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制服が切り裂かれる、更衣室。
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鈴音と鈴香は案内するように迦具夜の前を歩き、校内のある部屋の前にたどり着く。ドアを叩いて、返事が無いのを確かめてからドアを開ける。
「此処が事件の現場、女生徒の制服が引き裂かれた更衣室です。迦具夜様。」
ドアを開ける鈴香の前を通り過ぎ、先に更衣室に入った迦具夜の後ろから付き添うように更衣室へ入る鈴音と鈴香。
静かにドアを閉める。
「如何でしょうか、迦具夜様。」
「何か感じましょうか? 迦具夜様。」
学園の女性用更衣室に入って、迦具夜は静かに周りを見渡す。鈴音と鈴香は迦具夜の応えを静かに後ろで控え待っている。
此処が、事件があった現場。
女生徒が体育に行っている間に制服が見るも無惨に引き裂かれた事件の場所である。
今は誰も居ない部屋、縦長のロッカーが並ぶ更衣室を迦具夜はその闇の瞳でゆっくりと見て回る。
「如何でしょうか? 迦具夜様。」
「そうね、なにも感じませんわ。」
迦具夜は振り向かずに言った。さらさらと流れる黒髪、迦具夜のその後姿も美しい。
「鈴音。これは器物破損の虐めでは、なくって? 」
先程の教科書を噴水に捨てられたといい制服を引き裂かれたのといい、被害にあった女生徒への誰かしらの虐めではないかと迦具夜は鈴音に問うてみる。
「はい。それも考えましたが、やはり年に一度必ずこの更衣室で制服を破かれる事件がこれまで5年間起こっているのです。迦具夜様。」
「この時期になると特定の女生徒の制服が、この更衣室で引き裂かれるとの事です。」
鈴音の言葉に付け足すように鈴香も声を出す。
「特定とは、同じ女生徒ということかしら? 」
「はい、迦具夜様。」
「左様で、ございます。迦具夜様。」
同じ女生徒に対する被害、迦具夜はやはりその女生徒への虐めではないかと考える。
「此の場になにも感じませんわ。」
此の場、更衣室に迦具夜の闇の瞳で見ても何かの痕跡は感じられない。迦具夜は首を傾げる。
「しかし同じ事が何年も続いて起きているとは、不思議ね。模倣犯かしら。」
「それも考えられますが、引き裂かれた制服があまりにも酷く。」
「まるで念のこもった程の酷い切り刻まれようで。」
「まあ、それ程酷いの。」
「はい、迦具夜様。」
「それはもう、怨念を感じる程。」
切り裂かれた制服を見た鈴音と鈴香は、あまりの酷さに人ならざるものの仕業かと感じ迦具夜に御出まし願ったのである。
念がこもるほどの思い、虐めに対して虐める側がそれ程思うものなのか虐められた側が相手に抱くのが念では、と迦具夜は思う。
しかし虐めたことも虐められたこともない迦具夜には、それを行い行われる者の心情は分からない。
「狐狸の類いかしら。」
いたずら好きのもののけである、人に付いて悪さをする。酷いものは人の命さえ奪うものもいる。
だが其れならば、何かしら痕跡が残る。迦具夜の闇の瞳に更衣室の中になにも映らない。
「面妖ね。」
人ならざるものの仕業か、人の仕業か。
迦具夜はもう一度闇の瞳を周りを見渡すが、やはりなにも見えず感じない。迦具夜は二人に振り向いた。
「もっとしっかり事態を把握する必要がありそうですわ。鈴音、鈴香。」
「「はい、迦具夜様。」」
「他にも、此のような場所が? 」
「「はい、迦具夜様。」」
迦具夜の問いかけに鈴音と鈴香が頷き応える。
「案内してくださる。」
「勿論でございます、迦具夜様。」
「どちらであろうと、放おって置く事はできませんわ。」
「「迦具夜様。」」
凛と立つ迦具夜の闇の瞳に輝きが増す。その凛々しさに鈴音と鈴香は目を奪われる。
「わたくしがいる今、きっと此の件は解決してみせますわ。」
「なんと頼もしい、迦具夜様。」
「流石でごさいます、迦具夜様。」
崇拝する女神のように鈴音と鈴香は迦具夜を見つめる。
「行きましょう。」
迦具夜は更衣室を出て廊下を歩きだす。その後を鈴音と鈴香が付き添うよう歩く。
「あら、いけない。」
暫くして迦具夜は立ち止まって、二人に振り向いた。
「わたくし、次の現場を知りませんわ。」
先程と同じ過ちをしてしまい、迦具夜は照れたようにコツンと握り締めた手を額にあてた。
はみ噛むような笑顔を鈴音と鈴香に向けた。
「「うっ、迦具夜様!! 」」
その美しく可愛らしい姿と微笑みに、鈴音と鈴香は腰砕けになる処をグッと耐えた。
「案内を、お願い。」
「はい、迦具夜様。」
「此方でございます、迦具夜様。」
二人は会釈をして迦具夜の前に出ると先に歩きだす。
その後を迦具夜も二人を追って歩き出した。
てく、てく、てく、と。
「此処が事件の現場、女生徒の制服が引き裂かれた更衣室です。迦具夜様。」
ドアを開ける鈴香の前を通り過ぎ、先に更衣室に入った迦具夜の後ろから付き添うように更衣室へ入る鈴音と鈴香。
静かにドアを閉める。
「如何でしょうか、迦具夜様。」
「何か感じましょうか? 迦具夜様。」
学園の女性用更衣室に入って、迦具夜は静かに周りを見渡す。鈴音と鈴香は迦具夜の応えを静かに後ろで控え待っている。
此処が、事件があった現場。
女生徒が体育に行っている間に制服が見るも無惨に引き裂かれた事件の場所である。
今は誰も居ない部屋、縦長のロッカーが並ぶ更衣室を迦具夜はその闇の瞳でゆっくりと見て回る。
「如何でしょうか? 迦具夜様。」
「そうね、なにも感じませんわ。」
迦具夜は振り向かずに言った。さらさらと流れる黒髪、迦具夜のその後姿も美しい。
「鈴音。これは器物破損の虐めでは、なくって? 」
先程の教科書を噴水に捨てられたといい制服を引き裂かれたのといい、被害にあった女生徒への誰かしらの虐めではないかと迦具夜は鈴音に問うてみる。
「はい。それも考えましたが、やはり年に一度必ずこの更衣室で制服を破かれる事件がこれまで5年間起こっているのです。迦具夜様。」
「この時期になると特定の女生徒の制服が、この更衣室で引き裂かれるとの事です。」
鈴音の言葉に付け足すように鈴香も声を出す。
「特定とは、同じ女生徒ということかしら? 」
「はい、迦具夜様。」
「左様で、ございます。迦具夜様。」
同じ女生徒に対する被害、迦具夜はやはりその女生徒への虐めではないかと考える。
「此の場になにも感じませんわ。」
此の場、更衣室に迦具夜の闇の瞳で見ても何かの痕跡は感じられない。迦具夜は首を傾げる。
「しかし同じ事が何年も続いて起きているとは、不思議ね。模倣犯かしら。」
「それも考えられますが、引き裂かれた制服があまりにも酷く。」
「まるで念のこもった程の酷い切り刻まれようで。」
「まあ、それ程酷いの。」
「はい、迦具夜様。」
「それはもう、怨念を感じる程。」
切り裂かれた制服を見た鈴音と鈴香は、あまりの酷さに人ならざるものの仕業かと感じ迦具夜に御出まし願ったのである。
念がこもるほどの思い、虐めに対して虐める側がそれ程思うものなのか虐められた側が相手に抱くのが念では、と迦具夜は思う。
しかし虐めたことも虐められたこともない迦具夜には、それを行い行われる者の心情は分からない。
「狐狸の類いかしら。」
いたずら好きのもののけである、人に付いて悪さをする。酷いものは人の命さえ奪うものもいる。
だが其れならば、何かしら痕跡が残る。迦具夜の闇の瞳に更衣室の中になにも映らない。
「面妖ね。」
人ならざるものの仕業か、人の仕業か。
迦具夜はもう一度闇の瞳を周りを見渡すが、やはりなにも見えず感じない。迦具夜は二人に振り向いた。
「もっとしっかり事態を把握する必要がありそうですわ。鈴音、鈴香。」
「「はい、迦具夜様。」」
「他にも、此のような場所が? 」
「「はい、迦具夜様。」」
迦具夜の問いかけに鈴音と鈴香が頷き応える。
「案内してくださる。」
「勿論でございます、迦具夜様。」
「どちらであろうと、放おって置く事はできませんわ。」
「「迦具夜様。」」
凛と立つ迦具夜の闇の瞳に輝きが増す。その凛々しさに鈴音と鈴香は目を奪われる。
「わたくしがいる今、きっと此の件は解決してみせますわ。」
「なんと頼もしい、迦具夜様。」
「流石でごさいます、迦具夜様。」
崇拝する女神のように鈴音と鈴香は迦具夜を見つめる。
「行きましょう。」
迦具夜は更衣室を出て廊下を歩きだす。その後を鈴音と鈴香が付き添うよう歩く。
「あら、いけない。」
暫くして迦具夜は立ち止まって、二人に振り向いた。
「わたくし、次の現場を知りませんわ。」
先程と同じ過ちをしてしまい、迦具夜は照れたようにコツンと握り締めた手を額にあてた。
はみ噛むような笑顔を鈴音と鈴香に向けた。
「「うっ、迦具夜様!! 」」
その美しく可愛らしい姿と微笑みに、鈴音と鈴香は腰砕けになる処をグッと耐えた。
「案内を、お願い。」
「はい、迦具夜様。」
「此方でございます、迦具夜様。」
二人は会釈をして迦具夜の前に出ると先に歩きだす。
その後を迦具夜も二人を追って歩き出した。
てく、てく、てく、と。
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