悪役令嬢の弟。

❄️冬は つとめて

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可愛いメイドさん。

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舞踏会は盛り上がっていた。
明日にでも戦になるかも知れない中、王や貴族達は既に戦うのは英雄であるセラム達『豪の者』だと確信を持っていた。何故なら此方には、セラムの大切な息子が手元にあるからだ。王や貴族達はその事を話題に盛り上がっていた。


ビウェル・フレックスは、銀の髪を掻き上げながら溜息を付いた。
「どいつもこいつも、下衆の集まりか。」
セルビィに対する一部始終を見ていたビウェルは吐き気をおぼえる程、苛立っていた。自分も卒業生なので参加して、様子を伺っていたが余りの下品さに直ぐに会場を後に屋敷へと戻って来た。

「お帰りなさいませ、ビウェル様。」
馬車の音を聞き、二十人程の使用人とメイドがビウェルを出迎える。
ここで、ビウェルはまた深い溜息を付いた。
「ご飯にしますか? お風呂にしますか? それとも、わ・た・し? 」
一人だけのメイドが淑女の礼を取りながら可愛らしくウインクをした。

「お前にする。」
「きゃ、大胆。」
金髪の髪を綺麗に結い上げ、ホワイトブリムで押さえている。メイドは頬を両手で押さえ体をくねらせた。

「いい加減にしろ、早く来い。」
「は~い。旦那さま。」
メイドを促すと足早に応接室の前にたどり着く、若い執事が扉を開けてビウェルが中に入るのを待つ。
ビウェルは再び、深い溜息を付いた。
「旦那さま、どうぞ。」
若い執事は頭を下げる。ビウェルは応接室へ入り、他の使用人達は使用人用の部屋に入っていく。

「今、お茶を淹れますね。旦那さま。」
茶器の方へ向かうメイドに、
「「お前は、座っていろ。」」
ビウェルがソファを指差し、執事が肩を持って座らせた。
「お茶は俺が淹れる。」
執事が言った。
「では、お菓子を。」
「お菓子は私が出す。お前は座っていろ。」
「えーーっ、せっかくメイド服着たのに。」
メイドは可愛らしく頬を膨らませた。その様子にビウェルと執事は深い深い溜息を付いた。

「いい加減にして下さい、セルビィ様。」
「いい加減にしろ、セルビィ。」
二人は同時に怒った。

「あなたはあれ程、屑達を煽って。何かあったら如何する積もりだったんです。」
「やっぱ、煽ったのか? お前。」
ビウェルとナルトはセルビィを睨み付けた。

「煽ってないもん。からかっただけだもん。」
セルビィは剝れて言った。
「いや、煽っていた。私がどれだけヒヤヒヤして、見ていたか。」
「お前、命の危険があるから煽るなて言ったよな。」
「「殺されたら如何する!! 」」
ビウェルとナルトは、心配で声を荒げた。
「大丈夫です。僕は『人質になる男だ。』殺されたりはしません。」
セルビィは拳握り両手を上に上げた、万歳の格好だ。

「何、物語の主人公のセリフぽいことを言ってるんです。」
「そうだ、あれは『海◯王』だ。『人質』で偉ぶるな。」

「僕はからかっただけです。一度は助かったと思った後に、どん底に落とされる気持ちはどうでしょう。」
セルビィはくすくすと、笑う。

一度は戦わなくて済んだと思った王や貴族達は、セルビィが居なくなってどれ程慌てるか。それを考えるとセルビィは楽しくて仕方がなかった。正に『天国から地獄へと叩き落とした』事になっている。

「お前、性格悪いな。」
「ありがとうございます。でも、あの下衆様達には及びません。」
「そうだな。」
ナルトの言葉にセルビィが応え、ビウェルはそれを肯定した。
あそこに居るのは下衆の集まり。

「しかし、僕は何度も『人質にはなりませんよ。』と、忠告をしましたのに。学習能力が皆無なのでしょうか。」
セルビィは可愛らしく首を傾げる。
「せめて、信頼置ける近衛騎士に遅らせるかするかしないと。僕が何もせずにあの場に居たと本当に思っていたのでしょうか? 」

「思っていたんだろうな、俺しかいないと。」
「ああ、馬鹿だな。」
ナルトが真面目な顔で言うと、ビウェルは頭を抱えた。

「あの時のナルト様は『必ず助ける!! 』格好よかったです。」
「ああ、格好よかったな。」
乙女のようにセルビィはナルトを見詰めた。ビウェルも頷いた。

「しゃぁねぇだろ!! 何も言わずに去ったら可笑しいだろ。」
ナルトは真っ赤になって叫んだ。

会場を護る兵士達はセルビィを連れ出した。公爵が言うように馬車に乗り学園を後にする。護衛兵達は馬がないのでセルビィの乗る馬車を囲うようにゆっくりと歩いた。そして、城に近づく頃には殆どの兵士達は消えていた。馬車に残るのは馭者とセルビィだけ。馭者は近くある木に馬の手綱を括り付ける。その馬車に馬に股がったナルトが近づいてくる。

「守備は? 」
「御覧の通りだ。」
馭者はナルトに笑った。彼等はセルビィが忍び込まし、ビウェルが手配した者達であった。
「しかし、ここまで上手くいくとか。」
「だろ、彼奴は魔王だからな。」
何時もナルトが言っている事に、彼は頷きそうになった。

「そんな事を言うのは、ナルト様くらいですよ。」
くすくすと、笑いながらセルビィが馬車の扉を開ける。そこには金髪の可愛らしいメイドさんが現れる。

「じゃ、俺はここで。合流場所で。」
「ああ。」
「たま後で。」
馭者はその場を離れ、二人は彼を見送った。そして、ナルトはセルビィに手を差し出す。

「いくぞ、セルビィ。」
「はい。」
ナルトもセルビィを馬の自分の前に座らせ、その場を後にする。

その場には、空になった高貴な馬車が残る。それが見つかるのは朝になってからだった。







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