学園七不思議。

❄️冬は　つとめて

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特定の女生徒の身辺調査報告書。

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【特定女生徒の身辺調査報告書】
探索者　無月なづき家

特定女生徒Ａに関する報告書。
彼女が変わったのは夏休み明けの二学期からである。三年の彼女の一学期は、ごく普通の女生徒であった。

夫婦共働きの一般家庭の娘、庶民である。

特定女生徒Ａは、どちらかというと目立つタイプではなかった模様。

特定女生徒Ａは、一般に夏休み明けデビューと言われている。

夏休み明け以降とあるグループの男子生徒四名への接触が極端に増え、他の女生徒からやっかみを持たれていると伺える。

男子生徒四名のグループは、名のある家柄の集団の者達である。

事の始まりは学園正門前、夏休み明けの始業式の当日。名のある家柄のグループの男子生徒四名へ向かっての転倒という接触。内一人男子生徒にささえられ、転倒を回避。

次に噴水に教科書が浮き拾い集めている処に、可のグループ男子生徒の一人と接触。事情を聞かれ、同情され慰められた模様。

次に更衣室での制服引き裂かれ事件。同じく通りかかった可のグループ男子生徒の一人と接触。事件を知り、男子生徒のグループ四名に心配された模様。

次に校舎の外を歩いている処を上からの落下物により、グループ内の男子生徒に助けられる。怪我等の危険性から、正義感溢れた男子生徒四名のグループに庇護された模様。

この時より、可の男子生徒四名のグループと行動を共にすることになる。

その事により、他の女生徒達のやっかみは頂点になったと察する。

　　　　　ー　１　ー

古い日本邸の部屋に馴染むようなアンティークな家具。その椅子に座って、迦具夜は疾風はやてと火澄ひずみが調べた被害女生徒の身辺調査を読んでいた。
傍らのテーブルには、湯呑みに入った緑茶と煎餅が置かれてある。優雅に迦具夜は湯呑みを取り、一口お茶を飲む。

「殿方に守られ、他の女生徒にやっかみをもたれた。その為の虐めかしら。」

一枚目の報告書を読みながら、その可能性が高いと迦具夜は思う。現場にもののけの痕跡も無いのだ。

屋敷内の大きな古い時計が７時を知らせる音が迦具夜のいる部屋まで響いた。

「いけないわ、急がないと。」
迦具夜は報告書を学生カバンに入れると、椅子から立ち上がった。

迦具夜は自分の部屋を出ると長い木の板の廊下を歩く。行く先には、拾い玄関が見える。

「「おはようございます、迦具夜かぐや様。」」
「おはよう、鈴音、鈴香。」
玄関先で迦具夜を迎える鈴音と鈴音は、元気よく朝の挨拶をする。

開かれた戸の先には、黒い大きな車がドアを開けて待っている。その傍らには運転手か立ち、迦具夜が車に乗るのを待っている。車の後部座席に迦具夜を真ん中に乗り込むと、運転手が静かにドアを閉めた。　

車は動き出す。

「鈴音、鈴香。今朝方特定の女生徒の報告書が届いたの。」
「「はい、迦具夜かぐや様。」」
迦具夜の言葉に二人は頷く。

「まだ１枚目しか目をとうしてないけど、他の女生徒による嫉妬の可能性が高いわ。」
「「はい、迦具夜かぐや様。」」
迦具夜の言葉に二人は頷く。

「しかし５年も同じ事が起こるなんて、面妖ですわ。」
「その通りでごさいます、迦具夜かぐや様。」
「流石でごさいます、迦具夜かぐや様。」
二人は迦具夜の言葉に頷く。

「報告書は２枚綴りでしたわ。まだ、他にも現場があるのでしょう。」
「はい、ございます。」
「学園についたら、案内あないしてくれるかしら？　」
「「勿論もちろんで、ごさいます。迦具夜かぐや様！！　」」
頼られるように迦具夜に見つめられ、鈴音と鈴香は嬉しさの余りつい声か高くなっていた。

「後、３件現場があります。迦具夜かぐや様。」
「１つはまだ、事が起こっていませんが。４年間同じ事が起こっている現場にもお連れいたしましょうか？　迦具夜かぐや様。」
鈴香の言葉に迦具夜は驚きの顔を向ける。その顔も美しくも愛らしい。

「まだ、事が起こってない場所があるの。」
「はい。総てで７つ。」
「生徒会内では、学園七不思議言われ。書紀に書かれて残っています。」
鈴香は生徒会室に置かれている代々残された書紀に書かれたいた事を話す。

四年に渡って繰り広げられる同じ事件。生徒会内ではそれを『学園七不思議』と書紀に示していた。

ある特定の女生徒への虐めのような事件。その真相は未だ明らかになっていない。

「同じ事の繰り返し、面妖ですわ。やはりもののけの仕業とも考えられますわ。」
「「はい、迦具夜かぐや様。」」

話をしているうちに、車は学園正門前についていた。運転手が車のドアを開ける。

車からゆっくり降りる三人。

「ありがとう。」
迦具夜は運転手に礼を言う。運転手は静かに頭を下げていた。

「さあ案内あないしてくださるかしら、鈴音、鈴香。」
「はい、迦具夜かぐや様。」
「此方でごさいます、迦具夜かぐや様。」
他の現場を見るために、何時もより１時間早く学園に登校した迦具夜達であった。

事の真相を探るために。

車から離れる迦具夜達の後ろ姿を、三人が見えなくなるまで運転手は頭を下げていた。

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