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雲一つない碧空。

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雲一つない碧空。

王城の前の大広場に、数多くの国民達が集まっていた。

門を出て直ぐの所に高らかと櫓が組まれている。集まった者達が見上げられるような櫓、いや斬首台だ。

「イヤ!! ヤメて!! 」
声の枯れた女性の声がする。二人の兵に引きずられるように両脇を抱えられてその場に現れた。

地ひびきがするような国民の歓声が、大広場を木霊する。

彼女の罪を罵倒する声。

罵る声。

「違う!! 私はやってない!! 」
彼女は枯れた声で叫ぶ。

(誰も聞いていない。)


「冤罪よ!! 信じて!! 」
涙ながらに叫ぶ。

(何度も何度も叫んだわ。)


「お願い、ちゃんと調べて!! 」
懇願するように脇を抱える兵士に訴える。

(決して、誰の耳にも届かない。)


「どうして、 どうしてーー!! 」
彼女は最後の力で暴れる。

(どうしてなのか分からない。)


七日の間牢屋に据え置かれた衰弱した彼女の力では女性の力では、屈強兵士には敵わない。牢屋の食事は質素な物で、体力もつかない。薄汚れた麻の簡単な洋服。長かった髪は刑の邪魔だと、首が見えるように短く切られていた。その髪も過酷な牢屋の中で汚れ彼女の髪色を表してはいない。肌も疲労と汚れで人の色をしめさない。

ズルズルと引きずられていく。

階段の上にある斬首する刃物が太陽の光にあたり綺麗に輝く。

彼女は大きく目を開けた。


「イヤ、イヤあぁぁぁーー!! 」
何度も見た、斬首台。

(何度も何度も繰り返される。)


遠くに空と海が混じり合った、碧い水平線が見える。






    
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