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人の振り見て我が振り直せ。 ✥
それが、殿下の考えなのですね。【上とは別の話です。前編】
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「近く、ありませんこと? 」
目の前で肘が触れ合う程近くで勉学に励んでいる男女に一言、女生徒は物申す。
「えっ、あっ、そうかなっ? 」
その言葉に男子生徒の方が距離を取ると。
「えーーっ、そんなことないよ~~ 」
女子生徒の方は離れる男子生徒に、椅子ごと近づく。
「近くじゃないと、よく見えないし~~ 」
語尾の甘い喋り方で、男子生徒に近づく。肘にその女子生徒の胸の柔らかい感触に、男子生徒顔を赤らめる。
「アイボン令嬢。メディカル子息が、困ってますよ。」
柔らかく、離れろと彼女ティアーレ・フォン・オフテクス公爵令嬢はアイリス・アイボン男爵令嬢に言っていた。
「えっ、そうなの? サンテさま~ 」
覗き込むように上目遣いで男子生徒を見上げアイリスに、サンテは困ったような嬉しそうな複雑な笑顔を彼女に向ける。
「メディカル子息! 」
「あ、喉乾いたな~ お茶、お茶。」
ティアーレの非難する目に、サンテは立ち上がってその場を離れた。
「アイボン令嬢。何度も言いますが、気安く殿方を名前で呼んだり触れるのは淑女としてよくありませんわ。」
「はい、はーーい。」
ティアーレは注意をするが、アイリスは聞く耳をもたない。
「何か揉め事かい? 」
生徒会室の扉が開いて入って来た生徒会長は、ティアーレの声に反応する。
「殿下。」
「ロートさま~~ 」
ロートに縋り付こうとアイリスは立ち上がったが、ワイビー伯爵令息が身を呈して間に入った。
当然だ、ロート・フォン・アルガードはこの国の王太子殿下である。気安く触れる事は許されない、婚約者でもあるまいし。
「ロートさま~~ 」
ワイビー子息に阻われながらも、語尾の甘い喋り方でロートの名を呼ぶ。
「ティアが、声を荒げるなんて珍しいな。」
「そうなんです!! ティアさまが、酷いんです!! ロートさま~~ 」
「酷くはありません。淑女としての基本を言っているだけです。」
ティアーレはアイリスの言葉を否定する。
「そんな強い言い方しなくてもいいじゃない!! ぐすっ…… 」
アイリスは涙を流して泣き出した。
「アイボン令嬢、すぐに泣くのもやめなさい! 」
「ロートさま~~ キュアスさま~~ ティア様はいつもアイリスに酷い言葉をぶつけるんです~~ 」
ワイビー子息に阻われながらも、うるうるとした瞳を必死にロートに向ける。勿論キュアス・フォン・ワイビー伯爵令息に縋りつきながら。
アイリスの言葉に、ぴくりと反応するロート。
「アイボン令嬢。気安くわたくしの名前も呼ばないでくださいませ。」
ティアーレは再びアイリスを叱咤する。
「貴方とは友達になったつもりは、ありません! 」
「ひ、ひどい!! アイリスが、市井育ちだからて差別するんだ!! 」
うううっ、とワイビー子息に縋り付いて泣き出した。
「差別ではありません。礼儀をわきまえない貴方とは、友達にはなれません。」
ティアーレは、毅然と言った。
「貴方が生徒会室にいられるのは、淑女の基本をわたくしが教えるためです。なのに、貴方はわたくしの言葉を聞こうともしない。」
市井で育ったアイリスが生徒会室にいるのは、淑女として振る舞いができなさすぎて強制収容をしていたのである。
「憶える気がないのなら、生徒会室には来る意味がありませんわ。」
「ひどい!! アイリスだって、がんばってるのに~~!! 」
うるうると、瞳を潤ませながらロートに近づこうと体を動かす。だが、ワイビー子息の捨て身のガードは鉄壁であった。
「語尾を延ばすのはおやめなさい。自分を名前で呼ぶのも、子供ではないのですからおやめなさい。」
ティアーレは、次から次へとアイリスの駄目な部分を指摘する。
「ひどい、ティア様は意地悪です!! そうやっていつもアイリスを虐めるのです~~ 」
アイリスもワイビー子息にしがみつきながら負けずに言い返す。
「まあ、まあ、2人共落ち着いて!! 」
先程席を立ったメディカル子息がお茶を入れて戻って来た。
「取り敢えず、落ち着いてお茶でも飲んで!! 」
メディカル子息は机の上にトレーごと皆の数のカップを置いた。
「さあ、みんな座った! 座った! 」
メディカル子息が場を明るくするために笑顔で言った。
「サンテさま~~ ティア様がひどいんです~~ 」
アイリスはメディカル子息に直ぐ様飛びついた。腕を絡ませて胸を押し付け、うるうるした瞳でメディカルを見上げた。
「あ、そう。うん。オフテクス様は言い方がきついかな~ 」
嬉し恥ずかし、鼻の下を伸ばしながら応える。
「メディカル子息。リセリア様に言いますよ。」
冷たい目で冷たい言葉を呟いた。
リセリアとは、メディカル子息の婚約者である。
ガタンと椅子にあたりながら、アイリスの腕から自分の腕を引き離す。だが、アイリスは底なし沼の泥のように離そうとしない。
「サンテさま~~ 」
縋り付くアイリスを引き離しなんとか安全地帯に避難する。恐ろしくも尊い、王太子殿下ロートの後ろに。なぜなら、ロートを護る鉄壁のワイビーがいるからだ。
「アイボン令嬢、いい加減になさいませ!! 殿方に安易に近寄りすぎです。」
「きゃ~~ こわい~~ ロートさま~~! 」
本当はロートに縋り付きたかったが、鉄壁のワイビーに縋り付いた。
「市井ではこれくらい、普通なんです~~ 」
「此処は市井ではありません!! 殿下への言葉遣いもあらためなさい!! 」
猫なで声でロートに訴えるアイリスに、ティアーレは叱咤する。
「そうか…… 市井では普通なのか。」
「殿下? 」
ロートは呟いた。
「そうなんです~~ 普通なんです~~ 」
縋り付こうとするアイリスに、鉄壁のガードのワイビー子息。
「ならば、仕方ないな。」
「殿下、此処は市井ではありませんわ。」
ティアーレの声にロートは顔を上げる。
「市井ではないが、私達は学生だ。少しぐらい、羽目を外してもいいのではないか。」
ロートはティアーレを見つめて、微笑んだ。
「でしょ~ でしょ~ でしょ~~ 」
アイリスは勝ち誇ったように声をあげた。
「ロートさまもこう言ってるんだから~~ ティア様。」
鉄壁のワイビーからティアーレに顔を向けて、勝利の微笑を向けた。
「それが、殿下の考えなのですね。」
「そうだね。だか「わかりましたわ。」
応えたロートの言葉に被せるようにティアーレは返事をした。
「わたくし、失礼致します。」
ティアーレは強張った顔のまま生徒会室を出ていった。
「ティアは、なにを怒っているんだろう? 」
ロートはワイビー子息に振り向いて聞いた。
「そりゃ、怒るだろ。」
応えたのはメディカル子息であった。
目の前で肘が触れ合う程近くで勉学に励んでいる男女に一言、女生徒は物申す。
「えっ、あっ、そうかなっ? 」
その言葉に男子生徒の方が距離を取ると。
「えーーっ、そんなことないよ~~ 」
女子生徒の方は離れる男子生徒に、椅子ごと近づく。
「近くじゃないと、よく見えないし~~ 」
語尾の甘い喋り方で、男子生徒に近づく。肘にその女子生徒の胸の柔らかい感触に、男子生徒顔を赤らめる。
「アイボン令嬢。メディカル子息が、困ってますよ。」
柔らかく、離れろと彼女ティアーレ・フォン・オフテクス公爵令嬢はアイリス・アイボン男爵令嬢に言っていた。
「えっ、そうなの? サンテさま~ 」
覗き込むように上目遣いで男子生徒を見上げアイリスに、サンテは困ったような嬉しそうな複雑な笑顔を彼女に向ける。
「メディカル子息! 」
「あ、喉乾いたな~ お茶、お茶。」
ティアーレの非難する目に、サンテは立ち上がってその場を離れた。
「アイボン令嬢。何度も言いますが、気安く殿方を名前で呼んだり触れるのは淑女としてよくありませんわ。」
「はい、はーーい。」
ティアーレは注意をするが、アイリスは聞く耳をもたない。
「何か揉め事かい? 」
生徒会室の扉が開いて入って来た生徒会長は、ティアーレの声に反応する。
「殿下。」
「ロートさま~~ 」
ロートに縋り付こうとアイリスは立ち上がったが、ワイビー伯爵令息が身を呈して間に入った。
当然だ、ロート・フォン・アルガードはこの国の王太子殿下である。気安く触れる事は許されない、婚約者でもあるまいし。
「ロートさま~~ 」
ワイビー子息に阻われながらも、語尾の甘い喋り方でロートの名を呼ぶ。
「ティアが、声を荒げるなんて珍しいな。」
「そうなんです!! ティアさまが、酷いんです!! ロートさま~~ 」
「酷くはありません。淑女としての基本を言っているだけです。」
ティアーレはアイリスの言葉を否定する。
「そんな強い言い方しなくてもいいじゃない!! ぐすっ…… 」
アイリスは涙を流して泣き出した。
「アイボン令嬢、すぐに泣くのもやめなさい! 」
「ロートさま~~ キュアスさま~~ ティア様はいつもアイリスに酷い言葉をぶつけるんです~~ 」
ワイビー子息に阻われながらも、うるうるとした瞳を必死にロートに向ける。勿論キュアス・フォン・ワイビー伯爵令息に縋りつきながら。
アイリスの言葉に、ぴくりと反応するロート。
「アイボン令嬢。気安くわたくしの名前も呼ばないでくださいませ。」
ティアーレは再びアイリスを叱咤する。
「貴方とは友達になったつもりは、ありません! 」
「ひ、ひどい!! アイリスが、市井育ちだからて差別するんだ!! 」
うううっ、とワイビー子息に縋り付いて泣き出した。
「差別ではありません。礼儀をわきまえない貴方とは、友達にはなれません。」
ティアーレは、毅然と言った。
「貴方が生徒会室にいられるのは、淑女の基本をわたくしが教えるためです。なのに、貴方はわたくしの言葉を聞こうともしない。」
市井で育ったアイリスが生徒会室にいるのは、淑女として振る舞いができなさすぎて強制収容をしていたのである。
「憶える気がないのなら、生徒会室には来る意味がありませんわ。」
「ひどい!! アイリスだって、がんばってるのに~~!! 」
うるうると、瞳を潤ませながらロートに近づこうと体を動かす。だが、ワイビー子息の捨て身のガードは鉄壁であった。
「語尾を延ばすのはおやめなさい。自分を名前で呼ぶのも、子供ではないのですからおやめなさい。」
ティアーレは、次から次へとアイリスの駄目な部分を指摘する。
「ひどい、ティア様は意地悪です!! そうやっていつもアイリスを虐めるのです~~ 」
アイリスもワイビー子息にしがみつきながら負けずに言い返す。
「まあ、まあ、2人共落ち着いて!! 」
先程席を立ったメディカル子息がお茶を入れて戻って来た。
「取り敢えず、落ち着いてお茶でも飲んで!! 」
メディカル子息は机の上にトレーごと皆の数のカップを置いた。
「さあ、みんな座った! 座った! 」
メディカル子息が場を明るくするために笑顔で言った。
「サンテさま~~ ティア様がひどいんです~~ 」
アイリスはメディカル子息に直ぐ様飛びついた。腕を絡ませて胸を押し付け、うるうるした瞳でメディカルを見上げた。
「あ、そう。うん。オフテクス様は言い方がきついかな~ 」
嬉し恥ずかし、鼻の下を伸ばしながら応える。
「メディカル子息。リセリア様に言いますよ。」
冷たい目で冷たい言葉を呟いた。
リセリアとは、メディカル子息の婚約者である。
ガタンと椅子にあたりながら、アイリスの腕から自分の腕を引き離す。だが、アイリスは底なし沼の泥のように離そうとしない。
「サンテさま~~ 」
縋り付くアイリスを引き離しなんとか安全地帯に避難する。恐ろしくも尊い、王太子殿下ロートの後ろに。なぜなら、ロートを護る鉄壁のワイビーがいるからだ。
「アイボン令嬢、いい加減になさいませ!! 殿方に安易に近寄りすぎです。」
「きゃ~~ こわい~~ ロートさま~~! 」
本当はロートに縋り付きたかったが、鉄壁のワイビーに縋り付いた。
「市井ではこれくらい、普通なんです~~ 」
「此処は市井ではありません!! 殿下への言葉遣いもあらためなさい!! 」
猫なで声でロートに訴えるアイリスに、ティアーレは叱咤する。
「そうか…… 市井では普通なのか。」
「殿下? 」
ロートは呟いた。
「そうなんです~~ 普通なんです~~ 」
縋り付こうとするアイリスに、鉄壁のガードのワイビー子息。
「ならば、仕方ないな。」
「殿下、此処は市井ではありませんわ。」
ティアーレの声にロートは顔を上げる。
「市井ではないが、私達は学生だ。少しぐらい、羽目を外してもいいのではないか。」
ロートはティアーレを見つめて、微笑んだ。
「でしょ~ でしょ~ でしょ~~ 」
アイリスは勝ち誇ったように声をあげた。
「ロートさまもこう言ってるんだから~~ ティア様。」
鉄壁のワイビーからティアーレに顔を向けて、勝利の微笑を向けた。
「それが、殿下の考えなのですね。」
「そうだね。だか「わかりましたわ。」
応えたロートの言葉に被せるようにティアーレは返事をした。
「わたくし、失礼致します。」
ティアーレは強張った顔のまま生徒会室を出ていった。
「ティアは、なにを怒っているんだろう? 」
ロートはワイビー子息に振り向いて聞いた。
「そりゃ、怒るだろ。」
応えたのはメディカル子息であった。
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