私の婚約者は、今日も楽しい。

❄️冬は つとめて

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誕生日の朝、リリースレベルアップ済み。

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リリース・フォン・ロジックは頑張った。王太子の誕生日会の一週間前から城内泊まり込み、夏の合宿さながら精神の強化特訓をしていた。

(つらかったわ。)

部屋で朝起きてから眠るために部屋に戻るまで、ずっとダミアン王太子と一緒にいた。

(お母様達も一緒にいてくれたから耐えられたけど。)

リリースの涙ぐましい努力は、城内の侍女達の感動を誘い王太子の護衛や従者には健気な令嬢と写った。

(目さえ合わせなければ、大丈夫になったリリーを褒めて。)

リリースは『どや』とばかりに腰に手をあて無い胸を張った。まだ、十三歳ですから。

「これで、ダミアン様にエスコートしてもらえるわ。」

乙女の体重という生贄を死神王太子に捧げ、見事にエスコート(ダミアンに触れる)事に成功したのであった。

つまりリリースはレベルアップしていた。(体重が)

城内の侍女達は目を潤ませ、微笑ましく見ていた。

「愛する王太子殿下の為に、あそこまで(体重が)レベルアップするなんて。」
「私達もお力になりましょう。」
「ええ、必ず。」
「「「明日の婚約式を成功させましょう!! 」」」

誕生日会ですが、侍女達はリリース応援団となった。


そして今日は、王太子ダミアンの十四歳の誕生日。6月6日である。

朝からリリースの支度で、城内はてんやわんやである。特にお針子さんが昨日から徹夜でリリースのドレスをレベルアップさせていたのだ。特にリリースのお腹が普通の場所よりレベルアップしていた為、王太子の用意したドレスの腰のあたりを絞ったのから流れる感じにデザイナーが頭を悩ませ、お針子さんが治しにかかったのである。

「もう少しデザインを変えてみようと思うのよ、おほほっ。」
「そうね、リリーも成長期ですもの、おほほっ。」
リリースにリリースのレベルアップ(特に体重)を知られないようにママンズは必死である。

「乙女の危機。」
リリースは鏡の前で呟いた。鏡に写るリリースの姿は、なんと言うことでしょう。横にレベルアップのぼっちゃり。
 
「お母様の嘘つき、横だけのお腹周りだけの成長期なの? 」
アレンジされたゴスロリのドレスは確かに可愛い、絞りも腰のあたりから胸のあたりになって大きなリボンでお腹周りを隠している。短くなった丈は、もう一枚下にスカートを足しフワリとしたボリュームができリリースのぽっちゃりを隠してくれる。だけれど……

(ほっぺのぽっちゃりは隠れないわ!! いや、このぽっちゃりでみんなの前に出るのはいやよ!! )
鏡の前で固まっているリリースに、ママンズは声をかける。

「リリーちゃんはとっても可愛いわ。」
「子犬のようにころころしてね、ダイアナ。」
「ええ、ナタリア。」
(ウソよ。スタイルのいい人はみんなそう言うのよ、自分がなったらそんな事言ってられないわ!! )
子リスのように可愛かったリリースが、子犬のようになった。それも形容詞に『ころころ』がついた。

「乙女の危機…… 」
(当然よね、怖さを麻痺させる為に甘い物で誤魔化していたんだもの。)
今だって何故かドレスにポケットがついていて、その中に甘い飴やお菓子が常備されている。

「だ、大丈夫よ。婚約式さえ終われば、ダイエットを頑張りましょう。」
「そうよ、リリーちゃん。すぐに元に戻れるわ。」
(ウソよ。一度太ったら、なんとか記憶合金のように形がついて痩せてもまた直に太るのよ。それもバージョンアップして…… )

それをリバウンドと言う。

「ほ、ほら。殿方は、痩せている方より少しふくよかな女性が好きだと言うし。ねえ、ダイアナ。」
「ええ、そうよ。肉体的な方が好みだと言われてるわ。ナタリア。」
(ウソよ。それは胸であって、お腹周りが胸より出ているのが好きなのはマニアしかいないわ。)
ママンズは必死でフォローをする。
だがリリースは冷めた目で、鏡の中の自分を見ている。

「ひとりになりたい……… 」
リリースはボソリと呟いた。

「そ、そうね。少し休憩にしましょうか。」
「リリー、婚約式までゆっくりするといいわ。」
今はそっとしておこうと、ママンズと侍女達は部屋を出ていった。















    
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