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わたくしの婚約者様。 ✤
宣戦布告ですわね、ならば受けて差し上げますわ。
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授業が終わった学園で帰えるために廊下を歩いていた、彼女の名前はセリーヌ・フォン・ディオン公爵令嬢。はちみつ色の制服、ポレロの下に腰を少し絞ったワンピーススカート。丈はもちろん膝下数十センチ、襟首には最高学年の赤いリボンを付けている。緑の瞳で前をすえ茶色の柔らかい髪を靡かせさっそうと歩いていたが、足を止めた。
「ラインハルト様。」
眼の前から令嬢の婚約者であるこの国の王太子、金の巻毛に青い瞳のラインハルト・フォン・ヴェンゲルが歩いてくるのが目に入った。何処かの令嬢と手を繋いで此方に歩いてくる。
柔らかい紅色の金髪に空色の瞳をうるませて、王太子の片手を両手で大事そうに繋いでいる。楽しいそうに令嬢は王太子に話しかけている。最低学年の青いリボンに、スカート丈が淑女にあるまじき膝上数センチの長さだ。
「ラインハルト様。」
「あ、セリーヌ。」
セリーヌの声に気づいた王太子は、悪びれることもなく彼女の名前を呼んだ。隣の令嬢も今気づいた風に、顔を上げた。
「はじめまして私、バニラ・アイスノン男爵令嬢と言います。」
彼女は公爵令嬢に挨拶をした。
(あら、そちらから挨拶を? コレは宣戦布告かしら? )
「ラインハルト様とは、先程から親しくさせて頂いています。」
声をあげて、挑むように言い放つ。
(バニラ・アイスノン男爵令嬢と言えば今噂の人物ですわ。確か、高位の殿方に片っ端らから声をかけているという令嬢ですわ。婚約者がいようと相手かまわず。)
「バニラのことをラインハルト様には、とても気に入って貰えたようですの。」
彼女は王太子の肩を後ろから抱くように手をまわした。
(コレは宣戦布告ですわね。ならば、先制必勝ですわ。)
「わたしく、セリーヌ・フォン・ディオン公爵令嬢ですわ。」
セリーヌは淑女の必需品、扇子を取り出し拡げた。
「ラインハルト王太子殿下の、婚約者ですわ。」
婚約者であることを、誇張して言う。上から目線で権力と名誉で威圧し、微笑んだ。
(普通は、コレで退きますわ。)
「そ、それは、強引な婚約だと聞きました。」
バニラは王太子の婚約の噂を少し聞いていた。だからセリーヌに食ってかかった。
(あら、なかなか胆力がありますわね。流石は噂の令嬢ですわ。)
セリーヌは、コロコロと笑った。
「ええ、強引でしたわ。ラインハルト様ったら、わたくしではなければ嫌だと駄々をこねましたのよ。」
「セ、セリーヌ。子供の時のことだよ。」
ラインハルトは、顔を真っ赤にして弁解をする。
「そ、そうよ!! 子供の時の話よ、戯言よ!! 」
バニラは王太子の言葉に活路を見て、叫んだ。そんな彼女をセリーヌは鼻で笑った。
「あら、ラインハルト様はまだまだ子供ですわ。立場も考えず見知らぬ令嬢と手をお繋ぎなるなんて、お子様以外の何者でもありませんわ。」
「見知らぬ令嬢じゃないもん!! 」
セリーヌは首を傾げて言うと、バニラは見知らぬ令嬢ではないと否定をした。確かに先程出会って挨拶を交わした、から見知らぬ令嬢ではないと。
「セリーヌ。いつまでも僕を子供扱いするのは、」
「そうです、ラインハルトは立派な大人です。年上だからとラインハルト様を子供扱いするなんて可哀想です。」
王太子の言葉に水を得た魚のようにバニラは、言葉を遮るように声をあげラインハルトの言葉を肯定した。
「いえ、まだまだお子様ですわ。」
「セリーヌ…… 」
彼女が扇子の上から目を細めてラインハルトを見ると、彼も怒ったようにセリーヌを見据える。
「ラインハルト様は男の大人の方です。ふふふっ。」
バニラはセリーヌの眼の前で、王太子の首筋に抱き着いて言った。
「だって、バニラのことを『美味しそう』て、先程言って下さいました。」
猫なで声で、頬を王太子にスリスリしながらバニラはセリーヌに勝誇った目を向けた。
「ラインハルト様。」
眼の前から令嬢の婚約者であるこの国の王太子、金の巻毛に青い瞳のラインハルト・フォン・ヴェンゲルが歩いてくるのが目に入った。何処かの令嬢と手を繋いで此方に歩いてくる。
柔らかい紅色の金髪に空色の瞳をうるませて、王太子の片手を両手で大事そうに繋いでいる。楽しいそうに令嬢は王太子に話しかけている。最低学年の青いリボンに、スカート丈が淑女にあるまじき膝上数センチの長さだ。
「ラインハルト様。」
「あ、セリーヌ。」
セリーヌの声に気づいた王太子は、悪びれることもなく彼女の名前を呼んだ。隣の令嬢も今気づいた風に、顔を上げた。
「はじめまして私、バニラ・アイスノン男爵令嬢と言います。」
彼女は公爵令嬢に挨拶をした。
(あら、そちらから挨拶を? コレは宣戦布告かしら? )
「ラインハルト様とは、先程から親しくさせて頂いています。」
声をあげて、挑むように言い放つ。
(バニラ・アイスノン男爵令嬢と言えば今噂の人物ですわ。確か、高位の殿方に片っ端らから声をかけているという令嬢ですわ。婚約者がいようと相手かまわず。)
「バニラのことをラインハルト様には、とても気に入って貰えたようですの。」
彼女は王太子の肩を後ろから抱くように手をまわした。
(コレは宣戦布告ですわね。ならば、先制必勝ですわ。)
「わたしく、セリーヌ・フォン・ディオン公爵令嬢ですわ。」
セリーヌは淑女の必需品、扇子を取り出し拡げた。
「ラインハルト王太子殿下の、婚約者ですわ。」
婚約者であることを、誇張して言う。上から目線で権力と名誉で威圧し、微笑んだ。
(普通は、コレで退きますわ。)
「そ、それは、強引な婚約だと聞きました。」
バニラは王太子の婚約の噂を少し聞いていた。だからセリーヌに食ってかかった。
(あら、なかなか胆力がありますわね。流石は噂の令嬢ですわ。)
セリーヌは、コロコロと笑った。
「ええ、強引でしたわ。ラインハルト様ったら、わたくしではなければ嫌だと駄々をこねましたのよ。」
「セ、セリーヌ。子供の時のことだよ。」
ラインハルトは、顔を真っ赤にして弁解をする。
「そ、そうよ!! 子供の時の話よ、戯言よ!! 」
バニラは王太子の言葉に活路を見て、叫んだ。そんな彼女をセリーヌは鼻で笑った。
「あら、ラインハルト様はまだまだ子供ですわ。立場も考えず見知らぬ令嬢と手をお繋ぎなるなんて、お子様以外の何者でもありませんわ。」
「見知らぬ令嬢じゃないもん!! 」
セリーヌは首を傾げて言うと、バニラは見知らぬ令嬢ではないと否定をした。確かに先程出会って挨拶を交わした、から見知らぬ令嬢ではないと。
「セリーヌ。いつまでも僕を子供扱いするのは、」
「そうです、ラインハルトは立派な大人です。年上だからとラインハルト様を子供扱いするなんて可哀想です。」
王太子の言葉に水を得た魚のようにバニラは、言葉を遮るように声をあげラインハルトの言葉を肯定した。
「いえ、まだまだお子様ですわ。」
「セリーヌ…… 」
彼女が扇子の上から目を細めてラインハルトを見ると、彼も怒ったようにセリーヌを見据える。
「ラインハルト様は男の大人の方です。ふふふっ。」
バニラはセリーヌの眼の前で、王太子の首筋に抱き着いて言った。
「だって、バニラのことを『美味しそう』て、先程言って下さいました。」
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