記憶の中の伝説

❄️冬は つとめて

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黒髪の少女は……

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女王蜂が停止して、働き蜂がゴロゴロと転がっている床。 

マリリンの大活躍で、取り敢えずは戦いは終わった。

そんな中、どこからともなく声が聞こえた。

「あら、停止させたのね。」
厳格な中に優しい声と共に、女性が現れた。

「神はオレを見捨てなかった!! なんと、美しい女王様!! 」

泊金の髪を靡かせ、体を覆うような鎧の下に長い薄い布が裾が流れる。割れた裾から美しい足がちらちらと見え隠れする。

喜びに震えているレストと、警戒しているシンの前をゆっくりと横切り、停止した女王蜂へと近づく。

停止した女王蜂の中心部分を開けると、中は何もないただの空っぽであった。

「この中の物をどうしたの? 」
女性が、振り向く。

「わかりません!! 女王様!! 」
レストは素直に応えた。

「中の物をどうするつもり? 」

「あら、あなた…… 」
その女性はマリリンに初めて気づいたように目を一瞬開くと、目を細めた。

「また、お会いしましょう。」
上の方に目をやると、ふっと女性はその場から消えた。

「待って、女王様!! せめてお名前を!! 」
レストは女性が消えた場所まで走って手を床についた。

「女王様ーー!! カムバーーック!! 」
床の中に消えた訳では無いがレストは床に叫んでいた。

「ジン、彼女を追うのよ!! 」
真剣な顔でマリリンはシンを見る。

「ジンじゃない、だ。」
「いいから、追うの!! 」
「そうだ追うぞ!! せめて、名前だけでも!! いや、せめてお茶を一杯!! 」
レストは追うのにノリノリだ。

「好みじゃない。」
「そういう意味じゃない!! とにかく、上に行くわよ!! 」
シンは先程の女性は好みじゃないと断るが、マリリンは腕を持ってエレベーターに引っ張り込む。

塔の屋上はまるで神殿のように少し高い場所に六芒星の魔導陣があり、星を型どる点に六本の白い柱が立っていた。その真ん中に祭壇が置かれてある。

それをぼんやりと見るものがいた。腰までの黒い髪を垂らした者は、手に白く輝く玉を持っていた。

「その玉、私が落としたものなの。返してもらえるかしら。」
泊金の髪の女性が声をかけると、振り向いた黒髪の少女が振り向く。静かに、玉を差し出す。

「ありがとう。」
女性は両手で受け取った。

その時後ろでエレベーターが開く。女性は、またふっとその場から消えていった。

「ラッ!! 」
エレベーターが開いて、神殿の中に立っている者を見っけてマリリンは悲鳴のような声をあげた。

「無事、だったのか…… 」
ほっとしたような、優しい顔を黒髪の少女に向けるシン。

「この娘が、シンの夢の中の少女…… 」
(可愛い。確かに可愛い…… だが、なんだ? オレの心が動かない。)
レストは胸に手をあてる、不思議なほどにときめかない。コレはやはり親友の想い人だからかと、自分を納得させる。

首を傾げてこちらを見ている黒髪の少女。シンは彼女にゆっくりと近づく。

「俺は、シン。」

(よし、頑張れ!! シン。)
レスト心の中で応援する。

「君は…… 」
見つめながら、手を差し出すシン。

、ラッシュ!! 」
元気に少女は応えた。

「「「えっ!! 」」」
三人は驚愕の声をあげる。

、ラッシュ。」
ラッシュは可愛らしく、顔を傾げる。さらさらと黒い髪が流れる。

「え、え、えっと、!? 」
マリリンが答えを求めるように、ラッシュに問いかける。こくりと、ラッシュは頷く。

「マジか!! その顔で、もったいない!! 」
(男の子か、どおりでオレの心が動かない訳だ。)

オレ正常と、ガッツポーズを取るレスト。女性に声をかけるのは、自分の生きがいである。

「嘘だ…… 噓。嘘だーー!! 」
シンは走った、きらりと目のあたりから光る雫が流れる。
屋上の端に見える階段から下に逃げるように駆け抜ける。

「待て、シン!! 」
「待ってよ!! 」
その後をレストとマリリンが追いかける。一度、マリリンは振り向きラッシュを見る。

(男の子、違うよね…… )
そう、心で願いながら。

「変な奴…… 」
走り去る三人を見て、ラッシュは呟いた。

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