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泥棒猫VS忠犬。 ✣
そして、二人は。
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リヒトはリリシアの処に向かった。
「きゃっ!! 」
「はあ、リリー可愛い、癒やされる~ 」
抱き上げ、抱き締め、頬ずりをする。人には見せられないような、でろでろの表情だ。
「酷いですわ、リヒト様!! あんまりですわ!! 」
「ロゼリン様。」
ロゼリンは泣きながら、クリスに抱きついた。
「リヒト様は、その泥棒猫に騙されているのですわ!! その泥棒猫、誰にでも媚を売ってますのよ!! 」
「焼くな!! それだけ、リリーが可愛いと言うことだ!! 」
ロゼリンは泣きながら訴えたが、リヒトは聞く耳を持たなかった。
「そんなに表情、私にも見せたことがないのに…… 酷いですわ、コレは立派な浮気ですわ!! 」
「はん。お前だって、その忠犬の前では猫なで声を出してるじゃないか!! 」
「阿呆臭い。」
「何だと!! 」
クリストスの言葉に、即座に反応する。リヒトとロゼリンは、子供の喧嘩のように言い争いを始めた。
「クリスは家族ですわ!! 」
「はん、なら一生一緒にいればいいだろ!! 」
「もちろん、いますわよ!! 」
「ああ、俺もリリーを放すつもりはない!! 」
「それは立派な浮気ですわ!! 」
「お前だって、浮気しているようなもんだろ!! 」
「クリスは家族ですわ!! 」
そしてヒートアップした二人はついに言っては行けない言葉を吐いた。
「もう、婚約解消ですわ!! 」
「ああ、喜んで破棄してやる!! 」
売り言葉に買い言葉で、ロゼリンの『婚約解消』にリヒトも応えた。
「私が、破棄しますわ!! 」
「いや、俺がする!! 」
二人は言い争う。
「あ、あの…… 喧嘩は。落ち着いてください、リヒト様…… 」
「大丈夫です、リリシア様。座ってお茶でも飲みましょう。」
「で、でも…… 」
ニッコリと、クリストスはリリシアに微笑みかけた。オロオロとするリリシアをクリストスは席へとエスコートをする。
「大丈夫です。」
ーーーー ダン!!
「きゃ!! 」
テーブルを叩く音が響いた。
「いい加減にしないか。」
王太子のぽやんとした緑の瞳が、細く細められる。
「ロゼリン、本当によろしいの? リヒト様と婚約を解消して。」
「リヒト、本当に婚約を解消でいいのか? 」
「マデリーンさま…… 」
「そ、それは…… 」
諭すようにマデリーンは困った風にロゼリン見て、王太子は確認するようにリヒトを見る。
「い、嫌ですわ!! 婚約解消なんて、嫌ですわ!! 」
ロゼリンは、ぼろぼろと涙を流して泣き出した。
「リヒトは。」
「ぃ…… ゃだ。」
真っ赤になってぼそぼそと口ごもる。
「はっきり言え。」
「嫌です!! 」
王太子の声に、背筋を延ばして応える。その顔は真剣であった。
「リヒトさま~ 」
「ロゼリン。」
ロゼリンは泣きながらリヒトに抱きついた。
「ごめんなさ~い。私、リリーに嫉妬してしまいましたわ。」
「俺こそ、クリスに焼いてしまった。」
二人は共に手をとり、見つめ合った。
「仲直りを、なさったの? 」
「よくある痴話喧嘩ですから、お気になさらず。」
心配するリリシアに、クリストスはお茶を飲みながら微笑んだ。
「全く、二人は。」
「リリーもクリスも可愛らしいのに。」
「リリーやクリスに、嫉妬してどうするのだ。な、リリー。」
「にぁあ~ん。」
王太子はテーブルの上で、体を延ばす栗毛色の青い目をした猫をなでた。
「本当ですわ。ね、クリス。」
「わん。」
ちゃんとお座りをして待っている中型犬の名前を呼ぶと尻尾を振りながら返事をした。
と、ある日。
「リリーばかりにかまけて、酷いですわ。婚約解消ですわ。」
「やめないか、二人共。」
と、ある日。
「クリスを優先するロゼリンとはやっていけない。婚約破棄だ!! 」
「馬鹿ですね。」
「何だと!! 」
「やめろ、お前たち。」
そして、数年後。
王太子とマデリーンの結婚式。
「おめでとうございます、王太子殿下。王太子妃殿下。」
「ありがとう、リリシア。」
「よく来てくれた、クリストス。いや、マテック子爵。」
あれから優秀なクリストスはリリシアと結ばれ結婚(婿入り)し、既に子爵の後を継いでいた。
祝福の挨拶の中、
「聞いてくださいませ、マデリーン様!! 」
「まて、ロゼリン。」
あの二人が現れた。
「先程、リヒト様は私をエスコートをしながら他の女性に目をやったのです。」
「仕方ないだろ、彼女のしていたリボンはララーにいあいそうだった。」
「また、ララーですの。リリー、ララーと、ひどいですわ!! 」
「それを言うなら、ロゼリンだって、クリスとイモンと旅行に行ったではないか!! 」
王太子殿下の前で何時ものように争う二人。
「相変わらずですわね。」
「本当に変わらないですね。」
リリシアとクリストスは感心したように頷く。
「私より先にリリーにおはようのキスをするなんて、コレは立派な浮気ですわ。」
「お前だって、お帰りのハグを俺より先にクリスにしたじゃないか!! 」
ざわめく会場の中、何時ものように。
「もう、離婚よ!! 」
「離婚だ!! 」
おめでたい席で、離婚の話が飛び出した。
「私が、先に言ったのよ!! 」
「俺が、先だ!! 」
「お前ら…… 」
王太子は体を震わせた。
「いい加減にしろ!! 」
何時ものように王太子に止められて、数分後にはラブラブの夫婦に戻る二人だった。
【完】
❣編集する前に貰った感想❣
✻ 黒幸様
2022.10.09
完結お疲れ様です&おめでとうございます!
二人に近い人物名とわんにゃんの名が紛らわしいというミスリードが面白かったです。
ペットは家族の家族!にも嫉妬しちゃうほどに互いが大好きすぎる二人の素敵な物語をありがとうございました😄
❆冬は つとめて
2022.10.10
ありがとうございます。
リヒト様はクリス(犬)に居場所を取られ。途方に暮れていた時、学園でロゼリン似のリリー(猫)に会ったのです。激愛し、リリーの名はロゼリンをそう呼びたかったためです。自分だけの呼び方を、ロゼではなくリンではなく。
「きゃっ!! 」
「はあ、リリー可愛い、癒やされる~ 」
抱き上げ、抱き締め、頬ずりをする。人には見せられないような、でろでろの表情だ。
「酷いですわ、リヒト様!! あんまりですわ!! 」
「ロゼリン様。」
ロゼリンは泣きながら、クリスに抱きついた。
「リヒト様は、その泥棒猫に騙されているのですわ!! その泥棒猫、誰にでも媚を売ってますのよ!! 」
「焼くな!! それだけ、リリーが可愛いと言うことだ!! 」
ロゼリンは泣きながら訴えたが、リヒトは聞く耳を持たなかった。
「そんなに表情、私にも見せたことがないのに…… 酷いですわ、コレは立派な浮気ですわ!! 」
「はん。お前だって、その忠犬の前では猫なで声を出してるじゃないか!! 」
「阿呆臭い。」
「何だと!! 」
クリストスの言葉に、即座に反応する。リヒトとロゼリンは、子供の喧嘩のように言い争いを始めた。
「クリスは家族ですわ!! 」
「はん、なら一生一緒にいればいいだろ!! 」
「もちろん、いますわよ!! 」
「ああ、俺もリリーを放すつもりはない!! 」
「それは立派な浮気ですわ!! 」
「お前だって、浮気しているようなもんだろ!! 」
「クリスは家族ですわ!! 」
そしてヒートアップした二人はついに言っては行けない言葉を吐いた。
「もう、婚約解消ですわ!! 」
「ああ、喜んで破棄してやる!! 」
売り言葉に買い言葉で、ロゼリンの『婚約解消』にリヒトも応えた。
「私が、破棄しますわ!! 」
「いや、俺がする!! 」
二人は言い争う。
「あ、あの…… 喧嘩は。落ち着いてください、リヒト様…… 」
「大丈夫です、リリシア様。座ってお茶でも飲みましょう。」
「で、でも…… 」
ニッコリと、クリストスはリリシアに微笑みかけた。オロオロとするリリシアをクリストスは席へとエスコートをする。
「大丈夫です。」
ーーーー ダン!!
「きゃ!! 」
テーブルを叩く音が響いた。
「いい加減にしないか。」
王太子のぽやんとした緑の瞳が、細く細められる。
「ロゼリン、本当によろしいの? リヒト様と婚約を解消して。」
「リヒト、本当に婚約を解消でいいのか? 」
「マデリーンさま…… 」
「そ、それは…… 」
諭すようにマデリーンは困った風にロゼリン見て、王太子は確認するようにリヒトを見る。
「い、嫌ですわ!! 婚約解消なんて、嫌ですわ!! 」
ロゼリンは、ぼろぼろと涙を流して泣き出した。
「リヒトは。」
「ぃ…… ゃだ。」
真っ赤になってぼそぼそと口ごもる。
「はっきり言え。」
「嫌です!! 」
王太子の声に、背筋を延ばして応える。その顔は真剣であった。
「リヒトさま~ 」
「ロゼリン。」
ロゼリンは泣きながらリヒトに抱きついた。
「ごめんなさ~い。私、リリーに嫉妬してしまいましたわ。」
「俺こそ、クリスに焼いてしまった。」
二人は共に手をとり、見つめ合った。
「仲直りを、なさったの? 」
「よくある痴話喧嘩ですから、お気になさらず。」
心配するリリシアに、クリストスはお茶を飲みながら微笑んだ。
「全く、二人は。」
「リリーもクリスも可愛らしいのに。」
「リリーやクリスに、嫉妬してどうするのだ。な、リリー。」
「にぁあ~ん。」
王太子はテーブルの上で、体を延ばす栗毛色の青い目をした猫をなでた。
「本当ですわ。ね、クリス。」
「わん。」
ちゃんとお座りをして待っている中型犬の名前を呼ぶと尻尾を振りながら返事をした。
と、ある日。
「リリーばかりにかまけて、酷いですわ。婚約解消ですわ。」
「やめないか、二人共。」
と、ある日。
「クリスを優先するロゼリンとはやっていけない。婚約破棄だ!! 」
「馬鹿ですね。」
「何だと!! 」
「やめろ、お前たち。」
そして、数年後。
王太子とマデリーンの結婚式。
「おめでとうございます、王太子殿下。王太子妃殿下。」
「ありがとう、リリシア。」
「よく来てくれた、クリストス。いや、マテック子爵。」
あれから優秀なクリストスはリリシアと結ばれ結婚(婿入り)し、既に子爵の後を継いでいた。
祝福の挨拶の中、
「聞いてくださいませ、マデリーン様!! 」
「まて、ロゼリン。」
あの二人が現れた。
「先程、リヒト様は私をエスコートをしながら他の女性に目をやったのです。」
「仕方ないだろ、彼女のしていたリボンはララーにいあいそうだった。」
「また、ララーですの。リリー、ララーと、ひどいですわ!! 」
「それを言うなら、ロゼリンだって、クリスとイモンと旅行に行ったではないか!! 」
王太子殿下の前で何時ものように争う二人。
「相変わらずですわね。」
「本当に変わらないですね。」
リリシアとクリストスは感心したように頷く。
「私より先にリリーにおはようのキスをするなんて、コレは立派な浮気ですわ。」
「お前だって、お帰りのハグを俺より先にクリスにしたじゃないか!! 」
ざわめく会場の中、何時ものように。
「もう、離婚よ!! 」
「離婚だ!! 」
おめでたい席で、離婚の話が飛び出した。
「私が、先に言ったのよ!! 」
「俺が、先だ!! 」
「お前ら…… 」
王太子は体を震わせた。
「いい加減にしろ!! 」
何時ものように王太子に止められて、数分後にはラブラブの夫婦に戻る二人だった。
【完】
❣編集する前に貰った感想❣
✻ 黒幸様
2022.10.09
完結お疲れ様です&おめでとうございます!
二人に近い人物名とわんにゃんの名が紛らわしいというミスリードが面白かったです。
ペットは家族の家族!にも嫉妬しちゃうほどに互いが大好きすぎる二人の素敵な物語をありがとうございました😄
❆冬は つとめて
2022.10.10
ありがとうございます。
リヒト様はクリス(犬)に居場所を取られ。途方に暮れていた時、学園でロゼリン似のリリー(猫)に会ったのです。激愛し、リリーの名はロゼリンをそう呼びたかったためです。自分だけの呼び方を、ロゼではなくリンではなく。
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