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見よ、女優魂。

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「こんな処で、王子様に会えるなんて光栄です。」
ロロリイは、ぶりぶり令嬢となった。
「名前まで憶えて頂けて、ロロリイは幸せです。」
ロロリイは、祈るように王子に近寄る。
「これは、運命でしょうか? 」
お目々をぱちぱちさせて、上目遣いで王子を見る。王子は、一歩下がった。
「私、ロロリイ・エボックは王子様をお慕いして折ります。」
いちオクターブ声が、高くなっている。普通の令嬢の様に、媚諂う。
「ロロリイを心配して頂けたのは、王子様もロロリイの事を? きゃぁ、恥かしい!! 」
彼女ロロリイは、王子を押して押して押しまくった。話す隙を与えない。
「嬉しいですわ。ロロリイは、未来の王妃様に? 王子さま~。」
縋り付こうとした処を、王子は彼女の肩を持って突っぱねた。
「王子さま~どうなさいました? ロロリイを受け止めて下さい。」

「いや、もういい。」
王子の顔は作り笑顔に成っていた。
(期待外れだ。)
「因みにこれは? 」
王子は彼女が、額に貼り付けた札を取り出した。
「それは、お慕いする方の額に貼って呪文を唱えると恋が叶うと言うおまじないで~す。」
もじもじしながら、王子に近付こうとする。王子は彼女からの距離を維持する。
「願いは叶いましたわ、王子様が目の前に。きゃぁ、恥ずかしい。」
彼女は、悶えた。

「はぁ、」
王子は、溜息を着いた。変わった令嬢に会えたと思っていたのに。
(やはり、気を引くための戯れ事か。)

「それだけ元気なら、大丈夫だな。」
王子は感情の無い目で、笑った。

(退いてる? 退いてるわ。)
彼女は、歓喜に震えた。
(油断は禁物よ。ほら言うじゃない『気を付けよお、殺ったつもりと死んだはず』あれ? これは、戦闘アニメだったわ。)

つまり、死んだはず殺したはずと思っていたら後で復活をしてきて『こっぴどい目に遭う』と言う事だ。戦闘系物語には、つきもの話。

(ちゃんと、トドメを刺さなくちゃ。)
刺しては、いけません。

「私は、多忙。これで、失礼する。」
王子は背を背けた。三人の護衛も扉へと道を空ける。

(トドメを刺すのよ、ロロリイ。)
「そんな~ぁ………。」
彼女は、王子の名前を言って縋り付こうとした。しかし、
(えっと、名前何だったっけ? )
彼女は、考えた。
(確か、ベル薔薇のラスカル様!! )
それは、アライグマです。
(違った!! 確か、)
「オスカルさま~~ぁ。」
背中から縋り付こうとした処を避けられる。王子は嫌そうな顔で、彼女を見る。
(やったわ、その顔頂きました。)
「また、お会い出来ますか? 」
扉に縋り付きながら、彼女は王子に媚を売る。ついでにお目々もうーる潤。

「ああ、そのうちに。」
その内は、会わないの意味を持つ。
「はい。ロロリイはラス、オスカル様をお待ちしておりますわ。」
祈るように王子を見詰め続ける。
「それでは、」
足早に去って行く王子。それを千秋の思いで見詰め続ける。
王子が階段を降りて暫くたって、ロロリイは音楽室の扉を閉めた。

「やったわ!! 見た、あの嫌そうな顔。」
ガッツポーズをして、誰にもいない音楽室で一人話す。
「私は女優。見事、普通の媚びる令嬢と成ったわ。」
(これて、慎ましく生きていける。)
「オーホホホホホッ、ざまぁ見さらしど。勝ったわ、勝ったのよ。私は、ゲームの選択に勝利したのよ。ビクトリー!! 」
彼女は、音楽室で高笑いを上げた。


「ほう、なるほど。」
それを聞いていた者が、呟く。
「つまり、私は騙されたと。」
恐い顔で、微笑む王子。三人の護衛は、身を震わせた。
「ふふ、面白い。」

音楽室の下。校舎を出た処で、その声は聞こえてきた。ロロリイの声だ。
扉を閉めていたが、窓は全開だった。
ロロリイの声は、校舎を出て下を歩く王子の耳に良く聞こえていた。

彼女はそれを知らず、勝利のダンスを一人音楽室で踊っていた。





    
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