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お詫びの品、袋の中身は。
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「昨日はやってしまったわ。」
ロロリイは可愛いリボンを付けた袋を抱き締めた。女子寮から学園へと続く廊下を渡りながら彼女は昨日の事を反省していた。
「だって、名前がアライグマなんて笑えるんですもの。」
アライグマではありません、ラスカルです。
「今日はこれを渡して、クマさんの機嫌をとらなくては。」
クマではありません、アライグマです。
「攻略対象じゃ無いけど、機嫌をとっておいて悪くわないわ。あの情報量。」
ロロリイは攻略対象の情報を知るべく、眼鏡君に媚を売ろうとしていた。二階の学園へと続く渡り廊下を歩くその先に、キラキラ輝く金髪を発見した。
「キラキラ王子と公爵令息。」
ロロリイは手すりに手を掛け、ひらりと飛び越えた。ここは二階だが、何時も木の上にから飛び降りていたロロリイにはたいしたことは無かった。
だが下に攻略対象の一人、カフェイン公爵令息が歩いていた。緑の髪で下の芝生と同化していたので彼女は気づくのに遅れをとった。そのまま音もなく令息の背中めがけて、◯◯ダーキックを食らわせた。
グキッと、嫌な音と共に令息は倒れた。そのまま令息は気を失った。
(しまった、殺ってしまった。)
彼女は倒れた令息の横で、頭を抱える。そして思案する、逃げるか助けるか。
「逃げましょう。」
彼女は逃げることを選択した。だが悪いことは続く、雨が降り始めた。
「うそ、雨……。」
ここは学園へと女子寮をつなぐ渡り廊下の下。即ち学園の外れ、校舎裏。そして時間はもう直ぐ学園の始まる時間、誰もここを通らない。放置すれば雨に打たれ、トドメをさしてしまうかもしれない。
「このまま放置すれば、死んでしまうかも。」
(駄目よロロリイ、『かも』は駄目よ。)
ロロリイと彼女の記憶が同化しつつあった。
「確実に見届けないと。」
見届けるかトドメを刺すか。
(駄目よロロリイ。人殺しはよくないわ。)
彼女は現在日本人(お亡くなりなっているが)人殺しはご遠慮したかった。そして何より彼を転がしたのは自分のキック、彼女は罪悪感に苛まれた。
「仕方がないわ、助けましょう。」
(イケメン顔を叩くのは悪いわね。顔が命の攻略キャラだから。)
そう彼女の、ロロリイの力で叩くと凄いことになる。仕方がないので彼女は彼の両肩を持って縦に揺さぶった。
「起きて下さい、起きて。」
可愛い声で声をかける。ロロリイの揺さぶりに、何度か彼は地面に後頭部を打ち付けた。
おかげで、気を失う前後の記憶が彼から飛んだ。ピンクのものが上から落ちて来た記憶が。
「ここは……。俺は……? 」
「こんな所で、眠ってたら雨に濡れますよ。」
ロロリイは可愛いらしく微笑んだ。蹴りを入れて落とした癖によく言ったものである。
「えっ、眠って? 俺、こんな所で? 」
どう見てもちょっと横になろうとは思えない場所であった。
「それでは私、行きますね。」
彼女は直ぐさま立ち上がり、その場を後にする。攻略対象には、関わりたく無かったからだ。
「待って、君は……。」
ピンクリボンを付けた大きな袋を抱き締めた少女は、ピンクの髪を揺らしながら去って行った。
これが、攻略対象ルイージとの出会いだとは彼女は知るよしも無い。まさか自分が落とした事が、出会いになるとは。
教室の中、眼鏡君ことラスカルは窓辺に佇んでいた。クラスメートが静まる中、ロロリイは直ぐに彼に近づいた。
「クマさん。」
「クマさん? 」
「あ、違った。アライグマさん。」
ロロリイはにっこりと笑う。
「アライグマ? 」
怪訝な顔で、ロロリイを見る眼鏡君。ガラスの奥の目が鋭い。
「あ、違った。ラスカル様。」
「………。」
昨日笑われたことを彼は根に持っていた。
「それで? 」
「昨日は、ごめんなさい。」
ロロリイは腕に抱えていた袋を差し出した。
「これお詫び、受け取って。」
可愛い少女が差し出す袋、彼女の事を知らないな者なら心ときめくシーンだ。クラスメート達の目が袋に注がれる。
彼は用心しながらリボンを解き、袋のなかを見た。
もふもふの長い耳らしきものが、見える。
(ヌイズルミ? ウサギの。)
彼は耳を持って袋から取り出した。ヌイズルミにしてはずっしりとする重さ。
「今朝、森で取ってきたの。」
ロロリイは、彼女は、頬を染めて微笑んだ。
ロロリイは可愛いリボンを付けた袋を抱き締めた。女子寮から学園へと続く廊下を渡りながら彼女は昨日の事を反省していた。
「だって、名前がアライグマなんて笑えるんですもの。」
アライグマではありません、ラスカルです。
「今日はこれを渡して、クマさんの機嫌をとらなくては。」
クマではありません、アライグマです。
「攻略対象じゃ無いけど、機嫌をとっておいて悪くわないわ。あの情報量。」
ロロリイは攻略対象の情報を知るべく、眼鏡君に媚を売ろうとしていた。二階の学園へと続く渡り廊下を歩くその先に、キラキラ輝く金髪を発見した。
「キラキラ王子と公爵令息。」
ロロリイは手すりに手を掛け、ひらりと飛び越えた。ここは二階だが、何時も木の上にから飛び降りていたロロリイにはたいしたことは無かった。
だが下に攻略対象の一人、カフェイン公爵令息が歩いていた。緑の髪で下の芝生と同化していたので彼女は気づくのに遅れをとった。そのまま音もなく令息の背中めがけて、◯◯ダーキックを食らわせた。
グキッと、嫌な音と共に令息は倒れた。そのまま令息は気を失った。
(しまった、殺ってしまった。)
彼女は倒れた令息の横で、頭を抱える。そして思案する、逃げるか助けるか。
「逃げましょう。」
彼女は逃げることを選択した。だが悪いことは続く、雨が降り始めた。
「うそ、雨……。」
ここは学園へと女子寮をつなぐ渡り廊下の下。即ち学園の外れ、校舎裏。そして時間はもう直ぐ学園の始まる時間、誰もここを通らない。放置すれば雨に打たれ、トドメをさしてしまうかもしれない。
「このまま放置すれば、死んでしまうかも。」
(駄目よロロリイ、『かも』は駄目よ。)
ロロリイと彼女の記憶が同化しつつあった。
「確実に見届けないと。」
見届けるかトドメを刺すか。
(駄目よロロリイ。人殺しはよくないわ。)
彼女は現在日本人(お亡くなりなっているが)人殺しはご遠慮したかった。そして何より彼を転がしたのは自分のキック、彼女は罪悪感に苛まれた。
「仕方がないわ、助けましょう。」
(イケメン顔を叩くのは悪いわね。顔が命の攻略キャラだから。)
そう彼女の、ロロリイの力で叩くと凄いことになる。仕方がないので彼女は彼の両肩を持って縦に揺さぶった。
「起きて下さい、起きて。」
可愛い声で声をかける。ロロリイの揺さぶりに、何度か彼は地面に後頭部を打ち付けた。
おかげで、気を失う前後の記憶が彼から飛んだ。ピンクのものが上から落ちて来た記憶が。
「ここは……。俺は……? 」
「こんな所で、眠ってたら雨に濡れますよ。」
ロロリイは可愛いらしく微笑んだ。蹴りを入れて落とした癖によく言ったものである。
「えっ、眠って? 俺、こんな所で? 」
どう見てもちょっと横になろうとは思えない場所であった。
「それでは私、行きますね。」
彼女は直ぐさま立ち上がり、その場を後にする。攻略対象には、関わりたく無かったからだ。
「待って、君は……。」
ピンクリボンを付けた大きな袋を抱き締めた少女は、ピンクの髪を揺らしながら去って行った。
これが、攻略対象ルイージとの出会いだとは彼女は知るよしも無い。まさか自分が落とした事が、出会いになるとは。
教室の中、眼鏡君ことラスカルは窓辺に佇んでいた。クラスメートが静まる中、ロロリイは直ぐに彼に近づいた。
「クマさん。」
「クマさん? 」
「あ、違った。アライグマさん。」
ロロリイはにっこりと笑う。
「アライグマ? 」
怪訝な顔で、ロロリイを見る眼鏡君。ガラスの奥の目が鋭い。
「あ、違った。ラスカル様。」
「………。」
昨日笑われたことを彼は根に持っていた。
「それで? 」
「昨日は、ごめんなさい。」
ロロリイは腕に抱えていた袋を差し出した。
「これお詫び、受け取って。」
可愛い少女が差し出す袋、彼女の事を知らないな者なら心ときめくシーンだ。クラスメート達の目が袋に注がれる。
彼は用心しながらリボンを解き、袋のなかを見た。
もふもふの長い耳らしきものが、見える。
(ヌイズルミ? ウサギの。)
彼は耳を持って袋から取り出した。ヌイズルミにしてはずっしりとする重さ。
「今朝、森で取ってきたの。」
ロロリイは、彼女は、頬を染めて微笑んだ。
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