記憶の中の伝説

❄️冬は つとめて

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夢。

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彼は走る。
薄暗く開けた空間のひとつの道を、白く輝く光に向かって。

彼は走る、走る。
ある少女の名前を呼んで。

彼女は微笑む、彼に。

彼の伸ばした手は彼女に届かない。透明な何かによって阻まれる。

彼は叫ぶ、彼女の名を。

何度も、何度も。

静かに、彼女はその中に溶け込むように消えていった。


彼は、俺は、悲痛な声をあけて、
目覚める。









「で、そのてカワイイい? 」
彼の目の前に座る話を聞いていた男が聞き返す。薄緑色したサラリとした髪の顔立ちの優しい男の名はレスト。

「お前の気になるところは、そこか…… 」
はぁーと、ため息をつくのは夢を見ていた男。短い赤毛の強面の青年シン。

「どうぜんだろ!! やはりカワイイとテンション上がるだろ!! 」
「いやお前、女性だったら何時もテンション上がってるだろ。」
レストの言葉に再びため息をつくシン。

この世界で18歳成人となったからと、親に家から追い出されたシン。旅に出ろと、軍資金をもらって。
それに村を追われたついて来た、幼馴染のレストであった。

ざわざわとざわめくギルド内の朝の食堂で、安いお酒エールを飲みながらシンは近頃見出した夢をレストに相談していた。

悲痛なほどの悲しみと無力感を。


「それはきっと神様の御告げだ。シンも恋をせよとの、命短し~恋せよ乙女冒険者~♪と。」
「はぁーー お前に相談した俺が馬鹿だった。」
シンはエールを飲み干した。

村から旅立って一年、親からの旅立ちの軍資金はレストのお陰で既に底をついていた。後ろ盾のないシン達が簡単に金を稼ぐとなれば、なんでも屋冒険者しか他ならなかった。

彼等は冒険者として、今日これからダンジョンと化した古代遺跡へと向かう予定である。


彼等シンとレストはである。壊れた世界に適合する為に融合した人類と別に、人間のまま世界に適合出来た生き残りであった。

新しい種である人類は、融合した獣の特徴を持つ者である。犬耳・猫耳・兎耳を持つ者は数多く。植物と融合した人類は、エルフと呼ばれ尖った耳を持つ。

それぞれの人類は、その種の特徴的な身体能力と固定された魔法を使い。生き残りし人間種は人それぞれにひとつの魔法を使う。

しかし再生した世界で、人間種は繁殖力が強く人類の種体になっていた。


「そろそろ行くか。」
夢の中の少女の残像を振り払いシンは席を立つ。厚手に作られた体にピッタリのハイネックのタンクトップの服と、フード付きのマント。親から譲り受けた剣の他に短剣を腰にさしている。ごく普通の冒険者が着る厚手の長袖の服と普通のマント、手に槍を持ってレストも席から立ち上がる。

「今からでもカワイイちゃん、勧誘ナンパしない? 」
「するか、阿呆!! 」
「えーーっ、女子がいると頑張れるのに!! 」
レストは今からでもパーティーに女の子を入れようとシンに打診する。だがきっぱりとシンは拒否する。

「お前、女性に気を取られて連携も何も合ったもんじゃないだろ。」
「えーーっ、女の子は守らなきゃ!! 」
「はあーーっ。」
シンはため息をつく。
レストが勧誘していた女性とパーティーを組んだ時、散々な目に合ったシンである。

『女性を守るは、紳士のつとめ。』
とか言って、女性を守って戦闘に加わらなかったのはつい最近の出来事だ。その時シンは一人で妖魔と戦った。

「組むなら、男だ。」
「男は、嫌だね!! 」
と、言う訳で彼等は何時も二人パーティーであった。

席を離れよう体を動かした時、シンは誰にぶつかった。

「あ、悪い。」
ぶつかった相手が振り向く、サラリと黒髪が流れた黒い瞳が細められる。少し会釈をして去って行く。

シンは目を見開いて、立ち尽くした。声も出ない。

「おい、どうしたんだシン。」
立ち尽くしているシンに声をかけるレスト。

「似ている…… 」
「えっ? 」

「彼女に…… 」
「夢の中のか!? 」
ギルドの出口を見つめながらシンは応える。

「クソ!! どこだ、カワイ娘ちゃん!! 」
きょろきょろと辺りを探すレスト。そこにはむさ苦しい男ばかり。

「くそっ、行くぞシン!! カワイ娘ちゃんを見つけ出すぞ!! 」
シンの方を掴み、レストであった。


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