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ー辺境の花嫁ー ❉
王女カサンドラの花婿。
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カサンドラ母、イグニスの女王が正当な血を引く者であった。今、イグニス国の王は隣の国のニスラス王家の血を引く者である。つまりカサンドラの父はニスラス国からの入婿であった。
「女王と王太子が死んだのをいいことにカサンドラを教会に幽閉したと? 」
執事の話を聞いてフランクは眉を歪める。
「はい。国名は変わりませんが、ニスラス国の完全な乗っ取りです。」
「それを帝国は許したと? 」
「その頃、帝国は一枚岩でなかったようで…… 」
今なら乗っ取りなど、決して帝国は許さなかっただろうが。当時の帝国は一枚岩ではなく、他国に目を向ける事はできなかったようだ。
「女王と王太子の乗った馬車が事故にあい、残された王女が辺境の教会に幽閉されたと。」
その王女がカサンドラであった。女王の王配である者、まぎれもなく自分の血を引く娘カサンドラを無慈悲に幽閉したのだ。
抗議するイグニス国の公爵や貴族達をニスラス国の力で押さえつけ、王配であった者は王となった。そして、イグニス国の正当な血を引く者はカサンドラを残して総て抹殺された。
王は祖国ニスラスから、妃を娶りイグニス国を完全に乗っ取ってしまったのだ。イグニスは国と呈しているが、完全にニスラス国の属国となっていた。
「その事故も、怪しいな…… 」
フランクは親指の爪を噛んだ。
「今はもう何も分からない事で御座いましょう。」
既に十数年も、時が過ぎている。
「そうだな。」
フランクは強い目を執事に向け口元をほころばせた。
「だがカサンドラは、俺の花嫁だ。」
「旦那様? 」
「カサンドラは、俺の花嫁だ。」
「フランク? 」
フランクは父の元帥に目をやり、皇帝に再び覆い被さった。
「妻の憂いを取るのは、夫の役目だ。」
フランクは不敵に笑った。
「妻の最後の願いを叶えてあげるのは、当然だよな。」
「フランク、何を? 」
元帥は声を低く聞き返す。
「妻のモノを取り返すのは、夫の役目だろ。」
「戦争を起こす気か? 」
皇帝は、重く呟く。
「戦争? あんな小国とか。あははははは!! 」
フランクは声高らかに笑った。
「奴らがやったように王を挿げ替えるだけだ。」
フランクは体を起こした。
「俺は、正当な血筋の王女のカサンドラの夫だ。」
フランクは妻の為に妻のモノを取り返して何が悪い、と言うように笑ってみせる。
「乗っ取りか? 」
皇帝は重く聞き返す。
「小さいことを、イグニスの王家の血を引く者は他国にはいるだろう。カサンドラのように、他国に嫁入り婿入りした者の孫かひ孫が。」
フランクは正当なイグニス王家の血を引く者は、薄くてもいるはずだと問う。王を挿げ替える者はイグニスの正当な王家の血を引く者が継ぐと言っているのだ。つまり、皇帝に探し出せと。
「血は流すなよ。」
「相手次第だな。」
皇帝の言葉にフランクは背を向ける。少し高い場にある玉座から飛び降りるように階段を下りる。
「俺の花嫁の持参金を貰い受けに行くぞ。」
謁見の間に響き渡る声をあげる、フランクの行く先に四人の黒い騎士服を付けたものが控えていた。
「俺からのお礼参りも、届けないとな。」
笑いながら目の前を通り過ぎるフランクの後を追って、彼らは黒いマントを翻した。
「イグニスが、息子を怒らしたな。」
「人質にならない者を送って来たのだからな。逆鱗にも触れるだろ。」
元帥と皇帝は話をする。
「だがいい機会だ。イグニスにはお仕置きが必要だろ。」
元帥はフランクによく似た黒い瞳を兄である皇帝に向けた。
「機会を貰ったんだ、使わない手はないな。」
皇帝も同じような黒い瞳をを弟である元帥に向ける。
やはり皇帝・元帥は、兄弟であった。
「女王と王太子が死んだのをいいことにカサンドラを教会に幽閉したと? 」
執事の話を聞いてフランクは眉を歪める。
「はい。国名は変わりませんが、ニスラス国の完全な乗っ取りです。」
「それを帝国は許したと? 」
「その頃、帝国は一枚岩でなかったようで…… 」
今なら乗っ取りなど、決して帝国は許さなかっただろうが。当時の帝国は一枚岩ではなく、他国に目を向ける事はできなかったようだ。
「女王と王太子の乗った馬車が事故にあい、残された王女が辺境の教会に幽閉されたと。」
その王女がカサンドラであった。女王の王配である者、まぎれもなく自分の血を引く娘カサンドラを無慈悲に幽閉したのだ。
抗議するイグニス国の公爵や貴族達をニスラス国の力で押さえつけ、王配であった者は王となった。そして、イグニス国の正当な血を引く者はカサンドラを残して総て抹殺された。
王は祖国ニスラスから、妃を娶りイグニス国を完全に乗っ取ってしまったのだ。イグニスは国と呈しているが、完全にニスラス国の属国となっていた。
「その事故も、怪しいな…… 」
フランクは親指の爪を噛んだ。
「今はもう何も分からない事で御座いましょう。」
既に十数年も、時が過ぎている。
「そうだな。」
フランクは強い目を執事に向け口元をほころばせた。
「だがカサンドラは、俺の花嫁だ。」
「旦那様? 」
「カサンドラは、俺の花嫁だ。」
「フランク? 」
フランクは父の元帥に目をやり、皇帝に再び覆い被さった。
「妻の憂いを取るのは、夫の役目だ。」
フランクは不敵に笑った。
「妻の最後の願いを叶えてあげるのは、当然だよな。」
「フランク、何を? 」
元帥は声を低く聞き返す。
「妻のモノを取り返すのは、夫の役目だろ。」
「戦争を起こす気か? 」
皇帝は、重く呟く。
「戦争? あんな小国とか。あははははは!! 」
フランクは声高らかに笑った。
「奴らがやったように王を挿げ替えるだけだ。」
フランクは体を起こした。
「俺は、正当な血筋の王女のカサンドラの夫だ。」
フランクは妻の為に妻のモノを取り返して何が悪い、と言うように笑ってみせる。
「乗っ取りか? 」
皇帝は重く聞き返す。
「小さいことを、イグニスの王家の血を引く者は他国にはいるだろう。カサンドラのように、他国に嫁入り婿入りした者の孫かひ孫が。」
フランクは正当なイグニス王家の血を引く者は、薄くてもいるはずだと問う。王を挿げ替える者はイグニスの正当な王家の血を引く者が継ぐと言っているのだ。つまり、皇帝に探し出せと。
「血は流すなよ。」
「相手次第だな。」
皇帝の言葉にフランクは背を向ける。少し高い場にある玉座から飛び降りるように階段を下りる。
「俺の花嫁の持参金を貰い受けに行くぞ。」
謁見の間に響き渡る声をあげる、フランクの行く先に四人の黒い騎士服を付けたものが控えていた。
「俺からのお礼参りも、届けないとな。」
笑いながら目の前を通り過ぎるフランクの後を追って、彼らは黒いマントを翻した。
「イグニスが、息子を怒らしたな。」
「人質にならない者を送って来たのだからな。逆鱗にも触れるだろ。」
元帥と皇帝は話をする。
「だがいい機会だ。イグニスにはお仕置きが必要だろ。」
元帥はフランクによく似た黒い瞳を兄である皇帝に向けた。
「機会を貰ったんだ、使わない手はないな。」
皇帝も同じような黒い瞳をを弟である元帥に向ける。
やはり皇帝・元帥は、兄弟であった。
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