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【三つ巴の戦い・前編】義理の妹編

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「あっ、 」

それはうららかな午後であった。優しい風のふく中庭。
テーブルを囲んで、三人の男女。

「どうしたの? マーカリン。」
「ううん、なんでもない。シャーム義理姉お姉さま。」

無理やり義理姉シャームの婚約者とのお茶会に割り込んだ義理の妹マーカリンは可愛らしい顔を振った。金のふわふわした髪が揺れる。

「そう…… 」
シャームは静かにマーカリンから目を逸らしてお茶を口に運んだ。淑女として洗練された作法に、美しい銀髪に、美しい顔に、マーカリン目を奪われる。

そして、思うのだ。

(これって、ヤバい? )
隣になぜか、義理姉シャームの婚約者が座っている。それも、とっても距離が近く。顔を向けると、姉の婚約者と目が合う。

(うわ、ヤバいやつだ!! )
マーカリンはさっと目を逸らし俯いた。

彼女マーカリンは前触れもなく、先程クッキーを食べて思い出した。

(クッキー食べて前世を思い出す? なにそれ、普通は頭を打ったり熱を出してとか。)
そして記憶の混乱もない。

(彼女は、私の義理の姉シャーム。隣の男は姉の婚約者のバータ。そして私は、子供の頃母親が再婚して義理の妹となったマーカリン。)

そして姉の婚約者にベタベタつきまとって、邪魔をしている妹である。

此処が、小説の中なら。
自分は姉の婚約者を奪ってしまう妹。

(それ、駄目でしょ。人のモノ取っちゃ駄目でしょ。)
前世を思い出したマーカリン確信する。今世、子供の頃から甘やかされて育って『姉のモノは自分のモノ、自分のモノは自分のモノ』と、まるで『ドラ◯もんのジャイアン』の思考を否定する。

此処が、乙女ゲームの中なら。

(私がヒロインの位置? 乙女ゲームならね。でもでも、小説ノベルなら『逆ざまぁ』の破滅ルート。)

マーカリンは両手でクッキーを、栗鼠りすのように食べながら考えた。

乙女ゲームなら、虐げられるヒロイン。

(ううん、虐げないわ。今のところ、我儘を聞いてくれる優しいお姉さまよ。)

カリカリと無意識で、クッキーを頬に溜め込む。それも

此処が、小説の中なら。

(お姉さまの婚約者を奪っちゃう? 駄目よ!! 物とは別物よ!! )

今は円満家族で、妹の我儘は母親がと叱っている。

(ただ、私が馬鹿だから駄々をこねまくるからお姉さまが諦めてのよね。)

マーカリンは冷や汗をかく。

(これって、ヤバい? )

マーカリンは頬をパンパンに張らせているが、いまだクッキーを食べ続ける。

(わあ、ヤバいやつだ。)

しかし抜け目ない母親が似たような物を買ってすり替え、姉に返していた。マーカリンは馬鹿だからそれには気づかない。

(でも前世を思い出した私は、そんなことはしないわ。)

「マーカリン。一度、口に入れたものを飲み込みなさい。」
優しい姉の言葉で、マーカリンは口の中の状態に気づく。顔を上下に動かし、頬を手で押さえて中のものをゆっくりと喉へ流し込む。その姿も、見るものによっては

隣を見るとやっぱり、姉の婚約者バータが自分を見ている。

(まだ大丈夫よね? まだ、誘惑してないわよね? )

マーカリンは考える。
(まだ二回しかお姉さまと婚約者は顔合わせをしていない。二回でどうこうできるはずはないよね。)

ちらちらと、マーカリンは姉の婚約者バータに目を向ける。

だが、何故か目が合う。

(これて、ヤバい? )

コックンと口の中のクッキーを飲み込んで、お茶を飲む。ちらりと横を見ると姉の婚約者と目が合う。

(これて、ヤバいやつだ。)

さっと、目を逸らす。

(いや~~!! 『俺に惚れてるだろう』の勘違いタイプ? 確かにさっきまで、ベタベタしてたけど~~ )
マーカリンは少しづつ、姉の婚約者から距離を取る。

(しませんからね、ぜったい!! お姉さまの婚約者を誘惑しません!! )

マーカリンは、うまくこの場からフェードアウトできる方法を考えるのであった。

【続く】









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