上 下
14 / 16

黒髪の少女は……

しおりを挟む
女王蜂が停止して、働き蜂がゴロゴロと転がっている床。 

マリリンの大活躍で、取り敢えずは戦いは終わった。

そんな中、どこからともなく声が聞こえた。

「あら、停止させたのね。」
厳格な中に優しい声と共に、女性が現れた。

「神はオレを見捨てなかった!! なんと、美しい女王様!! 」

泊金の髪を靡かせ、体を覆うような鎧の下に長い薄い布が裾が流れる。割れた裾から美しい足がちらちらと見え隠れする。

喜びに震えているレストと、警戒しているシンの前をゆっくりと横切り、停止した女王蜂へと近づく。

停止した女王蜂の中心部分を開けると、中は何もないただの空っぽであった。

「この中の物をどうしたの? 」
女性が、振り向く。

「わかりません!! 女王様!! 」
レストは素直に応えた。

「中の物をどうするつもり? 」

「あら、あなた…… 」
その女性はマリリンに初めて気づいたように目を一瞬開くと、目を細めた。

「また、お会いしましょう。」
上の方に目をやると、ふっと女性はその場から消えた。

「待って、女王様!! せめてお名前を!! 」
レストは女性が消えた場所まで走って手を床についた。

「女王様ーー!! カムバーーック!! 」
床の中に消えた訳では無いがレストは床に叫んでいた。

「ジン、彼女を追うのよ!! 」
真剣な顔でマリリンはシンを見る。

「ジンじゃない、だ。」
「いいから、追うの!! 」
「そうだ追うぞ!! せめて、名前だけでも!! いや、せめてお茶を一杯!! 」
レストは追うのにノリノリだ。

「好みじゃない。」
「そういう意味じゃない!! とにかく、上に行くわよ!! 」
シンは先程の女性は好みじゃないと断るが、マリリンは腕を持ってエレベーターに引っ張り込む。

塔の屋上はまるで神殿のように少し高い場所に六芒星の魔導陣があり、星を型どる点に六本の白い柱が立っていた。その真ん中に祭壇が置かれてある。

それをぼんやりと見るものがいた。腰までの黒い髪を垂らした者は、手に白く輝く玉を持っていた。

「その玉、私が落としたものなの。返してもらえるかしら。」
泊金の髪の女性が声をかけると、振り向いた黒髪の少女が振り向く。静かに、玉を差し出す。

「ありがとう。」
女性は両手で受け取った。

その時後ろでエレベーターが開く。女性は、またふっとその場から消えていった。

「ラッ!! 」
エレベーターが開いて、神殿の中に立っている者を見っけてマリリンは悲鳴のような声をあげた。

「無事、だったのか…… 」
ほっとしたような、優しい顔を黒髪の少女に向けるシン。

「この娘が、シンの夢の中の少女…… 」
(可愛い。確かに可愛い…… だが、なんだ? オレの心が動かない。)
レストは胸に手をあてる、不思議なほどにときめかない。コレはやはり親友の想い人だからかと、自分を納得させる。

首を傾げてこちらを見ている黒髪の少女。シンは彼女にゆっくりと近づく。

「俺は、シン。」

(よし、頑張れ!! シン。)
レスト心の中で応援する。

「君は…… 」
見つめながら、手を差し出すシン。

、ラッシュ!! 」
元気に少女は応えた。

「「「えっ!! 」」」
三人は驚愕の声をあげる。

、ラッシュ。」
ラッシュは可愛らしく、顔を傾げる。さらさらと黒い髪が流れる。

「え、え、えっと、!? 」
マリリンが答えを求めるように、ラッシュに問いかける。こくりと、ラッシュは頷く。

「マジか!! その顔で、もったいない!! 」
(男の子か、どおりでオレの心が動かない訳だ。)

オレ正常と、ガッツポーズを取るレスト。女性に声をかけるのは、自分の生きがいである。

「嘘だ…… 噓。嘘だーー!! 」
シンは走った、きらりと目のあたりから光る雫が流れる。
屋上の端に見える階段から下に逃げるように駆け抜ける。

「待て、シン!! 」
「待ってよ!! 」
その後をレストとマリリンが追いかける。一度、マリリンは振り向きラッシュを見る。

(男の子、違うよね…… )
そう、心で願いながら。

「変な奴…… 」
走り去る三人を見て、ラッシュは呟いた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

好色一代勇者 〜ナンパ師勇者は、ハッタリと機転で窮地を切り抜ける!〜(アルファポリス版)

朽縄咲良
ファンタジー
【HJ小説大賞2020後期1次選考通過作品(ノベルアッププラスにて)】 バルサ王国首都チュプリの夜の街を闊歩する、自称「天下無敵の色事師」ジャスミンが、自分の下半身の不始末から招いたピンチ。その危地を救ってくれたラバッテリア教の大教主に誘われ、神殿の下働きとして身を隠す。 それと同じ頃、バルサ王国東端のダリア山では、最近メキメキと発展し、王国の平和を脅かすダリア傭兵団と、王国最強のワイマーレ騎士団が激突する。 ワイマーレ騎士団の圧勝かと思われたその時、ダリア傭兵団団長シュダと、謎の老女が戦場に現れ――。 ジャスミンは、口先とハッタリと機転で、一筋縄ではいかない状況を飄々と渡り歩いていく――! 天下無敵の色事師ジャスミン。 新米神官パーム。 傭兵ヒース。 ダリア傭兵団団長シュダ。 銀の死神ゼラ。 復讐者アザレア。 ………… 様々な人物が、徐々に絡まり、収束する…… 壮大(?)なハイファンタジー! *表紙イラストは、澄石アラン様から頂きました! ありがとうございます! ・小説家になろう、ノベルアッププラスにも掲載しております(一部加筆・補筆あり)。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

ただあなたを守りたかった

冬馬亮
恋愛
ビウンデルム王国の第三王子ベネディクトは、十二歳の時の初めてのお茶会で出会った令嬢のことがずっと忘れられずにいる。 ひと目見て惹かれた。だがその令嬢は、それから間もなく、体調を崩したとかで領地に戻ってしまった。以来、王都には来ていない。 ベネディクトは、出来ることならその令嬢を婚約者にしたいと思う。 両親や兄たちは、ベネディクトは第三王子だから好きな相手を選んでいいと言ってくれた。 その令嬢にとって王族の責務が重圧になるなら、臣籍降下をすればいい。 与える爵位も公爵位から伯爵位までなら選んでいいと。 令嬢は、ライツェンバーグ侯爵家の長女、ティターリエ。 ベネディクトは心を決め、父である国王を通してライツェンバーグ侯爵家に婚約の打診をする。 だが、程なくして衝撃の知らせが王城に届く。 領地にいたティターリエが拐われたというのだ。 どうしてだ。なぜティターリエ嬢が。 婚約はまだ成立しておらず、打診をしただけの状態。 表立って動ける立場にない状況で、ベネディクトは周囲の協力者らの手を借り、密かに調査を進める。 ただティターリエの身を案じて。 そうして明らかになっていく真実とはーーー ※作者的にはハッピーエンドにするつもりですが、受け取り方はそれぞれなので、タグにはビターエンドとさせていただきました。 分かりやすいハッピーエンドとは違うかもしれません。

烙印騎士と四十四番目の神

赤星 治
ファンタジー
生前、神官の策に嵌り王命で処刑された第三騎士団長・ジェイク=シュバルトは、意図せず転生してしまう。 ジェイクを転生させた女神・ベルメアから、神昇格試練の話を聞かされるのだが、理解の追いつかない状況でベルメアが絶望してしまう蛮行を繰り広げる。 神官への恨みを晴らす事を目的とするジェイクと、試練達成を決意するベルメア。 一人と一柱の前途多難、堅忍不抜の物語。 【【低閲覧数覚悟の報告!!!】】 本作は、異世界転生ものではありますが、 ・転生先で順風満帆ライフ ・楽々難所攻略 ・主人公ハーレム展開 ・序盤から最強設定 ・RPGで登場する定番モンスターはいない  といった上記の異世界転生モノ設定はございませんのでご了承ください。 ※【訂正】二週間に数話投稿に変更致しましたm(_ _)m

連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ② 

KZ
ファンタジー
初めましての人は初めまして。プロデューサーこと、主人公の白夜 零斗(はくや れいと)です。 2回目なので、俺については特に何もここで語ることはありません。みんなが知ってるていでやっていきます。 では、今回の内容をざっくりと紹介していく。今回はホワイトデーの話だ。前回のバレンタインに対するホワイトデーであり、悪魔に対するポンこ……天使の話でもある。 前回のバレンタインでは俺がやらかしていたが、今回はポンこ……天使がやらかす。あとは自分で見てくれ。  ※※※  ※小説家になろうにも掲載しております。現在のところ後追いとなっております※

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

処理中です...