記憶の中の伝説

❄️冬は つとめて

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遺跡へと。

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トイレ個室より狭い部屋に入り、一瞬部屋の明かりが消えてついたら外から扉が開く。

「またのご利用、お待ちいたします。」
ガイドの男は頭を下げてシンとレストを見送った。シン達も、足早に部屋を出て建物外への出入り口に向かった。

外に出ると少し先に威圧を感じるほどの円錐台の塔がそそり立っている。その昔空から飛来した塔だと言われているが、定かではない。

「しかし、ロマンチックだよな。夢の中の少女を思い続ける。それ、女の子にモテそうだな。」
「……… 」
「シンは女の子に興味ない、と。オレ、身の危険を感じてたけど安心したぜ。」
遺跡に急ぐシンに向かって、レストは話しかける。とにかくレストは女の子大好き、男子である。

シンはレストを無視して、遺跡の出入り口へと急ぐ。他の冒険者とすれ違いながらも、シンに話しかけながら後を追うレスト。

遺跡の出入り口の近くで、心配そうにしている男の商人が立っていた。

「黒髪の少女を見なかったか? 」
「ああ…… 素行の悪い奴と組んだあの娘かい? 彼奴等、危なくなったら仲間を囮にして逃げるんだよ。」
シンの問いかけに、商人の男は応えた。

「やはり、此処か。」
「急ぐそ、シン!! 女の子を囮にするとは、男として許せん!! 」
シンより、レストは先に遺跡に入って行く。シンも後を追って中に足を踏み込んだ。

中は遺跡と石畳のまさに、遺跡と呼ぶに相応しい風貌である。いくつもの部屋があり、奥に階段も見える。上に行くほど、妖魔が強くなると言われている。

慎重に中に進んでいく二人、一階と言っても何処から妖魔が出てくるか分からない。弱いからと油断すれば、不意打ちを受け怪我をするかも知れない。

所々で出会った冒険者達に少女の行方を聞きながら、奥に進んでいく二人。

簡単にスライムや巨大化したコウモリを倒しながら前に進む。霧散し落とした鉱石や金貨、魔石は冒険者としては拾って行く。

「シン、右だ!! 」
右側から襲い来る50センチ程の巨大ネズミを避け、短剣で切る。武闘派のシンは長剣より、短剣の方が性に合っていた。親から譲られた剣は、いざという時の為に腰にさしてはいるが。

レストは親から、餞別として盗んで来た槍を巨大ネズミに刺している。マナが霧散して、魔石とネズミの亡骸が転がる。

二人は魔石だけを取り、亡骸は放おっておく。巨大ネズミは食べられない、食べようと思えば食べられるがあまり美味しくない。亡骸はそのうちスライムが吸収して無くなるだろう。

二人は上へ上へと、階段を登る。未だ制覇されていない、遺跡は何階有るかは分からない。時々、宝箱に擬態したミミックと言う物に合うが、此れは倒しておいた方がいい。何故か、レア物を抱え込む性質を持つ不思議な妖魔である。


目の前に宝箱がある。

「いや、ミミックだろ!! 」
「ミミックだな。」
シンは構え、レストは槍で宝箱を開ける。

確かにミミックを倒して、そのまま宝箱として固定化する物もいる。そして何故か、近くにある剣や雑貨等を引き寄せてしまい込みその物をバージョンアップさせる、不思議な宝箱もあるが。
  
案の定ミミックであった。

ミミックは、ピンキリである。弱いものから、強いもの。

「げっ!! 巨大スライムか!! 」
レストは唸った。小さなスライムと違って、此れは中々骨が折れる。スライムは核を壊さない限り倒せない。大きいと得物が核に届かない、周りを削って小さくするしかないのだ。削るというのは、スライムの消化ネバネバを被るかも知れないから服とか溶かされる場合がある。

「くそっ、女の子と一緒だったら!! シンの裸体なんかみたくないぞ!! 」
「俺だってお前の裸なんか、みたくないわ!! 」
二人は毒づきながら巨大スライムを削って、やっとの思いで核を壊した。

「なんとか、裸体を見なくてすんだな。」
「中はなんだ? 」
額に汗をかきながら、二人は宝箱の中を見る。

「帰還の札だ。」
「レアじゃん!! 」 

※帰還札とはダンジョン内でなった時、外に強制送還されるものである。ただし、発動しない。ただの札である。

「よし、先に進むぞ。」
シンは顔をあげた。

「カワイ娘ちゃんの為なら、えんやこらだ。」
レストも顔をあげる。

そして二人は奥の部屋へと、足を進める。




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