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いたずらな天使。
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三日の昼。
「ビウェル様、直ぐこれに着替えてください。」
「これは……? 」
セルビィが差し出した服にビウェルは目を見開いた。どう見ても女物の服に見える。
「明日のために敵陣視察に行こうと思います。ですから、これを。」
「なぜ……、これを? 」
ビウェルはセルビィが言っていることが分からなかった。
「変装です。」
セルビィは首を傾げ、普通の顔で言った。
「いや、何故女性の服? 」
「えっ、ナルト様やロビン様に着せるつもりですか? ビウェル様はそのような趣味が。」
ナルトもロビンもイケメンだが男顔であるし、やはり体つきもよい。もし女性の服を着ようものなら変態のそしりを受けるだろう。
「趣味ではないが、何故私が……? 」
「変装のためです。」
「いや、何故変装のために女性の服を……? 」
普通に返事を返すセルビィに、ビウェルは自分が可笑しいのかと首を傾げる。
(いや、可笑しくない。)
「俺が着よう!! 」
「リオル様!! 」
突然声をあげたリオルにロレンスは驚きの声をあげる。
「敵陣視察、俺も同行しよう。」
「何を仰られるのです、リオル様!! 」
「さあ、それをコチラに。」
リオルは雄々しくビウェルに手を差し出した。咄嗟にビウェルはその手から服を守った。
(見たくない!! )
ナルトよりもロビンよりも遥かに難いがよいリオルの女装はそれは凶器である。顔は良いが、服が肩幅の筋肉でぱっんぱっんになるに決まっている。王となるべきものがそれでいいのか、とビウェルの思考が動いた。
(いいわけない。)
「俺も何かがしたい、任せるだけでは皆に悪い。」
「リオル様!! 」
ロレンスは感動した、しかしリオルの女装は見たくはない。それはここに居る総ての者の意思でもあった。
「王は、デンと構えていろ。」
「そ、そうだ……視察とかは俺達に任せろ。」
「リオル様、二人もこのように言っておられますから。」
ナルトとロビンは言葉を濁して止めに入る。ロレンスも頷く。
「リオル様の顔を見知っているものに合うかもしれません。そんな危険な場所に連れて行くことはできません。リオル様は、今回の戦の要なのですから、」
セルビィは胸に手をあてて目を閉じた。そしてビウェルに微笑む。
「ねっ、ビウェル様。」
「ああ、そうです。」
セルビィの言うことは最もだった、ビウェルは頷いた。しかしリオルは諦めきれずビウェルを見詰める。
「では早く着替えにいきましょう。」
「えっ? 」
セルビィはビウェルを急かした。
「こ、コレを私が……着る? 」
「リオル様に着せたいのですか? 」
セルビィの言葉にリオルはウエルカムと手を差し出した。
「駄目です!! 」
ビウェルは咄嗟に服を抱き締めた、凶器のリオルは見たくない。
「ではビウェル様が着るしかありません。」
「えっ? 私が……何故? 」
「リオル様に着せます? 」
「いや、それは……。」
「ならビウェル様が着るしかありません。」
「だから、何故そうなる? 」
セルビィとビウェルが揉めているのを見ていたリオルは。
「やはり俺が着よう!! 」
「いいえ、私が着ます!! 」
服を取ろうとしたリオルから、ビウェルは服を守りきってつい叫んだ。
「あ…… 」
ビウェルが恐る恐るセルビィを見ると満面の笑みを称えた天使がそこにいた。
「着替えにいきましょう。ウイッグもつけましょう、リボンは何色にしましょうか? 」
「あの……セルビィ様…… 」
セルビィは腕を組んでビウェルを別の部屋へと引っ張って行く。部屋を出る扉の所でセルビィはナルト達に振り向いて一言いった。
「覗かないでくださいね。」
可愛らしく片目を閉じた。
「安心しろ覗かねーから。」
「以下同文。」
ナルトとロビンは即答する。セルビィにドナドナされているビウェルは、哀しそうな顔でナルト達を見返していた。
「着ない、という選択肢もあるんだけどな。」
「頭がパニクッて思い出せないんだろ。可哀想に。」
セルビィの玩具にされているビウェルを見送りながら、ナルトとロビンは会話する。
((しょせんは他人ごと出しな。))
自分ではないから『まあいいか。』と二人は思っていた。
数時間後、綺麗に女性の格好を差せられたビウェルがそこにいた。
銀の髪には付髪が付けられ腰までの長さになっていた。お化粧も薄っすらとされている。村娘の服を着たビウェルは女性にしては少し厳ついがギリセーフの状態であった。やはり肌の白さと若さがものを言った。
「ギリセーフです。」
「ああ、ギリセーフだな。」
「よかったな、ギリセーフで。」
セルビィ達は、ギリ女性に見えるビウェルを微笑ましく見ていた。
「松代までの恥だ…… 」
疲れ切った足取りで敵陣視察への馬車へと乗り込むビウェル。
此処でもまだ脱ぐという選択肢があることを、疲れ切ったビウェルには思いつかなかった。哀れビウェルは女装したまま敵陣ヘ向かう、その横には喜々として女装を座っているセルビィがいた。
「俺が、俺が不甲斐ないばかりにすまない。」
リオルは心の中からビウェルに詫ていた。
「有り難う御座いますビウェル殿。」
ロレンスも生贄になってくれたビウェルに心の底から感謝の言葉をはいた。
「ビウェル様、直ぐこれに着替えてください。」
「これは……? 」
セルビィが差し出した服にビウェルは目を見開いた。どう見ても女物の服に見える。
「明日のために敵陣視察に行こうと思います。ですから、これを。」
「なぜ……、これを? 」
ビウェルはセルビィが言っていることが分からなかった。
「変装です。」
セルビィは首を傾げ、普通の顔で言った。
「いや、何故女性の服? 」
「えっ、ナルト様やロビン様に着せるつもりですか? ビウェル様はそのような趣味が。」
ナルトもロビンもイケメンだが男顔であるし、やはり体つきもよい。もし女性の服を着ようものなら変態のそしりを受けるだろう。
「趣味ではないが、何故私が……? 」
「変装のためです。」
「いや、何故変装のために女性の服を……? 」
普通に返事を返すセルビィに、ビウェルは自分が可笑しいのかと首を傾げる。
(いや、可笑しくない。)
「俺が着よう!! 」
「リオル様!! 」
突然声をあげたリオルにロレンスは驚きの声をあげる。
「敵陣視察、俺も同行しよう。」
「何を仰られるのです、リオル様!! 」
「さあ、それをコチラに。」
リオルは雄々しくビウェルに手を差し出した。咄嗟にビウェルはその手から服を守った。
(見たくない!! )
ナルトよりもロビンよりも遥かに難いがよいリオルの女装はそれは凶器である。顔は良いが、服が肩幅の筋肉でぱっんぱっんになるに決まっている。王となるべきものがそれでいいのか、とビウェルの思考が動いた。
(いいわけない。)
「俺も何かがしたい、任せるだけでは皆に悪い。」
「リオル様!! 」
ロレンスは感動した、しかしリオルの女装は見たくはない。それはここに居る総ての者の意思でもあった。
「王は、デンと構えていろ。」
「そ、そうだ……視察とかは俺達に任せろ。」
「リオル様、二人もこのように言っておられますから。」
ナルトとロビンは言葉を濁して止めに入る。ロレンスも頷く。
「リオル様の顔を見知っているものに合うかもしれません。そんな危険な場所に連れて行くことはできません。リオル様は、今回の戦の要なのですから、」
セルビィは胸に手をあてて目を閉じた。そしてビウェルに微笑む。
「ねっ、ビウェル様。」
「ああ、そうです。」
セルビィの言うことは最もだった、ビウェルは頷いた。しかしリオルは諦めきれずビウェルを見詰める。
「では早く着替えにいきましょう。」
「えっ? 」
セルビィはビウェルを急かした。
「こ、コレを私が……着る? 」
「リオル様に着せたいのですか? 」
セルビィの言葉にリオルはウエルカムと手を差し出した。
「駄目です!! 」
ビウェルは咄嗟に服を抱き締めた、凶器のリオルは見たくない。
「ではビウェル様が着るしかありません。」
「えっ? 私が……何故? 」
「リオル様に着せます? 」
「いや、それは……。」
「ならビウェル様が着るしかありません。」
「だから、何故そうなる? 」
セルビィとビウェルが揉めているのを見ていたリオルは。
「やはり俺が着よう!! 」
「いいえ、私が着ます!! 」
服を取ろうとしたリオルから、ビウェルは服を守りきってつい叫んだ。
「あ…… 」
ビウェルが恐る恐るセルビィを見ると満面の笑みを称えた天使がそこにいた。
「着替えにいきましょう。ウイッグもつけましょう、リボンは何色にしましょうか? 」
「あの……セルビィ様…… 」
セルビィは腕を組んでビウェルを別の部屋へと引っ張って行く。部屋を出る扉の所でセルビィはナルト達に振り向いて一言いった。
「覗かないでくださいね。」
可愛らしく片目を閉じた。
「安心しろ覗かねーから。」
「以下同文。」
ナルトとロビンは即答する。セルビィにドナドナされているビウェルは、哀しそうな顔でナルト達を見返していた。
「着ない、という選択肢もあるんだけどな。」
「頭がパニクッて思い出せないんだろ。可哀想に。」
セルビィの玩具にされているビウェルを見送りながら、ナルトとロビンは会話する。
((しょせんは他人ごと出しな。))
自分ではないから『まあいいか。』と二人は思っていた。
数時間後、綺麗に女性の格好を差せられたビウェルがそこにいた。
銀の髪には付髪が付けられ腰までの長さになっていた。お化粧も薄っすらとされている。村娘の服を着たビウェルは女性にしては少し厳ついがギリセーフの状態であった。やはり肌の白さと若さがものを言った。
「ギリセーフです。」
「ああ、ギリセーフだな。」
「よかったな、ギリセーフで。」
セルビィ達は、ギリ女性に見えるビウェルを微笑ましく見ていた。
「松代までの恥だ…… 」
疲れ切った足取りで敵陣視察への馬車へと乗り込むビウェル。
此処でもまだ脱ぐという選択肢があることを、疲れ切ったビウェルには思いつかなかった。哀れビウェルは女装したまま敵陣ヘ向かう、その横には喜々として女装を座っているセルビィがいた。
「俺が、俺が不甲斐ないばかりにすまない。」
リオルは心の中からビウェルに詫ていた。
「有り難う御座いますビウェル殿。」
ロレンスも生贄になってくれたビウェルに心の底から感謝の言葉をはいた。
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