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バトル・ロワイアル。

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ロロリイは武道会会場に来ていた、綺羅びやかな令嬢令息を二階の手摺りに立ち下を眺めている。気配は消しているので誰にも気づかれてはいない。

「これが……武道会。」

武道会じゃなくて、舞踏会です。

「なんて動きにくそうな道衣。」

道衣ではなく、ドレスと礼装です。

「でもロロリイには分かるわ。お母様も普段はあのような格好をなさってるもの。」
普段エボック家の子供達は動きやすい丈の短いスカートやズボンを履いている。しかし、表舞台のお茶会などに招待された時の為に母リリアンは動きにくそうなドレスを着ていた。

「都会の武道会は田舎の武道会とはやはり違うのね。」
田舎のお祭りで本当に小さな武道大会をロロリイは見たことはあった。普段着の技などはないただの力自慢の小競り合いのような武道大会であった。

「あの丈の長いスカートは足捌きを見せないため、長い髪の縦ロールは急所の首を隠すため。」
ロロリイは母のスカート捌きを思い出していた。あの丈の長いスカートの奥から繰り出される蹴りを、掴みどころがなく避けるのに難儀したものだった。長い髪は首筋を護り、コルセット言うものは刃を通さない頑丈な物だ。

「この道衣で大丈夫かしら? いいえロロリイ。私のエボック家の聖なる道衣よ、田舎者だと馬鹿にはさせないわ。」
弓を操るロロリイは肘までの短めの袖の前で合わせる道衣を着、下は長い丈のキュロットスカートを履いていた。胸には胸当てを付けている。

まあ簡単に、袴の弓道着だな。

「あの令嬢……。壁を背に立っている、流石だわ。」
ロロリイは背後を取られないように壁に立つ令嬢を誉める。

ただの壁の花ですよね。

「令嬢達の持つあの扇子、指に付けている指輪。あれくらいの武器は良かったのかしら? 」

おしゃれですよ、指輪はナックルではありませんよ。確かに殴ったら痛いけどね。

「まだ始まらないのかしら? みんなバラけていて、整列はしないのかしら。はっ、まさか……バトル・ロワイアル? 」
ロロリイは体を震わせた。

バトル・ロワイアルとは、何人かで組み最後に組んだ相手とも戦いただ一人勝利を得る生き残りの戦い。

「流石は都会だわ。どうりで、何人かで纏ってバラけていている。作戦を考えてるのね。」
ロロリイは唇を噛んだ。

いえ、ただ仲の良い者同士が話しているだけです。

「ロロリイ、一人で大丈夫? 」
ロロリイは大きく頭を振る。

「大丈夫じゃない、やるのよエボック家の名にかけて。」
祈るように握りしめた左の拳をつかんだ。

おーい誰か!! この勘違い令嬢を分からせてやってくれ!! ロロリイの中の前世の記憶の彼女!! まだ目覚めないのか? 同化してしまったのか!? 慎ましく生きていくんじゃなかったのか!! 早く目覚めないとやばいぞ!!

「体力のある内に強い敵を討つ。」
ロロリイは会場内を見回した。

「『悪』の名を持つ令嬢。悪役令嬢を、我がライバルを。」
ロロリイは会場内を探す。

悪の名も持ってないし、普通の令嬢ですけどね。

「いったい誰が『悪』の名を持つ令嬢なの? 」
ロロリイは悪役令嬢の顔を知らない。時々鋭い眼光で令嬢達は、周りを見ている。それは令息達にも言えた。

「やはりみんな只者ではないわ。」
誰から落とすか狙いを定めてるとロロリイには写った。

いや、ただダンスのパートナーを見定めてるだけです。あわよくば恋人に、と狙っているだけです。

「確かくまさんは、『悪』の名を持つ令嬢は攻略対象に守られていると言っていた。つまり、キラキラを探せば。」
ロロリイは無駄にキラキラとしている攻略対象を会場内から見つけ出す。その隣にはやはりキラキラと輝いた令嬢が見受けられた。

「あれが、我がライバル!! 『悪』の名を持つ令嬢!! 」 
ロロリイは二階の手摺りの上を悪役令嬢へと向かって走り出した。

「今から舞踏会の始まりでーす!! 」
その時、舞踏会の開始の挨拶が。

「先手必勝!! 」
ロロリイはその挨拶が終わり次第、手摺を蹴り悪役令嬢に上から蹴りを入れようと飛んだ。

誰か!! 止めて!!







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