悪役令嬢の弟。

❄️冬は つとめて

文字の大きさ
上 下
104 / 128

令嬢達との合流。

しおりを挟む
ロビンの今作戦の仕事は案内役だ。
リオルにオースト国を護る伯爵達との橋渡しと、チャイニ国側のコアーラ砦までの道先案内人。
アメリゴ帝国の監視者を欺くためユーヨクにクレムス将軍の一部隊を残して、三部隊はウオンット砦へと入っていく。そこで死神と呼ばれる三人の伯爵と会う。

「貴方がリオル殿ですか。話は聞いています。」
「リオルです、よろしく。」
リオルとフアィア伯爵が挨拶のため手を握りあった。
既に砦を後にする支度は出来ていて、後は引き継ぎだけだ。
「武運を祈ります。」
メシスト伯爵が心より言う。
「ありがとうございます。」
リオルは握手をしながら礼を言う。
「コアーラ砦まで行かれるのは? 途中まで共に行きましょう。」
メラルド伯爵が声をかける。
「ここには、ローマンとロックス将軍に残って貰うつもりです。」
伯爵に握手をしながら、リオルは後で控える三人の将軍の二人を紹介する。二人は頭を下げた。
「俺とマンガン将軍はコアーラ砦に。」
「よろしく、死神さん。うふっ、みんないい男ね。」
マンガン将軍はゴリマッチョな体を捩りながら三人の伯爵に近づいていく。三人は固まった。リオルとロレンスとロビンも固まった。
「なかなかの美丈夫ですね。」
「ああ、一戦お願いしたいくらいだ。」
ロックスとローマン将軍が言葉を続けた。
「戦いは避けたいですな。」
「同盟国となりますから。」
「試合では、負けそうですな。」
伯爵の三人は笑いながら言った。

(((言ってる意味が違うと思うけど……。)))
リオル達三人は、押し黙った。

「急ぎましょうか。」
「娘が心配だ。」
「ああ、妻にも会いたい。」
三人の伯爵は娘がいるので、もちろん妻もいる。

「そうですか奥さんが…。」
「あら~残念。」
「妻の許しが出たら、一戦どうですか? 」
将軍達は伯爵達に手を出した。
「そうですね。」
「ええ、機会があれば。」
「妻の許し? 」
伯爵達は握手に応えながら、頷いた。
(((意味が絶対違うから!! )))
リオル達は思ったが、黙ってた。

「リオル、そろそろコアーラ砦に向かわないと。」
なかなか伯爵達から手を放さない将軍達にロビンは声をかける。
「そうだな、急ごう。」
リオルは頷いた。将軍達も渋々手を放し、伯爵達は安堵する。

「急げば、途中で令嬢達と合流出来る筈だ。」
ロビンの言葉に伯爵達は飛びついた。
「そうだな、急ごう。」
「ああ、早く娘に会いたい。」
「早く会って、安心をさせたい。」
合流場所はランドの町で会ったが今ならもっと早く追いつけると、ロビンが提案する。それに伯爵達は、乗っかった。

「さあ、急ごうリオル殿。」
「娘が待っている。」
「リリアナ、追いついてみせる。」
伯爵達は、嬉しそうに笑った。


ロビンは案内をする。リオル達とアメリゴ帝国から捨てられた非戦闘員。三人の伯爵と私兵。そして、アメリゴ帝国に奴隷として売られていた豪の者。
亀裂の一番狭い場所にある、可動式跳ね橋のある場所に。そこの橋を渡り、ルナの大地を横切りコアーラ砦へと馬を走らせる。

「久しぶりに、アリスに遭えるか。」
ロビンは心弾ませていた。
荷馬車の小隊を見つけたロビンは合図も送らずに馬を走らせる。驚いた小隊は速度を上げて逃げ出した。
「あ、合図を忘れてた。」
ロビンは矢に煙玉を付けて、空に放った。その煙を見て、小隊は馬車を止めた。

伯爵達とリオル達は、令嬢達の馬車へと向かい窓に貼り付けている板を剥がしている。
ロビンは仲間達に小突かれていた。
「ロビン驚かせるな!! 」
「追っ手かと思っただろうが。」
「悪い、悪い。」
ロビンは謝りながらアリスを探した。
「大丈夫? ルイス様。」
「よ、よかった。安心したら力が抜けて……。情けないです。」
「そんな事はないわ。ルイス様は真面目過ぎるのよ、少し力を抜いた方がいいわ。」
「そんな事……。」
もじもじと俯く。
「ルイス様が一生懸命私達を護ろうとしてくれたことは分かっています。ありがとう、ルイス様。」
アリスは優しい微笑みをルイスに向けた。ルイスはアリスの優しい微笑みと言葉に頬を染めて見入ってしまう。その二人の様子にロビンは胸の中がモヤッとした。

「誰だ、そいつ……。」
「ロビン? 」
ロビンを見つけて、アリスは嬉しそうに笑った。
その時、ある一角が湧き上がった。

「おめでとうリリアナ。」
祝福の声があがる。ロビンとアリスも声の方に気を取られた。
そして、リリアナとリオルの急展開の婚約にアリスは喜び、ロビンは顔を青ざめた。その所為で、ロビンはモヤッとした気持ち処では無くなった。
(セルビィだけには、知られてはいけない。)
心から隠し通そうと心に誓った。

ここで、三人の伯爵と非戦闘員と別れ。後ろ髪を引かれる思いで、ロビンはコアーラ砦へとリオル達と共に向かうのであった。

コアーラ砦では、
「あら~いい男。まあ独身、うふふっ。」
マンガン将軍は体をくねらせ、セラムとボルトを見て嬉しそうに微笑んでいた。
セラムとボルトは身を震わせながらコアーラ砦を足早に逃げ出し、合流場所のランドの町へと馬を走らせた。
しおりを挟む
感想 55

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。

風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。 ※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

処理中です...