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そういうお年頃。 ✻
三人の幼馴染。
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「エリオットお兄さまは、わたしが好きなのよ~ マリアンヌさん。」
庇護欲をかぎ立てる容姿を持つララベルは、柔らかい茶色の髪を掻き上げながらマリアンヌに言った。
「エリオット様が、そう言ったの? 」
栗毛色の髪を持つマリアンヌは自分見下げて言うララベルに問い返した。
「言わなくても分かるでしょ? エリオットお兄さまの態度を見れば。」
「……… 」
その言葉にマリアンヌは黙るしかなかった。
エリオット・ファン・カタログ侯爵令息は、マリアンヌの婚約者である。淡い金髪に青い目、物語の王子様のように優しい彼である。10歳の時に婚約関係になってから5年の月日が経っていた。
政略結婚の為の婚約と言えば、嘘ではない。目の前のララベルは、エリオットと婚約した最初の顔合わせに何故か付いて来た彼の幼馴染である。
子供の頃は友達が増えたくらいの感覚のマリアンヌも、高等部の学園に通う年頃になれば其れはおかしな事だと嫌でも気づくことなった。
自分にとっても、子供の頃からの付き合いのララベルは既に幼馴染のようなものだ。
でもコレだけはハッキリ捺せなくてはならないと、マリアンヌはララベルと話をする為に校舎裏に呼び出した。
「エリオット様は、私の婚約者なの。今迄みたいに、気安く触れないで。」
もっともな事をマリアンヌは、ララベルに御願いをする。
だが返って来た言葉は、
「エリオットお兄さまは、わたしが好きなのよ~ マリアンヌさん。」
で、あった。
事あるごとにララベルはエリオットに抱きついたりしがみついたりしていたが、其れを婚約者である彼は払う事もなく咎める事もなくそのままにしていた。
子供だったとはいえ、今はもう年頃の男女である。婚約者の自分の前で、触れ合うのは我慢のならない事であった。だからこそ、今日ララベルに忠告として嗜めたのだ。
「エリオットお兄さまとは、マリアンヌさんより長くお付き合いをしてるのよ。」
ララベルはマリアンヌを睨みつけた。
「邪魔者はあなたでしよ!! 親同士が決めた政略結婚でしょ、エリオットお兄さまには、あなたに気持ちなんかないわよ!! 」
「そんなこと、ないわ!! エリオット様は、ちゃんとエスコートだってしてくれるわ!! 」
年頃になってエリオットは、マリアンヌとの二人の時間をちゃんと取りお呼ばれにはエスコートもしてくれる。
「形式的事だけでしょ、何時もはわたしと一緒よ。あなたに気持ちがあるなら、何故わたしの手を払わないの? 」
其れが一番の問題であった。
エリオットはララベルを咎める事も、手を払いのける事もしない。まるで家族のように、「お兄さま」と呼ぶことも許している。
マリアンヌは何も言えなくなって、俯いてしまった。
「ねっ、分かったでしょ。エリオットお兄さまはわたしが好きなのよ。親が言うから、仕方なくあなたと婚約してるだけよ。」
ララベルは俯いているマリアンヌに近づき、耳元で囁いた。
「あなたこそ、エリオットお兄さまをさっさと開放してあげて。」
そのまま離れていく。
「エリオットお兄さま~ 」
「ララベル、マリアンヌ。こんな所に居たのか。」
背後から聞こえるエリオットの声に、マリアンヌは振り返る。
既にエリオットの腕にララベルが絡みついていた。
(どうして、どうして、払いのけないの? )
マリアンヌの瞳が潤んでくる。
「マリアンヌ? 」
立ち尽くすマリアンヌを不思議に思って声を掛けるエリオット。
「エリオット様のバカ!! 」
マリアンヌは涙を見られたくなくって、その場から逃げ出した。
「マリアンヌ!? 」
逃げ出すマリアンヌを、ララベルはおかしそうに微笑んで見ていた。
庇護欲をかぎ立てる容姿を持つララベルは、柔らかい茶色の髪を掻き上げながらマリアンヌに言った。
「エリオット様が、そう言ったの? 」
栗毛色の髪を持つマリアンヌは自分見下げて言うララベルに問い返した。
「言わなくても分かるでしょ? エリオットお兄さまの態度を見れば。」
「……… 」
その言葉にマリアンヌは黙るしかなかった。
エリオット・ファン・カタログ侯爵令息は、マリアンヌの婚約者である。淡い金髪に青い目、物語の王子様のように優しい彼である。10歳の時に婚約関係になってから5年の月日が経っていた。
政略結婚の為の婚約と言えば、嘘ではない。目の前のララベルは、エリオットと婚約した最初の顔合わせに何故か付いて来た彼の幼馴染である。
子供の頃は友達が増えたくらいの感覚のマリアンヌも、高等部の学園に通う年頃になれば其れはおかしな事だと嫌でも気づくことなった。
自分にとっても、子供の頃からの付き合いのララベルは既に幼馴染のようなものだ。
でもコレだけはハッキリ捺せなくてはならないと、マリアンヌはララベルと話をする為に校舎裏に呼び出した。
「エリオット様は、私の婚約者なの。今迄みたいに、気安く触れないで。」
もっともな事をマリアンヌは、ララベルに御願いをする。
だが返って来た言葉は、
「エリオットお兄さまは、わたしが好きなのよ~ マリアンヌさん。」
で、あった。
事あるごとにララベルはエリオットに抱きついたりしがみついたりしていたが、其れを婚約者である彼は払う事もなく咎める事もなくそのままにしていた。
子供だったとはいえ、今はもう年頃の男女である。婚約者の自分の前で、触れ合うのは我慢のならない事であった。だからこそ、今日ララベルに忠告として嗜めたのだ。
「エリオットお兄さまとは、マリアンヌさんより長くお付き合いをしてるのよ。」
ララベルはマリアンヌを睨みつけた。
「邪魔者はあなたでしよ!! 親同士が決めた政略結婚でしょ、エリオットお兄さまには、あなたに気持ちなんかないわよ!! 」
「そんなこと、ないわ!! エリオット様は、ちゃんとエスコートだってしてくれるわ!! 」
年頃になってエリオットは、マリアンヌとの二人の時間をちゃんと取りお呼ばれにはエスコートもしてくれる。
「形式的事だけでしょ、何時もはわたしと一緒よ。あなたに気持ちがあるなら、何故わたしの手を払わないの? 」
其れが一番の問題であった。
エリオットはララベルを咎める事も、手を払いのける事もしない。まるで家族のように、「お兄さま」と呼ぶことも許している。
マリアンヌは何も言えなくなって、俯いてしまった。
「ねっ、分かったでしょ。エリオットお兄さまはわたしが好きなのよ。親が言うから、仕方なくあなたと婚約してるだけよ。」
ララベルは俯いているマリアンヌに近づき、耳元で囁いた。
「あなたこそ、エリオットお兄さまをさっさと開放してあげて。」
そのまま離れていく。
「エリオットお兄さま~ 」
「ララベル、マリアンヌ。こんな所に居たのか。」
背後から聞こえるエリオットの声に、マリアンヌは振り返る。
既にエリオットの腕にララベルが絡みついていた。
(どうして、どうして、払いのけないの? )
マリアンヌの瞳が潤んでくる。
「マリアンヌ? 」
立ち尽くすマリアンヌを不思議に思って声を掛けるエリオット。
「エリオット様のバカ!! 」
マリアンヌは涙を見られたくなくって、その場から逃げ出した。
「マリアンヌ!? 」
逃げ出すマリアンヌを、ララベルはおかしそうに微笑んで見ていた。
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