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天使の囁き。
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何が楽しいのか、満面の笑みを称えて黒髪の天使が現れた。
「お怪我はありませんか? 」
床に散らばるポットやカップの欠片に気づき、セルビィは心配そうに問いかける。
「これから出陣なのに怪我でも負ったら、大変です。」
出陣の言葉にシアンは顔を益々青ざめた。
「恥ずかしながら、実は私は戦に出たことは無いのです。」
シアンは目を逸しながら言った。
「初陣なのですか? 其れは心ぼそいでしょう。」
(知ってる筈ですが。)
(どの口が言ってんだ。)
(悪魔だな。)
セルビィは驚いたように目を見張る。眉毛を下げ、相手の心を慮るような顔と声を出す。その態度にビウェル、ナルト、ロビンの三人は目で会話をする。
「そうなのです。素人の私が出陣しても足手纏になるだけだと。」
水を得た魚のように如何に自分は戦に向いてないかを話すシアン。セルビィは微笑んで聞いている。
「ーーーですので、私には無理なのです。」
「大丈夫です。神は何時でもあなたを迎えてくれるでしょう。」
必死に戦に出たくないと言うシアンに、セルビィは微笑んで応える。
「わ、私に……死ねと、 」
どう言っても出陣させようとするセルビィの言葉に、シアンは核心を聞いた。セルビィは驚いたように目を見開き、目を綴じて首を振った。
「何故そのように思うのです。僕は、ただ神はあなたを何時でも守っていると言いたかったのに。」
俯いた瞳には薄っすらと涙が潤んでいる。
(嘘泣きですね。)
(嘘泣きだな。)
(悪魔め。)
「神は使徒たるあなたを守るために、聖敵に天罰を下してくださることでしょう。」
セルビィは手を組み合わせ、祈るように瞼を閉じる。
(確かに下ってますね。)
(腹がな。)
(ぴーぴーだぜ。※経験者は語る。)
「それに僕が、あなたの負けをよしとすると思いますか? 」
「そ、それは…… 」
セルビィは優しく微笑んだ。
「あなたの負けは、リオル様の負けになるのです。帝国にこの国を僕が渡すと、思いますか? 」
微笑んでいるが、恐ろしい程の重圧を感じる。シアンは唾を呑み込んだ。
(渡しませんよね。)
(防波堤だからな。)
(悪魔め。)
「僕のできる限りで、戦力を削いでおきました。」
セルビィは首を傾げて安心してくださいと、微笑んで見せる。
(三分の一は削ぎましたね。)
(いたずら半分でな。)
(悪魔め。)
「それに今まさに。神の天罰が下って、敵は戦意を失っている筈です。」
(確かに下ってますね。)
(腹がな。)
(ぴーぴーだぜ。※経験者は語る。)
「だから、安心して出陣してください。無理をしてくださいとは言いません。」
セルビィはそっとシアンの手を取った。
「何時ものように、後ろの方から指示を飛ばしてくださればいいのです。」
「後ろの方から…… 」
「はい。」
セルビィは優しく微笑む。
「シアン様は戦の要、聖戦士達に叱咤激励を飛ばしてくださるだけでいいのです。」
シアンは呆然とセルビィの言葉を聞いている。
「シアン様が其処にいるだけで、指揮が上がるのです。聖戦士達はシアン様の背に、神の御威光を思い聖戦として戦えるのです。」
其れは神の意志を告げる、天から降りてきた天使の言葉にようであった。
(悪魔の囁きだな。)
(魔王との契約。)
(天使の顔をして現れるのですね。)
ロビンとナルトとビウェルは、目の前で魂の契約を見たようだった。
数時間後、シアンは聖騎士軍の後ろに陣取っていた。セルビィの言った通り、先頭には立ってはいなかった。
「私達は、神の試練に立ち向かわなくでならない!! 」
シアンは聖騎士軍に激を飛ばす。
「帝国は事もあろうに神の御子たるリオル様を亡き者にしようとしている!! 」
馬に跨り、他の物より豪華な金糸銀糸が入ったサーコートを鎧の上から羽織り剣をかかげた。
「其れは神への冒涜!! 神の使徒である私達は其れを許すわけにはいかない!! 」
大声で語られる言葉を、神の使徒達は聞いている。
「これは聖戦!! 神の意志を穿く聖戦!! 」
シアンは敵陣に剣先を向ける。
「「「「聖戦!! 」」」」
「そうだ!! 聖戦だ!! 」
「「「「聖戦!! 」」」」
「「「「聖戦!! 」」」」
「「「「聖戦!! 」」」」
神を騙るシアンの言葉に、使徒達は陶酔していく。聖戦と言う言葉に、高揚して声をあげる。
「聖敵は目の前に!! 私達は神の敵を打倒さん!! 」
「「「「神の意志を!! 」」」」
「「「「神の敵を!! 」」」」
「「「「我ら使徒は打倒さん!! 」」」」
砦の前で掛け声があがる。
「流石、シアン様。伊達や酔狂で聖教長をやってません。」
砦の上から、戦場を見ながらセルビィは感心する。
「僕には到底できません。」
「この状態に持ってきたのはセルビィ様でしょう。」
「どの口が言っている。」
「悪魔め。」
感入り目を瞑るセルビィに、ビウェル達は突っ込む。
「神は私達の勝利を望み、聖敵に天罰を下して下さるでしょう。」
シアンの声が聞こえる。
「既に下ってますね。」
「腹がな。」
「ぴーぴーだぜ。※経験者は語る。」
誰に憚ることもなく、三人は言葉に出して言った。
そして、聖戦の火蓋は切る。
「お怪我はありませんか? 」
床に散らばるポットやカップの欠片に気づき、セルビィは心配そうに問いかける。
「これから出陣なのに怪我でも負ったら、大変です。」
出陣の言葉にシアンは顔を益々青ざめた。
「恥ずかしながら、実は私は戦に出たことは無いのです。」
シアンは目を逸しながら言った。
「初陣なのですか? 其れは心ぼそいでしょう。」
(知ってる筈ですが。)
(どの口が言ってんだ。)
(悪魔だな。)
セルビィは驚いたように目を見張る。眉毛を下げ、相手の心を慮るような顔と声を出す。その態度にビウェル、ナルト、ロビンの三人は目で会話をする。
「そうなのです。素人の私が出陣しても足手纏になるだけだと。」
水を得た魚のように如何に自分は戦に向いてないかを話すシアン。セルビィは微笑んで聞いている。
「ーーーですので、私には無理なのです。」
「大丈夫です。神は何時でもあなたを迎えてくれるでしょう。」
必死に戦に出たくないと言うシアンに、セルビィは微笑んで応える。
「わ、私に……死ねと、 」
どう言っても出陣させようとするセルビィの言葉に、シアンは核心を聞いた。セルビィは驚いたように目を見開き、目を綴じて首を振った。
「何故そのように思うのです。僕は、ただ神はあなたを何時でも守っていると言いたかったのに。」
俯いた瞳には薄っすらと涙が潤んでいる。
(嘘泣きですね。)
(嘘泣きだな。)
(悪魔め。)
「神は使徒たるあなたを守るために、聖敵に天罰を下してくださることでしょう。」
セルビィは手を組み合わせ、祈るように瞼を閉じる。
(確かに下ってますね。)
(腹がな。)
(ぴーぴーだぜ。※経験者は語る。)
「それに僕が、あなたの負けをよしとすると思いますか? 」
「そ、それは…… 」
セルビィは優しく微笑んだ。
「あなたの負けは、リオル様の負けになるのです。帝国にこの国を僕が渡すと、思いますか? 」
微笑んでいるが、恐ろしい程の重圧を感じる。シアンは唾を呑み込んだ。
(渡しませんよね。)
(防波堤だからな。)
(悪魔め。)
「僕のできる限りで、戦力を削いでおきました。」
セルビィは首を傾げて安心してくださいと、微笑んで見せる。
(三分の一は削ぎましたね。)
(いたずら半分でな。)
(悪魔め。)
「それに今まさに。神の天罰が下って、敵は戦意を失っている筈です。」
(確かに下ってますね。)
(腹がな。)
(ぴーぴーだぜ。※経験者は語る。)
「だから、安心して出陣してください。無理をしてくださいとは言いません。」
セルビィはそっとシアンの手を取った。
「何時ものように、後ろの方から指示を飛ばしてくださればいいのです。」
「後ろの方から…… 」
「はい。」
セルビィは優しく微笑む。
「シアン様は戦の要、聖戦士達に叱咤激励を飛ばしてくださるだけでいいのです。」
シアンは呆然とセルビィの言葉を聞いている。
「シアン様が其処にいるだけで、指揮が上がるのです。聖戦士達はシアン様の背に、神の御威光を思い聖戦として戦えるのです。」
其れは神の意志を告げる、天から降りてきた天使の言葉にようであった。
(悪魔の囁きだな。)
(魔王との契約。)
(天使の顔をして現れるのですね。)
ロビンとナルトとビウェルは、目の前で魂の契約を見たようだった。
数時間後、シアンは聖騎士軍の後ろに陣取っていた。セルビィの言った通り、先頭には立ってはいなかった。
「私達は、神の試練に立ち向かわなくでならない!! 」
シアンは聖騎士軍に激を飛ばす。
「帝国は事もあろうに神の御子たるリオル様を亡き者にしようとしている!! 」
馬に跨り、他の物より豪華な金糸銀糸が入ったサーコートを鎧の上から羽織り剣をかかげた。
「其れは神への冒涜!! 神の使徒である私達は其れを許すわけにはいかない!! 」
大声で語られる言葉を、神の使徒達は聞いている。
「これは聖戦!! 神の意志を穿く聖戦!! 」
シアンは敵陣に剣先を向ける。
「「「「聖戦!! 」」」」
「そうだ!! 聖戦だ!! 」
「「「「聖戦!! 」」」」
「「「「聖戦!! 」」」」
「「「「聖戦!! 」」」」
神を騙るシアンの言葉に、使徒達は陶酔していく。聖戦と言う言葉に、高揚して声をあげる。
「聖敵は目の前に!! 私達は神の敵を打倒さん!! 」
「「「「神の意志を!! 」」」」
「「「「神の敵を!! 」」」」
「「「「我ら使徒は打倒さん!! 」」」」
砦の前で掛け声があがる。
「流石、シアン様。伊達や酔狂で聖教長をやってません。」
砦の上から、戦場を見ながらセルビィは感心する。
「僕には到底できません。」
「この状態に持ってきたのはセルビィ様でしょう。」
「どの口が言っている。」
「悪魔め。」
感入り目を瞑るセルビィに、ビウェル達は突っ込む。
「神は私達の勝利を望み、聖敵に天罰を下して下さるでしょう。」
シアンの声が聞こえる。
「既に下ってますね。」
「腹がな。」
「ぴーぴーだぜ。※経験者は語る。」
誰に憚ることもなく、三人は言葉に出して言った。
そして、聖戦の火蓋は切る。
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