私の婚約者は、今日も楽しい。

❄️冬は つとめて

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誕生会迄の日々。

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「リリー、手を。」
ダミアン王太子が微笑んで手を差し伸べた。リリースは母ナタリアの後ろから、そおっと顔を出す。

「リリー、大丈夫よ。」
「リリーちゃん、頑張って。」
ママンズが励ましの声をかける。

「ほら、リリー。怖くない、怖くなよ。」
ダミアンは優しく声をかけた。

「うぅぅ~~。」
ばっ、とダミアンの手にあるお菓子を取って直に母の後ろに隠れる。お菓子を口に入れる。

「おひしぃ~~。」
ほわんと、恐怖が薄れていく。

「ナタリア、見た。リリーちゃんがダミアンの手からお菓子を取ったわ。」
「ええ、もちろんよダイアナ。もうすぐダミアン様のエスコートも平気になるわ。」
ママンズは期待に目を見合わせた。

只今、リリースはエスコートの特訓中である。エスコートをされるにはダミアンとの接触が不可欠。なので、ダミアン共々修行に励んでいた。

(なんとか、ダミアン様と二人きりにならないと…… )
リリースは焦っていた。

(このままでは、お母様達にダミアン様との婚約を決められてしまう。)
なにせ、ダミアンとの会話にママンズが介入して来て話もままならない。

(これが、物語の強制力かしら? )
只のママンズのお節介である。

(死神王太子に慣れて、二人きりにならないと…… )
その為、只今リリース特訓中である。

(距離は詰めれるようになったわ、顔を見なければ。間に誰がいてくれれば、怖いけど平気よ。)
カシカシと、ナタリアの背の後ろでお菓子を頬張りながら考える。

(でも二人きりになるには、エスコートをしてもらえるようにならないと。お母様達がどっかに行ってくれない。)
リリースはお菓子で頬を膨らましたまま、そおっとダミアンを覗き見る。にっこりと微笑んでいるダミアン。

(相手は中坊よ、私はアラサー。怖くなんかないんだから、強い味方のお菓子だってあるのよ。)
リリースは脳内を甘いお菓子で、怖さを薄れさせていた。


「ほら、リリー。お菓子だよ。」
ダミアンが手にお菓子を持ってリリースに向ける。

「う、うううっ~~。」
(お菓子、お菓子よ!! 怖い時は人をジャガイモと思えと言うじゃない、死神王太子はお菓子と思えばいいのよ。)
『お菓子、お菓子』と、呪文のようにリリースは口にする。頭の中で、ダミアンの顔を変える。茶色い丸いものに、真ん中に赤い丸が……

(それは、アンパン○○!! )
リリースは一人突っ込みをする。

(あんパンはお菓子なの? パンなの? あ、あんパン食べたくなってきた。あんこ食べたいな。)
リリースの脳内を食べ物で埋め尽くされた。

「ほら、リリー。お菓子だよ。」
「おかし~~。」
ガバッと手に取り、ダミアンの目の前で食べ始める。

「おひしぃ~~。 」
リスが食べ物を頬張るように両手に持って、カシカシとクッキーを食べるリリース。

「あははは。リリー、可愛い。」
声に気がつき顔をリリースは上げた、ダミアンの顔が目の前に。

硬直。

(怖くない、怖くない。相手は中坊、私はアラサー。)

たらたらと冷や汗が流れ出す。

(まだ、婚約してないし。学園にも通ってない、ヒロインもいない。まだ、その時じゃないんだから…… )

カタカタと体が震える。

(ケーキよ、ケーキ。いちごケーキに、ショートケーキ。すとろべりーけーき!? )
はたと、気づく。

(全部、いちごケーキじゃない!! )
心の中で一人突っ込みをする。

「リリー、頑張って。」
「頑張るのよ、リリーちゃん。」
ママンズの励ましの声。

「リリー、負けない!! 」
リリースは歯を食いしばった。お菓子が詰まった頬が膨れる。

(何時までも弱い、リリーじゃないんだから。死神王太子の顔なんて慣れたし……声だって平気なんだから…… アラサーなめんな!! )
リリースとダミアンは見つめ合った。固唾を呑んで、ママンズは手と手を取り合った。

硬直したリリース。動くことなく、ダミアンを見る。

「リリー、可愛いね。」
にっこりダミアンは微笑んで、リスのように膨らましているリリースの頬を突いた。

きゅう~。(失神)

そのまま後ろに倒れた、リリースをダミアンは受け止めた。

「きゃーー、リリーちゃん!! 」
「リリー、しっかり!! 」

久々の失神であった。






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