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私の婚約者の、自称健康な幼なじみの叫び。
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オスカーの元に向かうアプリコット侯爵家の馬車。アプリコット夫妻とアルト、ティアック伯爵とタクトが乗っていた。
「これは責任問題だぞ、兄。」
馬車の中でオルグは兄のティアック伯爵を責めた。
「責任を取って、オスカー君とカノンを結婚させてもらう。」
「オスカーには、ルミナス嬢と言う婚約者いる。」
腕を組みイライラしながら弟に、オルガが応えた。
「ひっく、姉上はオスカー様が好きなのです。結婚を許してください、幸せにしてください。ひっく、ひっく。」
アルトは泣きながらオルガにお願いをする。
「そうだ、カノンは父そっくりのオスカー君が好きなのだ。賠償としてオスカー君との婚姻を求める。」
「黙れオルグ、殴るぞ。」
責め立てる弟に、オルガは拳を突き付けた。アプリコット侯爵、テノールが扇を広げ口元を隠した。
「アルト、タクト様。目を瞑りなさい。」
「はい、母上。」
「えっ? 」
アルトは素直に目を瞑ったが、タクトは目を見張った。
「目を瞑りなさい、タクト様。」
「……はい。」
言い知れぬ圧力にタクトは、素直に目を瞑った。
「いたい、いたい、兄~!! やめてくれ!! 」
バカ、ボカ、スカと叩く音がする。
「酷い、酷いぞ、兄は直ぐ暴力に訴える!! 」
「まだいうか!! 」
スカ、ボカ、バカと叩く音がする。
「いたい、いたい!! 悪かったのだ、許して~!! 」
オルグの謝りの声がして、隣にドサッと座る音がした。
「もう宜しいですわ。」
テノール夫人の声がして目を開けると、頭を押さえて涙目になっているオルグがボソボソと呟いている。
「兄は酷い。兄は意地悪だ。兄は暴力的だ。」
まるでカノンのように相手を責め立てている。タクトは思ったカノンの性格は父親似だ。
(だが、カノン様と違っ全く可愛くない。)
オスカーは婚約者のルミナスと放課後を楽しんでいた。
「これは? 」
「ワカメと言う物です。」
オスカーは乾燥したワカメを手に取った。ルミナスは微笑んでいた。
「食べると頭、髪に良いそうです。」
「髪に……。」
オスカーの脳裏に今朝の夢が蘇る。
『オスカー様、私は頭の寂しい方は……婚約はなかった事に。』
(まさかルミナスは、俺との婚約を解消しようと……。)
オスカーは体を震わせた。そんなオスカーに、ルミナスはリンダの言葉を思い出した。
『殿方は頭皮の事になると硝子のように繊細なのです。』
ルミナスはオスカーの手を強く握りしめる。
「私は、オスカー様がどのようになられても好きです。」
「ルミナス……。」
二人は見詰め合った。
「もう、あの二人ラブラブなんだから。」
「そうだね。」
ルミナスの兄ハルクと友達のエリーゼは二人を微笑ましく見ていた。その隣の木には、てるてる坊主のように吊るされているナルシスがいた。
「居た!! 嬢ちゃん居たよ!! 」
大きな声がしてそちらを向くと、何処かで見たような男が立っていた。トムとジェリーは裏門からこっそりとこの場にカノンを連れてきていた。
「嬢ちゃん。俺達はコレでな!! 」
トムはカノンを下ろし、ジェリーと共に全速力で来た道を帰って行った。
「お兄様……。」
「カノン? どうしてここに? 」
カノンはオスカーと共にいるルミナスを見て呆然と呟く。
「酷いですわ……、ルミナス様と会ってるなんて……。」
ふらふらと二人に近付く。
「昨日、婚約を破棄されたのに。」
「いや、してないから。」
オスカーは即座に否定する。
「わたくしを騙したの? 」
カノンは目に涙を溜めた。
「お兄様は酷いですわ、わたくしの心を弄んたのですわ。こほ、こほ。」
カノンは興奮のあまり咳を出し始めた。そんな中、アプリコット親子とティアック伯爵とタクトが駆けつけた。
「酷いですわ、お兄様!! わたくしお兄様の婚約破棄をどれ程喜んだか、ゴホゴホ!! 」
「カノン様、興奮しないで。」
タクトがカノンの元に駆けつける。
「酷いですわお兄様!! これで邪魔者がいなくたったとゴホゴホッ!! 思って…ゴホゴホッ!! 」
((ああ、やはりかのん様はオスカー様の事を……。))
カノンの言葉にルミナスとタクトはオスカーを好いていると思った。
「ゴホゴホ…二人で、ゴホッ!! 楽しく、ゴホゴホッ!! 遊園地で観覧車にゴホゴホゴホッ!! 」
カノンの涙ながらの必死の訴えはその場に居る者の心に響いた。
カノンがオスカーを好きだと誰しも一度は思ったことだったが、オスカーはそれを否定してきた。しかし、今のカノンの言葉はどう聞いてもオスカーを慕っているとしか思えない。
「この泥棒犬!! 」
静まり返ったその場にカノンの悲痛の叫び声が響いた。
「これは責任問題だぞ、兄。」
馬車の中でオルグは兄のティアック伯爵を責めた。
「責任を取って、オスカー君とカノンを結婚させてもらう。」
「オスカーには、ルミナス嬢と言う婚約者いる。」
腕を組みイライラしながら弟に、オルガが応えた。
「ひっく、姉上はオスカー様が好きなのです。結婚を許してください、幸せにしてください。ひっく、ひっく。」
アルトは泣きながらオルガにお願いをする。
「そうだ、カノンは父そっくりのオスカー君が好きなのだ。賠償としてオスカー君との婚姻を求める。」
「黙れオルグ、殴るぞ。」
責め立てる弟に、オルガは拳を突き付けた。アプリコット侯爵、テノールが扇を広げ口元を隠した。
「アルト、タクト様。目を瞑りなさい。」
「はい、母上。」
「えっ? 」
アルトは素直に目を瞑ったが、タクトは目を見張った。
「目を瞑りなさい、タクト様。」
「……はい。」
言い知れぬ圧力にタクトは、素直に目を瞑った。
「いたい、いたい、兄~!! やめてくれ!! 」
バカ、ボカ、スカと叩く音がする。
「酷い、酷いぞ、兄は直ぐ暴力に訴える!! 」
「まだいうか!! 」
スカ、ボカ、バカと叩く音がする。
「いたい、いたい!! 悪かったのだ、許して~!! 」
オルグの謝りの声がして、隣にドサッと座る音がした。
「もう宜しいですわ。」
テノール夫人の声がして目を開けると、頭を押さえて涙目になっているオルグがボソボソと呟いている。
「兄は酷い。兄は意地悪だ。兄は暴力的だ。」
まるでカノンのように相手を責め立てている。タクトは思ったカノンの性格は父親似だ。
(だが、カノン様と違っ全く可愛くない。)
オスカーは婚約者のルミナスと放課後を楽しんでいた。
「これは? 」
「ワカメと言う物です。」
オスカーは乾燥したワカメを手に取った。ルミナスは微笑んでいた。
「食べると頭、髪に良いそうです。」
「髪に……。」
オスカーの脳裏に今朝の夢が蘇る。
『オスカー様、私は頭の寂しい方は……婚約はなかった事に。』
(まさかルミナスは、俺との婚約を解消しようと……。)
オスカーは体を震わせた。そんなオスカーに、ルミナスはリンダの言葉を思い出した。
『殿方は頭皮の事になると硝子のように繊細なのです。』
ルミナスはオスカーの手を強く握りしめる。
「私は、オスカー様がどのようになられても好きです。」
「ルミナス……。」
二人は見詰め合った。
「もう、あの二人ラブラブなんだから。」
「そうだね。」
ルミナスの兄ハルクと友達のエリーゼは二人を微笑ましく見ていた。その隣の木には、てるてる坊主のように吊るされているナルシスがいた。
「居た!! 嬢ちゃん居たよ!! 」
大きな声がしてそちらを向くと、何処かで見たような男が立っていた。トムとジェリーは裏門からこっそりとこの場にカノンを連れてきていた。
「嬢ちゃん。俺達はコレでな!! 」
トムはカノンを下ろし、ジェリーと共に全速力で来た道を帰って行った。
「お兄様……。」
「カノン? どうしてここに? 」
カノンはオスカーと共にいるルミナスを見て呆然と呟く。
「酷いですわ……、ルミナス様と会ってるなんて……。」
ふらふらと二人に近付く。
「昨日、婚約を破棄されたのに。」
「いや、してないから。」
オスカーは即座に否定する。
「わたくしを騙したの? 」
カノンは目に涙を溜めた。
「お兄様は酷いですわ、わたくしの心を弄んたのですわ。こほ、こほ。」
カノンは興奮のあまり咳を出し始めた。そんな中、アプリコット親子とティアック伯爵とタクトが駆けつけた。
「酷いですわ、お兄様!! わたくしお兄様の婚約破棄をどれ程喜んだか、ゴホゴホ!! 」
「カノン様、興奮しないで。」
タクトがカノンの元に駆けつける。
「酷いですわお兄様!! これで邪魔者がいなくたったとゴホゴホッ!! 思って…ゴホゴホッ!! 」
((ああ、やはりかのん様はオスカー様の事を……。))
カノンの言葉にルミナスとタクトはオスカーを好いていると思った。
「ゴホゴホ…二人で、ゴホッ!! 楽しく、ゴホゴホッ!! 遊園地で観覧車にゴホゴホゴホッ!! 」
カノンの涙ながらの必死の訴えはその場に居る者の心に響いた。
カノンがオスカーを好きだと誰しも一度は思ったことだったが、オスカーはそれを否定してきた。しかし、今のカノンの言葉はどう聞いてもオスカーを慕っているとしか思えない。
「この泥棒犬!! 」
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