学園七不思議。

❄️冬は つとめて

文字の大きさ
上 下
2 / 9

制服が切り裂かれる、更衣室。

しおりを挟む
鈴音と鈴香は案内するように迦具夜の前を歩き、校内のある部屋の前にたどり着く。ドアを叩いて、返事が無いのを確かめてからドアを開ける。

「此処が事件の現場、女生徒の制服が引き裂かれた更衣室です。迦具夜かぐや様。」

ドアを開ける鈴香の前を通り過ぎ、先に更衣室に入った迦具夜の後ろから付き添うように更衣室へ入る鈴音と鈴香。

静かにドアを閉める。

「如何でしょうか、迦具夜かぐや様。」
「何か感じましょうか? 迦具夜かぐや様。」

学園の女性用更衣室に入って、迦具夜は静かに周りを見渡す。鈴音と鈴香は迦具夜の応えを静かに後ろで控え待っている。

此処が、事件があった現場。
女生徒が体育に行っている間に制服が見るも無惨に引き裂かれた事件の場所である。

今は誰も居ない部屋、縦長のロッカーが並ぶ更衣室を迦具夜はその闇の瞳でゆっくりと見て回る。

「如何でしょうか? 迦具夜かぐや様。」
「そうね、なにも感じませんわ。」
迦具夜は振り向かずに言った。さらさらと流れる黒髪、迦具夜のその後姿も美しい。

「鈴音。これは器物破損のでは、なくって? 」
先程の教科書を噴水に捨てられたといい制服を引き裂かれたのといい、被害にあった女生徒への誰かしらの虐めではないかと迦具夜は鈴音に問うてみる。

「はい。それも考えましたが、やはり年に一度必ずこの更衣室で制服を破かれる事件がこれまで5年間起こっているのです。迦具夜かぐや様。」
「この時期になると特定の女生徒の制服が、この更衣室で引き裂かれるとの事です。」
鈴音の言葉に付け足すように鈴香も声を出す。

「特定とは、同じ女生徒ということかしら? 」
「はい、迦具夜かぐや様。」
「左様で、ございます。迦具夜かぐや様。」

同じ女生徒に対する被害、迦具夜はやはりその女生徒への虐めではないかと考える。

「此の場になにも感じませんわ。」
此の場、更衣室に迦具夜の闇の瞳で見ても何かの痕跡は感じられない。迦具夜は首を傾げる。

「しかし同じ事が何年も続いて起きているとは、不思議ね。模倣犯かしら。」
「それも考えられますが、引き裂かれた制服があまりにも酷く。」
「まるで念のこもった程の酷い切り刻まれようで。」
「まあ、それ程酷いの。」
「はい、迦具夜かぐや様。」
「それはもう、怨念を感じる程。」
切り裂かれた制服を見た鈴音と鈴香は、あまりの酷さにの仕業かと感じ迦具夜に御出まし願ったのである。

念がこもるほどの思い、虐めに対して虐める側がそれ程思うものなのか虐められた側が相手に抱くのが念では、と迦具夜は思う。

しかし虐めたことも虐められたこともない迦具夜には、それを行い行われる者の心情は分からない。

「狐狸の類いたぐいかしら。」
いたずら好きのである、人に付いて悪さをする。酷いものは人の命さえ奪うものもいる。

だが其れならば、何かしら痕跡が残る。迦具夜の闇の瞳に更衣室の中になにも映らない。

「面妖ね。」

人ならざるものの仕業か、人の仕業か。

迦具夜はもう一度闇の瞳を周りを見渡すが、やはりなにも見えず感じない。迦具夜は二人に振り向いた。

「もっとしっかり事態を把握する必要がありそうですわ。鈴音、鈴香。」
「「はい、迦具夜かぐや様。」」
「他にも、此のような場所が? 」
「「はい、迦具夜かぐや様。」」
迦具夜の問いかけに鈴音と鈴香が頷き応える。

案内あないしてくださる。」
勿論もちろんでございます、迦具夜かぐや様。」

、放おって置く事はできませんわ。」
「「迦具夜かぐや様。」」
凛と立つ迦具夜の闇の瞳に輝きが増す。その凛々しさに鈴音と鈴香は目を奪われる。

「わたくしがいる、きっと此の件は解決してみせますわ。」
「なんと頼もしい、迦具夜かぐや様。」
「流石でごさいます、迦具夜かぐや様。」
崇拝する女神のように鈴音と鈴香は迦具夜を見つめる。

「行きましょう。」
迦具夜は更衣室を出て廊下を歩きだす。その後を鈴音と鈴香が付き添うよう歩く。

「あら、いけない。」
暫くして迦具夜は立ち止まって、二人に振り向いた。

「わたくし、次の現場を知りませんわ。」
先程と同じ過ちをしてしまい、迦具夜は照れたようにコツンと握り締めた手を額にあてた。

はみ噛むような笑顔を鈴音と鈴香に向けた。

「「うっ、迦具夜かぐや様!! 」」
その美しく可愛らしい姿と微笑みに、鈴音と鈴香は腰砕けになる処をグッと耐えた。

案内あないを、お願い。」
「はい、迦具夜かぐや様。」
「此方でございます、迦具夜かぐや様。」
二人は会釈をして迦具夜の前に出ると先に歩きだす。

その後を迦具夜も二人を追って歩き出した。

てく、てく、てく、と。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符

washusatomi
キャラ文芸
西域の女商人白蘭は、董王朝の皇太后の護符の行方を追う。皇帝に自分の有能さを認めさせ、後宮出入りの女商人として生きていくために――。 そして奮闘する白蘭は、無骨な禁軍将軍と心を通わせるようになり……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

我が家の家庭内順位は姫、犬、おっさんの順の様だがおかしい俺は家主だぞそんなの絶対に認めないからそんな目で俺を見るな

ミドリ
キャラ文芸
【奨励賞受賞作品です】 少し昔の下北沢を舞台に繰り広げられるおっさんが妖の闘争に巻き込まれる現代ファンタジー。 次々と増える居候におっさんの財布はいつまで耐えられるのか。 姫様に喋る犬、白蛇にイケメンまで来てしまって部屋はもうぎゅうぎゅう。 笑いあり涙ありのほのぼの時折ドキドキ溺愛ストーリー。ただのおっさん、三種の神器を手にバトルだって体に鞭打って頑張ります。 なろう・ノベプラ・カクヨムにて掲載中

オレは視えてるだけですが⁉~訳ありバーテンダーは霊感パティシエを飼い慣らしたい

凍星
キャラ文芸
幽霊が視えてしまうパティシエ、葉室尊。できるだけ周りに迷惑をかけずに静かに生きていきたい……そんな風に思っていたのに⁉ バーテンダーの霊能者、久我蒼真に出逢ったことで、どういう訳か、霊能力のある人達に色々絡まれる日常に突入⁉「オレは視えてるだけだって言ってるのに、なんでこうなるの??」霊感のある主人公と、彼の秘密を暴きたい男の駆け引きと絆を描きます。BL要素あり。

龍の契り〜身代わりのとりかえ神和ぎ〜

緋村燐
キャラ文芸
 はるか昔、この日の本の国は国外からの脅威にさらされていた。  主に被害を受けるのは力なき人間たち。  哀れに思った神々が、強き者であるあやかしの五体の龍と契りを交わすよう五人の人間に告げた。  龍は神に連なるあやかし故に荒ぶる神の御霊をその身に宿す。  その御霊を契りを交わした人間が神和ぎとして鎮める事で、日の本の国に神の霊力が行き渡り結界の役割を持つだろう、と。  陽の者である男の覡ならば側にいることで、陰の者である女の巫なら肌を合わせることで御霊は鎮まるのだという。  それ故、契りを交わした人間は男なら側近として、女なら花嫁として龍に仕えるのだ。  その契りは百年、千年の時を越え現在に至る。  そして今日、金龍と契りを交わした人の一族・竜ヶ峰家から神和ぎが一人遣わされた。 ノベマ!様 小説家になろう様 エブリスタ様 にも掲載しています。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

処理中です...