」
「いいですよね、兄上。」
「ああ。」
「兄上、大好きです。」
ガタン と、音がする。
((詰まり、皆でクラウス様を頂いちゃうんですね。))


彼女らは、願望に屈した。
「「うっ、ぅぅぅ。」」
二人は、むせび泣いた。
「「レジーナ・マーンガ様とポーリス・ショーセツ様です。」」
「伯爵令嬢のレジーナとポーリスね。」
「「はい。」」
「「衝立を、衝立を退けて下さい。女王様。」」
「いいわ、好きなだけ堪能しなさい。」
衝立を外す、其処には





 

衝立に隠された事で、アルバートはクラウスから離れた。はっ と、目を開く。
アルバートは、立ち上がった。
「あら、アルバート。匂いで、立つちゃった? 」
アルバートは キョロキョロ と、周りを探る。
そして、棚の扉を上げた。其処には、ホールケーキがあった。
アルバートは ごくり と、喉を鳴らした。
「いいのよ、食べちゃっても。」
アルバートは、目をシルビアに向けた。
「貴方が、何時も もの欲しそうにクラウス様を視ていたのは知っていたわ。」
アルバートの目が、ケーキに注がれる。
彼は精神的に疲れていた、脳が糖分を欲していた。
「食べちゃっても、いいのよ。此所には、貴方を制する人はいないのだから。」
シルビアは、エリーとマリーを見る。
「「も、勿論です。食べちゃって、下さい。」」
二人の歓喜な声がする。
「クラウス様も、いいでしょう。」
「ああ、」
クラウスは、静かに頷いた。
「クラウス、本当にいいのか? 俺が、食べても。」
「「食べちゃって、下さい!! 」」
何故か、裏切り者が応援してくる。
アルバートは、ホールケーキにホークを突き刺した。
「まあ、大胆。そのままで、行くの。」
一口、アルバートはケーキを食べた。
「甘い、そして滑らかだ。」
アルバートは、陶酔しながら声を発した。

アルバートは、甘い物が大好きだった。其れもホールケーキを ペロリ と、食べられる程に。しかし その制で、アルバートは子供の頃は肥満児であった。
父 エドガーに『甘い物禁止』を、言い付けられたのは当然の事であった。
あれ以来、ケーキを我慢している。『俺は、甘い物は。』と、言いつつ。クラウスが食べるケーキを、何時も もの欲しそうに視ていた。

「アルバート、そんなに乱暴にしたら壊れてしまうわ。クラウス様の事も、考えて。」
シルビアの声に、アルバートはクラウスを見る。
既に半分以上無くなっているケーキに、ホークを差し込んでクラウスに差し出す。詰まり『あーん』だ。
「アルバート様、無理です。そんなに大きな物は、クラウス様の口には入りません。」
ジェームズが、声を上げた。
「大丈夫だ、これ位。口を開けろ、クラウス。」
かなり大きなケーキの塊を、口に差し出す。
「無理やり押し付けるのは、止めて下さい。クラウス様の口が、汚れてしまいます。」
グイグイ と、ケーキの塊をクラウスの顔に近づける。其れを、ジェームズは、阻止する。
ジェームズは、スプーンを取るとケーキを救った。
「クラウス様。私のを、どうぞ。」
一口サイズのケーキを、口元に差し出した。
「お前も、押し付けてるじゃないか!! 」
「アルバート様程、大きくありませんから。」
その時、生徒会室の扉が開かれた。
「わあっ。兄上、おいしそう。僕も、食べてもいいですか? 」
「アルファ様、勿論です。」
「くっ、ライバルが増えた。此は 俺のだ、やらんぞ。」
ケーキを、抱え込む。
「大人気ない事を、言わないで下さい。アルバート様。皆で、頂きましょう。」
「いいですよね、兄上。」
「ああ。」
「兄上、大好きです。」

が、真相であった。
「「だ、騙されました。」」
衝立の向こう側に、官能的な世界を夢見ていた二人は深く深く 沈んでいた。
衝立の向こう側は、健康的な? お茶会が開かれていただけだった。

「オーーホホホ!! 馬鹿ね。騙される方が、悪いのよ。」
普通に考えれば、こんな処で しかもシルビア達がいる場所で 官能的世界など有るはずはなかった。
「「お姫様、お姫様抱っこに、理性を持っていかれました。」」
「「同志の皆様を、裏切ってしまいました。」」
己の煩悩に、負けてしまったエリーとマリーは項垂れるのであった。しかし、健康的茶会としても眼福には変わりがない。二人は、顔を上げた。
ペロリ と、アルバートがクラウスの頰に付いたクリームを舐めている処だった。
「「か、神様、ありがとう。私たちに、幸せをくれて。」」
祈る様に手を組み合わせ、二人は失神した。

「アルバート、貴方・・・」
「あん? 」
十数年ぶりの甘味に、アルバートは皿に付いたクリームを舐めている処だった。
今のアルバートなら、地に落ちた潰れたケーキでも食べかねなかった。
シルビアは、思った。
(これは、時々甘い物を食べさせないといけないわ。)
で、なければ甘味に釣られて 誰かに付いて行きかねない。
シルビアは、残念な目で皿を舐めているアルバートを見詰めていた。

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