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僕は、抜ける訳にはいきません。

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アテムは何とかセト達を宥めようと言葉をかける。このパーティーから抜ける訳にはいかないのだ。

(世界の為。いや、僕の為に!! )
こんな美味しいパーティーから抜ける事は出来ない。男共が嫉妬して自分を見る、この優越感は何物にもかわれない。例えそれが馬車馬のように働くことになっても、セトを餌付けするにはこのパーティーを抜ける訳には行かなかった。

(ああ、今日も綺麗だセト。)
アテムはうっとりとセトを見詰めた。

(あの白い肌に傷つけるかも知れない戦闘なんて誰がやらせるものか。神が許しても、僕は許さない。)
ツツーッと、鼻から赤い筋が垂れる。

「あ、そうだ。僕のお肉も食べていいよ。」
ささっと、手を洗い。自分の肉をセトに捧げる。

「肉は、飽きた。」
セトは腕を組みながら、ぷいっと顔を逸した。

「ちょっとアテム、話を反らさないで!! 」
「そうだ、話を反らすな。」
「アテム、下心みえみえ!! 」
巨乳をアテムの頭にアンコは乗せてくる。セトの代わりにマイがアテムのお肉を食べる。マーナもアテムを覗き込み、鼻の下をツンツンしている。

(((クソぅ、羨ましい!! )))

「とにかく貴様は、抜けろ!! 」
高圧的にセトは言った。

「あ、そうだ。クッキーがあったんだ。食べるだろ? 」
お茶請けに買っていたお菓子を言うと、セトは黙って席についた。

「えっ、クッキー? 」
「食べるぞ。」
「早く早く!! 」
アンコ達も席に付き、アテムの配膳を待つ。アテムはテーブルの上を片付け、お茶会セットを用意する。中央に大皿にクッキーを置き、カップを温め紅茶を淹れる。

「ミルクがいい? レモンかな? 」
「ミルク。」
「砂糖は一つだったよね、」
いそいそと紅茶をかき混ぜ、セトの前に置く。他のみんなのお茶も淹れ、目の前に置いた。彼女等の好みは既に把握済みだ。

「はい、セト。あーん。」
セトの口元にクッキーを差し出す。ぱくんとセトはクッキーに食らいつく、もぐもぐと咀嚼する。

「もう一つ、あーん。」
クッキーを口元に持って行くと、躊躇せずにセトは食らいついた。それをうっとりとアテムは見ている。

(((クソぅ、羨ましい!! )))

キャッキャキャッキャとお菓子を頬張る美少女達にギルド内の居酒屋が、昼の太陽を浴びてガゼボでお茶会をしている少女達に見えてくる。アテムは美少女のハーレム中に入り込む憎き男。

(((クソぅ、羨ましい!! )))

射殺されそうな憎しみの眼差しを一心に受け優越感に浸りながら、アテムはうっとりとセトを餌付けし続ける。

甘い物は別腹と言ったもので、テーブルの上に出したクッキーは既に空になる。お茶を再び淹れ、アテムは鞄の中から別のお菓子を取り出す。

「カップケーキだけど食べる? 」
「「「食べる!! 」」」
今朝方焼いたカップケーキを取り出す。それを見て幼なじみ達は、目を輝かせた。アテムは目の前でカップケーキを飾り付けて行く。ホイップクリームを絞り、上に果物を乗せる。みんなに配り、セトの物にはハートのチョコレートをつける。

「セトだけずるーい!! 」
「チョコをよこしなさい。」
「下心、見え見えだぞ。」
「はい。」
幼なじみの三人には、型どった欠片を差し出した。チョコはチョコだ。

(((爆ぜろ!! )))

冒険者達は、リア充のアテムに心の中で思った。

幸せそうに甘い物を頬張る幼なじみ達を、慈愛の表情で見詰めるアテム。

(セト、僕のハートは君の物さ。)
ハートのチョコを食べるセトを邪な目で見詰める。

(僕も君を食べたい。)
ツツーッと、鼻の下に赤い筋を垂らした。

総てを食べ終え、テーブルの上を片付けアテム達は宿に戻った。お風呂の仕度や寝る準備をしてみんなを寝かせる。アテムは明日の準備を整えると、眠りについた。

次の日。
朝早くからギルドに依頼を取りに来たアテムの後に朝食を取るためにセト達はゆっくりと訪れる。
朝食を食べ終わるとセトはアテムに言った。

「貴様、パーティーを抜けろ!! 」
「えっ、嫌だけど。」


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