記憶の中の伝説

❄️冬は つとめて

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彼女の名を。

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「変な奴…… 」
ラッシュは呟いた。
だが、シンと名乗った男に何処かで見たような気がしないでもないような気がしたが、深く考えずにその場を立ち去った。

ラッシュは目の前にあるエレベーターの当然のように中に入って行く、使い方を知っているように。


誰もいなくなった神殿に、先程消えていった女性が再び姿を現す。

「やはりシャインが溢れている。」
女性は魔法陣が描かれた神殿に入る。彼女の足元の魔法陣は仄かに光輝いている。

『マナ』の高密度のモノを『シャイン』と呼ぶ。それはいにしえの言葉で、既に忘れ去られたモノ。

マナ貯蔵庫管理システム『女王蜂』の中に宝玉という物をいれると、高密度にマナが注入されて出来る。小さな物では妖魔を分散させる護り石として、街や村などの中心に置かれるものである。

それより少し大きな宝玉として作られたものは、別の使い方がある。

いにしえ機械魔道具を動かすエネルギーとして使われる。古代遺跡と言われる塔の未だ登られていない上部のダンジョンを利用して、宝玉にシャインを集めていた女性。

妖魔というからマナを集め、高密度のシャインを作り出していた。
だが今、この場にシャインが溢れている。宝玉が無くても『女王蜂』が動いていたのも頷ける。

女性は魔導陣の中心にある祭壇に捧げるように宝玉を置いた。

宝玉は祭壇に吸い込まれるように消えていく。総てが吸い込まれると、足元の魔導陣も一瞬強く輝き跡形もなく消える。

「後は…… 」


シンは階段の踊り場の隅で泣いていた。文字通り少女が男の子であったから。

「あま、元気だせ。ほら、世の中には似ている者が3人はいるって言うだろ。」
レストは隅っこで泣いているシンの肩を叩いた。

「きっと、あの可愛い顔の女の子もいるさ。いや、むしろあの顔で男だったのが不思議だ。」
可能性では、男だったのがおかしいとレストはシンを慰める。

「なに、シン。あの子が好きだったの? 」
「あの子じゃない。夢の中の少女に似ていたんだって。」
「夢の中…… 」
マリリンの質問にレストが応えた。夢の中の少女と聞いて、マリリンは悲しそうにシンを見る。

その時、ぐらりと塔が揺れた。

「………!! 」
「地震か!? 」
周りを見回しながらレストが叫んだ。地震にしてはおかしな揺れだ。ずん、ずん、と上から押さえつけられるような揺れが感じられる。

「違うわ!! この塔、崩壊しているわ!! 」
上の階が潰れながら、崩壊している。ずん、ずん、と上の階が潰れ、その重さで天井部分がバランスが保てなくなって次々と潰れてきているのだ。

「シン、逃げるぞ!! 」
肩を掴んで振り向かせる。

「……あの子は? 」
シンは呆然と上を見る。
神殿に一人置いて来てしまった、夢の中の少女に似ているラッシュと言う少年。

「上はもう…… 」
「こい、シン!! 逃げるぞ!! 」
呆然と立ち尽くしているシンの腕を引っ張り階段を走り下りるレスト。その後にマリリンも続く。

パラパラと物が埃が舞い落ち、天井がギシギシと音をたてる。

下の階になると階段どうしが離れていて、廊下を走ることになる。天井の中心部分から壊れる音が聞こえ、ズシン、ズシンと重いものが落ちる音がする。

足の遅いマリリンをレストが小脇に抱え走る。シンも何も考えずに後に続く。何階か下に降りて廊下を走っているとエレベーター近くに人影が見える。

エレベーターが停まって、降りてきたラッシュであった。シンは目を見開く、ラッシュの上に崩れてきた瓦礫が見える。

(駄目だ!! 死ぬな…… )
シンは手を伸ばす。

目の前の少年が夢の中の少女と被さる。

崩れ来る瓦礫、自分を突き飛ばす少女。

「駄目だ!! 駄目だ!! 死ぬなーー!! 」
シンは叫んだ、だがが思い出せない。夢の中ので何度も呼んだ名前が。

(死なないでくれ!! ○○○○ーー!! )
シンは必死で手を伸ばす。
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