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そういうお年頃。 ✻
二人は、そういうお年頃。
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「ララベルと俺は、兄妹なんだ。」
「ほえっ!? 」
エリオットの告白に変な声が出てしまったマリアンヌ。
「えっ、兄妹? 」
そんな事は聞いた事がなかったのでマリアンヌは聞き返した。
「ああ、ララベルは俺の妹だ。」
手を顔の前に組んで、真剣な面持ちでエリオットは応える。
(酷い、酷すぎるわ。嘘を付くにしてもこれほどなんて!! )
「そんなの聞いていないわ。」
立ち上がって、抗議するマリアンヌ。
「父の隠し子だ。」
「おじ様の? 」
頭を抱えたエリオットを真下に見下ろして、マリアンヌは考える。
愛妻家のおじ様がおば様を裏切っていたなんて考えられない。それに、やはり聞いた事がない。
「おじ様が、そう言ったの? 」
「いや、父は何も言わない。」
エリオットは首を振った。
「だが、それ以外考えられない。」
エリオットは真剣な面持ちで、マリアンヌを見上げた。
「ララベルの異常な程のベタつき。そして、会った時に俺を「お兄さま」と呼んだんだぞ。初めて会った者を「お兄さま」と呼ぶか? 」
真剣な面持ちでエリオットは、マリアンヌに真相を述べる。
「父の隠し子以外に、考えられないだろ。」
「エリオット様…… 」
マリアンヌは力が抜けたように、ぱふんとソファに腰を下ろした。
どうやらエリオットは本気で、ララベルを父親の隠し子と思っているようであった。
「それに、毎日のように屋敷に来ても父は何も言わない。隠し子以外、考えられないだろ。」
(確か、ララベルのおば様とエリオット様のおば様が学生時代の大の仲良しと聞いてるけど。)
「母にバレたら、家庭の崩壊だ。父に甘えられない分、俺に甘えているんだと思う。」
前髪を掻きむしるエリオット。
(いえ、全然違いますよ。エリオット様。)
「可哀想な妹よ。ベタつかれるのは本当は嫌なんだが、哀れと思うとつい許してしまうんだ。」
(あ、ベタつかれるのは嫌なんだ…… )
「だが、マリアンヌが言うように、事情を知らない者がベタつくのを見れば確かに誤解をうむだろう。」
真剣な面持ちでマリアンヌをエリオットは見上げた。
「いい機会だ、父に言ってララベルに良い縁談を探してもらう。娘孝行してもらおう、今迄の罪滅ぼしの為に。」
エリオットは拳を握り締めた。
(おじ様、エリオット様の中では完璧にララベルが隠し子になってますよ。)
「マリアンヌ? 」
(エリオット様は子供の頃からずっとララベルを異母妹だと思っていたのね。)
変態でない限り、異母妹に恋愛感情なんて持つ筈はなく。
「ふふっ、解ったわエリオット様。でも、触れ合うのは兄妹でもおかしいから 」
「ああ、分かっている。確かにもういい年頃だ、兄妹同士でもベタつくのはおかしいな。」
二人は理解し合った。
(ごめんねララベル。エリオット様にとっては、あなたは血のつながった異母妹みたい。)
マリアンヌはエリオットの勘違いを正そうとはしなかった。
次の日、エリオットは頬を腫らして学校に現れた。
「きゃーー!! エリオットさま~ どうしたの~ 」
「触るな!! 」
駆け寄るララベルの手をエリオットは払いのける。
「エリオットさま? 」
呆然とするララベル。
「マリアンヌ、話がある。」
エリオットはマリアンヌの手を掴んで、ララベルをその場に置いて離れていった。
「エリオット様。」
「父に殴られた。」
マリアンヌがエリオットの名を呼ぶと、彼は応えた。
「昨日父に隠し子の事を話したら、殴られた。」
(あ、話したんだ。)
激怒するおじ様の顔が、マリアンヌの眼の前に浮かんでくる。
「ララベルは隠し子じゃなかった。俺達に血の繋がりはなかった。母の友達の子供だっただけだ。」
地団駄を踏むエリオット。
(うん。おば様に甘いおじ様は、おば様の友達も大事にしてたもんね。)
「それで…… 」
「ん? 」
マリアンヌの声にエリオットは顔をあげた。
「エリオット様は、ララベルをどう思うの? 」
(何を聞いてるの、私!! 兄妹じゃないからと、恋愛感情を持ったらどうするの? )
「鬱陶しい、だけだろ。」
「ほえっ!? 」
エリオットの言葉に、マリアンヌは又しても変な声が出てしまった。
「兄妹だと思ってたから、我慢してたんだ。兄妹じゃないのにあのベタつき、ララベルは異常だ。」
(あ、恋愛感情とは思わないんだ。)
「兄妹で、可哀想と思えばこそあのベタつきを我慢してたんだ。 ………でももう我慢する必要はないんだ、な。」
エリオットは気づいたように晴れやかに笑った。
「もう、ララベルをかまってやる必要はない。」
エリオットはマリアンヌの手をとった。
「これからはララベルを気にせず、マリアンヌの事だけを思っていられる。」
「エリオット様…… 」
二人は手を取り合い微笑みあった。
(ごめんねララベル。エリオット様は、あなたの事眼中にないみたい。)
【完】
「ほえっ!? 」
エリオットの告白に変な声が出てしまったマリアンヌ。
「えっ、兄妹? 」
そんな事は聞いた事がなかったのでマリアンヌは聞き返した。
「ああ、ララベルは俺の妹だ。」
手を顔の前に組んで、真剣な面持ちでエリオットは応える。
(酷い、酷すぎるわ。嘘を付くにしてもこれほどなんて!! )
「そんなの聞いていないわ。」
立ち上がって、抗議するマリアンヌ。
「父の隠し子だ。」
「おじ様の? 」
頭を抱えたエリオットを真下に見下ろして、マリアンヌは考える。
愛妻家のおじ様がおば様を裏切っていたなんて考えられない。それに、やはり聞いた事がない。
「おじ様が、そう言ったの? 」
「いや、父は何も言わない。」
エリオットは首を振った。
「だが、それ以外考えられない。」
エリオットは真剣な面持ちで、マリアンヌを見上げた。
「ララベルの異常な程のベタつき。そして、会った時に俺を「お兄さま」と呼んだんだぞ。初めて会った者を「お兄さま」と呼ぶか? 」
真剣な面持ちでエリオットは、マリアンヌに真相を述べる。
「父の隠し子以外に、考えられないだろ。」
「エリオット様…… 」
マリアンヌは力が抜けたように、ぱふんとソファに腰を下ろした。
どうやらエリオットは本気で、ララベルを父親の隠し子と思っているようであった。
「それに、毎日のように屋敷に来ても父は何も言わない。隠し子以外、考えられないだろ。」
(確か、ララベルのおば様とエリオット様のおば様が学生時代の大の仲良しと聞いてるけど。)
「母にバレたら、家庭の崩壊だ。父に甘えられない分、俺に甘えているんだと思う。」
前髪を掻きむしるエリオット。
(いえ、全然違いますよ。エリオット様。)
「可哀想な妹よ。ベタつかれるのは本当は嫌なんだが、哀れと思うとつい許してしまうんだ。」
(あ、ベタつかれるのは嫌なんだ…… )
「だが、マリアンヌが言うように、事情を知らない者がベタつくのを見れば確かに誤解をうむだろう。」
真剣な面持ちでマリアンヌをエリオットは見上げた。
「いい機会だ、父に言ってララベルに良い縁談を探してもらう。娘孝行してもらおう、今迄の罪滅ぼしの為に。」
エリオットは拳を握り締めた。
(おじ様、エリオット様の中では完璧にララベルが隠し子になってますよ。)
「マリアンヌ? 」
(エリオット様は子供の頃からずっとララベルを異母妹だと思っていたのね。)
変態でない限り、異母妹に恋愛感情なんて持つ筈はなく。
「ふふっ、解ったわエリオット様。でも、触れ合うのは兄妹でもおかしいから 」
「ああ、分かっている。確かにもういい年頃だ、兄妹同士でもベタつくのはおかしいな。」
二人は理解し合った。
(ごめんねララベル。エリオット様にとっては、あなたは血のつながった異母妹みたい。)
マリアンヌはエリオットの勘違いを正そうとはしなかった。
次の日、エリオットは頬を腫らして学校に現れた。
「きゃーー!! エリオットさま~ どうしたの~ 」
「触るな!! 」
駆け寄るララベルの手をエリオットは払いのける。
「エリオットさま? 」
呆然とするララベル。
「マリアンヌ、話がある。」
エリオットはマリアンヌの手を掴んで、ララベルをその場に置いて離れていった。
「エリオット様。」
「父に殴られた。」
マリアンヌがエリオットの名を呼ぶと、彼は応えた。
「昨日父に隠し子の事を話したら、殴られた。」
(あ、話したんだ。)
激怒するおじ様の顔が、マリアンヌの眼の前に浮かんでくる。
「ララベルは隠し子じゃなかった。俺達に血の繋がりはなかった。母の友達の子供だっただけだ。」
地団駄を踏むエリオット。
(うん。おば様に甘いおじ様は、おば様の友達も大事にしてたもんね。)
「それで…… 」
「ん? 」
マリアンヌの声にエリオットは顔をあげた。
「エリオット様は、ララベルをどう思うの? 」
(何を聞いてるの、私!! 兄妹じゃないからと、恋愛感情を持ったらどうするの? )
「鬱陶しい、だけだろ。」
「ほえっ!? 」
エリオットの言葉に、マリアンヌは又しても変な声が出てしまった。
「兄妹だと思ってたから、我慢してたんだ。兄妹じゃないのにあのベタつき、ララベルは異常だ。」
(あ、恋愛感情とは思わないんだ。)
「兄妹で、可哀想と思えばこそあのベタつきを我慢してたんだ。 ………でももう我慢する必要はないんだ、な。」
エリオットは気づいたように晴れやかに笑った。
「もう、ララベルをかまってやる必要はない。」
エリオットはマリアンヌの手をとった。
「これからはララベルを気にせず、マリアンヌの事だけを思っていられる。」
「エリオット様…… 」
二人は手を取り合い微笑みあった。
(ごめんねララベル。エリオット様は、あなたの事眼中にないみたい。)
【完】
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